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帳先輩のヒート
ポンコツαの初恋事情 41
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それから帳を寝かしつけ、彼の側からそっと離れると、日向は携帯を取り出し、自身の通院先の病院の連絡先へと震える指で電話をかけた。
「もしもし、お世話になっております、照井日向です。帳先輩が、俺の恋人が、急にヒート状態に‥‥!」
焦りを隠せない日向の声を聞いて、電話を受けた看護師は、早急に夜勤担当の医師に電話を繋いだ。
「照井さん、落ち着いて答えてください。貴方は望月さんとはどういったご関係ですか?」
「望月さんは、俺の大切な恋人です。」
今お二人のカルテを確認させて頂いているのですが、照井さんの第二の性はα性、望月さんの、第二の性は、Ω性でお間違いないですか?」
「はい、間違いありません」
「では、お二人は今、どちらに居られますか?」
「家まで持そうになかったので、ラブホテルに居ます。ヒートを起こしてすぐに、望月さんには抑制剤を飲ませたのですが、今もずっと苦しそうにしていて‥‥」
日向の言葉を受けた医師は、彼に帳の飲んだ薬品名と飲ませた量を尋ねた
日向は急いで帳の鞄からシートを取り出し、薬品名と、目の前で帳が服用した量を答える。
すると、医師は驚きに満ちた声を出した。
「そんな強力な薬を、一回に五錠も服用されたのですか?」
「はい。望月さんの指示通りに飲ませたのですが‥‥‥」
「‥‥‥そうですか。照井さんは毎日きちんと抑制剤を服用されておられますか?」
「はい。毎日欠かさず服用しています。」
「望月さんのほうからは、どの様に伺っておりますか?」
「望月さんのほうからも、毎日抑制剤を服用していると伺っております。ですが‥‥‥」
日向は一瞬言い淀んだが、自分犯した過ちが原因である可能性もある為、医師に対して正直に打ち明けた。
「俺、今日、理性を失って、望月さんの首筋に強く噛みついてしまって‥‥そしたら急に、望月さんが苦しみだして‥‥‥」
「噛みつかれたのは、項ではなく、首筋でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いありません。だから、俺のっ、俺のせいかも知れないんです‥‥」
日向の悲痛な声を聞き、医師は彼を落ち着かせる様に、穏やかな声で説明をはじめる。
「照井さん、Ωのヒートの周期は、二、三ヶ月に一度の頻度で訪れます。照井さんのラット状態に当てられて、望月さんのヒート周期が早まった可能性はありますが、あまりご自分を責めないで下さい」
(えっ‥‥ヒートの周期が、二、三ヶ月に一度‥‥?)
日向は医師の言葉を頭の中で何度も反芻 するが、全く理解が追いつかない。
「嘘‥‥‥だって、帳先輩と付き合い始めて五ヶ月も経つのに、ヒートなんて一度も‥‥‥」
困惑する日向に対し、医師は一つの仮説を立てた。
「望月さんは、おそらく強力な薬でヒートを無理やり抑え込んでいたのでしょう。それなら、処方箋の量にも納得がいきます」
「‥‥なんで、どうしてそんな事を‥‥‥」
その説明を聞いて、日向の心には疑問と悲しみが渦巻いた。
なぜ、自分に頼ってくれなかったのか。
帳が一人で苦しみ、その辛さを日向に打ち明けることなく、薬で無理やり抑え込んでいたことに、彼は大きなショックを受けた。
「望月さんのお考えは、望月さん本人にしか解りません。ですが、薬によってヒートを押さえつけ続けるのは、望月さんの身体にかなりの負担がかかります。」
「はい‥‥‥」
「ですので、お二人でよく話し合って下さい」
「勿論です」
日向が答えると、医師は真剣な声で
「先程ヒートが来たのであれば、一時的に薬で症状を和らげることが出来たとしても、1日経てば望月さんは今以上に激しい症状に見舞われるでしょう」
「そんなっ‥‥!俺はどうすれば‥‥‥」
帳の苦しむ姿をこれ以上見ていられないと、電話ごしに医師に訴えかけると、彼はは日向を落ち着かせる様に
「お二方が番関係になられれば、望月さんの状態は落ち着きます。ただし、無理矢理番うのではなく、Ωである望月さんの意思を尊重してあげて下さいね。そして‥‥‥」
「そして?」
「今は問題がなくても、いつ再びラット状態に陥ってもおかしくない状況です。照井さんはすぐにでもα用の抑制剤と、避妊薬を服用で下さい。必ずですよ。」
医師に念をおされ、日向は真剣な声で答えた。
「わかりました。必ず服用します」
「そして、念のために望月さんにもΩ用の避妊薬を服用させてあげて下さいね。最悪の事態に備えて持ち歩いているはずですから」
「はい、わかりました」
「また何かございましたらすぐにお電話下さいね」
その言葉に対し、日向は感謝の気持ちを込めて
「はい、有り難うございました」
と、お礼の言葉を口にすると、通話を終えた。
そして、先程の医師の指示通りに自身の鞄から抑制剤と避妊薬を取り出すと、水で飲みこみ、再び帳の眠るベッドへと戻っていった。
「もしもし、お世話になっております、照井日向です。帳先輩が、俺の恋人が、急にヒート状態に‥‥!」
焦りを隠せない日向の声を聞いて、電話を受けた看護師は、早急に夜勤担当の医師に電話を繋いだ。
「照井さん、落ち着いて答えてください。貴方は望月さんとはどういったご関係ですか?」
「望月さんは、俺の大切な恋人です。」
今お二人のカルテを確認させて頂いているのですが、照井さんの第二の性はα性、望月さんの、第二の性は、Ω性でお間違いないですか?」
「はい、間違いありません」
「では、お二人は今、どちらに居られますか?」
「家まで持そうになかったので、ラブホテルに居ます。ヒートを起こしてすぐに、望月さんには抑制剤を飲ませたのですが、今もずっと苦しそうにしていて‥‥」
日向の言葉を受けた医師は、彼に帳の飲んだ薬品名と飲ませた量を尋ねた
日向は急いで帳の鞄からシートを取り出し、薬品名と、目の前で帳が服用した量を答える。
すると、医師は驚きに満ちた声を出した。
「そんな強力な薬を、一回に五錠も服用されたのですか?」
「はい。望月さんの指示通りに飲ませたのですが‥‥‥」
「‥‥‥そうですか。照井さんは毎日きちんと抑制剤を服用されておられますか?」
「はい。毎日欠かさず服用しています。」
「望月さんのほうからは、どの様に伺っておりますか?」
「望月さんのほうからも、毎日抑制剤を服用していると伺っております。ですが‥‥‥」
日向は一瞬言い淀んだが、自分犯した過ちが原因である可能性もある為、医師に対して正直に打ち明けた。
「俺、今日、理性を失って、望月さんの首筋に強く噛みついてしまって‥‥そしたら急に、望月さんが苦しみだして‥‥‥」
「噛みつかれたのは、項ではなく、首筋でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いありません。だから、俺のっ、俺のせいかも知れないんです‥‥」
日向の悲痛な声を聞き、医師は彼を落ち着かせる様に、穏やかな声で説明をはじめる。
「照井さん、Ωのヒートの周期は、二、三ヶ月に一度の頻度で訪れます。照井さんのラット状態に当てられて、望月さんのヒート周期が早まった可能性はありますが、あまりご自分を責めないで下さい」
(えっ‥‥ヒートの周期が、二、三ヶ月に一度‥‥?)
日向は医師の言葉を頭の中で何度も反芻 するが、全く理解が追いつかない。
「嘘‥‥‥だって、帳先輩と付き合い始めて五ヶ月も経つのに、ヒートなんて一度も‥‥‥」
困惑する日向に対し、医師は一つの仮説を立てた。
「望月さんは、おそらく強力な薬でヒートを無理やり抑え込んでいたのでしょう。それなら、処方箋の量にも納得がいきます」
「‥‥なんで、どうしてそんな事を‥‥‥」
その説明を聞いて、日向の心には疑問と悲しみが渦巻いた。
なぜ、自分に頼ってくれなかったのか。
帳が一人で苦しみ、その辛さを日向に打ち明けることなく、薬で無理やり抑え込んでいたことに、彼は大きなショックを受けた。
「望月さんのお考えは、望月さん本人にしか解りません。ですが、薬によってヒートを押さえつけ続けるのは、望月さんの身体にかなりの負担がかかります。」
「はい‥‥‥」
「ですので、お二人でよく話し合って下さい」
「勿論です」
日向が答えると、医師は真剣な声で
「先程ヒートが来たのであれば、一時的に薬で症状を和らげることが出来たとしても、1日経てば望月さんは今以上に激しい症状に見舞われるでしょう」
「そんなっ‥‥!俺はどうすれば‥‥‥」
帳の苦しむ姿をこれ以上見ていられないと、電話ごしに医師に訴えかけると、彼はは日向を落ち着かせる様に
「お二方が番関係になられれば、望月さんの状態は落ち着きます。ただし、無理矢理番うのではなく、Ωである望月さんの意思を尊重してあげて下さいね。そして‥‥‥」
「そして?」
「今は問題がなくても、いつ再びラット状態に陥ってもおかしくない状況です。照井さんはすぐにでもα用の抑制剤と、避妊薬を服用で下さい。必ずですよ。」
医師に念をおされ、日向は真剣な声で答えた。
「わかりました。必ず服用します」
「そして、念のために望月さんにもΩ用の避妊薬を服用させてあげて下さいね。最悪の事態に備えて持ち歩いているはずですから」
「はい、わかりました」
「また何かございましたらすぐにお電話下さいね」
その言葉に対し、日向は感謝の気持ちを込めて
「はい、有り難うございました」
と、お礼の言葉を口にすると、通話を終えた。
そして、先程の医師の指示通りに自身の鞄から抑制剤と避妊薬を取り出すと、水で飲みこみ、再び帳の眠るベッドへと戻っていった。
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