ポンコツαの初恋事情

京夜灯

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帳先輩のヒート

ポンコツαの初恋事情 46

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日向同様、帳も本能で感じ取ったのであろう。
「ひなたくん‥‥ぁっ、僕たち、番になれたね」
「‥‥‥っ、はいっ!」
「嬉しい、日向くんっ、だいすきっ」
気付けば互いに涙を流して泣いていた。
幸せすぎて、どうにかなってしまいそう。
口に出したのはどちらが先かはわからなかったが、二人共、同じ事を感じていた。
それから本格的なヒートに入った帳に誘発され、二人は最低限の食事や水分補給の時間をとりながら一週間、精根尽きるまで互いを激しく求め合った。

日向が自身の携帯電話を確認すると、会社からの電話が何件もかかって来ており、日向は慌てて上司である武元へと電話をかけた。
「もしもし、照井です。無断欠勤をしてしまい、大変申し訳ございません。あの、俺達やっと結ばれたんです。番になったんです!だから、結婚まで秒読みで‥‥‥!」
「ちょっと、日向くんっ!」
日向の支離滅裂な会話の内容を即座に整理し、理解した武元は
「あ~、そういう事か。望月のヒートが完全に収まるまでは休暇申請を通しておくから、次に出社してくる時までにお前ら医者への報告を済ませて、診断書を持ってこいよ」
武元は理解を示し、日向に対して
「おめでとさん。望月の事、大切にしろよ」
と、明るい声で祝福の言葉を口にした。
そうして通話を終えると、帳が身を寄せ、日向に問いかける。
「名残惜しいけど、そろそろ帰る?」
だが、その言葉とは裏腹に、帳の声色からは、もっと一緒に居たいという思いが伝わってきて、日向は眼を細め、優しく微笑みかけると、帳の欲する言葉であり、また、自身の想いでもある言葉を口にした。
「帳先輩、あと二日程泊まっていきませんか?俺、帳先輩から離れたくないです」
「日向くんっ」
日向は、自身の言葉を受け、嬉しそうに声を弾ませた帳を抱きしめると、顔中に触れるだけの口付けを落とした。
「それに俺、帳先輩と泡風呂に入ったり、枕投げをしたりして、二人でホテルを満喫したいし、帳先輩の身体に負担かけてしまったぶん、全身マッサージを施したいし、なんかもう、貴方に色々してあげたいんです!」
日向の言葉に帳は頬を染め、目を見開くと、両手で口許を覆った。
「日向くん、たまに格好良い事言うよね」
「たまにって‥‥じゃあ、格好良いついでに、ここのホテル代、全額出させて下さいね」
「でも‥‥‥」
帳が申し訳なさそうに口を開くと、日向は彼に向かってヒマワリの花の様に明るく笑いかけた。
「たまには格好つけさせて下さいよ」
「‥‥‥まったく、君には敵わないなぁ」
帳は日向の頬に口付けると、日向に向き合い、幸せそうに微笑みかけた。
「あ~っ、俺の運命の人は、世界一綺麗で、可愛くて、愛しすぎて、もう堪らないっ!」
日向は部屋中に響き渡る声でそう叫ぶと、再び帳の身体を抱き寄せた。
そして、彼を優しく包みこむと、二人で歩む未来を想い描き、今までにない位に幸せそうに微笑んだのであった。
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