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燃ゆる炎に心染めしか?
燃ゆる炎に心染めしか?③
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翌日。
いつもよりも早く登校し心を落ち着かせる。もちろん昨日の今日で花山と仲直り出来るとは思っていない。もしかすると声を掛ける事すら難しい可能性だってある。
それでも動かない事には始まらない。
その覚悟を示すために小さい事ではあるが早く登校して花山との接触出来る時間を増やそうとしていた。
自分の席に座り教室の扉をちらちらと見る。しかしこの教室に入ってくるのは目的外の人達ばかりで一向に花山は登校してこない。
今回の花山と言い東雲と言いなぜいつも用事のある時だけいつも通り登校してこないのか。その事に不思議さを感じながらもただ待ち続けた。
結果として花山は八時半の鐘が鳴っても登校して来る事はなかった。
話を聞いて貰えない可能性があるとは思ってはいたがまさか学校に来ないとは想像がつかなかった。それゆえにもやもやとした気持ちが収まらない。
その気持ちは授業に集中しようとしても思考の隅でちらちらと顔を覗かせる。
それならばいっそのこと一度別の事を考えてみようと、真に集中して授業を受けたのはいつ以来かと数えてみる。しかし何をしても無駄なようで結局よくわからないという結論だけを出して午前の授業は流れ去っていった。
昼休憩に入ると自分の集中力のなさに呆れながらも鞄から弁当を取り出し立ち上がる。そしてここ最近のルーティーンと化している中庭へ向かう。
そこのベンチに座って秋の程良い気温と風を身に受けながら、裏山の木々の変化を肴にして弁当を食べるのだ。ボッチ飯と考えると聞こえが悪いが自分の時間を謳歌しているというと聞こえがいい。
正直どうすればボッチ飯が自分の時間を謳歌するという事になるかはわからないが、まずは自分自身の現状を楽しむ事が大事だと考えてこの時間や空間を楽しむ事にしていた。
そんな風にして自然とともに過ごしているとベンチの隣に誰かが座る。
周りを横目でちらりと見ると他の場所はまだまだ空いている。それなのにわざわざ自分の隣に座るとは中々いい度胸をしている。
そう思い、わざと険しい表情を作って隣に座る人を見る。
そこには水掛先生が座っていた。水掛先生はやっと気づいたかとでも言うようにゆっくりとこちらを向く。
「時枝。最近どうだ?」
水掛先生は第一声としてそう尋ねる。
「いえ。特に」
悩んでいる事はあるがわざわざ教師に話す事ではない。しかしそれを見透かすかのように、「嘘だな」と言い放った。
「なぜ嘘だと?」
純粋な疑問を投げかける。
それに対して水掛先生は指を三本立てる。
「一つ目は、いつも昼にこんな所に来ていなかったのにここ最近は毎日ここにいること。
二つ目は最近授業に集中していないこと。
三つ目は今日の朝お前の姉から連絡があった」
とりあえず三つ目についてどういう事なのか詳しく聞きたい。
でもその他の二つは間違いない。授業も最近は集中できていないし、花山と喧嘩してからはずっとここで昼食を食べている。
いつの間から見られていたのかはわからないがその的確な指摘に何も言い返せなかった。
「……花山についてだが、家の用事があるらしく十月いっぱいは学校に来られないらしい」
そう言って立ち上がる。
「それだけの為に来たんですか?」
「まあな。文化祭直前っていうのもあるし写真部のメンバーはその事を知らないと何かと不便だろ。ちゃんと花山からも許可を得ている。
あ、でも今の話はそれ以外の人には言うなよ」
「別に……他の人に言う気すら起こらないです」
「それならいい」
そう言って中庭から立ち去る。
本当に自分に話をする為だけにわざわざ自分の所まで来たみたいだ。
しかしなぜこうなっているのかは尋ねてこなかったし、その理由についても尋ねなられなかった。
恐らく姉から連絡が来たと言っていたので今の自分の状況は知っていたのだろう。だからこそここまで自分を探しに来たのだろう。
人によって評価が二分化する先生だがこういう事をしてくれるから自分はこの先生が担任で心地いいと感じていた。
それにしても十月いっぱいは学校に来ないという事は次に来るのは文化祭二日目であり最終日だ。
つまりその日に花山と話の決着を付ける事になる。
小さな悩みなど忘れさせてくれる自然を身体の中に取り入れるかのように一度大きく深呼吸をした。
いつもよりも早く登校し心を落ち着かせる。もちろん昨日の今日で花山と仲直り出来るとは思っていない。もしかすると声を掛ける事すら難しい可能性だってある。
それでも動かない事には始まらない。
その覚悟を示すために小さい事ではあるが早く登校して花山との接触出来る時間を増やそうとしていた。
自分の席に座り教室の扉をちらちらと見る。しかしこの教室に入ってくるのは目的外の人達ばかりで一向に花山は登校してこない。
今回の花山と言い東雲と言いなぜいつも用事のある時だけいつも通り登校してこないのか。その事に不思議さを感じながらもただ待ち続けた。
結果として花山は八時半の鐘が鳴っても登校して来る事はなかった。
話を聞いて貰えない可能性があるとは思ってはいたがまさか学校に来ないとは想像がつかなかった。それゆえにもやもやとした気持ちが収まらない。
その気持ちは授業に集中しようとしても思考の隅でちらちらと顔を覗かせる。
それならばいっそのこと一度別の事を考えてみようと、真に集中して授業を受けたのはいつ以来かと数えてみる。しかし何をしても無駄なようで結局よくわからないという結論だけを出して午前の授業は流れ去っていった。
昼休憩に入ると自分の集中力のなさに呆れながらも鞄から弁当を取り出し立ち上がる。そしてここ最近のルーティーンと化している中庭へ向かう。
そこのベンチに座って秋の程良い気温と風を身に受けながら、裏山の木々の変化を肴にして弁当を食べるのだ。ボッチ飯と考えると聞こえが悪いが自分の時間を謳歌しているというと聞こえがいい。
正直どうすればボッチ飯が自分の時間を謳歌するという事になるかはわからないが、まずは自分自身の現状を楽しむ事が大事だと考えてこの時間や空間を楽しむ事にしていた。
そんな風にして自然とともに過ごしているとベンチの隣に誰かが座る。
周りを横目でちらりと見ると他の場所はまだまだ空いている。それなのにわざわざ自分の隣に座るとは中々いい度胸をしている。
そう思い、わざと険しい表情を作って隣に座る人を見る。
そこには水掛先生が座っていた。水掛先生はやっと気づいたかとでも言うようにゆっくりとこちらを向く。
「時枝。最近どうだ?」
水掛先生は第一声としてそう尋ねる。
「いえ。特に」
悩んでいる事はあるがわざわざ教師に話す事ではない。しかしそれを見透かすかのように、「嘘だな」と言い放った。
「なぜ嘘だと?」
純粋な疑問を投げかける。
それに対して水掛先生は指を三本立てる。
「一つ目は、いつも昼にこんな所に来ていなかったのにここ最近は毎日ここにいること。
二つ目は最近授業に集中していないこと。
三つ目は今日の朝お前の姉から連絡があった」
とりあえず三つ目についてどういう事なのか詳しく聞きたい。
でもその他の二つは間違いない。授業も最近は集中できていないし、花山と喧嘩してからはずっとここで昼食を食べている。
いつの間から見られていたのかはわからないがその的確な指摘に何も言い返せなかった。
「……花山についてだが、家の用事があるらしく十月いっぱいは学校に来られないらしい」
そう言って立ち上がる。
「それだけの為に来たんですか?」
「まあな。文化祭直前っていうのもあるし写真部のメンバーはその事を知らないと何かと不便だろ。ちゃんと花山からも許可を得ている。
あ、でも今の話はそれ以外の人には言うなよ」
「別に……他の人に言う気すら起こらないです」
「それならいい」
そう言って中庭から立ち去る。
本当に自分に話をする為だけにわざわざ自分の所まで来たみたいだ。
しかしなぜこうなっているのかは尋ねてこなかったし、その理由についても尋ねなられなかった。
恐らく姉から連絡が来たと言っていたので今の自分の状況は知っていたのだろう。だからこそここまで自分を探しに来たのだろう。
人によって評価が二分化する先生だがこういう事をしてくれるから自分はこの先生が担任で心地いいと感じていた。
それにしても十月いっぱいは学校に来ないという事は次に来るのは文化祭二日目であり最終日だ。
つまりその日に花山と話の決着を付ける事になる。
小さな悩みなど忘れさせてくれる自然を身体の中に取り入れるかのように一度大きく深呼吸をした。
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