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王都の日常で非日常

王都の暗部の日常

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「すまん、遅くなった。」

廃工場の入り口でタバコを吸っていたフェニは、声を掛けられて顔をあげた。
杖を突き足を引きずった男は初顔だった。

「おう。
 …いつもの奴は?」

「ロイなら腹が痛いだとよ。
 で、俺が呼び出されたわけだ。」

差し出した手に割り札が置かれる。
手元の割り札と合わせて、一致を確認。
右手を振って部下を建物内に向かわせる。

「今回ので何人目だ?」

「16人目だ。
 さすがに今回は貴族だから、こっちの手間が省けたが。」

「…貴族?」

「聞いてなかったのか?」

吸殻を投げ捨てると、足で揉み消す。

「そうでなければ連中を殺してバラして放り捨てるところまで俺たちの仕事だ。
 全く…若い娘なんざ売り飛ばせば金になるっていうのにな。
 殺しても金には…まぁ報酬さえ払ってくれりゃ、依頼主様が何を考えてるか何て関係ないさ。」

そう言いながらもフェニは男の左手に視線を送る。
連絡と運搬を担当するのが、杖を突いた男というのはどうなのか。
おまけに、その浅黒い腕には様々なタトゥーが刻まれている。
あまり外から見える場所にタトゥーがあるのは
気軽に消せるものでない以上、敵に目印にされる。
素人なのだろうか。

「まぁ、俺たちは俺たちの仕事をするだけだ。
 そうすりゃ何も問題ねぇ。
 …で、荷物は?」

だ。
 大人しいもんだが、間違っても逃がすなよ?
 ヘマしたお前が死ぬのは勝手だが、とばっちりで俺まで殺されるのはゴメンだ。
 本当に大丈夫なのか、その足で?」

「安心してくれ。
 さ。」




「待たせたな、運び屋。
 じゃあ後は任せる。」

拉致した娘を後ろ手に縛り、走れないよう両足首もロープで繋いである。
そして、貴族は運び屋を見た瞬間。

「閣下!?」

その素っ頓狂な声に空気が一瞬で凍り付く。
王都で汚れ仕事をする下っ端が、貴族の当代と顔なじみであることなど。
ましてやなどという敬称で呼ばれることなど。

「誰だテメェ!」

真っ先に動いたのはフェニ、腰にぶら下げたナイフを抜き。
その腕が宙を舞い、そして次の瞬間には胸から鮮血を噴水のごとくまき散らす。

「やれやれ、何もかもぶち壊しだ。
 まぁ回りくどいのは好かんから、結果オーライではあるがな。」

杖に見えた棒に仕込まれた細身の片刃剣。
一瞬でフェニを逆袈裟に斬り捨てたその男は、返り血を浴びて。

「あと、証人は足りてる。
 16人も殺した実行犯バカがいなくても首謀者は仲間もろとも死刑確定だ。」

喋りながら更に3人を斬り殺して、人質スーにナイフを突きつけようとした男の腕を斬り落とし、その首を飛ばし。

「じゃあ裁判も面倒だから、とりあえず死んどけ。」
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