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ランプの魔人はかく語りきⅡ
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ある男の話をしようか。
遠い遠い昔、神と人とが当たり前に隣り合って生きていた、そんな時代の話だ。
男は並ぶもののいない強壮無比な戦士だった。
剣の一振りで千の敵をなぎ払い、ひとたび弓を引けば千の鳥を撃ち落とす。
その咆哮は敵対するもの全てを奮いあがらせ、大地を強く踏みしめれば馬よりも早く千里の道を駆け抜けた。
そんな男には友と呼べるものがいた。
男の仕える国の守り神で二人は唯一無二の友だった。
国一番の戦士だった男は戦の度に勝利を収め、民の声援を背に凱旋する男を迎える神は鼻高々に他の神々に自慢した。
それを面白く思わなかった神の一柱があるとき男の国と敵対する国の王にこう囁いた。
神にすら癒やせぬ毒をくれてやろう。これで傷つけられた者は必ずや死の国へ羽ばたくだろう、と。
多大な犠牲を払いはしたが彼の国はそれをやり遂げた。
腕に三度、毒の刃で切りつけられた男は血反吐を吐き散らしのたうち回りそうして黄泉路へと旅だった。
神は涙した。
その流れは川となり海となって国ひとつを沈めるくらいに涙した。
どれだけ後悔してもやりきれない神は冷たくなった男の身体をかき抱いて泣き続けたがその涙を拭うものは現れない。
いつまでたっても枯れ果てぬ涙を流し男の不在を嘆きただただ寂しさを空に叫び続ける。
そうして泣き暮らす神の頭にふとひとつの考えがよぎった。
死した男の身体をその場に横たえると自らの腕を切り落とし流れ出た血と土を男の身体と混ぜ合わせこう命じた。
起きよ、と。
男は目覚めたが決して前のままの男ではなかった。
それもそうだ。
男の魂は既に黄泉路へ向かい戻ってくることはない。
それを理解していながらも愛する友が目覚めたことを神は純粋に喜んだ。
だが男にとってはそうではなかった。
神の血と土で作られた身体は生前のものよりも強靱で男を死から遠ざけることを願ったために死なない器となって男の新たな魂を縛り付けた。
男はなぜ眠らせたままでいさせてくれなかったのかと神を詰まった。
神は例えどれほど恨まれたとしても愛する友がこの世にいないことは耐えられないと泣いた。
二人はもとの二人のようにはなれなかった。
死ねない身体となった男は自分を真に愛するのなら死を与えてくれと神に願った。
男の願いを聞き届けた神は男に運命を見る目とそれを手繰りよせる手を与えた。
神自ら命を与えた身体は簡単には死の国へと旅立てない。
だからその代わりとなる誰かを見つけられるようにと必要なものを与えると男の幸せを願って手を放した。
毒の刃で三度切りつけられたためか男は人々の願いを三度叶える力を得て様々な人の手を渡り歩いた。
だがなかなかこれはというものは現れない。
そうして幾星霜を彷徨い友の気配も遠くなったある日一人の少年と出会った。
少年は死に瀕していた。
いままさに生命の伊吹を止め死の国へと旅立つ間際の少年へと男は声をかけた。
永遠の命がほしくはないか、と。
少年は答えた。
死にたくない、永遠の命がほしいと。
男と少年の運命は混じり合いそしてまた分かたれた。
そうして男の願いは果たされた。
男の魂は果てのない旅路を歩くことはなくなった。
だから、これはただそれだけの話だ。
遠い遠い昔、神と人とが当たり前に隣り合って生きていた、そんな時代の話だ。
男は並ぶもののいない強壮無比な戦士だった。
剣の一振りで千の敵をなぎ払い、ひとたび弓を引けば千の鳥を撃ち落とす。
その咆哮は敵対するもの全てを奮いあがらせ、大地を強く踏みしめれば馬よりも早く千里の道を駆け抜けた。
そんな男には友と呼べるものがいた。
男の仕える国の守り神で二人は唯一無二の友だった。
国一番の戦士だった男は戦の度に勝利を収め、民の声援を背に凱旋する男を迎える神は鼻高々に他の神々に自慢した。
それを面白く思わなかった神の一柱があるとき男の国と敵対する国の王にこう囁いた。
神にすら癒やせぬ毒をくれてやろう。これで傷つけられた者は必ずや死の国へ羽ばたくだろう、と。
多大な犠牲を払いはしたが彼の国はそれをやり遂げた。
腕に三度、毒の刃で切りつけられた男は血反吐を吐き散らしのたうち回りそうして黄泉路へと旅だった。
神は涙した。
その流れは川となり海となって国ひとつを沈めるくらいに涙した。
どれだけ後悔してもやりきれない神は冷たくなった男の身体をかき抱いて泣き続けたがその涙を拭うものは現れない。
いつまでたっても枯れ果てぬ涙を流し男の不在を嘆きただただ寂しさを空に叫び続ける。
そうして泣き暮らす神の頭にふとひとつの考えがよぎった。
死した男の身体をその場に横たえると自らの腕を切り落とし流れ出た血と土を男の身体と混ぜ合わせこう命じた。
起きよ、と。
男は目覚めたが決して前のままの男ではなかった。
それもそうだ。
男の魂は既に黄泉路へ向かい戻ってくることはない。
それを理解していながらも愛する友が目覚めたことを神は純粋に喜んだ。
だが男にとってはそうではなかった。
神の血と土で作られた身体は生前のものよりも強靱で男を死から遠ざけることを願ったために死なない器となって男の新たな魂を縛り付けた。
男はなぜ眠らせたままでいさせてくれなかったのかと神を詰まった。
神は例えどれほど恨まれたとしても愛する友がこの世にいないことは耐えられないと泣いた。
二人はもとの二人のようにはなれなかった。
死ねない身体となった男は自分を真に愛するのなら死を与えてくれと神に願った。
男の願いを聞き届けた神は男に運命を見る目とそれを手繰りよせる手を与えた。
神自ら命を与えた身体は簡単には死の国へと旅立てない。
だからその代わりとなる誰かを見つけられるようにと必要なものを与えると男の幸せを願って手を放した。
毒の刃で三度切りつけられたためか男は人々の願いを三度叶える力を得て様々な人の手を渡り歩いた。
だがなかなかこれはというものは現れない。
そうして幾星霜を彷徨い友の気配も遠くなったある日一人の少年と出会った。
少年は死に瀕していた。
いままさに生命の伊吹を止め死の国へと旅立つ間際の少年へと男は声をかけた。
永遠の命がほしくはないか、と。
少年は答えた。
死にたくない、永遠の命がほしいと。
男と少年の運命は混じり合いそしてまた分かたれた。
そうして男の願いは果たされた。
男の魂は果てのない旅路を歩くことはなくなった。
だから、これはただそれだけの話だ。
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