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scene19…桜の下
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「菩薩、観世音菩薩!」
そう走ってきたのは二郎神だった。
「なんだ、騒がしい」
「公務が溜まってるのに何呑気に花見何てしてるんですか!」
「んー?雅の様子みてんの」
「様子って……ついこの間も見てたじゃないですか…!!」
「だってよぉ、あのバカ共と無事会えたってのにまた同じことやってんだぜ?デジャブだ、デジャブ!」
「はぁぁ……」
ため息を吐く二郎神。それでも菩薩は嬉しそうに見ていた。
「それにさ二郎神?」
「なんですか」
「あいつ、下界の妖怪薙ぎ倒してんだぜ?」
「そりゃあなたがそう仕込んだんでしょ!」
「そうなんだけどよ、そのときの呆気に取られるあいつらの顔がマジでおもしれえ……」
「悪趣味ですな…」
「それにしても……ある人に修行って……相変わらず笑える…やっぱオレの元に置いとくんだったかな…」
「おふざけが過ぎてますぞ?!」
「ふざけてねえよ」
そう菩薩が一瞬真面目に答えると桜の木がザァアっと揺れた。
「オレはふざけてねえさ。ただ…」
「……ただ、なんですか?」
「……いや、こっちの話だ」
そう言って菩薩は二郎神の方に向き直る。
「仕方ねえからオレはオレで仕事でもするか」
「仕方ねえとはなんですか!」
「ろくに目も通さずに判子押してくだけだろ?あ、二郎神、おまえがやってもバレねえんじゃねえか?」
「……観世音菩薩!!!」
相変わらず、天界には二郎神の声が響くのだった。
「はい、では後これです」
「…いつにも増して多くねぇか?」
「仕方ありません、幹部が寄越してくるんですから」
「あのなぁ、オレも一応幹部じゃねぇのか?」
そう呟きながらも一応書類に目を通していく。
「……メンドクセェ」
「まだ始めて一時間も経ってませんよ?」
「お前は家庭教師か、二郎神」
「…ハァァ」
そうこうしながらも地味に仕事を片付けていく。
「何か飲むもの用意致しましょうか」
「あぁ」
二郎神が席を離した時だった。
「おい、雅……って、いねぇな」
天井を仰ぐとため息を吐く。そっと頭の後ろで手を組み、そっと目を閉じた。
「本気で思うんだよな…あのまま雅、オレの物にすることだってできたのにって……」
愛してるとか…好きだとか……そんな感情はなかったにしろ、一緒にいてすごく和んだ。退屈とは無縁の日常になっていた。
「…金蟬…お前が悟空面倒見てるときにはこんな感じだったのか?」
そう呟く声は誰にも届くことは無いまま、菩薩の心に染みて終わった。
そう走ってきたのは二郎神だった。
「なんだ、騒がしい」
「公務が溜まってるのに何呑気に花見何てしてるんですか!」
「んー?雅の様子みてんの」
「様子って……ついこの間も見てたじゃないですか…!!」
「だってよぉ、あのバカ共と無事会えたってのにまた同じことやってんだぜ?デジャブだ、デジャブ!」
「はぁぁ……」
ため息を吐く二郎神。それでも菩薩は嬉しそうに見ていた。
「それにさ二郎神?」
「なんですか」
「あいつ、下界の妖怪薙ぎ倒してんだぜ?」
「そりゃあなたがそう仕込んだんでしょ!」
「そうなんだけどよ、そのときの呆気に取られるあいつらの顔がマジでおもしれえ……」
「悪趣味ですな…」
「それにしても……ある人に修行って……相変わらず笑える…やっぱオレの元に置いとくんだったかな…」
「おふざけが過ぎてますぞ?!」
「ふざけてねえよ」
そう菩薩が一瞬真面目に答えると桜の木がザァアっと揺れた。
「オレはふざけてねえさ。ただ…」
「……ただ、なんですか?」
「……いや、こっちの話だ」
そう言って菩薩は二郎神の方に向き直る。
「仕方ねえからオレはオレで仕事でもするか」
「仕方ねえとはなんですか!」
「ろくに目も通さずに判子押してくだけだろ?あ、二郎神、おまえがやってもバレねえんじゃねえか?」
「……観世音菩薩!!!」
相変わらず、天界には二郎神の声が響くのだった。
「はい、では後これです」
「…いつにも増して多くねぇか?」
「仕方ありません、幹部が寄越してくるんですから」
「あのなぁ、オレも一応幹部じゃねぇのか?」
そう呟きながらも一応書類に目を通していく。
「……メンドクセェ」
「まだ始めて一時間も経ってませんよ?」
「お前は家庭教師か、二郎神」
「…ハァァ」
そうこうしながらも地味に仕事を片付けていく。
「何か飲むもの用意致しましょうか」
「あぁ」
二郎神が席を離した時だった。
「おい、雅……って、いねぇな」
天井を仰ぐとため息を吐く。そっと頭の後ろで手を組み、そっと目を閉じた。
「本気で思うんだよな…あのまま雅、オレの物にすることだってできたのにって……」
愛してるとか…好きだとか……そんな感情はなかったにしろ、一緒にいてすごく和んだ。退屈とは無縁の日常になっていた。
「…金蟬…お前が悟空面倒見てるときにはこんな感じだったのか?」
そう呟く声は誰にも届くことは無いまま、菩薩の心に染みて終わった。
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