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battle39…傷だらけの導
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花火が終わる前に三蔵は宿に戻ると言い出した。雅の歩きにくさを考慮しつつ、自身も人混みが苦手なのと両方で…
「三蔵…」
「なんだ」
「今日はありがとう…花火…付き合ってくれて…」
「なんて事ねぇだろ。この位。」
「悟浄も一緒じゃないのが少し残念だね」
「要らねえ」
「クスクス…」
「それともなんだ…雅は俺と二人よりもみんなでわいわい…のがいいってのか?」
それは三蔵にしては珍しいことだった。
「どっちも私は嬉しいけど、三蔵と二人ってのもすごく嬉しい」
「…なんだそりゃ…」
そういいながらも人混みをすり抜けながらも二人は宿に戻っていった。
翌日、朝になれば悟浄も戻ってきており、一行はジープに乗り込んで次の街に向かっていった。
「なぁな!!次の街までどのくらいだ?」
「今度の街は近いみたいですよ?」
「そっか!!でもさ、昨日の花火、めっちゃきれいだったなぁ…」
「俺も見たかったわ、雅の浴衣姿…」
「めっちゃかわいかった!」
「ね、悟空、もうそれいいから…」
「照れんなよ!三蔵もすげぇ珍しかったし…!あぁいうのもたまにはいいのな!!」
そう話していた。途中で昼食も摂り、出発して目的地も目前と言う時だった。妖怪の一群が襲ってきた。
「三蔵一行ぉぉ!!その命と経文!俺たちがいただくぞぇぇい!!」
「いい加減聞き飽きたな……この台詞も」
「下らねえ事言ってねえで、さっさと殺れ」
そういわれて悟空と悟浄はジープを降りた。
「でも、まぁ、街に入る前でよかったんじゃ無いですか?」
「フン……それもそうだな」
そう話していた。雅は相変わらずちょんっとジープの上に乗っていた。雅を狙いに来るものも三蔵の昇霊銃が唸りをあげる。
「終わったな」
「さっさといこうぜ、もう目の前なんだから!」
そういってジープに乗り込むと最後の一踏みをした八戒。街に入ると雅は顔をしかめた。
「……ンッッ」
「どうした?雅」
「……なんでも無い、なんか…変な感じがしたけど……」
「変な感じ…ですか?」
「俺、なんも感じなかったぞ?」
「そうですね…確かに……」
気のせいだと感じた雅も一緒にとりあえず宿に向かう。
「五人だ。」
「女性の方がお一人に男性の方が四人ですね、ご案内致しますね」
そう言われて雅が一人部屋、残りを一部屋に納められた。
「おんやぁ、これは一体…」
「まぁ、こういう街なんでしょう…」
「…ハァ…」
「なんか三蔵が不機嫌じゃね?」
「まぁま、悟空、察してあげてください?」
そう話していた。その日、夕飯も食べに出る。
「宿屋にないのも珍しいですね」
「ほんとだね…」
「なんでもいいが、……」
「三蔵?」
「なにかありましたか?」
「……いや…」
そう答えると三蔵はふと目をを伏せた。夕飯が終わると悟空と悟浄は浮かれ気分になり、街に出ていく。
「三蔵…すみません、あの二人だけではどうも心配です。先に雅と宿に戻っていてください?」
「…チ、解った」
そう答えると雅は三蔵と一緒に宿に戻っていった。
「悟空も悟浄も相変わらずだね」
「全く。集団行動もなにもあったもんじゃねぇ」
「集団行動、本当、苦手だよね…」
「いい大人が…」
「クスクス…」
小さく笑い合いながらも二人は他の三人よりも早くに宿に戻ると部屋をそれぞれ別に入っていった。
「あ、三蔵」
「なんだ」
「……白竜…借りてもいい?」
「何すんだ」
「一人じゃ嫌だから…」
「…いいんじゃねぇか?」
そう言われ白竜を預かり、雅は一緒に部屋に戻っていった。
「白竜、一緒にいようね!」
「キュキュキューー!」
「ありがとう」
そう言いながらも一緒にベッドに座っていた。力を具現化させ、白竜に見せると嬉しそうにその小さな玉で遊んでいる白竜。夜も遅くなった時、まだ帰ってきてないのだろう、心配になって雅は三蔵の居る部屋に向かった。
コンコン
『…誰だ』
「あ、ごめんね?はいっていい?」
そう声をかけて雅は三蔵の部屋に入る。三蔵のベッド以外はやはり空だった。
「やっぱり…皆まだ戻ってなかったんだ…」
「あぁ、どこで何してるんだか…」
そう話していた時だ。宿主がやってきた。
「こちらにいましたか、お客様はお部屋にお戻りください。そして三蔵法師様、お話が…」
「なんだ、こんな時間に」
「お連れ様が何やら捕まってしまったらしく。迎えに行って欲しいと連絡がありまして…」
「なんだと?」
「捕まったって……皆?」
「えぇ、三人ともらしいのですが…」
「ハァア…」
そうため息を吐き、雅に『部屋に戻ってろ』と言い残し、三蔵は宿主に着いていくことにした。
「三蔵!!」
「なんだ」
そう呼び止めると雅はネックレスを外して三蔵に手渡した。
「……持ってって?」
「何のため『いいから…!』……迎えに行って来るだけだ」
「……気を付けてね?お願い…」
「あぁ。」
そうして雅はただ、三蔵を見送るしか出来ずに白竜の居る部屋に戻ることになった。
「白竜…大丈夫かな…」
「キュキュ…?」
「大丈夫…考えすぎだよね……」
「キュキュゥゥゥ」
そうしてなかなか眠れずにいた。
一方の三蔵は、宿主に連れられて一件の大屋敷にやってきた。
「…おい、どこまで行く気だ」
「こちらです。他の街人が簡単に入れない様に奥まっているので……」
「…フン、それで?あのバカ共は何をしたんだ…」
「……それは私には解りかねます。」
そう答えを聞いた三蔵は少し不思議に思いながらも着いていくしかなかった。なんの音沙汰も無く、真夜中になっても誰も帰ってこない…それにはなにかの理由があるのだろうと考えていたものの、八戒まで一緒に捕まるとは、考えてもいなかった。
「……こちらです。どうぞ」
そう促された先にいたのはこの街の町長とされている男の元だった。
「これはこれは、三蔵法師様。よくいらしてくださいました。」
「来たくて来た訳じゃない。」
「私は一度あなたと話がしてみたくて」
「俺はお前に用はない。うちのバカ共を引き取ったら戻らせてもらう。」
「……それは出来るでしょうか…」
「なんだ……ッッ」
いきなり三蔵の足元ががぱっと開き、三蔵はまっ逆さまに落ちていく。
「チッ……」
「私との話を拒むからですよ…」
そう頭上で声がした。しかし次の瞬間に三蔵の目の前には何人とも言えぬほどの妖怪がいたのだ。
「ぐえへへへへ」
「タク…鬱陶しい…」
「お尋ね者の玄奘三蔵!!その命と経文!!俺たちが頂いた!!!!」
「……うるせえんだよ!」
ジャカっと銃を構える三蔵。
「こんな場所で無駄に撃ったらお前も道連れになるぞぉぉぉぉ!!!」
しかしそんな妖怪の言葉に耳を貸すわけも無く、三蔵は天井に付いているランプをめがけて撃っていく。五発撃ち、全て命中させると回りは暗闇になる。その間を縫って三蔵は走り出した。途中、弾を入れ直しながらも走り抜けていく。それでも後ろからやって来る妖怪、前を塞ぐ妖怪……様々居るが、撃ち殺していくものの、三蔵一人に対して相手にする妖怪の数は多すぎた。
ようやく外の光が見えたと思えば、そこには今までの数以上の妖怪が回りを固めている。
「……あぁ…・・・あの時と同じだな…」
そう。三蔵の頭には三蔵を受け継いだときに山から降りる最中の様子が色濃く甦ってきた。初めて妖怪を殺した時の事…雨に濡れているのか、それとも自身の涙で濡れているのか…それすらも解らない頬の跡…回りを囲まれ、飛びかかられるその時だ。
『さーんぞ!』
雅の顔がふと三蔵の頭をよぎった。首にかけてきた渡されたネックレスがシャラっと揺れ、意識を取り戻す。
「あの頃の俺とは…違うんだよ…・・!!」
そう誰に言うでもないまま呟くと、銃を再度構え直し、妖怪達に向けて発砲していった……
その頃の悟空や悟浄、八戒はようやく地下で目を冷ますこととなる。
「……ン…あ…れ?」
「……ん…・・・」
「い……てて…ここは…」
「って…三蔵は?!」
「いませんね…僕らだけでしょうか…」
「んー、辛気くせぇなぁ…」
「お目覚めですか?」
そう声をかけてきたのは街の人だった。
「あの…ここって…」
「よそ者や旅の方は…我が街の為に生け贄になってもらいます。」
「なんの冗談だ?」
「冗談じゃない。妖怪と共存するにはこれしか方法が無いんだよ…」
そういうだけ言って、街の人はその場を離れた。
「ちょ…っ!!それじゃぁ…三蔵や…雅は!?」
「困りましたね…」
「ーーーーーー・・・!!!!」
「なぁにやってんだ?悟空」
「……ッッはぁぁぁぁぁ…開かねぇ…」
「素手で開けるつもりだったのかよ」
「だって!!このままじゃ三蔵が!ダメだろ!!」
「……悟空」
「ま、三蔵もだけど…あいつはまだ銃持ってっからいいだろうけど…」
「雅、ですね」
「……!ダメじゃん!!どっちにしても!!」
そう言いながらも開かない牢屋を握りしめていた悟空。
「…悟空?ちょっと退いてください?」
「え……?」
そう言うとどこからともなくスッと針金を取り出した八戒。鼻唄を歌いながらもカチャカチャとやっている内にカチャっと音がして、重たい鍵はガチャっと落ちていった。
「八戒……すげぇ…」
「こいつ…マジですげえな…」
そう言われながらも八戒はにこやかに笑うと外に出ていき表に出ようとしていた。
その頃の雅はどうしても眠りに付くことが出来ずに待っていた。しかしなにか胸騒ぎがする。
「なんだろう…この感じ……」
胸騒ぎと言うにも少し違う……怖い様な…なにか嫌なことが起こっているような……そんな気持ちに刈られていた。ベッドを抜け出し、白竜を連れて部屋を出ようとした。
「おや?こんな夜更けにどちらへ?」
扉を開けた瞬間に、見張りと言わんばかりに街の人がいた。
「え…っと、ちょっと……」
「困りますねぇ…しっかりとお休みになってください?」
そう言われ部屋に押し込まれる雅。何かがおかしい。街の入り口を入った瞬間に感じた違和感と何か似ている。窓を開け、下を見る。
「白竜……行けるかな……」
「キュキュ!」
「そうだね…やってみなきゃ解んない……」
そう呟くとシーツを裂き、結ぶと、ゆっくりと降り出した。恐怖心よりも『何か』解らないけど呼ばれている様な気がしてならない雅は、やっとの思いで降りきった。
「どっちだろ…」
「キュキュー!」
「…こっち?」
白竜が教える方を向いて走り出した。バレない内に、誰よりも早く……行かなくては行けない…そんなことを考えていた。一際明るく、大きい建物が見えてきた。白竜も声をあげる。
「あそこ?なんだろ…あの場所……」
しかし、少し離れた場所から明かりを灯した人、桑や木の棒を持った人、色々な人が追いかけてきているのを気付いた雅は、跳ねる鼓動を押さえながらも、遠いまま、なかなか近付いてこない建物を目指していた。
「お願い……ハァハァハァ……頑張って……ッッ…私の…ハァ…足……お願い……」
そう言いながらももつれる足をなんとか前にと踏み出す。大きな門が開いた時だ。
「雅!!」
その声を聞いた雅は目の前の三人の元に近付いてくる。
「よかった…逢えた……ハァハァ…三蔵……は?」
「一緒じゃねえのか?」
「キュキュ!」
「白竜も…」
「三蔵は?!」
しかしその問いに誰も答える間もなく、街の人が囲んでくる。雅は力が抜け、倒れそうになる寸でで悟浄に抱き止められた。
「お前達に罪はないけど……」
「そうだ…妖怪に襲われない…安心して生きていくには街の人間以外に犠牲になってもらわないと…」
「あんた達……それ本気で言ってるのかよ!!」
「もちろんだ!それでこの街が平和なら……見知らぬ旅人さんに犠牲になってもらわなきゃ…」
「おかしいよ……そんなの…」
「雅……」
「おかしかろうと、それが俺たちの選んだ道だ!」
「…あなた方の言い分は解ります。守りたい気持ちも…でも、僕らにもあるんですよ。守りたいものがあるのはあなた達だけじゃあない…」
「かかれー!!!」
そういって街人がほぼ総出だろうか、近付いてくるときだ。
パァァァン……
ひとつの聞きなれた銃声が空に響いた。
「……退け」
「まさか……生きてるはずなど……」
しかし、血だらけで、傷を深傷に負っている三蔵を見て街人はその場を動けなくなっていた。三蔵の『退け』に街人は左右に割れ、一行までの道が出来る。
「何をしている!捕まえろ!」
そういう宿主や町長の言葉も街人には届いていないのか、未だ誰も動けなかった。しかしそれは街人だけでなく雅も同様だったのだ。
「さんぞ…ぉ?」
「…おいおい」
「おぃ…さ…三蔵!?」
悟空が歩みよりその腕の中に三蔵は倒れ込んだ。シャラっとまたも雅のネックレスが零れ出るも、今の三蔵にはもう服の中に戻す気力もなかった。
「…やっぱり……あの頃とは違うな……」
「え?」
そう呟いた三蔵は朦朧とした意識の中でも町長との会話が出来ていた。
「あの妖怪共がいて……人間などそんなに強くなどあるはず無い…!生き延びるなど…!」
「……生き延びてやるさ…胸はって死ぬためにな…それに…これが俺達の選んだ道だ…」
そう言い残して悟空に担がれながら三蔵は歩いていく。その後ろを八戒や悟浄、雅も着いていく。
「三蔵…」
「なんだ」
「今日はありがとう…花火…付き合ってくれて…」
「なんて事ねぇだろ。この位。」
「悟浄も一緒じゃないのが少し残念だね」
「要らねえ」
「クスクス…」
「それともなんだ…雅は俺と二人よりもみんなでわいわい…のがいいってのか?」
それは三蔵にしては珍しいことだった。
「どっちも私は嬉しいけど、三蔵と二人ってのもすごく嬉しい」
「…なんだそりゃ…」
そういいながらも人混みをすり抜けながらも二人は宿に戻っていった。
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「…ハァ…」
「なんか三蔵が不機嫌じゃね?」
「まぁま、悟空、察してあげてください?」
そう話していた。その日、夕飯も食べに出る。
「宿屋にないのも珍しいですね」
「ほんとだね…」
「なんでもいいが、……」
「三蔵?」
「なにかありましたか?」
「……いや…」
そう答えると三蔵はふと目をを伏せた。夕飯が終わると悟空と悟浄は浮かれ気分になり、街に出ていく。
「三蔵…すみません、あの二人だけではどうも心配です。先に雅と宿に戻っていてください?」
「…チ、解った」
そう答えると雅は三蔵と一緒に宿に戻っていった。
「悟空も悟浄も相変わらずだね」
「全く。集団行動もなにもあったもんじゃねぇ」
「集団行動、本当、苦手だよね…」
「いい大人が…」
「クスクス…」
小さく笑い合いながらも二人は他の三人よりも早くに宿に戻ると部屋をそれぞれ別に入っていった。
「あ、三蔵」
「なんだ」
「……白竜…借りてもいい?」
「何すんだ」
「一人じゃ嫌だから…」
「…いいんじゃねぇか?」
そう言われ白竜を預かり、雅は一緒に部屋に戻っていった。
「白竜、一緒にいようね!」
「キュキュキューー!」
「ありがとう」
そう言いながらも一緒にベッドに座っていた。力を具現化させ、白竜に見せると嬉しそうにその小さな玉で遊んでいる白竜。夜も遅くなった時、まだ帰ってきてないのだろう、心配になって雅は三蔵の居る部屋に向かった。
コンコン
『…誰だ』
「あ、ごめんね?はいっていい?」
そう声をかけて雅は三蔵の部屋に入る。三蔵のベッド以外はやはり空だった。
「やっぱり…皆まだ戻ってなかったんだ…」
「あぁ、どこで何してるんだか…」
そう話していた時だ。宿主がやってきた。
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「なんだと?」
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「ハァア…」
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「三蔵!!」
「なんだ」
そう呼び止めると雅はネックレスを外して三蔵に手渡した。
「……持ってって?」
「何のため『いいから…!』……迎えに行って来るだけだ」
「……気を付けてね?お願い…」
「あぁ。」
そうして雅はただ、三蔵を見送るしか出来ずに白竜の居る部屋に戻ることになった。
「白竜…大丈夫かな…」
「キュキュ…?」
「大丈夫…考えすぎだよね……」
「キュキュゥゥゥ」
そうしてなかなか眠れずにいた。
一方の三蔵は、宿主に連れられて一件の大屋敷にやってきた。
「…おい、どこまで行く気だ」
「こちらです。他の街人が簡単に入れない様に奥まっているので……」
「…フン、それで?あのバカ共は何をしたんだ…」
「……それは私には解りかねます。」
そう答えを聞いた三蔵は少し不思議に思いながらも着いていくしかなかった。なんの音沙汰も無く、真夜中になっても誰も帰ってこない…それにはなにかの理由があるのだろうと考えていたものの、八戒まで一緒に捕まるとは、考えてもいなかった。
「……こちらです。どうぞ」
そう促された先にいたのはこの街の町長とされている男の元だった。
「これはこれは、三蔵法師様。よくいらしてくださいました。」
「来たくて来た訳じゃない。」
「私は一度あなたと話がしてみたくて」
「俺はお前に用はない。うちのバカ共を引き取ったら戻らせてもらう。」
「……それは出来るでしょうか…」
「なんだ……ッッ」
いきなり三蔵の足元ががぱっと開き、三蔵はまっ逆さまに落ちていく。
「チッ……」
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「こんな場所で無駄に撃ったらお前も道連れになるぞぉぉぉぉ!!!」
しかしそんな妖怪の言葉に耳を貸すわけも無く、三蔵は天井に付いているランプをめがけて撃っていく。五発撃ち、全て命中させると回りは暗闇になる。その間を縫って三蔵は走り出した。途中、弾を入れ直しながらも走り抜けていく。それでも後ろからやって来る妖怪、前を塞ぐ妖怪……様々居るが、撃ち殺していくものの、三蔵一人に対して相手にする妖怪の数は多すぎた。
ようやく外の光が見えたと思えば、そこには今までの数以上の妖怪が回りを固めている。
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そう。三蔵の頭には三蔵を受け継いだときに山から降りる最中の様子が色濃く甦ってきた。初めて妖怪を殺した時の事…雨に濡れているのか、それとも自身の涙で濡れているのか…それすらも解らない頬の跡…回りを囲まれ、飛びかかられるその時だ。
『さーんぞ!』
雅の顔がふと三蔵の頭をよぎった。首にかけてきた渡されたネックレスがシャラっと揺れ、意識を取り戻す。
「あの頃の俺とは…違うんだよ…・・!!」
そう誰に言うでもないまま呟くと、銃を再度構え直し、妖怪達に向けて発砲していった……
その頃の悟空や悟浄、八戒はようやく地下で目を冷ますこととなる。
「……ン…あ…れ?」
「……ん…・・・」
「い……てて…ここは…」
「って…三蔵は?!」
「いませんね…僕らだけでしょうか…」
「んー、辛気くせぇなぁ…」
「お目覚めですか?」
そう声をかけてきたのは街の人だった。
「あの…ここって…」
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「なんの冗談だ?」
「冗談じゃない。妖怪と共存するにはこれしか方法が無いんだよ…」
そういうだけ言って、街の人はその場を離れた。
「ちょ…っ!!それじゃぁ…三蔵や…雅は!?」
「困りましたね…」
「ーーーーーー・・・!!!!」
「なぁにやってんだ?悟空」
「……ッッはぁぁぁぁぁ…開かねぇ…」
「素手で開けるつもりだったのかよ」
「だって!!このままじゃ三蔵が!ダメだろ!!」
「……悟空」
「ま、三蔵もだけど…あいつはまだ銃持ってっからいいだろうけど…」
「雅、ですね」
「……!ダメじゃん!!どっちにしても!!」
そう言いながらも開かない牢屋を握りしめていた悟空。
「…悟空?ちょっと退いてください?」
「え……?」
そう言うとどこからともなくスッと針金を取り出した八戒。鼻唄を歌いながらもカチャカチャとやっている内にカチャっと音がして、重たい鍵はガチャっと落ちていった。
「八戒……すげぇ…」
「こいつ…マジですげえな…」
そう言われながらも八戒はにこやかに笑うと外に出ていき表に出ようとしていた。
その頃の雅はどうしても眠りに付くことが出来ずに待っていた。しかしなにか胸騒ぎがする。
「なんだろう…この感じ……」
胸騒ぎと言うにも少し違う……怖い様な…なにか嫌なことが起こっているような……そんな気持ちに刈られていた。ベッドを抜け出し、白竜を連れて部屋を出ようとした。
「おや?こんな夜更けにどちらへ?」
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「困りますねぇ…しっかりとお休みになってください?」
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「…こっち?」
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「お願い……ハァハァハァ……頑張って……ッッ…私の…ハァ…足……お願い……」
そう言いながらももつれる足をなんとか前にと踏み出す。大きな門が開いた時だ。
「雅!!」
その声を聞いた雅は目の前の三人の元に近付いてくる。
「よかった…逢えた……ハァハァ…三蔵……は?」
「一緒じゃねえのか?」
「キュキュ!」
「白竜も…」
「三蔵は?!」
しかしその問いに誰も答える間もなく、街の人が囲んでくる。雅は力が抜け、倒れそうになる寸でで悟浄に抱き止められた。
「お前達に罪はないけど……」
「そうだ…妖怪に襲われない…安心して生きていくには街の人間以外に犠牲になってもらわないと…」
「あんた達……それ本気で言ってるのかよ!!」
「もちろんだ!それでこの街が平和なら……見知らぬ旅人さんに犠牲になってもらわなきゃ…」
「おかしいよ……そんなの…」
「雅……」
「おかしかろうと、それが俺たちの選んだ道だ!」
「…あなた方の言い分は解ります。守りたい気持ちも…でも、僕らにもあるんですよ。守りたいものがあるのはあなた達だけじゃあない…」
「かかれー!!!」
そういって街人がほぼ総出だろうか、近付いてくるときだ。
パァァァン……
ひとつの聞きなれた銃声が空に響いた。
「……退け」
「まさか……生きてるはずなど……」
しかし、血だらけで、傷を深傷に負っている三蔵を見て街人はその場を動けなくなっていた。三蔵の『退け』に街人は左右に割れ、一行までの道が出来る。
「何をしている!捕まえろ!」
そういう宿主や町長の言葉も街人には届いていないのか、未だ誰も動けなかった。しかしそれは街人だけでなく雅も同様だったのだ。
「さんぞ…ぉ?」
「…おいおい」
「おぃ…さ…三蔵!?」
悟空が歩みよりその腕の中に三蔵は倒れ込んだ。シャラっとまたも雅のネックレスが零れ出るも、今の三蔵にはもう服の中に戻す気力もなかった。
「…やっぱり……あの頃とは違うな……」
「え?」
そう呟いた三蔵は朦朧とした意識の中でも町長との会話が出来ていた。
「あの妖怪共がいて……人間などそんなに強くなどあるはず無い…!生き延びるなど…!」
「……生き延びてやるさ…胸はって死ぬためにな…それに…これが俺達の選んだ道だ…」
そう言い残して悟空に担がれながら三蔵は歩いていく。その後ろを八戒や悟浄、雅も着いていく。
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極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
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