凜恋心

降谷みやび

文字の大きさ
上 下
83 / 94

battle67…あなたの愛で繋いで (後編 : side八戒・悟浄・悟空編)

しおりを挟む
そうして三蔵と一緒に雅は昨夜と同様に部屋に戻っていく。部屋を出た後に残された三人。八戒以外はどうにも腑に落ちないのか、問いただしていた。

「なぁ、八戒?」
「なんですか?」
…何にもなかったのか?」
「……何の事ですか?」
「雅とあの怜音ちゃん」
「俺もそう思う。なんか…雅がいつもと違う。」
「違うって…そういわれましても…」
「それにさ?タイミング良く帰りが一緒になるとも思えねえんだわ」
「……なぁ、八戒。」
「なんですか?悟空」
「もしさ……もしなにか隠してるなら、言ってくんね?雅の事も、あの怜音って子の事も。一緒に居る仲間だろ…?」
「三蔵に言わせりゃだけどな」
「……まぁ、雅もうそが下手ですからね……」
「…やっぱり。なにかあったんだろ?」
「正直、途中からでしか解らないのですが…」

そういって八戒は観念したと言わんばかりに話し出した。

「……それで、三蔵をくれと言っていたんですよね」
「三蔵ものじゃねえし!!」
「はい。まさに雅もその返事でした。そしたらひっぱたかれたってオチです。」
「なんだそりゃ……」
「雅…大丈夫かな…」
「悟空……」
「だってさ…雅全然悪くねえじゃん。いきなり言われて、それで殴られて……おかしいじゃん。そんなこと。」
「そうかも知れないんですけど…」
「で?雅はなにも言わなかった訳?」
「えぇ。なぜかと聞いたら『今もし結婚してると言っても離したくないだけの嘘だと取られるだろうから…』と。」
「嘘でもなんでもないじゃん!」
「…はぁ」
「でもさ?三蔵に貰った指輪してたじゃん。雅ずっと!!」
「そうなんですけど…女心って難しいものなんですよ…」

そう答えていた八戒。しかし途中からずっと黙ったままの悟浄の事が気になっていた。

「…悟浄?」
「……いや…何て言うかさ…難しいとかそういう風に考えてんのも解るんだけど…」
?何?」
「納得云々じゃなくて…」
「何が言いたいんですか?」
「……うぜえ」
「三蔵みたいだ……」
「あのクソ坊主と一緒にすんな、」
「悟空?大丈夫です。僕も同じこと思いましたから。」
「だろ?……でも、悟浄が珍しいのな。あの見た目かわいい子に対してウゼエって……」
「酒と女にはうるさいのよ。俺」
「自分で言うんですか…」

そう茶化しながらもふと真顔になった悟浄は改めて話し出す。

「恐らく、雅の傍を三蔵が離れないからよっぽどは良いと思うんだけど…」
「そうなんです。ただ、どうしても一緒じゃない場所やタイミングも生まれる訳でして…」
「そうだよな…」
「ずっと一緒にいればいいじゃん。」
「風呂やトイレは無理だろうが」
「あ、そっか…」
「全く……お猿ちゃんには回りきらない頭があっても仕方ねえんだけどよ」
「猿って言うな!」
「……心配…ですね…あの二人」
「だな……」

そう返事をしながらもどうにも動きようがなかった。そんな時、『あっ』といいながら悟空が何かをひらめいたようだった。

「どうした?」
「悟空?何かありましたか?」
「悟浄が怜音をナンパしたら?」
「……あーー……わり。いくら表かわいくても…俺今回は無理だわ…」
「そっか…良い手だと思ったんだけどな…」
「悟空にしては良い案だったんですけどね…」
「本気で言ってんのか?」
「うん…意外と本気だった…でも…ごめん」

そういいながらも悟空は旬とした様子を見せていた。煮詰まった様子の三人は小さくため息を吐くしか出来ずにいた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...