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魔人、からかう
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その姿に二度見どころか三度見した。
風呂上がりでまだ水気の残る腰まで伸ばした黒髪をタオルでわしわしと拭きながらリビングに入ってきたそいつはいつもとはまるきり違った姿をしていた。
ほっそりとしていながらも柔らかな曲線を描く伸びやかな肢体は健康的な褐色の肌と薄づきの肉に覆われている。
手の平で覆えてしまえるほどの慎ましやかな胸の膨らみの中心には寒さでつんと上向く頂があり、それを下に辿れば形のいいへそがきゅっとくびれた腰の中央で鎮座ましている。
男物の下着の合間から髪と同色の黒の下生えがうっすらと覗き見えて、そこまでまじまじと見てしまってから慌てて顔を背けて視界からその姿を追いやった。
「風呂上がりには~アイス~ミルク味のアイスは格別だねぇ~。」
そいつは調子っぱずれの自作の歌を歌いながら風呂場から台所に直行し最近気に入りの箱入りアイスの内の一本を取り出すと男の定位置のクッションソファに踏ん反り返るようにして腰掛けた。
「は?」
そこまで来てやっと出たのは困惑の籠もった一言だった。
怒りと照れとその他諸々の形にならない感情が込められたそれに懐かしい女性の姿を象る今は女の形をした男は柳眉をあげこちらを見やりにやりと笑った。
「懐かしいでしょ。
久しぶりに話題にあがったから、たまにはこんな姿もいいかと思ったのだけど、どうよ。」
自信満々に胸を張りそう宣う奴は自分がどんな格好をしているのか自覚がないのか。
豊かな黒糸の合間からちろちろと魅惑的な胸の頂が覗き見えて耳まで真っ赤に染まるのが自分でもわかる。
「あれあれ~何を考えているのかなぁ?」
もしかして、君、童貞かぁ?と揶揄する声に反論したいが声が出ない。
なんたってそれは初恋の形をしている。
初体験はとっくの昔に済ませているが、はじめて欲情を放ったそのときに脳裏に浮かんだものは確かにこんな形をしていた。
「うるさい。
初体験はとっくの昔に済ませてるからその言い草は訂正してもらうぞ。」
「あらそうなの。その反応じゃあてっきりまだなものかと思ったのに。」
残念だわぁと溢す相手の姿を見ないようにまたそれとなく視線を逸らす。
俺のそんな様子をくつくつと笑ったそいつは何かを思いついたのかぱんと両手を合わすと甘い声で呼ばわった。
「おいで、あっくん……。」
悩ましげに肢体をくゆらせ、しどけなく足を開く。
待て、それはちょっとまずい、下着の隙間から見えてる!
恥毛に隠された柔肉がわずかに口を開けているのが見てとれてごくりと息を飲む。
招かれるまま一歩二歩と足が進み婀娜っぽく笑う女の側まで辿り着くとその柔らかな肩に手をついた。
流し見るようにこちらを伺う赤褐色の瞳に誘われるまま口を寄せようとして屈んだところで濡れたタオルを鷲掴み振り上げた。
「いたー!!!!!
ちょ、いた、痛い! 本気で痛い!
ごめんって僕が悪かったからやめて!!」
振り上げて、振り下ろす。
濡れたタオルを勢いよく奴に叩きつければたまらなかったのか痛い痛いと飛び跳ねて逃げるので追いかける。
「つまらん! 真似を! するな!!」
「悪かった! 僕が悪かった! だからやめてー!」
逃げ回る女の姿を保ったままの男を追い回しタオルを叩き落とし追い詰める。
金輪際こんな真似はしないからと真っ赤になった肌をさすり謝り倒す男へと大馬鹿野郎と罵倒を落とす。
そうして男の純情を弄ぶ悪魔のような男へため息を吐いた。
風呂上がりでまだ水気の残る腰まで伸ばした黒髪をタオルでわしわしと拭きながらリビングに入ってきたそいつはいつもとはまるきり違った姿をしていた。
ほっそりとしていながらも柔らかな曲線を描く伸びやかな肢体は健康的な褐色の肌と薄づきの肉に覆われている。
手の平で覆えてしまえるほどの慎ましやかな胸の膨らみの中心には寒さでつんと上向く頂があり、それを下に辿れば形のいいへそがきゅっとくびれた腰の中央で鎮座ましている。
男物の下着の合間から髪と同色の黒の下生えがうっすらと覗き見えて、そこまでまじまじと見てしまってから慌てて顔を背けて視界からその姿を追いやった。
「風呂上がりには~アイス~ミルク味のアイスは格別だねぇ~。」
そいつは調子っぱずれの自作の歌を歌いながら風呂場から台所に直行し最近気に入りの箱入りアイスの内の一本を取り出すと男の定位置のクッションソファに踏ん反り返るようにして腰掛けた。
「は?」
そこまで来てやっと出たのは困惑の籠もった一言だった。
怒りと照れとその他諸々の形にならない感情が込められたそれに懐かしい女性の姿を象る今は女の形をした男は柳眉をあげこちらを見やりにやりと笑った。
「懐かしいでしょ。
久しぶりに話題にあがったから、たまにはこんな姿もいいかと思ったのだけど、どうよ。」
自信満々に胸を張りそう宣う奴は自分がどんな格好をしているのか自覚がないのか。
豊かな黒糸の合間からちろちろと魅惑的な胸の頂が覗き見えて耳まで真っ赤に染まるのが自分でもわかる。
「あれあれ~何を考えているのかなぁ?」
もしかして、君、童貞かぁ?と揶揄する声に反論したいが声が出ない。
なんたってそれは初恋の形をしている。
初体験はとっくの昔に済ませているが、はじめて欲情を放ったそのときに脳裏に浮かんだものは確かにこんな形をしていた。
「うるさい。
初体験はとっくの昔に済ませてるからその言い草は訂正してもらうぞ。」
「あらそうなの。その反応じゃあてっきりまだなものかと思ったのに。」
残念だわぁと溢す相手の姿を見ないようにまたそれとなく視線を逸らす。
俺のそんな様子をくつくつと笑ったそいつは何かを思いついたのかぱんと両手を合わすと甘い声で呼ばわった。
「おいで、あっくん……。」
悩ましげに肢体をくゆらせ、しどけなく足を開く。
待て、それはちょっとまずい、下着の隙間から見えてる!
恥毛に隠された柔肉がわずかに口を開けているのが見てとれてごくりと息を飲む。
招かれるまま一歩二歩と足が進み婀娜っぽく笑う女の側まで辿り着くとその柔らかな肩に手をついた。
流し見るようにこちらを伺う赤褐色の瞳に誘われるまま口を寄せようとして屈んだところで濡れたタオルを鷲掴み振り上げた。
「いたー!!!!!
ちょ、いた、痛い! 本気で痛い!
ごめんって僕が悪かったからやめて!!」
振り上げて、振り下ろす。
濡れたタオルを勢いよく奴に叩きつければたまらなかったのか痛い痛いと飛び跳ねて逃げるので追いかける。
「つまらん! 真似を! するな!!」
「悪かった! 僕が悪かった! だからやめてー!」
逃げ回る女の姿を保ったままの男を追い回しタオルを叩き落とし追い詰める。
金輪際こんな真似はしないからと真っ赤になった肌をさすり謝り倒す男へと大馬鹿野郎と罵倒を落とす。
そうして男の純情を弄ぶ悪魔のような男へため息を吐いた。
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