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第一章

第5話 嫉妬**

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 アレクシスが部屋を出てすぐ、シリルは素早く扉を閉め、がちゃりと施錠をした。

 ここからだとちょうど影になっていて、シリルの表情はうかがえない。
 ただ、なんとなく怒っているような雰囲気だったので、とりあえず俺は立ち上がり、姿勢を正した。
  
 俺の方までつかつかとやってきたシリルは、一言も発することのないまま、俺を荒々しくソファへ押し倒した。

「殿下、一体……んむっ」

 話し掛ける間もなく、シリルの唇が俺の唇にぐい、と押し付けられる。

「んんっ……ぁ、ふぁ……ぁむっ……」
 
 激しく侵入してきたシリルの舌に気を取られているうちに、俺の胸元のリボンがするりとほどかれた。

 早々に腰が抜けてしまって、弱々しく抵抗するしかない俺の両手をシリルは片手でまとめて押さえる。
 そのまま、先程抜き取ったリボンで俺の両手首を縛りあげた。

「んんーっ! んむ……っ、ぁ……」

 慌てた俺は足先をバタつかせて抗議するが、シリルの手は止まらなかった。

 手早く俺の服をはだけさせると、外気にさらされた胸の頂を強く舐めあげる。

「ぁっ……やぁ…………だめぇ……」

 恥ずかしいのに、甘い声が止まらない。
 欲に染まった瞳で見つめられ、背中がぞくぞくする。
 シリルの手が触れる場所全てに、熱が灯るのを感じた。

「こんなところで、他の男と抱き合うなんて……」

 シリルが忌々しげに呟いた。
 俺の首筋にキスをして、耳朶を甘噛みする。

「ひぁっ………ぅぅ……」 

「ロジェは、僕じゃ満足できない?」

 大きな手が、俺の体をゆっくりとまさぐった。 

「さっきの伯爵の息子にも、こうやって好きに触らせたの?やらしい声を聞かせてやった?」 
  
「ち、違うっ、俺は……あんなことしたの、殿下しか」

 アレクシスには、友人として(あと妹婿の有力候補として)親しみを覚えているだけだ。それ以上の感情はない。
 さっき抱きしめられた時も、日頃鍛えてるやつは力が強いな、としか思わなかった。

 シリルに触られるだけで、いや、見つめられるだけでも俺の胸がこんなにドキドキしているのは――  
 
 (――ああ、そうだ。俺、殿下の事が好きなんだ……)

 この2週間、逃げ回りつづけていた答えだった。

 しかし、俺の脳裏には、ダンスホールで寄り添っていたシリルとエレーヌの姿がちらついていた。
 先ほどのアレクシスの言葉が、まぎれもない事実として重くのし掛かる。

「ロジェ、ロジェ……僕だけを見てくれ」

 切なげな声が、耳元で響く。

 (どの口が)

 俺が何にも知らないとでも思っているのだろうか。
 結局、愛の囁きに似たこの言葉も、俺を都合よく転がすための方便なのだ。

「殿下、」
  
 ――今この場で、エレーヌの件を持ち出してやろうか。
 俺の中の悪魔が、囁いた。
 仲良く寄り添う現場を見たと、陛下の後押しで婚約の話が進んでいる事を知っていると、言って困らせてやろうか。

 シリルは、慌てるのかな。
 それから、きっと青ざめるだろう。
 あとは……怒るかな。
 
 ここから去って、しまうだろうか。
 
「殿下……もっとキス、して」

 俺の首筋に顔を埋めていたシリルが、がばりと顔を上げた。その深い群青の瞳が、大きく見開かれている。

「お願い、殿下……キスして」
 
「ロジェ……! ああ、喜んで」

 シリルは俺の頬を両手で包むと、そっと唇を触れ合わせた。
 そして徐々に、互いに貪り合うように、舌を絡み合わせる。

「んんっ……はぁ……殿下ぁっ……ん…………」
 
 俺は、いくじなしだ。
  
 例え向こうに愛が無かったとしても、今この温もりが離れていくのは、どうしても嫌だった。

――――

 ぐちゅぐちゅと、淫靡な水音が室内に響く。
 
「殿下っ、そこ、きたない……っ」
「とんでもない。綺麗だよ、ロジェ」

 唾液で濡らしたシリルの長い指が俺のナカを犯し、入り口を広げるようにぐにぐにと動いている。

「ああ、こんなに締め付けて……えっちだね」
「やだ、言わないでぇ……」
 
 未だ両手を縛られたままなのがもどかしかった。
 恥ずかしすぎる。顔を隠したくてたまらない。

「そろそろ、いいかな……僕も限界だ」

 シリルは色のこもった声でそう言うと、ズボンの前を寛げた。

「う、わ……!」
  
 目の前に、かなり立派なモノがそそりたっているのを見て、俺はごくりと唾を飲んだ。

 ぴんと張った亀頭の先から、先走りが滲んでいる。
 陰茎には青く血管が浮いていて、俺の目にはそれすらとてつもなく厭らしいものにみえた。

「そんなにまじまじと見られたら恥ずかしいな。……気に入った?」

 思わずこくこくと頷いた俺に、シリルはくすりと笑った。  

「ああ、可愛い。ロジェ、力を抜いて……」

 猛った剛直が、俺の後孔に強く押し付けられる。
 先走りを塗り込むように、ぬちゅぬちゅと擦り付けられ、俺は思わず腰を揺らした。

「待ちきれない? やらしい動きしてる」
「そんなこと、……ない」
「うそだね」

 ちゅぽん、とシリルの先端が埋められた。

「ひぁっ……! 入っちゃ……っ」
 
「まだだよ」

 ふとくてかたいものが、ズッ……と、俺のナカに埋められていく。

「ぁ…………あぁ……おっきぃ……」

 俺は圧迫感から逃れるように、腰を反らした。

「逃げちゃダメだよ」
 
 シリルは優しくそう言うと、俺の腰を掴み、軽く抽挿を始めた。

 俺のナカの肉壁を、シリルの太い楔がちゅぽ、ちゅぽ、と何度も念入りに擦る。

「ん……ぁ…………やぁ……あんっ……」
 
 最初は違和感しかなかったのに、いまやじんわりとした快感が、俺の腰を包んでいた。
 
 シリルがゆっくり動いているのが、もどかしい。
 奥が疼いて仕方がない。

「ぁん……っ殿下…………!」
 
 もっと、欲しい。
 その言葉を口にするのは、僅かに残った理性が許さなかった。
 代わりに、唯一自由な足をシリルの腰にまわすと、ねだるように自分の方へ引き付けた。

「っ、ロジェ」
 
 シリルが、動きを止めた。
 淫らな視線が絡み合う。
 俺は、急かすように腰を揺らした。

「本当にやらしい子だ、君は……っ」
 
 シリルは獲物を捕えた捕食者の目で俺を見据えると、猛った楔を俺の最奥へとねじ込んだ。

「あぁぁっ……!」

 刹那、身体中を快感が駆け巡った。
 びゅる、と俺の屹立から白いものが滴る。

「全部入れただけでイッちゃったの? ロジェ、君本当にえっちするの初めて?」

 シリルは、ぐりぐりと俺の奥をなぶるように腰を押し付けた。
 イッた余韻に負けないよう、俺は必死に頷く。

「本当かな。君のここ、イッたばかりなのにこんなに、いやらしく誘って、」

 言いながら、シリルは俺に激しく腰を打ち付けはじめた。

「ほんとに、はじめて、はじめてだからぁっ……でんかぁっ、激し、もっと、ゆっく……ぁんっ……あっ、らめぇっ」
    
 張り出たカリが、俺の密壺をかき回す。
 俺の入り口は太い肉茎に限界まで広げられ、じゅぽじゅぽとはしたない音を立てていた。

「ロジェ、僕の、ロジェ」

 深く挿し込んだまま、シリルが俺に覆い被さる。
 慈しむようなキスに、俺は舌を出して応えた。

「殿下ぁっ……ん、ふぁ、……ぁ、おれ、また……イッちゃう……! んんっ……まってぇ……」

「やだ、待たない」 

 俺の頭を抱えていたシリルの熱い手のひらが、耳を撫で、首筋、鎖骨を通り……最後に俺の乳首を指先で弄った。 
  
 体の奥からまた強い快感が這い上がってきて、ビクン、と俺の腰が跳ねた。

「や、あぁぁぁっ……! ……んっ、……ぁ……」

 さっきよりも少ない量の精液が、密着した俺とシリルの肌の間に滲む。
 イッた衝撃で、俺の肉壁は咥えこんだシリル自身をきゅう、と締め付けた。

「うっ……僕も、もう」

 そう呻いたシリルは、起き上がって俺の腰を抱え直すと、より激しく奥を犯しはじめた。

「あぁぁっ、ゃ……はげし、っらめに、なっちゃう……っもう、むりぃ……っ、あんっ、……ぁんっ……」

「ロジェ、出すよ」

 シリルは余裕のない声で言った。

「殿下っ、でん、か……っ……きて、だして、おれの、なか」

 二度もイッた俺の脳みそはもう快楽で溶けてしまって、理性なんて塵のように飛んでいった。
 涎が垂れるのも構わずに、はしたない顔をシリルへ向け必死でおねだりする。

「ああ、ロジェ…!」

 シリルの目が、野獣のようにぎらぎらと光る。
 ひときわ強く腰を打ち付けると、肉棒がどくん、と大きく脈打った。
 シリルはそのまま倒れ込んできて、俺をぎゅっと抱き締める。

「ぁ……んっ、あついの、でてる……」
 
 ねじ込まれたままの塊茎が、どくどくと婬猥に脈打っている。
 じんわりと熱いものが俺のナカで広がる感覚に、なぜか胸がきゅっとときめいた。
 思わず微笑む俺を見て、シリルは頭を抑えた。

「はぁ、素でなんて、信じられないな」

 シリルはちゅ、と軽くキスを落とすと、汗で額に張り付いた俺の髪を優しくかきあげた。
 
「嫌……?」

 急に不安になった俺がびくびくしながら聞くと、シリルは首を振った。

「まさか。君をもっと、ひとり占めしたくなったよ」

 言うやいなや、また俺に覆い被さって、深く口付けた。

 シリルの動きで、挿れたままのそこに隙間ができた。
 こぽ、と後孔から精液が溢れるのを感じて、俺は慌てた。

「あ、だめ、出ちゃうよぉ……!」

 シリルはまた大きく目を開くと、額に手をあて天を仰いだ。
  
「だから、そういうところだって……」



 
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