44 / 49
帳先輩のヒート
ポンコツαの初恋事情 44
しおりを挟む
ひとしきり涙を流し、泣き腫らした顔を付き合わせると、日向はゆっくりと立ち上がり、帳の頭を優しく撫でた。
「今は薬で少し体調が良くなっていますし、俺も帳先輩も、明日に備えて寝ましょう」
「明日にそなえるって、どういう?」
「電話で医師から聞きました。明日から帳先輩の発情期が本格的に始まるそうなので」
「……え?」
「それに、今まで薬で抑えつけていた分、身体に負担をかけていた訳ですし、今日はゆっくり休んで下さい」
本当は今すぐにも帳の身体を押し倒して、全てを暴いて項を噛んで、番になりたい。
だが、日向は、はやる気持ちを理性で捩じ伏せると、帳に対し、医師に説明された事をそのまま伝える。
「薬で一時的に抑えこんでも、発情期自体はもう来てしまったので、薬が切れたら症状を抑えなくなるそうです」
「……ちょっと、待って。それはその、僕は明日、日向くんと、その」
「はい。俺と番になって、発情期が終わるまで何度もセックスをします。その‥‥出来るだけ、優しくしますから‥‥‥」
日向は自ら発した言顔に、顔が火照るのを感じた。
明日から、自分は帳と、彼の発情期を共に過ごす。
胸の奥のなにかが甘く疼くような熱さを感じた日向が、帳の様子を伺う様に彼の顔を覗き込むと、彼もまた、日向に負けない程に、顔を真っ赤に染めて熱い吐息を漏らした。
彼は帳のうっすら開いた唇に舌を這わせ、自らの唇を重ねたい衝動に駆られたが、これ以上帳の身体に負担をかけまいと、すんでの所で踏みとどまった。
「……あー、俺そろそろ寝ますね。俺はソファで寝るので、帳先輩はそのままベッドを使って下さい」
「えっ、なんでソファで寝るの?側にいてよ」
(ぐはっ‥‥‥!!)
一緒に抱き合って眠りたいと訴えかけてくる帳の姿はあまりに可愛らしく、甘やかしたくて仕方がない。
だが、日向は今一緒のベッドで横になると、無理矢理手を出してしまいそうで怖かった。
「そうしたいのは山々なんですが、俺の理性が持ちそうにないので、それはまた明日という事で」
「……日向くん………」
「俺は万が一に備えてアルファ用の避妊薬を飲みましたが、帳先輩も同様に飲んで下さい」
「うん。わかった。日向くん、僕の鞄を取って貰っても良いかな?」
「はい!」
そうして帳にオメガ用の避妊薬を飲ませると
「おやすみなさい、帳先輩」
と、声をかけ、落ち着かせる様に再び彼の頭を撫でた。
「おやすみ、ひなたくん。」
帳が口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと目蓋を閉じたのを確認すると、日向はベッドから一番遠くのソファへと向かった。
日向はソファに腰かけた途端に身体中の力が抜けてソファへと倒れこむ。
(俺、今から眠って、目が覚めて明日になったら、帳先輩といっぱいエッチな事をして、番になるんだ‥‥‥、いくらなんでも急展開すぎて、どうしよう‥‥‥ドキドキが止まらない)
日向はソファに転がりながら、胸の中で溢れる感情を抑えようと必死であった。
帳が同じ部屋のベッドで眠っている。
それを意識する度に、臓が早鐘のように打ち鳴らされる。
日向は手のひらをぎゅっと握りしめ、興奮と葛藤を飲み込んだ。
(あー、まるで夢の様だ。でも、夢じゃないんだ!)
涙で頬を濡らしながら
「好きだよ」
と微笑みかけてくれた帳の顔を思い出す度に胸の鼓動がいっそう高鳴る。
話し合いの末、番になることを嬉しそうな顔をして、快諾してくれた、あの瞬間の喜びを、自分は一生涯忘れる事はないだろうと、日向は強く感じた。
(帳先輩も、俺と初めて出会った瞬間にときめきを感じてくれてたんだ。嬉しいな。本人は自覚してなかったみたいだけどら最終的には俺の事を好きになってくれた。きっかけは本能で惹かれ合ったのだとしても、そこから互いに恋をして、なんと二人ともそれが初恋同士で、セックスもお互いが初めての相手で、大恋愛の末に明日、ようやく番として結ばれるんだ!)
日向は歓喜で今にも叫びだしそうになるのを必死で堪え、両手で口元を抑えた。
(まずい、考えてたらますます興奮してきた。帳先輩の匂いをもっと嗅ぎたい。汗に濡れた、帳先輩の服に顔を埋めて匂いを堪能したい。変態と罵られても構わない)
明日はいつも以上に、優しく抱きしめて、たっぷり甘やかして、ぐずぐずに蕩けさせて、自らの愛で帳の全てを満たしたいと強く思った。
日向はクッションに顔を埋めて、決意を確かにしたが、なかなか寝付けず、悶々とする。
「あ~っ、緊張する‥‥‥」
日向は再びぼふっ、とクッションに顔を埋めた。
とにかく今は、眠る事だけに集中しよう。
そう考え、目を閉じた日向であったが、身体を重ねる度に見てきた帳の姿が脳裏に浮かび、挙げ句、日向の声を呼ぶ幻聴まで聞こえてきて、クッションを強く抱きしめ、更に悶々としてしまい、とてもじゃないが眠れそうになかった。
携帯で時間を確認すると、夜中の2時を少し過ぎた所であった。
(帳先輩、ちゃんと眠れてるかな?)
帳の様子を確かめるべく、ソファから起き上がり、ベッドへと向かおうと一歩踏み出した途端、体中を突き抜けるように熱が吹き上がる。
普段とは比べ物にならない程に濃厚な帳の匂いが部屋を満たしていく。
全力で日向を誘惑するようなそれに、自然と息が荒くなる。
「ひなたくっ‥‥ぁっ‥‥はぁんっ‥‥んくっ、あつい‥よぅ‥‥ひなたくっ‥‥はぁっ‥‥ひなたくんっ」
幻聴などではなく、確かに聞こえる自身を呼ぶ帳の声と、強烈すぎる彼のフェロモンに吸い寄せられる様に、日向は帳のベッドへと向かった。
「今は薬で少し体調が良くなっていますし、俺も帳先輩も、明日に備えて寝ましょう」
「明日にそなえるって、どういう?」
「電話で医師から聞きました。明日から帳先輩の発情期が本格的に始まるそうなので」
「……え?」
「それに、今まで薬で抑えつけていた分、身体に負担をかけていた訳ですし、今日はゆっくり休んで下さい」
本当は今すぐにも帳の身体を押し倒して、全てを暴いて項を噛んで、番になりたい。
だが、日向は、はやる気持ちを理性で捩じ伏せると、帳に対し、医師に説明された事をそのまま伝える。
「薬で一時的に抑えこんでも、発情期自体はもう来てしまったので、薬が切れたら症状を抑えなくなるそうです」
「……ちょっと、待って。それはその、僕は明日、日向くんと、その」
「はい。俺と番になって、発情期が終わるまで何度もセックスをします。その‥‥出来るだけ、優しくしますから‥‥‥」
日向は自ら発した言顔に、顔が火照るのを感じた。
明日から、自分は帳と、彼の発情期を共に過ごす。
胸の奥のなにかが甘く疼くような熱さを感じた日向が、帳の様子を伺う様に彼の顔を覗き込むと、彼もまた、日向に負けない程に、顔を真っ赤に染めて熱い吐息を漏らした。
彼は帳のうっすら開いた唇に舌を這わせ、自らの唇を重ねたい衝動に駆られたが、これ以上帳の身体に負担をかけまいと、すんでの所で踏みとどまった。
「……あー、俺そろそろ寝ますね。俺はソファで寝るので、帳先輩はそのままベッドを使って下さい」
「えっ、なんでソファで寝るの?側にいてよ」
(ぐはっ‥‥‥!!)
一緒に抱き合って眠りたいと訴えかけてくる帳の姿はあまりに可愛らしく、甘やかしたくて仕方がない。
だが、日向は今一緒のベッドで横になると、無理矢理手を出してしまいそうで怖かった。
「そうしたいのは山々なんですが、俺の理性が持ちそうにないので、それはまた明日という事で」
「……日向くん………」
「俺は万が一に備えてアルファ用の避妊薬を飲みましたが、帳先輩も同様に飲んで下さい」
「うん。わかった。日向くん、僕の鞄を取って貰っても良いかな?」
「はい!」
そうして帳にオメガ用の避妊薬を飲ませると
「おやすみなさい、帳先輩」
と、声をかけ、落ち着かせる様に再び彼の頭を撫でた。
「おやすみ、ひなたくん。」
帳が口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと目蓋を閉じたのを確認すると、日向はベッドから一番遠くのソファへと向かった。
日向はソファに腰かけた途端に身体中の力が抜けてソファへと倒れこむ。
(俺、今から眠って、目が覚めて明日になったら、帳先輩といっぱいエッチな事をして、番になるんだ‥‥‥、いくらなんでも急展開すぎて、どうしよう‥‥‥ドキドキが止まらない)
日向はソファに転がりながら、胸の中で溢れる感情を抑えようと必死であった。
帳が同じ部屋のベッドで眠っている。
それを意識する度に、臓が早鐘のように打ち鳴らされる。
日向は手のひらをぎゅっと握りしめ、興奮と葛藤を飲み込んだ。
(あー、まるで夢の様だ。でも、夢じゃないんだ!)
涙で頬を濡らしながら
「好きだよ」
と微笑みかけてくれた帳の顔を思い出す度に胸の鼓動がいっそう高鳴る。
話し合いの末、番になることを嬉しそうな顔をして、快諾してくれた、あの瞬間の喜びを、自分は一生涯忘れる事はないだろうと、日向は強く感じた。
(帳先輩も、俺と初めて出会った瞬間にときめきを感じてくれてたんだ。嬉しいな。本人は自覚してなかったみたいだけどら最終的には俺の事を好きになってくれた。きっかけは本能で惹かれ合ったのだとしても、そこから互いに恋をして、なんと二人ともそれが初恋同士で、セックスもお互いが初めての相手で、大恋愛の末に明日、ようやく番として結ばれるんだ!)
日向は歓喜で今にも叫びだしそうになるのを必死で堪え、両手で口元を抑えた。
(まずい、考えてたらますます興奮してきた。帳先輩の匂いをもっと嗅ぎたい。汗に濡れた、帳先輩の服に顔を埋めて匂いを堪能したい。変態と罵られても構わない)
明日はいつも以上に、優しく抱きしめて、たっぷり甘やかして、ぐずぐずに蕩けさせて、自らの愛で帳の全てを満たしたいと強く思った。
日向はクッションに顔を埋めて、決意を確かにしたが、なかなか寝付けず、悶々とする。
「あ~っ、緊張する‥‥‥」
日向は再びぼふっ、とクッションに顔を埋めた。
とにかく今は、眠る事だけに集中しよう。
そう考え、目を閉じた日向であったが、身体を重ねる度に見てきた帳の姿が脳裏に浮かび、挙げ句、日向の声を呼ぶ幻聴まで聞こえてきて、クッションを強く抱きしめ、更に悶々としてしまい、とてもじゃないが眠れそうになかった。
携帯で時間を確認すると、夜中の2時を少し過ぎた所であった。
(帳先輩、ちゃんと眠れてるかな?)
帳の様子を確かめるべく、ソファから起き上がり、ベッドへと向かおうと一歩踏み出した途端、体中を突き抜けるように熱が吹き上がる。
普段とは比べ物にならない程に濃厚な帳の匂いが部屋を満たしていく。
全力で日向を誘惑するようなそれに、自然と息が荒くなる。
「ひなたくっ‥‥ぁっ‥‥はぁんっ‥‥んくっ、あつい‥よぅ‥‥ひなたくっ‥‥はぁっ‥‥ひなたくんっ」
幻聴などではなく、確かに聞こえる自身を呼ぶ帳の声と、強烈すぎる彼のフェロモンに吸い寄せられる様に、日向は帳のベッドへと向かった。
9
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる