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新たな試み、そしてその先の光…

三泊の休暇にも似た京都の撮影旅行から帰った二人。この時間に収めた写真を持って美羽は緊張しながらも編集者に向かった。

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そうして翌朝に早く目覚めた秋人。美羽をそっと抱き寄せながらもその温もりを実感していた。辺りはまだ少し薄暗い中だった。そんな時、ゆっくりと美羽も目を覚ます。

「おはよ…」
「…ん、おはよう…」

そう言いながら秋人の背中に腕を回して美羽はきゅっと巻き付いた。そんな相手に愛おしさを感じながらも秋人はゆっくりと話し始めた。

「ねぇ美羽…俺さ、ずっと話そうと思ってたことがあって…」
「なぁに?」
「結婚しよう」

突然の秋人の言葉だった。全く前触れもなければ、そんなそぶり何ていうのも全くと言っていいほど感じられなかった。それなのに、突然のこの告白に美羽は正直驚いた。

「秋人…本気?」
「冗談でプロポーズなんてさすがにしないだろ…」
「だってそんなそぶり…!」

ガバリと起き上った美羽。それにつられて秋人も起き上がるとそっと抱き寄せて耳元で再度秋人は自身の思いを伝えた。

「結婚…しよ?」
「私で…いいの?」
「美羽じゃなきゃ意味がないよ?まだいろんな超える事、しっかりとした時期とか…もしかしたら仕事上で式とか新婚旅行とか…そう言うのは少し遅くなるかも知れないけど…それでも美羽と一緒に未来を歩いていきたいって思うから…」
「ありがとう…」
「じゃぁ…」
「はい、喜んで…」

そうして秋人のプロポーズを笑顔で受けた美羽。額をコツリとあてて、吐息がかかるほどの距離で笑い合っていた。ゆっくりと、優しく…口唇を重ねる二人…窓からは小さな光が入り込み始めていた。

朝食を済ませ、宿を後にし、京都の土地にも別れを告げた二人。そのまま東京に新幹線で戻って行く。そんな道中で秋人の携帯にメールが入る。

「どうかした?」
「ハルからだ。迎えに行くけどって。…や、遠慮しよ。」
「どうしたの?」
「仕事終わってからになるから夕方だって。」

仲間からの気持ちを想いだけしっかりと受取り、断りの返事を入れる。秋人は美羽にどうするかを問うた。

「私、このまま編集社に寄ってから帰るよ。遅くなるといけないし。」
「俺も行こうかなぁ?」
「それは任せるよ。でも、今日オフで明日からまた仕事でしょ?帰ってゆっくりしたら?」
「それもいいんだけど…」
「私なら大丈夫だよ。タクシーで行くし。」

そう言われた秋人は小さく笑って解ったと返事をしていた。色々と携帯で撮った写真を始め見ていた。これほどまでに写真を撮った事は未だかつて無かった為、何か不思議な感じになっていた美羽。自身の携帯においても同じ事だった。一気に秋人の写真が増えた。

「なぁ美羽?」
「なに?」
「それ…待ち受けにするのやめない?」
「何で?」
「なんか俺が恥ずかしい」

秋人がそう言うのも無理はなかった。昨夜に撮ったばかりの秋人の寝顔の写メだったからだ。それでも美羽は嬉しそうに笑いながらひと言、『ヤダ』と言っていた。
そんなこんなで新幹線も東京に着き、二人はそれぞれ別れて行く。秋人は駅で別れた直後に電話をかけだした。

『もしもし?』
「匠さん?俺、秋人です。今京都から帰りました。少し話があるんですが…お時間頂けますか?」

そう、結婚の意思を告げようとしていたのだった。一方の美羽は編集社に向かっていた。東京の駅からでもそれほど多くの時間はかからずに着く事が出来た。

「すみません、…」

そうして受付で待つ事五分程か、編集の担当者は降りてきた。顔を見るなり満面の笑みで迎えてくれる。

「葛城さん、お帰りなさい。今日京都から帰ったはずじゃ…」
「そうです。ただ、少しでも写真のお渡し、早い方がいいかと思って…」
「すみません、ありがとうございます。どうぞ?」

そうしてエレベーターで案内される。そのまま少し話しをしながらも上がって行き、一眼のデジカメを渡した。スマホでも撮っていた写真の一部はメモリーカードに落としこんで一緒に渡している。それを実際に見ながら担当者はぽつりと声を漏らした…

「これは…どうしような…」
「え…あの…使えそうにもないですか?」

美羽は焦りを隠しきれなかった。どうしよう…三日も貰っていたのに撮った写真がほとんどダメだったとなってはどうしようもない…しかし、その直後に担当者は編集長を呼んだ。これは益々に問題なのではないか…美羽は途方に暮れはじめていた。

「…・・これなんですが…」
「…なるほど…そうか…」

編集長もソファに腰を下ろした。次いで出た言葉で美羽は一気に救われる事となった。

「予定ページに収まらなさそうだな…」
「そうなんです。」
「……あの…」
「葛城さん、やはりあなたに頼んでよかった。こんな表情の榎本さん、僕らや仮にプロの人間に頼んでもこんな写真は撮れないだろう。本当にいい写真ばかりで…問題があるとすれば、写真の選定にかなりの時間がかかりそうだって事位かな?」
「あの…それじゃぁ没写真ばっかとかでは…」
「そんなことはないよ。ありがとう」

ホクホク顔の担当者と編集長の表情に美羽も安堵の表情に変わった。写真を預けて、美羽は一安心した後に秋人に報告を兼ねてメールをした。そのまま地下鉄に乗り、家路へと帰って行った。


……・・・それから三か月後…・・……


美羽野両親の元にも、挨拶に向かった秋人。本気で付き合っているという事、結婚させて頂きたいという旨…すべてを話し、納得の了承を得る事が出来た。それから数日後、秋人の写真集の発売日を無事に迎えた。結局、ページ数を最大に削ったとしても、一冊にまとめるのは困難だったため、『side white』と、『side black』とツータイプを用意することとなった。温かく、笑顔が多く見えた昼間の写真をホワイとに、旅館やホテル、入浴シーンや、ベッドインしている様子の物などはブラックにおさめる事にした。予約数も聞けば類を見ない程にまで数字は上がっているとの前評判。発売記念会見でメディアを通しての発表会の時間も迫ってきていた。

「秋人、もう時間だよ?」
「ん、解ってる。」

そうして案内されて秋人はメディア関係者の前に姿を現した。一気にフラッシュはたかれる。そうして発表会見は始まった。

「本日はお集まりいただきましてありがとうございます。本日の質問内容に関しては発売されます『akito~常に僕は君のモノ~』に関してのみとさせて頂きますので、宜しくお願い致します。」

そうして始まった。質問内容は本当に様々だった。今噂されているマネージャーとの単なるノロケ写真集じゃないのか?といったような批判も混じったようなものから、自身の気に入っている写真について等、本当に様々だった。中にはS4との写真もあったりと本当にプレミア感が満載である事を押し出した。そうして一時間程の発表会も終わった後に秋人が退場する際、美羽との事も矢継ぎ早に聞かれていた。しかし、笑顔ですり抜けていく。そうして一旦は裏に下がった秋人。そうして何事もなく無事に終えたと思ったその矢先だった。司会者は突如変わり、そこには宮村が立っていた。美羽はどうしたのかと、半ばパニックになりかけていた。

『…続きまして、私ども、クリスタルレインボー所属のタレント、榎本秋人の交際、及び婚約会見に移りたく思います。お時間の許される方はどうぞこのままお待ちくださいませ。』

一気に会場はざわついた。宮村が手を回し、編集社に掛け合い、会場費等も持つという事も考慮の範囲に収めて写真集の発売発表会のすぐ後にこの記者会見をすることにしていたのだ。この事は内々のみで、メディア等には一切の告知無の物だったため、帰ろうとしていた記者たちもその場に残っていた。中には携帯で会社に連絡を取っている者もいた。それと同時に、美羽もまた、この場で知らされた者の一人だった。

「ねぇ秋人!これって…」
「そういう事。」
「そういうって…」

そうしてひと言美羽に残すと秋人は再び壇上に上がった。マイクを持ち、一礼をすると、記者達に向かって一礼をし、微笑みを浮かべながらゆっくりと話しをし出した。

「突然の弾丸発表に残ってくださり、ありがとうございます。私、榎本秋人は兼ねてよりマネージャーを務めて頂いております彼女との婚約を正式に決定しましたのでここにご報告させて頂きます。」

そうしてもう一度ゆっくりと一礼した。先程の写真集の時と同じか、それ以上にフラッシュはたかれた。それと同じくして、質問も半端なく飛び交った。

いつからの付き合いだったのか、その間にSATSUKIとの事もあったがどうだったのか、結婚はいつなのか、相手は妊娠しているのか……ありきたりだったが一つ一つの質問に丁寧に答えていく秋人。そんな時だった。ある記者から美羽の事に触れられた。

「今はやはり、写真集発売の発表会後という事もあっていらっしゃるとは思いますが…」
「まぁ…」

その回答に戸惑うと秋人は宮村の方を見た。ニコリと笑うと宮村は一旦奥に入り美羽に表に出れるかを聞く。そうして時期に戻ると秋人に耳打ちをした。その短い会話の後に秋人は『失礼します』と席を立ち、裏に居る美羽を連れ出した。頭をぺこりと下げると美羽も秋人の横に立った。

「お初にお目にかかります、クリスタルレインボー、榎本秋人のマネージャーを努めさせて頂いております、葛城美羽と言います。宜しくお願い致します。」

初めてマイクに自身の声を通す。緊張が手に取るようで宮村も少し可笑しくなってしまっていた。色々と質問をされながらも微笑ましく見つめている宮村と、メディア達。当の美羽は一人混乱に近い物があったとはいえ、秋人もまた嬉しそうだった。こうして予定よりも少しオーバーしながらも記者会見は終了した。なんだかんだと言いながらも、初めてにしては上出来な会見だったと笑っていた秋人ともうすでにくたくたの美羽だった。

「悪かったな、美羽」
「匠さん…グルでしたね?」
「グルとか言うなって…でもまぁ、良かったんじゃない?」
「そうかなぁ…でも、ありがとうございます。」

ぺこりと美羽は宮村に頭を下げた。こうして一気に秋人との関係が明らかになるものの、ネットやファンの反応は悪くなく、意外に祝福モードだった事は幸せを感じていた。
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