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6話 大胆、苛烈、刺激的で情熱的な最高の初夜?★
しおりを挟む「ぐっ……」
蜜口を塞ぐように張った結界は、クロノス・ヴィルヘルムの不埒な男性の象徴を返り討ちにしてみせた。
彼は寛げていた前と、顔面を覆って悶絶しているようだ。例え強い魔力を持った魔術師であろうとも、彼が男性である限りそこは急所なのだろう。天国から地獄へ突き落とされたような気持ちだろうか。
「私は女神様の加護を受けし聖女。聖なる光の結界は悪しき魂の侵攻を許さないのです!」
ちょっとかっこをつけた発言をしてみたけれど、この状況は相当恥ずかしい。
私は体を起こして、脚をさっと閉じる。
「……っ」
「あ、あの、陛下?」
期待に膨らんでいた股間を襲った痛みは察するに余り有る。下手するともう二度と使い物にならない状態になっていて、この国の王家の血は彼の代で途絶えるかもしれない。
――少し、やりすぎた?
「これでわかりましたか。私は初夜にこのような酷い仕打ちをする女なのです。陛下もさぞ幻滅したでしょう? もしも癒やしの魔法をかけてほしいのなら――」
「幻滅だなんてとんでもない! 俺は歓喜に打ち震えているよ!」
「へ?」
「あああ……すごい……こんな痛みと屈辱、味わったことがない……」
「……はい?」
痛みに喘いでいるのかと思いきや、クロノスは蕩けるような笑顔を隠していた。
彼の陰茎はダメージを負った様子もなく反り返っている。注視すべきはその先端から白濁をだらだら垂らしていることだった。
――おかしい。彼はおかしいです。
「……でも、そうだな。俺じゃなかったら泡を吹いて倒れていただろうさ。だから、ルーシーは悪い子なんだろうね」
「ひゃあっ!」
閉じた脚の間に不躾な手が差し込まれ、先ほどの熱がぶり返してくる。
蜜を溢していた私の入口は結界によって守られている。クロノスの指先はその清浄な白い光の陣を避けて、秘裂を撫で上げた。
「んんっ」
「愚かしくて愛しい俺のルーシー。男を受け入れる場所だけ守り抜けば貞淑でいられるとでも思ってるの?」
花弁を一枚一枚解いていくように丁寧にクロノスの指が秘所を往復する。
「内側を暴かなくとも歓びを得られること、俺が教えてあげる」
「ん、ふ……っ」
「ああ、ルーシーの体はどこもかしこも柔らかいね。それにあったかい……」
クロノスの長い人差し指と中指が秘唇の形に沿って撫で上げ、時折その肉のひだを内側に向かってくにゅくにゅと挟まれる。
聖なる結界で守られた蜜口からは浅ましい蜜が溢れてきてしまう。
それでもまだ、耐えられると思った。私はクロノスの手首を掴んで、笑ってやった。
「こ、こんなことをしても無駄ですよ? 結界は解きません。わ、たしは肉欲に溺れたりしませんから」
「いいね、その顔。ぞくぞくするよ」
「ひっ!」
私の蜜をまとったクロノスの人差し指の腹が、秘裂より少し上に息づく花芯に触れる。
指がそこに置かれているだけ。それだけなのに、強い刺激に体が跳ねる。
「その様子だと知らないみたいだな。この小さな突起は通ってる神経の数が多くて繊細なんだ。そうっと触れてやろうな」
「んあ……っ、や、や、駄目……!」
花芯が二本の指に挟まれて、どくんどくんと脈打っているのを感じる。
この指を動かされたらまずい気がした。だから私はクロノスの手首を握りしめたまま嫌嫌と首を振る。
「さっきの威勢はどうしたんだ? ここもすっかり震えているな……優しく愛でてあげるから集中して。ルーシーの愛液でとろとろの指、気持ち良いだろう?」
「あ……っ、あああっ!」
クロノスの指が秘芽の上で踊る。存在を強く意識させられていたせいで、ただでさえ敏感な花芯の感覚は更に鋭くなっていた。
濡れた指が花芯を上下に擦り上げる度にくちゅくちゅ音が鳴る。
――何この感覚。気持ち良い、気持ち良いの。クロノスの指に翻弄されて何も考えられなくなる。
「ふあっ、あ、あっ、やっ、やめっ」
「ああっ、君は本当に可愛いね。処女を渡したくもない男の手で愛されてそんなにも乱れてしまっているの?」
「ん、あっクロノス……っ、あっ――!!」
爪先から快感が駆け上がってくる。
クロノスの手首をぎゅうっと強く握ったあと、私の体は脱力した。そのまま背中からシーツへと倒れ込む。
「はあっ、ルーシー……俺の名前を呼びながら気をやる表情、たまらなかったよ……っ、なんて幸福な時間なんだろう」
「ひっ、やぁ……」
私に覆いかぶさってきたクロノスのものが恥丘に当たっている。
弱々しい光を放つ結界には触れないようにしながら、クロノスの性器が秘裂を上下に擦り上げる。達する、という経験を初めてしたばかりの花芯が潰される刺激は強くて、私はまた快楽の波に飲まれていく。
「このベッドは俺が白で揃えさせたんだ。まるで新雪のようだろう? ここにルーシーが赤い華を咲かせてくれたらもっと特別なものなると思わないか」
「んっ、あっあっ!」
破瓜なんて御免です。悔しくて、白いシーツを握っていた手を緩める。
ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅと、私とクロノスが混ざり合う音がする。
彼の先端から溢れている透明な滴は興奮時に出るという、あれでしょうか。
このパンパンに膨れ上がった欲の塊で貫かれたら、私はどうなってしまうのだろう――
「んん……っ、駄、目ですから。どんな抜け道を使ってこの寝室に入り込んだかは知らないけれど、ここは通しません……っ」
私はなんとか気を引き締める。すると、ぐちゃぐちゃに濡れた私の不浄な場所を守る結界も、また強い光を取り戻した。
「ふふ。その調子だよルーシー。大事な純潔を守らなければね。完璧な城塞であればあるほど陥落させ甲斐があるというものさ」
私の抵抗は、彼に火を付けてしまったらしい。ギラギラとした獣のような瞳で私を見下ろしながら、クロノスは舌なめずりをした。
「う、あっ! ん、んん……っ!」
クロノスの舌で秘芽を愛でられ、私はまた絶頂を迎えた。クロノスの執拗な口淫でもう数えきれないほどイカされてしまっている。
「はあ……赤く腫れたルーシーのここは真珠みたいで、いっとう可愛い。この美しさを際立たせる特注のリングをプレゼントしよう」
「な、何を……そんなのいらな――んああっ!」
今度は秘芽を口に含まれ、吸われる刺激で私は簡単に達した。
「もうほとんどイキ癖がついてしまったな。でも、まだだよ。無垢な体にもっと快楽を教えこんでやらないと。そうすればじきに君の方から俺が欲しいと懇願するようになる」
「あっ、あ……っ」
窓から見える空はもう白み始めているというのに……私の汚いところに顔を埋めて美味しそうに蜜を味わうクロノスはまだこの淫らな時間を続けるつもりらしい。
「ふぁ……んん……あっ」
クロノスのあったかい口の中で飴玉のように転がされた私の花芯は溶けてしまっている。気持ち良すぎておかしくなってしまう。
それでも、私は辛うじて薄皮一枚ほどの結界を保っていたけれど、限界は近かった。
まぶたが、重い。
「ルーシー、ここで眠ってしまっていいの? 次に目を開けたとき、君はもう女神と民のために生きることができない体になっていることだろうね」
「っ! 嫌ぁっ! んっ、あ……あっ!」
眠りかけていた私の耳元で悪魔が囁いた。
三本の指で固く尖った花芯を容赦なく扱き上げられれば目の前がチカチカ明滅する。
「ん……っ、あっあっ!」
まるで陰茎に奉仕するような指遣いで小さな花芯を上下に扱かれながら、耳の穴まで舌で犯されて私は身悶えるしかなかった。
歯を食いしばり耐える私の顔面に向かって天井からパラパラと砂が落ちてくる。
そういえば、古い塔だと言っていたから。
ヴィルヘルム王国の長い歴史の中でこんな初夜の朝を迎えた夫婦はいたのだろうか。
ぼんやりと考えている私とクロノスの横に、天井の大きな破片が落ちてきた。
「あっ……クロノス大変! この塔、今にも崩れそうです!!」
「っ!」
私が叫んだのと同時に、塔の崩壊は始まった。ガクンッと床が抜けて、私とクロノスはベッドごと落ちていく。
「きゃああああっ!! こっ、こんな狭い塔で強力な魔法を使ったりするから!」
「大人しく犯されてくれればいいものを……結界なんて張るからだろう。いいから俺に掴まって!」
クロノスに荷物のように抱えられたところで、私の意識は途切れた。
***
「はあ……最高の夜だった……」
五十人は座れる長卓の主席で、クロノスがうっとりとしたようにため息を漏らす。
「塔が崩壊するほどのまぐわいですからね。さぞお楽しみになられたようで」
「ルシア妃殿下のご懐妊はすぐですね」
それに続いたのは後ろに控えている国王補佐官兼、宰相だというアンドレイと、私の専属侍女であるエイプリルだった。
「ルーシーはすごいんだ。俺は彼女に骨抜きにされたよ」
「なっ、何を言って!?」
「陛下をそこまで……さすが陛下の選ばれた女性ですね。何もかもが規格外だ」
特にアンドレイは結構いい性格をしていそうな男で、黒い山羊のような仮面の奥で喉をくつくつ鳴らしている。
立ち姿や声から受ける印象から、クロノスとさほど年齢の変わらない青年だろう。
「ち、違いますよ! 誤解です!」
「何が誤解だと言うんだ? 昨夜ルーシーは俺を情熱的に迎えてくれた。俺たちは激しくぶつかりあったじゃないか」
「変な言い方をしないでください!」
私は守護結界でクロノスを迎え撃とうとして、クロノスはその結界を壊そうと激しい魔法を使っただけです。
「ルーシー、初めての刺激を教えてくれてありがとう。あのとき俺は天にも昇る心地だったよ」
「ひっ! だからその言い方は語弊があります!」
私の結界の力で、男の象徴に手痛いしっぺ返しを食らっただけでしょう!
「あらあらまあまあ。ルシア妃殿下は積極的でいらっしゃるのですね」
「ルーシーはこう見えて大胆だからな」
「いやはや、それはそれは。この国の未来は明るいですな」
「そうだな。俺とルーシーなら百人の子をなせるだろう」
「~~っ! かっ、勝手なこと言わないでくださいーー!!」
上機嫌なクロノスと、本気か甘言かを述べるアンドレイとエイプリル。
盛り上がる三人の前で、私の絶叫は虚しく響いたのだった。
蜜口を塞ぐように張った結界は、クロノス・ヴィルヘルムの不埒な男性の象徴を返り討ちにしてみせた。
彼は寛げていた前と、顔面を覆って悶絶しているようだ。例え強い魔力を持った魔術師であろうとも、彼が男性である限りそこは急所なのだろう。天国から地獄へ突き落とされたような気持ちだろうか。
「私は女神様の加護を受けし聖女。聖なる光の結界は悪しき魂の侵攻を許さないのです!」
ちょっとかっこをつけた発言をしてみたけれど、この状況は相当恥ずかしい。
私は体を起こして、脚をさっと閉じる。
「……っ」
「あ、あの、陛下?」
期待に膨らんでいた股間を襲った痛みは察するに余り有る。下手するともう二度と使い物にならない状態になっていて、この国の王家の血は彼の代で途絶えるかもしれない。
――少し、やりすぎた?
「これでわかりましたか。私は初夜にこのような酷い仕打ちをする女なのです。陛下もさぞ幻滅したでしょう? もしも癒やしの魔法をかけてほしいのなら――」
「幻滅だなんてとんでもない! 俺は歓喜に打ち震えているよ!」
「へ?」
「あああ……すごい……こんな痛みと屈辱、味わったことがない……」
「……はい?」
痛みに喘いでいるのかと思いきや、クロノスは蕩けるような笑顔を隠していた。
彼の陰茎はダメージを負った様子もなく反り返っている。注視すべきはその先端から白濁をだらだら垂らしていることだった。
――おかしい。彼はおかしいです。
「……でも、そうだな。俺じゃなかったら泡を吹いて倒れていただろうさ。だから、ルーシーは悪い子なんだろうね」
「ひゃあっ!」
閉じた脚の間に不躾な手が差し込まれ、先ほどの熱がぶり返してくる。
蜜を溢していた私の入口は結界によって守られている。クロノスの指先はその清浄な白い光の陣を避けて、秘裂を撫で上げた。
「んんっ」
「愚かしくて愛しい俺のルーシー。男を受け入れる場所だけ守り抜けば貞淑でいられるとでも思ってるの?」
花弁を一枚一枚解いていくように丁寧にクロノスの指が秘所を往復する。
「内側を暴かなくとも歓びを得られること、俺が教えてあげる」
「ん、ふ……っ」
「ああ、ルーシーの体はどこもかしこも柔らかいね。それにあったかい……」
クロノスの長い人差し指と中指が秘唇の形に沿って撫で上げ、時折その肉のひだを内側に向かってくにゅくにゅと挟まれる。
聖なる結界で守られた蜜口からは浅ましい蜜が溢れてきてしまう。
それでもまだ、耐えられると思った。私はクロノスの手首を掴んで、笑ってやった。
「こ、こんなことをしても無駄ですよ? 結界は解きません。わ、たしは肉欲に溺れたりしませんから」
「いいね、その顔。ぞくぞくするよ」
「ひっ!」
私の蜜をまとったクロノスの人差し指の腹が、秘裂より少し上に息づく花芯に触れる。
指がそこに置かれているだけ。それだけなのに、強い刺激に体が跳ねる。
「その様子だと知らないみたいだな。この小さな突起は通ってる神経の数が多くて繊細なんだ。そうっと触れてやろうな」
「んあ……っ、や、や、駄目……!」
花芯が二本の指に挟まれて、どくんどくんと脈打っているのを感じる。
この指を動かされたらまずい気がした。だから私はクロノスの手首を握りしめたまま嫌嫌と首を振る。
「さっきの威勢はどうしたんだ? ここもすっかり震えているな……優しく愛でてあげるから集中して。ルーシーの愛液でとろとろの指、気持ち良いだろう?」
「あ……っ、あああっ!」
クロノスの指が秘芽の上で踊る。存在を強く意識させられていたせいで、ただでさえ敏感な花芯の感覚は更に鋭くなっていた。
濡れた指が花芯を上下に擦り上げる度にくちゅくちゅ音が鳴る。
――何この感覚。気持ち良い、気持ち良いの。クロノスの指に翻弄されて何も考えられなくなる。
「ふあっ、あ、あっ、やっ、やめっ」
「ああっ、君は本当に可愛いね。処女を渡したくもない男の手で愛されてそんなにも乱れてしまっているの?」
「ん、あっクロノス……っ、あっ――!!」
爪先から快感が駆け上がってくる。
クロノスの手首をぎゅうっと強く握ったあと、私の体は脱力した。そのまま背中からシーツへと倒れ込む。
「はあっ、ルーシー……俺の名前を呼びながら気をやる表情、たまらなかったよ……っ、なんて幸福な時間なんだろう」
「ひっ、やぁ……」
私に覆いかぶさってきたクロノスのものが恥丘に当たっている。
弱々しい光を放つ結界には触れないようにしながら、クロノスの性器が秘裂を上下に擦り上げる。達する、という経験を初めてしたばかりの花芯が潰される刺激は強くて、私はまた快楽の波に飲まれていく。
「このベッドは俺が白で揃えさせたんだ。まるで新雪のようだろう? ここにルーシーが赤い華を咲かせてくれたらもっと特別なものなると思わないか」
「んっ、あっあっ!」
破瓜なんて御免です。悔しくて、白いシーツを握っていた手を緩める。
ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅと、私とクロノスが混ざり合う音がする。
彼の先端から溢れている透明な滴は興奮時に出るという、あれでしょうか。
このパンパンに膨れ上がった欲の塊で貫かれたら、私はどうなってしまうのだろう――
「んん……っ、駄、目ですから。どんな抜け道を使ってこの寝室に入り込んだかは知らないけれど、ここは通しません……っ」
私はなんとか気を引き締める。すると、ぐちゃぐちゃに濡れた私の不浄な場所を守る結界も、また強い光を取り戻した。
「ふふ。その調子だよルーシー。大事な純潔を守らなければね。完璧な城塞であればあるほど陥落させ甲斐があるというものさ」
私の抵抗は、彼に火を付けてしまったらしい。ギラギラとした獣のような瞳で私を見下ろしながら、クロノスは舌なめずりをした。
「う、あっ! ん、んん……っ!」
クロノスの舌で秘芽を愛でられ、私はまた絶頂を迎えた。クロノスの執拗な口淫でもう数えきれないほどイカされてしまっている。
「はあ……赤く腫れたルーシーのここは真珠みたいで、いっとう可愛い。この美しさを際立たせる特注のリングをプレゼントしよう」
「な、何を……そんなのいらな――んああっ!」
今度は秘芽を口に含まれ、吸われる刺激で私は簡単に達した。
「もうほとんどイキ癖がついてしまったな。でも、まだだよ。無垢な体にもっと快楽を教えこんでやらないと。そうすればじきに君の方から俺が欲しいと懇願するようになる」
「あっ、あ……っ」
窓から見える空はもう白み始めているというのに……私の汚いところに顔を埋めて美味しそうに蜜を味わうクロノスはまだこの淫らな時間を続けるつもりらしい。
「ふぁ……んん……あっ」
クロノスのあったかい口の中で飴玉のように転がされた私の花芯は溶けてしまっている。気持ち良すぎておかしくなってしまう。
それでも、私は辛うじて薄皮一枚ほどの結界を保っていたけれど、限界は近かった。
まぶたが、重い。
「ルーシー、ここで眠ってしまっていいの? 次に目を開けたとき、君はもう女神と民のために生きることができない体になっていることだろうね」
「っ! 嫌ぁっ! んっ、あ……あっ!」
眠りかけていた私の耳元で悪魔が囁いた。
三本の指で固く尖った花芯を容赦なく扱き上げられれば目の前がチカチカ明滅する。
「ん……っ、あっあっ!」
まるで陰茎に奉仕するような指遣いで小さな花芯を上下に扱かれながら、耳の穴まで舌で犯されて私は身悶えるしかなかった。
歯を食いしばり耐える私の顔面に向かって天井からパラパラと砂が落ちてくる。
そういえば、古い塔だと言っていたから。
ヴィルヘルム王国の長い歴史の中でこんな初夜の朝を迎えた夫婦はいたのだろうか。
ぼんやりと考えている私とクロノスの横に、天井の大きな破片が落ちてきた。
「あっ……クロノス大変! この塔、今にも崩れそうです!!」
「っ!」
私が叫んだのと同時に、塔の崩壊は始まった。ガクンッと床が抜けて、私とクロノスはベッドごと落ちていく。
「きゃああああっ!! こっ、こんな狭い塔で強力な魔法を使ったりするから!」
「大人しく犯されてくれればいいものを……結界なんて張るからだろう。いいから俺に掴まって!」
クロノスに荷物のように抱えられたところで、私の意識は途切れた。
***
「はあ……最高の夜だった……」
五十人は座れる長卓の主席で、クロノスがうっとりとしたようにため息を漏らす。
「塔が崩壊するほどのまぐわいですからね。さぞお楽しみになられたようで」
「ルシア妃殿下のご懐妊はすぐですね」
それに続いたのは後ろに控えている国王補佐官兼、宰相だというアンドレイと、私の専属侍女であるエイプリルだった。
「ルーシーはすごいんだ。俺は彼女に骨抜きにされたよ」
「なっ、何を言って!?」
「陛下をそこまで……さすが陛下の選ばれた女性ですね。何もかもが規格外だ」
特にアンドレイは結構いい性格をしていそうな男で、黒い山羊のような仮面の奥で喉をくつくつ鳴らしている。
立ち姿や声から受ける印象から、クロノスとさほど年齢の変わらない青年だろう。
「ち、違いますよ! 誤解です!」
「何が誤解だと言うんだ? 昨夜ルーシーは俺を情熱的に迎えてくれた。俺たちは激しくぶつかりあったじゃないか」
「変な言い方をしないでください!」
私は守護結界でクロノスを迎え撃とうとして、クロノスはその結界を壊そうと激しい魔法を使っただけです。
「ルーシー、初めての刺激を教えてくれてありがとう。あのとき俺は天にも昇る心地だったよ」
「ひっ! だからその言い方は語弊があります!」
私の結界の力で、男の象徴に手痛いしっぺ返しを食らっただけでしょう!
「あらあらまあまあ。ルシア妃殿下は積極的でいらっしゃるのですね」
「ルーシーはこう見えて大胆だからな」
「いやはや、それはそれは。この国の未来は明るいですな」
「そうだな。俺とルーシーなら百人の子をなせるだろう」
「~~っ! かっ、勝手なこと言わないでくださいーー!!」
上機嫌なクロノスと、本気か甘言かを述べるアンドレイとエイプリル。
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