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明かされる真実、そして・・・
時は満ちた…悠人から…そして自分の父から聞かされることとなった想像を超える程の真実とは…
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翌日、朝一番で花音は悠人の病室に向かった。午前中に急いで向かっていく。カラカラ…とゆっくり扉を開けるとそこには大分元気そうな悠人が居た。
「おはよう、悠人」
「おはようございます」
「良かった…元気そうだね」
「そういう花音様はどこか御気分でも優れぬご様子…いかがなさいました?」
「…パパに話したの。私が邪魔して悠人の事怪我させたから…そうしたら、近い内に帰ってくるって。廉は残って仕事があるみたいだけど、矢野さんが残って廉の面倒見るからって…パパとママで…」
「そうでしたか。奥様もご一緒とは…」
「うん…でも、…お仕事の邪魔しちゃった…て話してあるの。」
「まぁ間違いではございませんが…」
「だって!…だってパパに悠人が…危ないことしてるなんて話したら…絶対怒るもん…それどころか…裁判沙汰になっちゃうよ…」
「…そっか…」
「そっかって…のんびりしてるなぁ…パパ、意外とああ見えて怖いんだよ?」
「あぁもこうも…意外にというか…怖いですね。しかしながら優しいお方だとは思いますが。」
「優しいの!優しいんだけど、…何ていうか、人に迷惑かけたりして何度も同じこと繰り返すと怖いのよ?」
そういう花音にクスクスと笑って話を聞いている悠人。
「だから、悠人も…それなりに話合わせてね?」
「そう言ったこともお嫌いなのでは?」
「そうかも知れないけど…」
「クス…解りました。」
そう話していた時だ、工藤がやってきた。
「失礼する。」
「陣、どうした?」
「昨日話があるって言ったろう。」
「…そういえばそんな事言ってたな」
「じゃぁ、私…外出てるね」
「いや、構う事じゃない。」
そういわれた花音は病室を出るに出れなくなった。そのまま、悠人に近付くと、工藤は淡々とした口調で話出す。
「昨日、彼女にも話したが…」
「いや、単刀直入すぎるだろう。まず何を話した?…もしかして」
「あぁ、そのまさかだ。しかし実際には、僕が話す前にもうすでに九条から話が合ったみたいだが。」
「…あのバカ…」
「とはいえ、だ。話していないとも解ってはいたが、いつまで黙っておくつもりだ?」
「好きで黙って居るわけじゃねぇよ。話す時期がある。」
「じゃぁその時期はいつだ?」
「それは俺らが決める事じゃねぇよ。…だろ?」
「…確かにそうだが。…ただ、俺は話したからな?」
「ちょっ…陣?」
「今後の身の振り方は彼女本人に任せてある。行くも退くも、自身で決めてもらう事にしてある。」
「…マジかよ」
「嘘言ってどうする。だから、彼女は知ってるはずだ。」
そう言い残して背中を向けた瞬間、思い出したかのように工藤は振り返った。
「そうだ、総帥が近い内に話があると連絡がきた。」
そういう工藤の言葉に軽く右手を上げてこたえる悠人。そうして短い時間ながら工藤は帰宅した。残った花音はぽかんとした様子でその背中を見送った。しかしふと我に返ったかのように花音は悠人に問いかけた。
「ねぇ悠人?」
「はい?」
「『総帥』って…」
「また話があるだろうからその時にちゃんと話すよ。」
「そっか…もしかして…」
「ん?」
「…・・ううん?なんでもない」
花音の頭の中には『もしかしてさっき言っていた総帥って…自分の父親の事か…』という疑問が湧いていた。その理由としてもいたって単純、綾の父親が自身の父親を呼ぶ際に、夏目総帥と呼ぶのをよく聞いていた為だった。他愛のない話をして、花音は悠人の病室を後にして帰ることにする。そんな時だった。新崎が入替りで病室にやってきた。
「あれ、花音ちゃん。帰る?」
「はい、新崎さん…有難うございます。」
「悠人って今起きてる?」
「はい、さっきまで話してましたので」
そう言いぺこりと頭を下げた花音に『お邪魔します』と伝えて、悠人の病室に入っていった。
「よ」
「今度は弘也か」
「失敬だな、そんなに誰か来たか?」
「花音が来ていた。あとは陣が」
「あぁ、話があるとか言ってたからな。…んで?」
「陣が…話したそうだな。花音に…俺らの事」
「まぁざっくりだけどな。」
「頭首の話は?」
「まだしてない。流石にそれを知ったらショックだろう。自分の父親が影の首謀者になってるなんて。」
「知らないなら知らない方がいい。だけど、陣の置き土産が…な」
「置き土産?」
「花音の前で、『近い内に総帥から話がある』なんて言い残していったよ。」
「あら…」
「しかも頭首から『近い内に行くから』って花音の方にも連絡があったって…」
「なんとタイミングの悪い…」
「だろ?俺も、また話すってつい言っちゃった」
「『言っちゃった』って…悠人が珍しいな。そんな余裕ないなんて」
「…ハハ、俺も自分自身呆れるよ」
そんな事を話していた。
そんなこんなで、気付けば悠人の入院から三日が経とうとした日。いつも通り花音はお見舞いに来ていた。すると続々と悠人の病室に人が集まってくる。
「悠人…今日私帰ろうか?」
「問題ない。大丈夫だから。それより話があるから。」
「話って…」
ドクンと胸が高鳴ったのが分かった花音。
きっと…あの『総帥』という人の話だ…
そう感じていた。それから一時間ほど経った頃か。軽くノックをする音と同時に扉が開いた。
「失礼するよ?」
「パパ?!」
「久しぶり!花音、元気そうね」
「ママも…」
「お久し振りでございます。」
そういう悠人と同時に新崎はじめ、一緒に居た残りの二名も頭を下げた。
「悠人、体の具合はどうだ?」
「はい。余程大丈夫です。」
「新崎君も、工藤君、梶谷君達も迷惑をかけたな。」
「とんでもございません、総帥」
その工藤の言葉を聞いた花音は耳を疑った。しかし、はぁ…とため息を吐いた花音の父は奥へと進み話をし出した。
「花音様…」
「ねぇ…悠人、総帥って…」
「…」
「ねぇパパ…もしかして…悠人?」
「…お察しの通りでございます。」
「じゃぁ…悠人のやってる仕事って…パパ…知ってるの?」
「話す時が来たようだね。母さん。」
「そうね、仕方ないわね。」
普通に話をし出す両親。ドク…ドク…ものすごく大きな音で鳴る鼓動…くらくらとする程の可笑しな浮遊感…そんな違和感にも似た感覚に花音は襲われていた。
「さて、どこまで聞いているか解らないから全部話そう。」
「…パパ?」
「花音も聞いているだろう?NDL、塵一つ残さない者達。この存在のメンバーがこの悠人始めとしたここに居る四人であること。そして彼らを束ね、指示を出しているのが…私だよ。」
「…ッ」
「まぁ、状況が呑み込めないのも解る。彼らを集めた理由だったり、なぜ彼らでなくてはならないのか、そうして、なぜ、彼らは捕まらないのか…色々と疑問に思う事もあるだろう。」
「た…たくさんあり過ぎて…じゃぁ、悠人達が殺し屋だってことも知ってて私の執事にしたの?」
「それはまた別の話だ。悠人は執事としても完璧な仕事をする。」
「よくわかんない…理解何て…できないよ…」
そういうと花音は病室を飛び出して行った。大好きだった父親が殺人者の片棒を担ぎ、ましてやその指示を出している。そして、好きになった相手が、自分の執事が殺し屋である…
「やっと…落ち着けたのに…」
そう、工藤に言われたことを含めて、自分でそれができるなら…そう感じ、支えになれるようにしよう…。そう心に決めたばかりだった花音にはものすごく大きな壁となり、また、何とも言葉にも出来ない程の感情と化してしまった。
「花音…」
「ママ…ママも知ってたの?」
「…えぇ。私も初めてこの仕事を国から国家機密としてお父さんが請け負った仕事と聞いた時には猛反対したわ?さっきの花音の様に飛び出して、まともに話し合いの場何て儲けようともしなかったもの」
「国家…機密?」
「そう。誰でも出来る訳じゃ無いの。お父さんと、黒羽君達は選ばれた者、言ってしまえば『戦士』みたいなものね。やって居る事は普通では在り得ない犯事なんだけれど。」
「そんな事言っても…こんなこと許されないよ…」
「仕事が一段落ついたらバレない様に、また別の人たちが任務に就く。」
「どういった人達が…殺されるの?」
「それはお母さんにも良く解らないの。知っているのは国家機関の中で数名で構成されてるっていう特殊部と、お父さん。あとは黒羽君達のみね。お母さんがお父さんに聞いてるのは、『日本の、世界のリセット計画』という事だけ。」
「リセット…?」
ようやく顔を上げた花音に優しく笑いかける母。
「心配なのはお母さんも一緒。お父さんがいつ、どんな些細なことがきっかけでその正体がばれて、殺しの刃が向くかも解らない。でも、お母さんは、お父さんの事を信じてる。何があってもきっと大丈夫だって」
「何でそうやって信じていられるの?」
「何でだろう。解らないけれど、たぶん、お父さんの事が好きだから…かな?」
少しだけ気恥ずかしそうに母はそう答えていた。続けて花音に質問を投げかける。
「花音は?…花音は黒羽君の事、信じてあげられない?」
「…信じてるよ?」
「じゃぁ、大丈夫じゃないかしら?」
「そんな事言っても…悠人…死んじゃうかもしれないでしょ」
「あの子なら、黒羽君なら大丈夫よ。」
「大丈夫って…なんでそうやって自信たっぷりなの?」
「そうね…小さい時から知っているからかしら。特にお父さんは…」
「え?」
そうこう話していると母の携帯に父から連絡が入る。花音は連れられて病室に戻った。
「…あの…・・・」
「花音、黙って居たのは済まないと思う。しかし、致し方のない事だったと…解ってはくれないか?」
「…解った…その代り…一つだけはっきりと聞かせてほしいの。ママが言ってた。小さい時から悠人を良く知ってるって…どういう事?」
「…」
「パパっ!!!!」
「…解った。話そうか。しかし少しだけ待っていてくれ。彼らと話を済ませてからで構わないか?」
「総帥…僕たちは後で構いませんので、彼女に先に…」
「いいのか?」
「えぇ」
そう工藤に言われた花音の父。両親と悠人、花音を病室に残して、三人は一旦病室を出ることにした。
「おはよう、悠人」
「おはようございます」
「良かった…元気そうだね」
「そういう花音様はどこか御気分でも優れぬご様子…いかがなさいました?」
「…パパに話したの。私が邪魔して悠人の事怪我させたから…そうしたら、近い内に帰ってくるって。廉は残って仕事があるみたいだけど、矢野さんが残って廉の面倒見るからって…パパとママで…」
「そうでしたか。奥様もご一緒とは…」
「うん…でも、…お仕事の邪魔しちゃった…て話してあるの。」
「まぁ間違いではございませんが…」
「だって!…だってパパに悠人が…危ないことしてるなんて話したら…絶対怒るもん…それどころか…裁判沙汰になっちゃうよ…」
「…そっか…」
「そっかって…のんびりしてるなぁ…パパ、意外とああ見えて怖いんだよ?」
「あぁもこうも…意外にというか…怖いですね。しかしながら優しいお方だとは思いますが。」
「優しいの!優しいんだけど、…何ていうか、人に迷惑かけたりして何度も同じこと繰り返すと怖いのよ?」
そういう花音にクスクスと笑って話を聞いている悠人。
「だから、悠人も…それなりに話合わせてね?」
「そう言ったこともお嫌いなのでは?」
「そうかも知れないけど…」
「クス…解りました。」
そう話していた時だ、工藤がやってきた。
「失礼する。」
「陣、どうした?」
「昨日話があるって言ったろう。」
「…そういえばそんな事言ってたな」
「じゃぁ、私…外出てるね」
「いや、構う事じゃない。」
そういわれた花音は病室を出るに出れなくなった。そのまま、悠人に近付くと、工藤は淡々とした口調で話出す。
「昨日、彼女にも話したが…」
「いや、単刀直入すぎるだろう。まず何を話した?…もしかして」
「あぁ、そのまさかだ。しかし実際には、僕が話す前にもうすでに九条から話が合ったみたいだが。」
「…あのバカ…」
「とはいえ、だ。話していないとも解ってはいたが、いつまで黙っておくつもりだ?」
「好きで黙って居るわけじゃねぇよ。話す時期がある。」
「じゃぁその時期はいつだ?」
「それは俺らが決める事じゃねぇよ。…だろ?」
「…確かにそうだが。…ただ、俺は話したからな?」
「ちょっ…陣?」
「今後の身の振り方は彼女本人に任せてある。行くも退くも、自身で決めてもらう事にしてある。」
「…マジかよ」
「嘘言ってどうする。だから、彼女は知ってるはずだ。」
そう言い残して背中を向けた瞬間、思い出したかのように工藤は振り返った。
「そうだ、総帥が近い内に話があると連絡がきた。」
そういう工藤の言葉に軽く右手を上げてこたえる悠人。そうして短い時間ながら工藤は帰宅した。残った花音はぽかんとした様子でその背中を見送った。しかしふと我に返ったかのように花音は悠人に問いかけた。
「ねぇ悠人?」
「はい?」
「『総帥』って…」
「また話があるだろうからその時にちゃんと話すよ。」
「そっか…もしかして…」
「ん?」
「…・・ううん?なんでもない」
花音の頭の中には『もしかしてさっき言っていた総帥って…自分の父親の事か…』という疑問が湧いていた。その理由としてもいたって単純、綾の父親が自身の父親を呼ぶ際に、夏目総帥と呼ぶのをよく聞いていた為だった。他愛のない話をして、花音は悠人の病室を後にして帰ることにする。そんな時だった。新崎が入替りで病室にやってきた。
「あれ、花音ちゃん。帰る?」
「はい、新崎さん…有難うございます。」
「悠人って今起きてる?」
「はい、さっきまで話してましたので」
そう言いぺこりと頭を下げた花音に『お邪魔します』と伝えて、悠人の病室に入っていった。
「よ」
「今度は弘也か」
「失敬だな、そんなに誰か来たか?」
「花音が来ていた。あとは陣が」
「あぁ、話があるとか言ってたからな。…んで?」
「陣が…話したそうだな。花音に…俺らの事」
「まぁざっくりだけどな。」
「頭首の話は?」
「まだしてない。流石にそれを知ったらショックだろう。自分の父親が影の首謀者になってるなんて。」
「知らないなら知らない方がいい。だけど、陣の置き土産が…な」
「置き土産?」
「花音の前で、『近い内に総帥から話がある』なんて言い残していったよ。」
「あら…」
「しかも頭首から『近い内に行くから』って花音の方にも連絡があったって…」
「なんとタイミングの悪い…」
「だろ?俺も、また話すってつい言っちゃった」
「『言っちゃった』って…悠人が珍しいな。そんな余裕ないなんて」
「…ハハ、俺も自分自身呆れるよ」
そんな事を話していた。
そんなこんなで、気付けば悠人の入院から三日が経とうとした日。いつも通り花音はお見舞いに来ていた。すると続々と悠人の病室に人が集まってくる。
「悠人…今日私帰ろうか?」
「問題ない。大丈夫だから。それより話があるから。」
「話って…」
ドクンと胸が高鳴ったのが分かった花音。
きっと…あの『総帥』という人の話だ…
そう感じていた。それから一時間ほど経った頃か。軽くノックをする音と同時に扉が開いた。
「失礼するよ?」
「パパ?!」
「久しぶり!花音、元気そうね」
「ママも…」
「お久し振りでございます。」
そういう悠人と同時に新崎はじめ、一緒に居た残りの二名も頭を下げた。
「悠人、体の具合はどうだ?」
「はい。余程大丈夫です。」
「新崎君も、工藤君、梶谷君達も迷惑をかけたな。」
「とんでもございません、総帥」
その工藤の言葉を聞いた花音は耳を疑った。しかし、はぁ…とため息を吐いた花音の父は奥へと進み話をし出した。
「花音様…」
「ねぇ…悠人、総帥って…」
「…」
「ねぇパパ…もしかして…悠人?」
「…お察しの通りでございます。」
「じゃぁ…悠人のやってる仕事って…パパ…知ってるの?」
「話す時が来たようだね。母さん。」
「そうね、仕方ないわね。」
普通に話をし出す両親。ドク…ドク…ものすごく大きな音で鳴る鼓動…くらくらとする程の可笑しな浮遊感…そんな違和感にも似た感覚に花音は襲われていた。
「さて、どこまで聞いているか解らないから全部話そう。」
「…パパ?」
「花音も聞いているだろう?NDL、塵一つ残さない者達。この存在のメンバーがこの悠人始めとしたここに居る四人であること。そして彼らを束ね、指示を出しているのが…私だよ。」
「…ッ」
「まぁ、状況が呑み込めないのも解る。彼らを集めた理由だったり、なぜ彼らでなくてはならないのか、そうして、なぜ、彼らは捕まらないのか…色々と疑問に思う事もあるだろう。」
「た…たくさんあり過ぎて…じゃぁ、悠人達が殺し屋だってことも知ってて私の執事にしたの?」
「それはまた別の話だ。悠人は執事としても完璧な仕事をする。」
「よくわかんない…理解何て…できないよ…」
そういうと花音は病室を飛び出して行った。大好きだった父親が殺人者の片棒を担ぎ、ましてやその指示を出している。そして、好きになった相手が、自分の執事が殺し屋である…
「やっと…落ち着けたのに…」
そう、工藤に言われたことを含めて、自分でそれができるなら…そう感じ、支えになれるようにしよう…。そう心に決めたばかりだった花音にはものすごく大きな壁となり、また、何とも言葉にも出来ない程の感情と化してしまった。
「花音…」
「ママ…ママも知ってたの?」
「…えぇ。私も初めてこの仕事を国から国家機密としてお父さんが請け負った仕事と聞いた時には猛反対したわ?さっきの花音の様に飛び出して、まともに話し合いの場何て儲けようともしなかったもの」
「国家…機密?」
「そう。誰でも出来る訳じゃ無いの。お父さんと、黒羽君達は選ばれた者、言ってしまえば『戦士』みたいなものね。やって居る事は普通では在り得ない犯事なんだけれど。」
「そんな事言っても…こんなこと許されないよ…」
「仕事が一段落ついたらバレない様に、また別の人たちが任務に就く。」
「どういった人達が…殺されるの?」
「それはお母さんにも良く解らないの。知っているのは国家機関の中で数名で構成されてるっていう特殊部と、お父さん。あとは黒羽君達のみね。お母さんがお父さんに聞いてるのは、『日本の、世界のリセット計画』という事だけ。」
「リセット…?」
ようやく顔を上げた花音に優しく笑いかける母。
「心配なのはお母さんも一緒。お父さんがいつ、どんな些細なことがきっかけでその正体がばれて、殺しの刃が向くかも解らない。でも、お母さんは、お父さんの事を信じてる。何があってもきっと大丈夫だって」
「何でそうやって信じていられるの?」
「何でだろう。解らないけれど、たぶん、お父さんの事が好きだから…かな?」
少しだけ気恥ずかしそうに母はそう答えていた。続けて花音に質問を投げかける。
「花音は?…花音は黒羽君の事、信じてあげられない?」
「…信じてるよ?」
「じゃぁ、大丈夫じゃないかしら?」
「そんな事言っても…悠人…死んじゃうかもしれないでしょ」
「あの子なら、黒羽君なら大丈夫よ。」
「大丈夫って…なんでそうやって自信たっぷりなの?」
「そうね…小さい時から知っているからかしら。特にお父さんは…」
「え?」
そうこう話していると母の携帯に父から連絡が入る。花音は連れられて病室に戻った。
「…あの…・・・」
「花音、黙って居たのは済まないと思う。しかし、致し方のない事だったと…解ってはくれないか?」
「…解った…その代り…一つだけはっきりと聞かせてほしいの。ママが言ってた。小さい時から悠人を良く知ってるって…どういう事?」
「…」
「パパっ!!!!」
「…解った。話そうか。しかし少しだけ待っていてくれ。彼らと話を済ませてからで構わないか?」
「総帥…僕たちは後で構いませんので、彼女に先に…」
「いいのか?」
「えぇ」
そう工藤に言われた花音の父。両親と悠人、花音を病室に残して、三人は一旦病室を出ることにした。
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