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battle48…思いがけないコト
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雅を買い物に着いて行かせた理由は、他にもあったのだ。袂から手のひらに収まるほどの小さなポーチを出すと三蔵は大きなため息を吐いた。
「ハァァァ…」
「どうした?三蔵」
「…なんでもねえよ」
「なんかねえの?たばこか?」
「それならあるよ。もしなくても貴様のは不味くて敵わんから要らねえ」
「あ、そうですか」
「……少し出てくる」
そう言うと三蔵は一人街に赴いた。どこに行けば買えるかなんてのは知っているものの、その店が見つからない。
「まさかとは思うが…ないのかよ…」
ダメもとで薬を売っている店の男性に声をかけた。
「おい、すまんが、雑貨を売っている店を知らんか」
「雑貨ですかい?お坊さんが使うような雑貨はこの辺りじゃないと思うがね……」
「そうか…」
「悪かったねえ」
そして三蔵はその店を後にする。しかし、三蔵が求めているのは坊主としての道具ではなかった。
「…たく……どうしたもんだ……」
そう。さっき宿で見ていたポーチの中身は、コンドームだった。抱きたくなる、といった手前、避妊具がないのでは抱けない……そう考えた。
「……つか、どこにもおいてねえのかよ…」
「さぁんぞ!!なにかお買い物?」
「…ッッ…雅…」
「なんだよ、三蔵も来るなら一緒にこれば良かったじゃん。別行動しなくてもさ」
「それもそうですね。三蔵は何をお買い求めに?」
「たばこが切れた。」
「この間カートンで二つもかったばかりでそんなに早く切れるわけないでしょう?」
「…チッ…」
「本当は何買いに来たんだ?三蔵?」
「……なんでもねえよ」
「雅?悟空とあそこの屋台でお土産、見てきてください?」
「やりぃ!八戒!!雅、ほら行こうぜ!!」
「うん…」
「心配しなくても大丈夫ですから」
「わかった。」
そうして悟空と雅を払うと八戒は三蔵に問いかけた。
「もしかして…切れたんですか?在庫」
「……なんの話だ。」
「あんな風に雅を連れていった割には僕たちと買い物に来てますし。それでいて解りやすくも嘘を吐く。いくら吸いすぎとは言えそうそう消える量のストックではないはずです。これが街を出発する前の買い出しならともかく……」
「何が言いたい…」
「ですから。雅を抱くに抱けない状態にいるのかなと……」
「……クソ…」
「それでしたら、まっすぐに行って、最初の十字路を右に入って二件目。それらしいお店がありましたよ?ただ、あなたが入れれば、というところでしたが?」
「どういう意味だ…」
「さぁ、行ってみてください?百聞は一見に如かず…ですよ?」
そう言い残して八戒はお土産を買い終えた二人と合流して一足先に宿屋に帰っていった。言われた通りの道を進む三蔵。
「ここか……確かに…八戒の言う通りか…」
そこは他の店舗とは全く違い、異質にも取れるくらいの明るさを放った店だった。ショッキングピンクにも似た色合いの店のカラーリング、入り口のガラスには見方によっては卑猥にも取れるような文言。中から出てきた女性はメイドのような服装…
「あれ?お坊さん?」
「……なんでもねえよ」
「こういうお店、気になる?」
そう言うとスルリと腕を絡めてくるものの、スッと腕をほどく。
「んもぉ、さっきのメガネさんといいいい男には今日は恵まれないのかしら…」
「メガネ…?そいつは連れはいたか?」
「えぇ。可愛らしい少年と、ちょっとからかったら真っ赤になった女の子!食べちゃいたくなった」
その一言で三蔵はムッとして、ふいっと顔を背けた。
「もう行っちゃうの?」
「ここには用がねえからな」
「またきてねぇ!!!」
そういいながら両手を小さく振る女性。
「それで知っていたのか…八戒……」
事のなり行きが全て繋がった三蔵。しかし、あそこ以外に売っているわけもなさそうだった。しかし入りたくもない。
「……チッ…」
軽く舌打ちをすると、宿に戻った。なかなか切り出せない三蔵。
「…なぁ、なぁんか三蔵空気重くねえか?」
「そうですねえ…」
「知ってんのか?八戒」
「まぁ、でもあの様子だと買い物もできなかったようですから……」
「ほしいのなかったからって……クックッ」
「悟浄?」
「なんだぁ?」
「んーー、やっぱやめときます。」
「なんだそりゃ」
そう話していた。雅は何も知らないまま新聞を読む三蔵の横顔を見ていた。しかし、スッと立つ。
「雅?」
「おトイレ…」
「あ、すみません」
「ううん?」
そうして雅が席をたち、部屋を出た直後、三蔵は悟浄を呼んだ。
「おい」
「はい?」
「八戒じゃねえ」
「え、俺?」
「他に誰がいる」
「いや、悟空もいるしよ」
「こっち来い」
「なんだぁ?」
そういって三蔵のそばに寄ると三蔵も立ち上がり、グッと胸元を掴んだ。引き寄せると悟浄にしか聞こえないくらいの声で耳元で話し出す。
「おい、なんだよ!」
「……持ってるか」
「ほぇ?何を?」
「…ほら。」
「いや、『ほら』じゃわかんねえよ、何?」
「……ゴム。ひとつでいい」
「…あぁあ、無いわ」
その一言で三蔵はハァっと大きなため息を吐いて悟浄を解放した。
「なんで持ってねえんだよ」
「いや、それ俺に振るか?」
「貴様しか持ってねえだろうが…」
「だって俺あんまりそれ、使わねえから」
「…マジか」
「マジ☆」
そう言いながらにっと笑い出す悟浄。
「ふぅぅぅん、それで昼間に買い物ってわけね」
「何々?三蔵何がほしかったの?」
「お猿ちゃんには必要ねえものだよ」
「猿って言うな!!」
「ねぇね?廊下まで聞こえてるよ?」
「あ、雅!!」
「どうかした?」
そう話しながらも雅は至極当然のように三蔵の横に腰を下ろす。
「そう言えばほしいの見つかった?三蔵」
「無かった」
「そっか…残念だね…」
「……フン…」
そう話しているのを見ていた八戒と悟浄。悟空は途中買った桃まんを食べていた。
「なぁ八戒?」
「はい?」
「お前…知ってたろ…三蔵のほしかったもの」
「えぇ、それで偶然見つけたお店まで教えたんですが…やっぱり三蔵にはあの店、入れなかったみたいですね」
「何?どんな店よ」
「まっピンクの壁にメイドのお姉さん」
「ふぅん。そりゃあの坊主じゃ入れねえよな」
「それにしても悟浄?本当に持ってないんですか?」
「あぁ、あれ嘘」
「…ハァ、三蔵に知れたら撃ち殺されますよ?」
「事前に準備くらいしとけっての。それに、小さいもんでも四つは入ってるぜ?使いきったくらいヤってるって事だろ?ならたまには意地悪くらいさせろって」
「あぁあ、全く。あなたって人は…」
そう笑い合いながらも二人でならんで話している雅と三蔵を見ていた。夕食も終え、それぞれの部屋に戻っていく。シャワーだけとはいえ、各部屋に付いていたため浴場でなくても良ければ部屋でシャワーが使えるのだった。
「三蔵……?」
「なんだ」
「…」
「どうした?」
「お買い物…残念だった…ね」
「まだそれ言ってんのか…」
「ん……」
「どうした。」
「今日三人でお買い物してる時にすごく派手なお店があったの!!八戒に聞いたら『悟浄の好きなお店だろう』って言われたの!そしたらね?中からお姉さん出てきたんだけどそれ見て八戒『やっぱり…』って!」
「それで?」
「メイドさんって格好しててね?私も着たいなぁって思ったら八戒に満面の笑みで全力に反対された…そしたらお姉さんが似合うと思うよ?何て言ってくれたりね?」
「……なるほどな」
「え?何がなるほど?」
キョトンとした顔で雅は三蔵を見つめた。
「俺もその店の近くを通ったんだ。そうしたらやっぱり声かけられた。」
「…入った?」
「入るかよ!」
「…それで?」
「なんか色々話してくるから聞いてたら、『さっき来たメガネさん達にもフラれちゃった』なんとか言っていたからな。」
「そっか!今度一緒に行ってみる?」
「ばかだろ」
「むぅ……じゃぁ悟浄と行ってくる」
「冗談にもならねえ」
「だって!」
「だってじゃねえよ。マジで自覚あんのか?てめえは。」
「自覚?自覚って…?」
そう聞く雅を三蔵はベッドに押し倒した。
「お前は誰の女だってんだよ…」
「…ッッそれは…」
「言えよ」
三蔵が高圧的で命令口調なのはいつもの事だ。それでも、雅は今宵だけは少し意地悪をしたくなっていた。
「誰の女かって…三蔵が一番知ってるでしょ?」
「さぁな。どうだか」
「そうなの?私てっきり知ってくれてるものだと思ってたけど?」
「女の心は変わりやすいからな」
「…そぉなの?」
「現に悟浄にも靡いたことあるじゃねぇか」
「ないよ」
「言い切れんのかよ」
「うん」
そっと三蔵の金糸の髪に指を滑らしにこっと笑った雅。
「意地悪しすぎたね、ごめん」
「ぁん?」
「私は三蔵のよ?三蔵が要らねぇよって言うまでずっと…」
「フッ…だったら今後ずっと俺のものだな」
「モノ扱いは…って、それって…」
「なんだ、不満か?」
「じゃなくて!」
「ぎゃぁぎゃぁ騒ぐな…キスできねぇだろうが…」
そういい、三蔵の顔がゆっくりと近付く。ふわりと重なるその唇は何度も重なっては離れていく。しかしふと三蔵は思いだした。
「…悪い…」
「え?」
「……」
ゆっくりと体を離してベッドの上に座り直すと頭を掻いた。
「…三蔵?どうかした?体調悪い…?」
「そうじゃねえよ…俺の問題だ…」
「…そか……」
少し寂しそうな顔をした雅をみて三蔵は小さくため息を吐くと抱き寄せた。
「雅が悪い訳じゃねえよ…」
「でも……」
「俺の用意が足りなかった、それだけだ…」
「用意って…?」
「……構うな……」
「用意って……なんの?」
「…ッッ…」
しかし本当に解っていないのだろう、雅は腕のなかで純粋に聞いてくる。
「……付けるもの…切らしてる」
「…付けるものって……あ…」
「やっとかよ…」
「三蔵の言い方が…悪い…」
「今日、買いに行ったんだが……あの店は入れねえ…」
「あの店って…」
「雅も前通ったんだろう?まっピンクの…」
「あ…そこ?」
「あぁ。」
「だったらなおさら明日行ってみる?」
「煽ってんのか…お前は…」
「そういうつもりは…あ、だから悟浄と一緒はダメって…」
「それ以外に何がある」
「フフ……クスクス…」
「何がおかしい…」
小さく笑いだした雅。今度は三蔵が理由が解らなかった。
「おい、笑いすぎだろうが…」
「ごめんね……そういえばね?」
「話すり替えんな」
「変えてないよ?…えっと…あ、こんなところに…」
「ぁん?……てか…なんで…」
「さっき悟浄にもらった。『三蔵の為じゃねえ、馴れずにヤったら雅がかわいそうだ』って…三蔵に渡したら解るって言ってたけど…」
「あのバカ…明日殺す…」
「え…?なんで?」
「持ってねえって言ったのどいつだよ…」
「えっと……なんの事?」
「…いや、いい」
「…これ、使う?」
「使わねぇ」
そう言うとそっと抱き寄せ、そのままベッドに寝転がると、そのまま抱き締めている。
「今夜はこのままでいい」
「…三蔵?」
「なんだ」
「ちゅぅ……して?」
「ッ…クス……上向け」
そう言いながらそっと唇を重ねたのだった。
「ハァァァ…」
「どうした?三蔵」
「…なんでもねえよ」
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「あ、そうですか」
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「…たく……どうしたもんだ……」
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「……つか、どこにもおいてねえのかよ…」
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「…ッッ…雅…」
「なんだよ、三蔵も来るなら一緒にこれば良かったじゃん。別行動しなくてもさ」
「それもそうですね。三蔵は何をお買い求めに?」
「たばこが切れた。」
「この間カートンで二つもかったばかりでそんなに早く切れるわけないでしょう?」
「…チッ…」
「本当は何買いに来たんだ?三蔵?」
「……なんでもねえよ」
「雅?悟空とあそこの屋台でお土産、見てきてください?」
「やりぃ!八戒!!雅、ほら行こうぜ!!」
「うん…」
「心配しなくても大丈夫ですから」
「わかった。」
そうして悟空と雅を払うと八戒は三蔵に問いかけた。
「もしかして…切れたんですか?在庫」
「……なんの話だ。」
「あんな風に雅を連れていった割には僕たちと買い物に来てますし。それでいて解りやすくも嘘を吐く。いくら吸いすぎとは言えそうそう消える量のストックではないはずです。これが街を出発する前の買い出しならともかく……」
「何が言いたい…」
「ですから。雅を抱くに抱けない状態にいるのかなと……」
「……クソ…」
「それでしたら、まっすぐに行って、最初の十字路を右に入って二件目。それらしいお店がありましたよ?ただ、あなたが入れれば、というところでしたが?」
「どういう意味だ…」
「さぁ、行ってみてください?百聞は一見に如かず…ですよ?」
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「ここか……確かに…八戒の言う通りか…」
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「あれ?お坊さん?」
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「こういうお店、気になる?」
そう言うとスルリと腕を絡めてくるものの、スッと腕をほどく。
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「えぇ。可愛らしい少年と、ちょっとからかったら真っ赤になった女の子!食べちゃいたくなった」
その一言で三蔵はムッとして、ふいっと顔を背けた。
「もう行っちゃうの?」
「ここには用がねえからな」
「またきてねぇ!!!」
そういいながら両手を小さく振る女性。
「それで知っていたのか…八戒……」
事のなり行きが全て繋がった三蔵。しかし、あそこ以外に売っているわけもなさそうだった。しかし入りたくもない。
「……チッ…」
軽く舌打ちをすると、宿に戻った。なかなか切り出せない三蔵。
「…なぁ、なぁんか三蔵空気重くねえか?」
「そうですねえ…」
「知ってんのか?八戒」
「まぁ、でもあの様子だと買い物もできなかったようですから……」
「ほしいのなかったからって……クックッ」
「悟浄?」
「なんだぁ?」
「んーー、やっぱやめときます。」
「なんだそりゃ」
そう話していた。雅は何も知らないまま新聞を読む三蔵の横顔を見ていた。しかし、スッと立つ。
「雅?」
「おトイレ…」
「あ、すみません」
「ううん?」
そうして雅が席をたち、部屋を出た直後、三蔵は悟浄を呼んだ。
「おい」
「はい?」
「八戒じゃねえ」
「え、俺?」
「他に誰がいる」
「いや、悟空もいるしよ」
「こっち来い」
「なんだぁ?」
そういって三蔵のそばに寄ると三蔵も立ち上がり、グッと胸元を掴んだ。引き寄せると悟浄にしか聞こえないくらいの声で耳元で話し出す。
「おい、なんだよ!」
「……持ってるか」
「ほぇ?何を?」
「…ほら。」
「いや、『ほら』じゃわかんねえよ、何?」
「……ゴム。ひとつでいい」
「…あぁあ、無いわ」
その一言で三蔵はハァっと大きなため息を吐いて悟浄を解放した。
「なんで持ってねえんだよ」
「いや、それ俺に振るか?」
「貴様しか持ってねえだろうが…」
「だって俺あんまりそれ、使わねえから」
「…マジか」
「マジ☆」
そう言いながらにっと笑い出す悟浄。
「ふぅぅぅん、それで昼間に買い物ってわけね」
「何々?三蔵何がほしかったの?」
「お猿ちゃんには必要ねえものだよ」
「猿って言うな!!」
「ねぇね?廊下まで聞こえてるよ?」
「あ、雅!!」
「どうかした?」
そう話しながらも雅は至極当然のように三蔵の横に腰を下ろす。
「そう言えばほしいの見つかった?三蔵」
「無かった」
「そっか…残念だね…」
「……フン…」
そう話しているのを見ていた八戒と悟浄。悟空は途中買った桃まんを食べていた。
「なぁ八戒?」
「はい?」
「お前…知ってたろ…三蔵のほしかったもの」
「えぇ、それで偶然見つけたお店まで教えたんですが…やっぱり三蔵にはあの店、入れなかったみたいですね」
「何?どんな店よ」
「まっピンクの壁にメイドのお姉さん」
「ふぅん。そりゃあの坊主じゃ入れねえよな」
「それにしても悟浄?本当に持ってないんですか?」
「あぁ、あれ嘘」
「…ハァ、三蔵に知れたら撃ち殺されますよ?」
「事前に準備くらいしとけっての。それに、小さいもんでも四つは入ってるぜ?使いきったくらいヤってるって事だろ?ならたまには意地悪くらいさせろって」
「あぁあ、全く。あなたって人は…」
そう笑い合いながらも二人でならんで話している雅と三蔵を見ていた。夕食も終え、それぞれの部屋に戻っていく。シャワーだけとはいえ、各部屋に付いていたため浴場でなくても良ければ部屋でシャワーが使えるのだった。
「三蔵……?」
「なんだ」
「…」
「どうした?」
「お買い物…残念だった…ね」
「まだそれ言ってんのか…」
「ん……」
「どうした。」
「今日三人でお買い物してる時にすごく派手なお店があったの!!八戒に聞いたら『悟浄の好きなお店だろう』って言われたの!そしたらね?中からお姉さん出てきたんだけどそれ見て八戒『やっぱり…』って!」
「それで?」
「メイドさんって格好しててね?私も着たいなぁって思ったら八戒に満面の笑みで全力に反対された…そしたらお姉さんが似合うと思うよ?何て言ってくれたりね?」
「……なるほどな」
「え?何がなるほど?」
キョトンとした顔で雅は三蔵を見つめた。
「俺もその店の近くを通ったんだ。そうしたらやっぱり声かけられた。」
「…入った?」
「入るかよ!」
「…それで?」
「なんか色々話してくるから聞いてたら、『さっき来たメガネさん達にもフラれちゃった』なんとか言っていたからな。」
「そっか!今度一緒に行ってみる?」
「ばかだろ」
「むぅ……じゃぁ悟浄と行ってくる」
「冗談にもならねえ」
「だって!」
「だってじゃねえよ。マジで自覚あんのか?てめえは。」
「自覚?自覚って…?」
そう聞く雅を三蔵はベッドに押し倒した。
「お前は誰の女だってんだよ…」
「…ッッそれは…」
「言えよ」
三蔵が高圧的で命令口調なのはいつもの事だ。それでも、雅は今宵だけは少し意地悪をしたくなっていた。
「誰の女かって…三蔵が一番知ってるでしょ?」
「さぁな。どうだか」
「そうなの?私てっきり知ってくれてるものだと思ってたけど?」
「女の心は変わりやすいからな」
「…そぉなの?」
「現に悟浄にも靡いたことあるじゃねぇか」
「ないよ」
「言い切れんのかよ」
「うん」
そっと三蔵の金糸の髪に指を滑らしにこっと笑った雅。
「意地悪しすぎたね、ごめん」
「ぁん?」
「私は三蔵のよ?三蔵が要らねぇよって言うまでずっと…」
「フッ…だったら今後ずっと俺のものだな」
「モノ扱いは…って、それって…」
「なんだ、不満か?」
「じゃなくて!」
「ぎゃぁぎゃぁ騒ぐな…キスできねぇだろうが…」
そういい、三蔵の顔がゆっくりと近付く。ふわりと重なるその唇は何度も重なっては離れていく。しかしふと三蔵は思いだした。
「…悪い…」
「え?」
「……」
ゆっくりと体を離してベッドの上に座り直すと頭を掻いた。
「…三蔵?どうかした?体調悪い…?」
「そうじゃねえよ…俺の問題だ…」
「…そか……」
少し寂しそうな顔をした雅をみて三蔵は小さくため息を吐くと抱き寄せた。
「雅が悪い訳じゃねえよ…」
「でも……」
「俺の用意が足りなかった、それだけだ…」
「用意って…?」
「……構うな……」
「用意って……なんの?」
「…ッッ…」
しかし本当に解っていないのだろう、雅は腕のなかで純粋に聞いてくる。
「……付けるもの…切らしてる」
「…付けるものって……あ…」
「やっとかよ…」
「三蔵の言い方が…悪い…」
「今日、買いに行ったんだが……あの店は入れねえ…」
「あの店って…」
「雅も前通ったんだろう?まっピンクの…」
「あ…そこ?」
「あぁ。」
「だったらなおさら明日行ってみる?」
「煽ってんのか…お前は…」
「そういうつもりは…あ、だから悟浄と一緒はダメって…」
「それ以外に何がある」
「フフ……クスクス…」
「何がおかしい…」
小さく笑いだした雅。今度は三蔵が理由が解らなかった。
「おい、笑いすぎだろうが…」
「ごめんね……そういえばね?」
「話すり替えんな」
「変えてないよ?…えっと…あ、こんなところに…」
「ぁん?……てか…なんで…」
「さっき悟浄にもらった。『三蔵の為じゃねえ、馴れずにヤったら雅がかわいそうだ』って…三蔵に渡したら解るって言ってたけど…」
「あのバカ…明日殺す…」
「え…?なんで?」
「持ってねえって言ったのどいつだよ…」
「えっと……なんの事?」
「…いや、いい」
「…これ、使う?」
「使わねぇ」
そう言うとそっと抱き寄せ、そのままベッドに寝転がると、そのまま抱き締めている。
「今夜はこのままでいい」
「…三蔵?」
「なんだ」
「ちゅぅ……して?」
「ッ…クス……上向け」
そう言いながらそっと唇を重ねたのだった。
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