凜恋心

降谷みやび

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battle57…足りないもの

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翌日、しっかりと雨も止み、買い出しも終えて、村を後にした一行。

「…なぁ、最近紅孩児達こねえよな…」
「こなくていいだろうが…」
「そうなんだけどさ…?」
「なぁんか物足りねえよなぁ」

そうこう話しているとどこからともなく妖怪の気配がし出した。

「おい、赤河童」
「なんだ?」
「お前が変なこと言うから…沸いて来たじゃねえか…」
「俺のせいかよ…」
「他に誰がいる」
「まぁ、村で襲われなかっただけでも良しとしませんか?」
「それもそうだな!」

そういって悟空と悟浄がひゅっと飛び出す。

「さてと…白竜と雅は待っててくださいね?」
「キュッキュキュ!!」
「解った…」
「よっしゃ!!」

そうしてそれぞれ構えるとぐるりと囲まれた。

「あの…私も囲まれました……」
「知るか。三蔵一行なんだから囲まれても仕方ねえだろ…」
「攻撃できないか弱い乙女なのに……」
「どの口が言ってる」
「ひど……」
「そんな男止めて俺にしとけって、雅」
「悟浄…」
「貴様も一回死んでみるか…?」
「まぁ、死んだ後に生き返っても雅がいてくれたらそれでいいけど?」
「ふざけろ、寝言は寝て言え」
「なぁなぁ、だったら雅も一緒にやったらよくない?」
「悟空…なに言ってんだ…」
「だってさーー」
「そうこう出来るものでも無いし……」
「ま、そろそろ向さんも待ちくたびれてるみたいですし…」

『かかれぇぇぇ!!』の妖怪共の言葉を受けて次々になぎ倒し、雅に目を付けた妖怪も三蔵が撃ち抜いていく。

「全く…懲りない奴だ…」
「三蔵、ありがとう…」
「礼言ってる暇ねえよ」
「…え?」
「けけけ!!」

しかし、しゅっと横に引き敵を倒していく雅。大分出るようになっているものの不発も数多い。その度に他の面々が手を出してくれる。

「よっしゃ!いっちょ終わり」
「行きますか」
「あぁ」

そうして屍を後ろに越えながら再度ジープで動き出す。

「次の街までどれくらい?」
「えーっと…地図だと二日…三日位でしょうか」
「うぇぇぇ…」
「仕方ないよね…」

そうして休憩を挟みながら進んでいく。

「…今日はここで終わりにしましょうか…」
「そうだな」
「川辺とかあるかな…」
「そしたら水とか汲めるし、ちょっとした洗い物とかも出来るし!」
「そうですね」

そう話していた。そうして野宿にて皆眠りに就いた頃。雅はふと目を開けた。

「……はぁ……」

小さくため息を吐いて空を見上げた。そっとジープから降りて空を見上げる。

「もう冬…かぁ…」
「何してんだ…」
「あ…三蔵……」

目を覚ましたのか、三蔵もまたジープから降りてきた。

「どうした、眠れないのか?」
「ん……理由は解んないしただ単に眠れないだけなんだと思うけど……」
「…ハァ…」
「夜も冷えるようになってきたね…」
「そうだな」
「でも、星空はきれいに見える季節だよね…」
「たしかに、そうかも知れん」
「三蔵は?眠れない?」
「まぁな」
「そっか……あったかいのって言っても今から火起こしたら皆起きちゃうし……」
「そうだな…」

そう話ながらも少しジープとから離れた二人。

「三蔵……」
「ん?なんだ」
「……ごめん…少しだけ……許して?」
「何をだ…」

そう聞かれながら、返事もせずに雅はきゅっと巻き付いた。

「…おい」
「だから先に謝ったよ?ごめんって……」
「そういう問題じゃねえだろ…」
「…やだ」
「あのなぁ」
「やだ……」
「駄々っ子のガキか…」
「それでもいい…もん」
「ハァ…」

そう小さくため息を吐くとそっと三蔵も雅の背中に腕を回した。

「こんな外じゃ何にもしてやれねえだろうが」
「そんなの無くていい……ただ…」
「ただ?」
「くっついてたい……三蔵の匂いや…温もりに包まれたい…」
「…全く……こういうときに限ってそうやって煽りやがって…」
「煽ってない…」
「自覚がねえのはマジでタチわりいよ」
「三蔵……」
「なんだ」
「好きぃ……」

そういってきゅっと巻き付く腕に力を込めた雅。

「全く…次の街着いたら覚えておけよ…」
「三蔵?」
「……止めてくれって言っても止めてやれる自信がねえ…」
「…いいよ…それでも……」

そういうとゆっくりと体を離した三蔵。そのままゆっくりと顔を近付けて唇を重ねた。

それから二日後…予定どおりに街に着いた一行。まずは宿屋を取り、その直ぐ後に食事に向かう。

「……飯ぃぃぃ」
「全く…何なんだ…お前は…」
「だってよぉ!!前の街の食材も途中でなくなるし…」
「さすがにお腹空いた……」
「だろ?ほら…雅だって……!!」
「俺は女がほしい…」
「皆さん欲望に素直ですねぇ…」
「さっさと行くぞ」

そういって食堂に向かっていった。わいわい言いながらもあまりのうるささに三蔵のハリセンがスパーーンと悟浄と悟空に命中した。その直後だ…

「うわ…!テーブルの首…もげた!!」
「しぃ!!静かに悟空!!」
「…なんで俺たちが押さえてなきゃならん!」
「てめえらが派手にこけたからだろうが!」
「これ…ばれたら弁償ですかね…」
「……ちょっと、手、離すよ?」
「おい、雅!!」
「なに考えてんだ、てめえは…!!」
「このままじゃごはん食べれないもん…」

そういうと雅はさっさと手を離し、店の奥に向かっていった。

「あの…バカ…!」
「あーー…店員さん来ましたよ?」
「しかもすっげえ強面だ…」

そう、雅は素直に謝りに行ったのだ。すると奥から店長らしき人が出てきて再度謝ると一緒に向かってきたのだ。

「あの、お客さん?」
「えーっと……」
「すみませんね!お怪我なかったですかい?!」
「……え?」
「うちが悪いって言ったんだけど……」
「そんなことないですよ、テーブルの管理も店の管理!!本当に申し訳ない…」
「だって…」
「いえ、こちらこそ…すみません…」
「いえいえ、それで、手数なんですが移動してもらっていいですかね…」
「あ…それは……」
「なんか…逆にわりいな…」
「だったら直すか?」
「いえ!そんなお客さんに直してもらうなんて…!」
「本当にごめんなさい」
「いえいえ!」

そうしていともあっさりと席を移動しその場は収まった。

「……雅て、すげえな…」
「なにもすごくないよ…やっちゃったんなら素直に謝るしかないじゃん?」
「……聞きましたか?三人とも」
「……あぁ」
「悪りぃ」
「…ごめん」
「でもいい人でよかったね!店長さん!」

そういって食事を済ませ、買い物組とナンパ行き、それから宿行きに別れた。

「てかさ、なんで三蔵はいっつも直ぐ宿なんだ?」
「疲れちゃうんじゃない?」
「でも、座ってるだけだぜ?」
「そういわないの、悟空…クスクス…」
「色々と思うところがあるんでしょう。」
「で、逆に何で悟浄はこうもナンパが好きなんですかねぇ…」
「ステータス、らしいですけど…」
「私なら要らないな…」
「俺も…俺なら餃子のステータスほしい!!」
「あの…悟空?ステータスの意味、知ってますか?」
「んーーー、回数とか?」
「まぁ、近いんですが……」

そう話しながら、八戒の講座が始まった。それを聞きながらも小さく笑っている雅。

「あ……ヤバイ…」
「どうかしましたか?悟空」
「お…俺……トイレ!!わり、待ってて!!」

そういって近くの店に入っていった。

「ねえ八戒…」
「はい?」
「私、ちょっと寄りたいところがあるんだけど……いい?」
「珍しいですね。どうしました?」
「三蔵の誕生日プレゼント……」
「……あぁ」
「でも、三蔵要らないって言うし……何がいいのかな…」
「そうですねぇ…」
「何がいいのか…解らなくて……」
「三蔵だと……そうですねえ…難しそうですが……」
「アクセサリーなんて柄じゃねえよ!とか…いいそうだし…服…も新調してたし…どうしよう……」
「だとしたら…ならどうですか?」
「…私にしか……って何がある?」
「例えば…」
「悪りい!!おっまたせ!!」
「お帰り悟空!」

そうして揃うと色々と見て回るもののやはりこれといって三蔵にプレゼントするにはどうもしっくりとこないものが多かった。

「ごめんね?八戒も悟空も…付き合わせちゃって…」
「別に大丈夫だよ!三蔵のほしいものかぁ……そういや三蔵ってそういった欲ほっとんど聞かねえよな」
「そうですねえ」
「悟空でも聞いたことないっていうなら……ハァ…」
「でもさ?」
「んー?」
「雅があげたいって思うものならいいんじゃねえの?」
「…私があげたい……ものかぁ…」
「そ!!なんかねえの?雅があげたいもの…」
「あげたいもの……難しすぎる……」

ため息しか出てこなかった。

「三蔵の欲って……なんだろ……邪魔にならなくて…それでいて喜んでもらえて……」

そんなことを悶々と考え込んでしまっていたのだっだ。
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