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4話
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――おかしい。何かがおかしい。
いや、彼は何もかもがおかしい――!!
トイレの便座に座りながら、ばくばくと早鐘を打つ心臓を整える。
彼の部屋に招かれて、視界に飛び込んできた光景は目を疑うものだった。
間違えて私の部屋に入ったのかなと思った。同じアパートだから1DKの間取りや内装は当然一緒だ。
でも、そういう問題じゃない。
私の部屋のダイニングキッチンと同じ家具が全く同じ配置で並んでいた。
置かれている小物も生活用品も何もかもが同じ。ところどころに彼の私物と思われる物も見られたが、それ以外は私の部屋が完璧に再現されている。
トイレもだ。百均で揃えている便座カバーやペーパーホルダーなど、完全一致している。
彼は私の部屋に勝手に上がり込んでいたのだから再現は可能だろう。
問題点は何故彼が私の部屋に入れていたのか、だ。
彼は私の部屋の合鍵を持っている。先ほど鍵が開かなかったことも無関係ではないだろう。
私は時間がないことを言い訳にしてこの重大な問題を後回しにし過ぎた。
「ハァ……」
洗面台に置かれているものも大体同じ。
自分の部屋に帰ってきたんじゃないかと錯覚しそうになるが、私の愛用ヘアケア用品の隣に見知らぬメンズ用のワックスが並んでいる。
彼がシチューを温めている最中のダイニングキッチンにバッグを置いてきてしまった。
こっそり取ってきて逃げよう。
足音を立てないよう洗面所を出ると別のドアが目に入る。
彼の部屋……どうせ私の部屋に似せているんだろうな。
私は少し子供っぽいかもしれないけれど、シーツや布団など淡いピンク色で揃えている。普段黒い服を着ている彼がピンクの空間で寝てる姿を想像するとちょっと笑ってしまう。
軽い気持ちで、覗いてみようと思った。
「な、なにこの部屋……」
彼の部屋は私の部屋とは何もかもが違っていた。異様としか言いようがない。
電気をつけてまず目に入ってきたのは大量の写真。被写体は全て私だが、撮られた覚えのない写真ばかりだ。
それらが壁や天井を覆い尽くしていて元のアイボリーの壁紙が見えない。
それに、壁際のデスクにはモニターが何台も置かれている。株をやっている人の部屋みたいだが、画面に映っているのは私がよく見知った景色だった。
「わ、私の部屋全体、ベッドの上、ソファーの前、台所、ダイニング、お風呂場、トイレ、バイトの休憩室に、大学の食堂に――」
「あはは。こういうの本人に見られるのはちょっと恥ずかしいですね。一応カメラは十台体制で回してます」
「!!」
「早矢香さん、男の部屋に勝手に入るのはよくないですよ。"お仕置き"ってやつしてみてもいいですか?」
パタン――
彼が後ろ手に部屋のドアを閉める。
「や――」
そのまま押し倒されたベッドは黒いフレーム。白のシーツ。
知らない男の子に何で監視されてるの?
お仕置きって?
わからない。わからない。この状況に全然ついていけてなかった。
「やった。いい感じの状況が作れましたね……」
「ん――!!」
お仕置きなんて漫画の登場人物や、ネットでしか聞かない単語だ。
抵抗しようとした両腕を片手でひとまとめにされるとか、叫ぼうとした口を手で塞がれるとか、覆いかぶさってきた男の固い感触がお腹に当たるとか、全部全部ネットでしか見たことがない。
それなのに。
どうして彼は今、熱い息を漏らしながら私を見下ろしているのだろう。
「早矢香さんのスマホに監視アプリ入れさせてもらってるんですけど、一週間前に"無理矢理 お仕置き"ってワードでエッチな小説検索してましたよね?」
「っ、し、してないよ!」
「ああ、そうですよね。恥ずかしいですよね。でも、大丈夫です。俺もちゃーんと読んでおきましたから。期待通りのことしてあげますね?」
「ひっ……!」
いや、彼は何もかもがおかしい――!!
トイレの便座に座りながら、ばくばくと早鐘を打つ心臓を整える。
彼の部屋に招かれて、視界に飛び込んできた光景は目を疑うものだった。
間違えて私の部屋に入ったのかなと思った。同じアパートだから1DKの間取りや内装は当然一緒だ。
でも、そういう問題じゃない。
私の部屋のダイニングキッチンと同じ家具が全く同じ配置で並んでいた。
置かれている小物も生活用品も何もかもが同じ。ところどころに彼の私物と思われる物も見られたが、それ以外は私の部屋が完璧に再現されている。
トイレもだ。百均で揃えている便座カバーやペーパーホルダーなど、完全一致している。
彼は私の部屋に勝手に上がり込んでいたのだから再現は可能だろう。
問題点は何故彼が私の部屋に入れていたのか、だ。
彼は私の部屋の合鍵を持っている。先ほど鍵が開かなかったことも無関係ではないだろう。
私は時間がないことを言い訳にしてこの重大な問題を後回しにし過ぎた。
「ハァ……」
洗面台に置かれているものも大体同じ。
自分の部屋に帰ってきたんじゃないかと錯覚しそうになるが、私の愛用ヘアケア用品の隣に見知らぬメンズ用のワックスが並んでいる。
彼がシチューを温めている最中のダイニングキッチンにバッグを置いてきてしまった。
こっそり取ってきて逃げよう。
足音を立てないよう洗面所を出ると別のドアが目に入る。
彼の部屋……どうせ私の部屋に似せているんだろうな。
私は少し子供っぽいかもしれないけれど、シーツや布団など淡いピンク色で揃えている。普段黒い服を着ている彼がピンクの空間で寝てる姿を想像するとちょっと笑ってしまう。
軽い気持ちで、覗いてみようと思った。
「な、なにこの部屋……」
彼の部屋は私の部屋とは何もかもが違っていた。異様としか言いようがない。
電気をつけてまず目に入ってきたのは大量の写真。被写体は全て私だが、撮られた覚えのない写真ばかりだ。
それらが壁や天井を覆い尽くしていて元のアイボリーの壁紙が見えない。
それに、壁際のデスクにはモニターが何台も置かれている。株をやっている人の部屋みたいだが、画面に映っているのは私がよく見知った景色だった。
「わ、私の部屋全体、ベッドの上、ソファーの前、台所、ダイニング、お風呂場、トイレ、バイトの休憩室に、大学の食堂に――」
「あはは。こういうの本人に見られるのはちょっと恥ずかしいですね。一応カメラは十台体制で回してます」
「!!」
「早矢香さん、男の部屋に勝手に入るのはよくないですよ。"お仕置き"ってやつしてみてもいいですか?」
パタン――
彼が後ろ手に部屋のドアを閉める。
「や――」
そのまま押し倒されたベッドは黒いフレーム。白のシーツ。
知らない男の子に何で監視されてるの?
お仕置きって?
わからない。わからない。この状況に全然ついていけてなかった。
「やった。いい感じの状況が作れましたね……」
「ん――!!」
お仕置きなんて漫画の登場人物や、ネットでしか聞かない単語だ。
抵抗しようとした両腕を片手でひとまとめにされるとか、叫ぼうとした口を手で塞がれるとか、覆いかぶさってきた男の固い感触がお腹に当たるとか、全部全部ネットでしか見たことがない。
それなのに。
どうして彼は今、熱い息を漏らしながら私を見下ろしているのだろう。
「早矢香さんのスマホに監視アプリ入れさせてもらってるんですけど、一週間前に"無理矢理 お仕置き"ってワードでエッチな小説検索してましたよね?」
「っ、し、してないよ!」
「ああ、そうですよね。恥ずかしいですよね。でも、大丈夫です。俺もちゃーんと読んでおきましたから。期待通りのことしてあげますね?」
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