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些細なすれ違い
ポンコツαの初恋事情 23
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春先に恋に落ち、帳と恋人関係になってから二ヶ月が経過した。
初夜では濃厚なキスもハグも沢山した。
全てが初めての経験であった日向は、帳と身体を重ねたことでより一層彼の事を意識してしまうようになり、彼に対し二度目の夜の誘いをかけることはおろか、手を繋いだり、抱きついたり等のスキンシップすらも積極的に行えないでいた。
互いの家を行き来する間柄になり、一緒にドラマを見ている時に、肩を抱こうと手を伸ばすが、拒まれたらどうしようと臆病になり、手をひっこめ、日向を見つめる帳の視線に気付き、これはキスのタイミングかと、彼と向きあい、見つめ合うも、もし勘違いで嫌がられたらと思ってしまい、視線を反らし、挙げ句の果てには
「日向くん、今日は泊まっていっても良いかな?」
帳に袖を引かれ、頬を染めて囁きかけられても
(もし、俺の勘違いで帳先輩に襲いかかって、拒まれてしまったらどうしよう)
と怖じ気付き、帳にベッドを譲り、自身はソファーで寝たりを繰り返していた。
そうしてもだもだした関係のまま、梅雨時を迎え、日向は自身の情けなさに深いため息をついた。
「照井、おまえなんかシケたツラしてんなぁ」
日向が俯いたままデスクの椅子から立ち上がり、顔をあげ、忙しそうにしている帳をみつめていると、いつの間にか近くに来ていた武元に声をかけられた。
「たっ、武元部長!いや、あの、えっと‥‥‥」
「まぁ、お前、悩んでいますって顔してっぞ。俺が色々話を聞いてやるから、今日の仕事帰りに飲みに行くぞ」
「えっ、飲みに行くぞって‥‥決定事項なんですか!?」
日向が武元の強引さに驚きの声をあげると、武元は
「あったりまえだろ!旨い焼き鳥屋に連れてってやるから楽しみにしてな」
と、ニカッと白い歯を見せ、日向に向かって笑いかけた。
そうして仕事終わりに武元のお勧めの店だと連れられて来こられた焼き鳥屋のカウンターに並んで座ると、店内の賑やかな雰囲気に包まれながら、武元は笑いを含んだ声で日向に尋ねかける。
「で、あれから望月とはどうなんだ?」
日向は焼き鳥を口に運びかけていた手を止め、目を見開いて焦り始めた。
「な、なな、なんだっていいじゃないですかっ!」
武元はニヤニヤしながら日向を見つめ
「お前さ、五ヶ月も何の進展ないってことは、ねぇよな。あんな美人と付き合ったのに、ただ仕事だけしてたなんて言わせねぇぞ?」
「つつつ付き合ったって‥‥‥なっ、なんで武元部長がそれを!?」
「お前なぁ、腰を庇ってふらつきながら歩く望月の後ろを、心配で仕方がないですって顔して付いてまわってた日があっただろ?俺じゃなくても気付くっつうの」
「そっ、そう、ですよね‥‥‥」
帳と初めて身体を重ねてから初出社をした日、自分達の姿が周囲の人間にどう映っていたかなど、考えてもみなかった日向は、真っ赤な顔で「うぅ~っ」と唸り声をあげた。
「で?最近どうなんだよ」
日向は視線を泳がせながら、小声で言い訳を漏らす。
「忙しかったんですよ、いろいろと…その、仕事が…」
「仕事がいくら忙しくても、触れあいたくなるもんだろ?俺なんか、恋人に会えない日は、仕事終わりに一杯やりながらあいつの顔が見てぇなって思うぞ。まさか、お前はデートの誘い方すら忘れたんじゃねぇだろうな?」
武元の日向はうつむき、思わず息をついた。
「…‥怖いんですよ」
「怖い?」
その言葉に、武元は驚いたように眉を上げる。
「望月みたいな優しいやつの何が怖いんだ?」
「だって、あんなに素敵な人と付き合えて、なんだか現実じゃないみたいで。デートの誘いを断られたらどうしようとか、俺ががっついて、帳先輩との関係性が悪くなったらどうしようとか、そんなことばかり考えてしまって‥‥」
日向の悩みを聞いた武元は真剣な顔つきで彼を見つめた後、ふっと笑い、彼の背中を叩く。
「そんなに悩んでんなら、お前一人で抱え込むな。相手を大事に思ってるなら、それをちゃんと伝えねぇとダメだろう?」
「そうですよね。このままじゃ、駄目ですよね」
武元に鼓舞され、もやもやとした気持ちの晴れた日向は元気な声で答えた。
「俺、次の休みにでも、思い切って帳先輩を誘ってみます」
「おう、その意気だ!」
武元は満足げに焼き鳥を頬張ると
「いいか、日向。恋愛も仕事も、やると決めたら全力でいけ。そうしないと、後悔しか残らねぇぞ」
そう言うと、竹元は日向に向かってやんちゃな表情で笑ってみせた。
「武元部長、有り難うございます!俺、勇気を出して頑張ります」
武元の言葉に日向は力強く頷き、彼に深く感謝すると、心の中で新たな決意を固めた。
初夜では濃厚なキスもハグも沢山した。
全てが初めての経験であった日向は、帳と身体を重ねたことでより一層彼の事を意識してしまうようになり、彼に対し二度目の夜の誘いをかけることはおろか、手を繋いだり、抱きついたり等のスキンシップすらも積極的に行えないでいた。
互いの家を行き来する間柄になり、一緒にドラマを見ている時に、肩を抱こうと手を伸ばすが、拒まれたらどうしようと臆病になり、手をひっこめ、日向を見つめる帳の視線に気付き、これはキスのタイミングかと、彼と向きあい、見つめ合うも、もし勘違いで嫌がられたらと思ってしまい、視線を反らし、挙げ句の果てには
「日向くん、今日は泊まっていっても良いかな?」
帳に袖を引かれ、頬を染めて囁きかけられても
(もし、俺の勘違いで帳先輩に襲いかかって、拒まれてしまったらどうしよう)
と怖じ気付き、帳にベッドを譲り、自身はソファーで寝たりを繰り返していた。
そうしてもだもだした関係のまま、梅雨時を迎え、日向は自身の情けなさに深いため息をついた。
「照井、おまえなんかシケたツラしてんなぁ」
日向が俯いたままデスクの椅子から立ち上がり、顔をあげ、忙しそうにしている帳をみつめていると、いつの間にか近くに来ていた武元に声をかけられた。
「たっ、武元部長!いや、あの、えっと‥‥‥」
「まぁ、お前、悩んでいますって顔してっぞ。俺が色々話を聞いてやるから、今日の仕事帰りに飲みに行くぞ」
「えっ、飲みに行くぞって‥‥決定事項なんですか!?」
日向が武元の強引さに驚きの声をあげると、武元は
「あったりまえだろ!旨い焼き鳥屋に連れてってやるから楽しみにしてな」
と、ニカッと白い歯を見せ、日向に向かって笑いかけた。
そうして仕事終わりに武元のお勧めの店だと連れられて来こられた焼き鳥屋のカウンターに並んで座ると、店内の賑やかな雰囲気に包まれながら、武元は笑いを含んだ声で日向に尋ねかける。
「で、あれから望月とはどうなんだ?」
日向は焼き鳥を口に運びかけていた手を止め、目を見開いて焦り始めた。
「な、なな、なんだっていいじゃないですかっ!」
武元はニヤニヤしながら日向を見つめ
「お前さ、五ヶ月も何の進展ないってことは、ねぇよな。あんな美人と付き合ったのに、ただ仕事だけしてたなんて言わせねぇぞ?」
「つつつ付き合ったって‥‥‥なっ、なんで武元部長がそれを!?」
「お前なぁ、腰を庇ってふらつきながら歩く望月の後ろを、心配で仕方がないですって顔して付いてまわってた日があっただろ?俺じゃなくても気付くっつうの」
「そっ、そう、ですよね‥‥‥」
帳と初めて身体を重ねてから初出社をした日、自分達の姿が周囲の人間にどう映っていたかなど、考えてもみなかった日向は、真っ赤な顔で「うぅ~っ」と唸り声をあげた。
「で?最近どうなんだよ」
日向は視線を泳がせながら、小声で言い訳を漏らす。
「忙しかったんですよ、いろいろと…その、仕事が…」
「仕事がいくら忙しくても、触れあいたくなるもんだろ?俺なんか、恋人に会えない日は、仕事終わりに一杯やりながらあいつの顔が見てぇなって思うぞ。まさか、お前はデートの誘い方すら忘れたんじゃねぇだろうな?」
武元の日向はうつむき、思わず息をついた。
「…‥怖いんですよ」
「怖い?」
その言葉に、武元は驚いたように眉を上げる。
「望月みたいな優しいやつの何が怖いんだ?」
「だって、あんなに素敵な人と付き合えて、なんだか現実じゃないみたいで。デートの誘いを断られたらどうしようとか、俺ががっついて、帳先輩との関係性が悪くなったらどうしようとか、そんなことばかり考えてしまって‥‥」
日向の悩みを聞いた武元は真剣な顔つきで彼を見つめた後、ふっと笑い、彼の背中を叩く。
「そんなに悩んでんなら、お前一人で抱え込むな。相手を大事に思ってるなら、それをちゃんと伝えねぇとダメだろう?」
「そうですよね。このままじゃ、駄目ですよね」
武元に鼓舞され、もやもやとした気持ちの晴れた日向は元気な声で答えた。
「俺、次の休みにでも、思い切って帳先輩を誘ってみます」
「おう、その意気だ!」
武元は満足げに焼き鳥を頬張ると
「いいか、日向。恋愛も仕事も、やると決めたら全力でいけ。そうしないと、後悔しか残らねぇぞ」
そう言うと、竹元は日向に向かってやんちゃな表情で笑ってみせた。
「武元部長、有り難うございます!俺、勇気を出して頑張ります」
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