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空舞う花に思いを込めて
空舞う花に想いを込めて⑤
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これがフィナーレだろう。
そう思わせる程大きな花火が空に咲く。その花火の光が、音が遠く離れたこの場所まで終わりの合図を届けた。
空に残る花火の余韻を楽しむ東雲に声を掛ける。
「そろそろ行くか」
「はい!」
もう少しこの空気を楽しみたいと言うかと思ったが、想像よりも満足そうな表情を浮かべてこちらに向く。
「凄かったですね。花火を見たのが久しぶりで感動しました」
普段は仕事で見る間もなかったのだろうか。
そんなに喜んでくれるにならば来た甲斐もあったというものだ。
神社の電気が再度付く。
今度は自分達を送り出す光だろう。
神社の光によって道が照らされたことで、周囲の状況が明らかになる。
周りにいた人達も続々と神社を後にしているようだ。特に追っているわけではないが、そんな彼らの後を歩く。
「そう言えば、後一週間で学校が始まりますね」
この高校の夏休みは約一ヵ月。
多くもなく少なくもなく、満足をしたかと聞かれれば「した」と答える。
しかし、後一週間と言われるとどうも少なく感じてしまう。
「そういえばそうだった。忘れるようにしていたんだが」
冗談で言ったつもりなのだが、驚いたような表情をして、
「それだと始業式に遅刻してしまいますよ!?」
なんて言っている。
「冗談だよ。二十四日だろ? わかっているさ」
このままだと始業式の前日と当日に電話がかかってきそうなので、しっかり把握している事をアピールする。
「それなら良かったです」
他人事のはずだが、まるで別人自分の事のように胸を撫で下ろす。
「そういう東雲は残り一週間どう過ごすんだ?」
そう聞くと、
「残りの一週間で溜まった宿題を片付けないといけません。仕事の合間に取り組んではいたのですが想像以上に多かったです」
と少し残念そうな表情をする。
しかし、すぐに表情をいつもの笑顔に切り替えると、
「でも、夏休みも有意義に過ごしましたので満足です」
と宣言した。
「そうか、何だかんだで楽しそうに過ごしていて良かったよ」
そこでふと自分自身の表情の変化に気が付く。
意図したわけではないが少し笑顔になっている気がした。
その時、東雲はふと何かを思い出したように、
「あの、少しお聞きしたいのですが」
と尋ねられる。
「なんだ?」
そう聞き返すが、そのまま少し考えた後、
「……いえ、やっぱり何でもありません」
と首を横に振った。
一体何だったのだろうか?
気になる所ではあるが、どうやら別れの時間が来たようだ。
「着いたな」
「ここは……」
東雲は周りを見渡す。その中の一つ(恐らく合田商店)を見て自分の位置を把握する。
「もうこんな所まで。時枝さん、今日はありがとうございました。花火凄く楽しかったです」
「そうか。それなら良かったよ。東雲も気をつけてな」
「はい! 私の家はすぐそこなのでお気になさらず。時枝さんこそお気を付けて」
そう言って東雲は笑顔を見せる。
それに対し、小さく口元を緩ませた後、
「自分は生粋の枝垂町民だ」
と返した。
東雲と別れた後の帰り道。
東雲の懐中電灯と比較すると光量の弱い懐中電灯が道の先を照らす。
この光が人としての光というならば納得だ、なんて思いながらぶらぶらと歩いていると、懐中電灯は道の真ん中に落ちている何かを照らす。
普段なら特に気にする事はなく通り過ぎるのだが、気分が高揚しており、気持ちがおおらかになっていたのか地面に落ちていた物を拾い上げる。
それはどうやら何かの袋のようだ。
神社へと向かう時にはこのような物は落ちていなかったため、神社へと向かった誰かが落としたのだろう。
開けるのは忍びないが、持ち主を特定するためだと自分に言い聞かせて袋を開ける。
その中には主に化粧品などが入っているため女性の所持品だろう。
しかし、暗い上に化粧品以外に目ぼしいものがないためそれ以外の手掛かりが見つからない。
「明日、警察に届けるか」
暫く考えていたが、結局警察に届けることが一番の解決策だろうと思い、探すのを諦めて袋を閉じる。
その時、その袋に名前のシールが貼られているのに気付く。
ここに書いているじゃないか、と思いながらその名前を見ると、
『海老根凛』
と書かれていた。
そう思わせる程大きな花火が空に咲く。その花火の光が、音が遠く離れたこの場所まで終わりの合図を届けた。
空に残る花火の余韻を楽しむ東雲に声を掛ける。
「そろそろ行くか」
「はい!」
もう少しこの空気を楽しみたいと言うかと思ったが、想像よりも満足そうな表情を浮かべてこちらに向く。
「凄かったですね。花火を見たのが久しぶりで感動しました」
普段は仕事で見る間もなかったのだろうか。
そんなに喜んでくれるにならば来た甲斐もあったというものだ。
神社の電気が再度付く。
今度は自分達を送り出す光だろう。
神社の光によって道が照らされたことで、周囲の状況が明らかになる。
周りにいた人達も続々と神社を後にしているようだ。特に追っているわけではないが、そんな彼らの後を歩く。
「そう言えば、後一週間で学校が始まりますね」
この高校の夏休みは約一ヵ月。
多くもなく少なくもなく、満足をしたかと聞かれれば「した」と答える。
しかし、後一週間と言われるとどうも少なく感じてしまう。
「そういえばそうだった。忘れるようにしていたんだが」
冗談で言ったつもりなのだが、驚いたような表情をして、
「それだと始業式に遅刻してしまいますよ!?」
なんて言っている。
「冗談だよ。二十四日だろ? わかっているさ」
このままだと始業式の前日と当日に電話がかかってきそうなので、しっかり把握している事をアピールする。
「それなら良かったです」
他人事のはずだが、まるで別人自分の事のように胸を撫で下ろす。
「そういう東雲は残り一週間どう過ごすんだ?」
そう聞くと、
「残りの一週間で溜まった宿題を片付けないといけません。仕事の合間に取り組んではいたのですが想像以上に多かったです」
と少し残念そうな表情をする。
しかし、すぐに表情をいつもの笑顔に切り替えると、
「でも、夏休みも有意義に過ごしましたので満足です」
と宣言した。
「そうか、何だかんだで楽しそうに過ごしていて良かったよ」
そこでふと自分自身の表情の変化に気が付く。
意図したわけではないが少し笑顔になっている気がした。
その時、東雲はふと何かを思い出したように、
「あの、少しお聞きしたいのですが」
と尋ねられる。
「なんだ?」
そう聞き返すが、そのまま少し考えた後、
「……いえ、やっぱり何でもありません」
と首を横に振った。
一体何だったのだろうか?
気になる所ではあるが、どうやら別れの時間が来たようだ。
「着いたな」
「ここは……」
東雲は周りを見渡す。その中の一つ(恐らく合田商店)を見て自分の位置を把握する。
「もうこんな所まで。時枝さん、今日はありがとうございました。花火凄く楽しかったです」
「そうか。それなら良かったよ。東雲も気をつけてな」
「はい! 私の家はすぐそこなのでお気になさらず。時枝さんこそお気を付けて」
そう言って東雲は笑顔を見せる。
それに対し、小さく口元を緩ませた後、
「自分は生粋の枝垂町民だ」
と返した。
東雲と別れた後の帰り道。
東雲の懐中電灯と比較すると光量の弱い懐中電灯が道の先を照らす。
この光が人としての光というならば納得だ、なんて思いながらぶらぶらと歩いていると、懐中電灯は道の真ん中に落ちている何かを照らす。
普段なら特に気にする事はなく通り過ぎるのだが、気分が高揚しており、気持ちがおおらかになっていたのか地面に落ちていた物を拾い上げる。
それはどうやら何かの袋のようだ。
神社へと向かう時にはこのような物は落ちていなかったため、神社へと向かった誰かが落としたのだろう。
開けるのは忍びないが、持ち主を特定するためだと自分に言い聞かせて袋を開ける。
その中には主に化粧品などが入っているため女性の所持品だろう。
しかし、暗い上に化粧品以外に目ぼしいものがないためそれ以外の手掛かりが見つからない。
「明日、警察に届けるか」
暫く考えていたが、結局警察に届けることが一番の解決策だろうと思い、探すのを諦めて袋を閉じる。
その時、その袋に名前のシールが貼られているのに気付く。
ここに書いているじゃないか、と思いながらその名前を見ると、
『海老根凛』
と書かれていた。
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