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帳先輩のヒート
ポンコツαの初恋事情 40
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タクシーの運転手は不審そうに二人を見つめたが、日向の必死な表情に何も聞かず、車を走らせた。
「済みません、一番近くのホテルに急いで下さい」
日向が運転手を急かすと、事態の深刻さを悟った運転手は無言で頷き、スピードを上げ、夜の街を駆け抜けた。
帳の息遣いは依然として荒く、彼の顔は蒼白だった。
日向はその手を握りしめ、何とか意識を保つようにと願う。
「もうすぐ着きますから、あと少しの辛抱ですよ」
日向は運転手の気遣いに感謝し、バックミラーごしに頭を下げると、帳の手を強く握りしめた。
帳はうっすらと目を開けたが、意識は朦朧としており、言葉を発することができなかった。
タクシーがラブホテルの前に到着すると、日向は多めに払金をはらうと、すぐに帳を抱え直し、ホテルの中へと入っていった。
料金の確認をする事なく、空いている部屋のパネルのボタンを押すと、日向はフロントの従業員に必死に状況を説明をする
「彼はオメガで、ヒートが…抑制剤を飲ませたんですが、効いていなくて…」
日向の必死な形相と、彼の焦りように、状況を把握した従業員は、迅速に対応し、日向に部屋のキーを手渡すと、ホテルの設備を彼に一通り説明した。
「何かございましたらすぐに仰って下さい。連泊も出来る様に手配しておきますので、ご安心下さい」
従業員は、真剣な顔で告げ、日向に向かって頭を下げた。
エレベーターが上がる数分が何時間にも感じられる中、日向は帳を守る様に、彼を抱える腕に力をこめる。
ようやく部屋の前に辿り着くと、彼は部屋番号を確認し、ドアを開き、帳をベッドに横たわらせ優しく声をかけた。
「帳先輩、大丈夫ですか?」
だが、帳は力なく目を閉じたまま横たわっている。
日向は、濡れタオルで帳の身体の汗を拭きとろうとゆっくりと彼の上体を起こした
すると、日向を誘うかの様に帳のフェロモンが一層濃度を増し、日向のの欲をいっそう掻き立てた。
帳の瞑られていたはずの瞼はいつの間にか開かれ、ヒートに当てられ余裕のない日向の視線をじわりと受け止めている。
(キスしたい、熱く火照る唇を奪い、かき乱したい)
帳のフェロモンが、理性を激しく揺らす。
だが、理性を総動員して、日向は薄く開いた帳の唇にキスをするのを我慢した。
(噛みたい、噛みたい、目の前の項に齧りつきたい)
服の隙間から覗く鎖骨に噛み付きたくて堪らなくて、呼吸が乱れ、思考が霞む。
(帳先輩、帳先輩!帳先輩!!)
視界の端に映る、下着を押し上げる帳のペニスに触れたくて堪らない。
(これ以上、傷つけたくない。嫌われたくない。こんな形で結ばれるのを、望んでいる訳じゃない)
熱く火照る目の前の体を抱きしめて、体の中に潜り込みたい。
痛い位に勃ち上がった日向のペニスは解放を求めて震えている。
(苦しい、欲しい、楽になりたい)
だが、日向はそれを片手で押さえつけると、下着越しに痛い位に爪を立て、必死に本能に抗う。
帳を傷付ける位なら、こんなもの、潰れてしまえばいいとさえ、本気で思った。
必死にアルファ性の本能を捩じ伏せ、日向は震える手で、必死に帳に備え付けのバスローブを着せると、優しく身体を横たわらせると、彼の身体に布団を被せた。
ホテルの部屋は広く静かで、外の世界と隔絶されたような感覚があった。
窓から覗く夜景は美しかったが、今の日向にとっては何の価値もない。
ふと、日向は従業員の言葉を思い出し、立ち上がると、ホテルのミニバーへと向かい、冷蔵庫を開け、冷たい水を取り出し、それを手に戻ると、日向は急いで帳の枕元に座り直した。
「これ、少しでも飲めそうですか?」
日向は優しく声をかけながら、ペットボトルにストローをさし、帳の口元に近づけた。
帳はゆっくりと目を開け、ほんの少しだけ飲み物を口に含んだが、すぐにまた目を閉じる。
「‥‥ぁっ‥‥っ‥‥ひなたくっ‥ありが‥とう…」
かすれた声で呟いた帳の言葉に対し、日向は返事代わりに優しく彼の頬を撫でた。
「済みません、一番近くのホテルに急いで下さい」
日向が運転手を急かすと、事態の深刻さを悟った運転手は無言で頷き、スピードを上げ、夜の街を駆け抜けた。
帳の息遣いは依然として荒く、彼の顔は蒼白だった。
日向はその手を握りしめ、何とか意識を保つようにと願う。
「もうすぐ着きますから、あと少しの辛抱ですよ」
日向は運転手の気遣いに感謝し、バックミラーごしに頭を下げると、帳の手を強く握りしめた。
帳はうっすらと目を開けたが、意識は朦朧としており、言葉を発することができなかった。
タクシーがラブホテルの前に到着すると、日向は多めに払金をはらうと、すぐに帳を抱え直し、ホテルの中へと入っていった。
料金の確認をする事なく、空いている部屋のパネルのボタンを押すと、日向はフロントの従業員に必死に状況を説明をする
「彼はオメガで、ヒートが…抑制剤を飲ませたんですが、効いていなくて…」
日向の必死な形相と、彼の焦りように、状況を把握した従業員は、迅速に対応し、日向に部屋のキーを手渡すと、ホテルの設備を彼に一通り説明した。
「何かございましたらすぐに仰って下さい。連泊も出来る様に手配しておきますので、ご安心下さい」
従業員は、真剣な顔で告げ、日向に向かって頭を下げた。
エレベーターが上がる数分が何時間にも感じられる中、日向は帳を守る様に、彼を抱える腕に力をこめる。
ようやく部屋の前に辿り着くと、彼は部屋番号を確認し、ドアを開き、帳をベッドに横たわらせ優しく声をかけた。
「帳先輩、大丈夫ですか?」
だが、帳は力なく目を閉じたまま横たわっている。
日向は、濡れタオルで帳の身体の汗を拭きとろうとゆっくりと彼の上体を起こした
すると、日向を誘うかの様に帳のフェロモンが一層濃度を増し、日向のの欲をいっそう掻き立てた。
帳の瞑られていたはずの瞼はいつの間にか開かれ、ヒートに当てられ余裕のない日向の視線をじわりと受け止めている。
(キスしたい、熱く火照る唇を奪い、かき乱したい)
帳のフェロモンが、理性を激しく揺らす。
だが、理性を総動員して、日向は薄く開いた帳の唇にキスをするのを我慢した。
(噛みたい、噛みたい、目の前の項に齧りつきたい)
服の隙間から覗く鎖骨に噛み付きたくて堪らなくて、呼吸が乱れ、思考が霞む。
(帳先輩、帳先輩!帳先輩!!)
視界の端に映る、下着を押し上げる帳のペニスに触れたくて堪らない。
(これ以上、傷つけたくない。嫌われたくない。こんな形で結ばれるのを、望んでいる訳じゃない)
熱く火照る目の前の体を抱きしめて、体の中に潜り込みたい。
痛い位に勃ち上がった日向のペニスは解放を求めて震えている。
(苦しい、欲しい、楽になりたい)
だが、日向はそれを片手で押さえつけると、下着越しに痛い位に爪を立て、必死に本能に抗う。
帳を傷付ける位なら、こんなもの、潰れてしまえばいいとさえ、本気で思った。
必死にアルファ性の本能を捩じ伏せ、日向は震える手で、必死に帳に備え付けのバスローブを着せると、優しく身体を横たわらせると、彼の身体に布団を被せた。
ホテルの部屋は広く静かで、外の世界と隔絶されたような感覚があった。
窓から覗く夜景は美しかったが、今の日向にとっては何の価値もない。
ふと、日向は従業員の言葉を思い出し、立ち上がると、ホテルのミニバーへと向かい、冷蔵庫を開け、冷たい水を取り出し、それを手に戻ると、日向は急いで帳の枕元に座り直した。
「これ、少しでも飲めそうですか?」
日向は優しく声をかけながら、ペットボトルにストローをさし、帳の口元に近づけた。
帳はゆっくりと目を開け、ほんの少しだけ飲み物を口に含んだが、すぐにまた目を閉じる。
「‥‥ぁっ‥‥っ‥‥ひなたくっ‥ありが‥とう…」
かすれた声で呟いた帳の言葉に対し、日向は返事代わりに優しく彼の頬を撫でた。
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