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battle66…あなたの愛で繋いで(中編)
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八戒の数歩前を歩いて三人部屋に向かっていく三蔵。
「入るぞ」
ノックも無しにがチャリと入っていく三蔵。悟空は傍について、ベッドの上では悟浄に巻き付いたままの雅と、三蔵が来た事ではぁっとため息を吐きながら小さく左右に首を振る悟浄がいた。
「ハァ…おい」
その言葉に雅の肩はビクリと震えた。
「…部屋戻るぞ」
「……だって…怜音さん…」
「居ねえよ」
「…ちょっと…三蔵?」
「なんだ」
「何があってこうなった?」
「ここの宿主の娘に抱きつかれた時に雅が戻ってきた。それだけだ」
「それだけって……」
「雅、戻るぞ?」
「……」
「ほら、雅?三蔵迎えに来たぞ?」
そういわれてゆっくりと離れるものの、雅はうつむいていた。
「何も……無かった?」
「ぁん?」
「怜音さんと…何も無かった?」
「ある訳ねえだろうが。そこの悟浄と一緒にするな」
「ひっでぇ…クス……だそうだ。」
「……ッ」
ベッドから降りると雅は無言で三蔵に巻き付いた。
「あーあ、いちゃつくなら部屋行ってやれ」
「……戻るぞ」
そう言いながら部屋を出る二人。残された部屋では八戒がため息を吐いていた。
「どうしましょうね…」
「どうした訳?巻き付かれたって…」
「僕が行った時からでしか解りませんが…怜音さんが三蔵に巻き付いていたのは間違いないです。そして三蔵が腕を回しもせずに退けと言っていたのも間違いないのですが…」
「……それだけで雅…あぁなる?」
「何があったのかは解りませんが…あの三蔵ですから……間違いなんて言うのは絶対あり得ないはずですが…」
「三蔵が他の女の人といちゃつくって事?」
「そうなんだけどな?悟空」
「あり得ねぇよ!あの三蔵が雅以外とって?」
「だろ?」
そう話していた。しかし、宿を変えることも出来ず、とりあえずは要注意しながらというかたちになるだろうということも伝えた。
その頃の三蔵と雅は、無言の空気が張り詰めていた。
「……三蔵…」
「なんだ」
「私、信じてる…」
「は?」
「怜音さんとなにも無かったって…」
「信じてる何て口に出すもんでもねえよ」
「…でも…!」
「言い聞かせなくても他の女何て興味ねえし俺にはいらない」
「知ってる……」
「知ってるならなんで逃げて、挙げ句悟浄の腕の中に居た」
「……だって…」
「だってなんだ」
「私……すごく嫌な子……だから…」
「…どういう意味だ」
そう言うと雅はきゅっと両手を握り、唇を噛んでいた。
「どう言うことだって聞いてんだろうが」
「だって…三蔵の事好きだって…好意抱く子がいると三蔵取られちゃうんじゃないかって…心配で…不安で…会う人みんなに三蔵は私のって言いたくなるし……」
「…ハァ…バカかお前は」
「……ッッ」
返事のない雅の前にやって来ると三蔵は触れることもないまま上から見下ろしていた。
「顔上げろ」
「……」
「上げろって言ってんのが聞こえねえのか」
「……三蔵…」
ゆっくりと顔をあげ、三蔵の顔を見る雅。相変わらずタレ目の、細いアメジストアイが雅を見つめていた。
「信じてるとか、言わなくても良いだろう。俺は知ってるし、雅だってそうだろうが」
「……ん」
「それが解っていて口にするってのは、自分に言い聞かせてるしかねえ。違うか?」
「…ッッ」
「こんな年の瀬になにやってんだか……たく」
「三蔵……」
そう名前を呼び、雅は直ぐに手の届く位置にある、その体にゆっくりと腕を回す。それに応えるかの様に三蔵もまた背中に腕を回した。
「ごめんね?こんな嫌な子で…」
「どの口が言ってやがる…」
「だって…三蔵嫌いでしょ…こう言うの…」
「だから言わなかったってか?」
「…ん」
「フン、まさか好きな女の我が儘ひとつも聞けない程心狭い男だと思われているとは、思っていなかったがな」
「…え?」
「言わなきゃ解らねえだろうが。俺はカミサマじゃねえし」
「三蔵……」
「ま、雅の言う我が儘なんて、我が儘でもなんでもない」
「…我が儘だよ…」
「ほう?」
「だって…本当は誰も他の女の子に触れられて欲しくないし…さっきみたいに抱きつかれたりとか…嫌だし…三蔵の声耳元で聞けるのだって…私だけが良いし…それに」
「まだあんのか」
「……あきれるでしょ…」
「フン…くだらねぇ」
そう言うと三蔵はそっと腕を緩めて頬を包み込む様に触れると、じっとまっすぐ見つめたまま話し出した。
「だったら俺も言わせて貰う」
「…三蔵?」
「悟浄に触れんな。泣きたくなっても悟浄の所に行くな、っていうか、あの男に近付くな。」
「…クスクス…相手悟浄ばっかり」
「嫌なんだよ。泣いてる時に泣いてるのが、いつもあいつの腕の中だってのが。」
ふっと口角を上げながらも三蔵は話していた。
「なんで悟浄相手だとそんなに反抗期の子供見たいになってるの?」
「うるせぇよ」
「ねーねー!!」
「黙れ」
そう短く応えると三蔵は引き寄せて雅を抱き寄せると唇を重ねた。
「そぉいえば、さっき悟浄言ってたの、なに?」
「…気にすんな」
「するよ、このリングでしょ?」
「…たく…悪かったな…歪で…」
「えー?そんなこと無いよ?何で?」
「俺が作った…」
「嘘……」
「嘘吐く意味あるか?こんなことで」
「だって…!いつ?」
「誕生日の少し前…つか、悟浄の誕生日にいた街。あそこで作った。」
「…だってあの時…毎日出掛けてて……あ」
「こうなるから言いたくなかったんだが…」
「三蔵…照れてる?」
「…ッッうるせえよ…」
「ありがと…知らなかった…」
「もう、先に寝ろ」
「……三蔵は?」
「もう少し起きてる」
「じゃぁ…私も…」
「無理するな。先に寝ろ」
そうして雅をベッドに入れると三蔵は椅子に座りたばこをだす。火を付け、プカリと吹き上げた。
「チッ…悪趣味な女だな…」
プツリと呟くと気づかない振りをしてたばこをふかしていたのだ。そう、扉の外では怜音が盗み見ていることに気付いていた三蔵。今雅と離れたらあの女は何をするか解らない…そう考えて三蔵は怜音が離れ行くまで起きているつもりでいたのだ。
翌朝、寝不足になっている三蔵。それでも普通に起き、何もなかったかの様に振る舞っている。大晦日当日で、のんびりと過ごしていた。そんな中での昼下がり、雅の元に怜音がやってきた。
「あの……ちょっと良いですか?」
「え……私、ですか?」
「はい、ちょっとお聞きしたいことがありまして……」
「あ、何でしょう…」
「ここじゃ…少し……聞きにくくて」
「ここで話せ。」
「三蔵…ッ!!」
「俺等がいたら不都合なのか?」
「…ちょっと、女性同士の話で……」
そう言いながらもあざとさが残りつつも、じっと雅を見ていた怜音。
「…解りました。」
「雅!!」
「心配ないよ、直ぐ戻るし!!」
そういって雅は怜音に連れられて部屋を出ていった。それをみた三蔵は不機嫌極まりなかった。
「どうしたよ、三蔵」
「…なんでもねえよ」
「なんでもねえよ、の皺には見えねえくらいふっかい皺が入ってんぞ?」
そう言いながらも悟浄は眉間に手を当てた。
「うるせえよ…」
しかし、連れていかれた雅の事が気になって仕方なかった。その時だ。八戒が席を立った。
「どぉこ行くの?」
「お手洗いです。一緒に行きますか?」
「遠慮しとく。男と連れションは趣味じゃねえよ」
「よかった。僕もです」
そう話ながらも八戒は部屋を後にして言った。
その頃の雅は怜音に連れていかれて、宿の広間に来ていた。
「あの…怜音さん?」
「あの方達って…ご友人ですか?」
「あの方…って…」
「一緒に居る…男性四人…」
「あ、友人と言うか…一緒に旅している…んです」
「旅の仲間って事ですか?」
「んー、まぁそんな感じかな…」
「だったら…私にあの三蔵さん、ください」
「……え?」
思いがけない言葉だった。しかし、怜音の気持ちを知っていた雅にとっては直ぐに落ち着きを取り戻していた。
「くださいっていうの、おかしいですよね?」
「なんで?おかしくないでしょう?」
「三蔵は物じゃない…」
「何いってるんですか?当たり前の事いわないでください。それに三蔵って…気安く呼ぶのもやめてください」
あまりの怜音の言葉に逆に雅は驚いていた。
「こんなに一目で誰かを好きになる事が出来るなんて…知らなかった。三蔵さんに会って、私今までの人生が本当に色づいてなかったんだって…本当に思ったの。あの人に愛されたい。旅の仲間なだけって…そう言ったじゃない。」
そう言われて雅は少しふわふわとした感覚に陥った。
「怜音さん…どうしてもダメなの」
「ずるいじゃない…いい男四人に囲まれて…全部独り占めなんて…」
「…三蔵だけは…どうしてもダメなの」
そういう雅の前にツカツカっとやってくると怜音は思いっきりひっぱたいた。
パンッッ!!
「いい気にならないで」
「……」
「あなたよりも私の方がずっと三蔵さんに似合ってるのに…」
「怜音…さん?」
「いい気味って思ってるんでしょ…あと少しで私はまたいつもみたいにみんなと一緒にいられるって!そう思ってるんでしょ…」
「あの…」
「バカにしないで…私の一生ものの出会い…奪わないで…」
そういう怜音はその場から離れていった。入り口で八戒の横を通る物の気付かない位気持ちは高ぶっていた。
「はぁぁ……やっぱり私嫌な女だなぁ…」
「…そんなことはないと思いますよ?」
「…え…八戒?」
「すみません。少し聞いてしまいました。」
「……はは…三蔵に似合うのは自分だってはっきりいわれちゃった…」
「なんで言わなかったんですか?三蔵と夫婦だって…」
「……たぶん…今の怜音さんにそれ言っても『渡したくないための嘘』って思われて終わっちゃう…そんな気がしたから…」
「雅……あなたは嫌な女じゃないですよ…」
「八戒」
「さ、戻りましょう。三蔵が心配してますよ?」
「…なんで?」
「解りません、クスクス…」
そう話していた。部屋に戻るといつもの笑顔が雅を迎えてくれる。
「あ!雅!戻ってきた!!」
「思ったより遅かったな」
「うん、でも…」
「怜音ちゃん、何だって?」
「えっと……」
「なんだ」
「特に!四日の日まで楽しめたらいいですね…って!!」
「八戒……」
「僕は知りませんよ?お手洗い行ってて帰り際に会っただけですから?」
「……フン…じゃぁなんでひっぱたかれた跡があんだ」
「…?叩かれてないよ?」
「……ハァァ…もういい」
そういう三蔵の一言で締め括られた会話。小さく笑うと窓際に近付き、空を見上げた雅。
「今年ももう終わるね」
「そうだな」
「……まだこれからもみんなと一緒にいれたらいいな…」
「何いってんだよ。今夜妖怪に襲われて死ぬかも知れねえだろうが」
「クスクス…死なないよ」
「ほう?」
「みんな居るから…三蔵や悟空や悟浄が強いし、八戒のバリアもあるし、私も回復頑張る!だから大丈夫なんだよ」
「雅に力は求めてねえって再三言ってんだろうが」
「それでも、皆居るから。」
そういいながら雅は笑いかけていたのだった。
「入るぞ」
ノックも無しにがチャリと入っていく三蔵。悟空は傍について、ベッドの上では悟浄に巻き付いたままの雅と、三蔵が来た事ではぁっとため息を吐きながら小さく左右に首を振る悟浄がいた。
「ハァ…おい」
その言葉に雅の肩はビクリと震えた。
「…部屋戻るぞ」
「……だって…怜音さん…」
「居ねえよ」
「…ちょっと…三蔵?」
「なんだ」
「何があってこうなった?」
「ここの宿主の娘に抱きつかれた時に雅が戻ってきた。それだけだ」
「それだけって……」
「雅、戻るぞ?」
「……」
「ほら、雅?三蔵迎えに来たぞ?」
そういわれてゆっくりと離れるものの、雅はうつむいていた。
「何も……無かった?」
「ぁん?」
「怜音さんと…何も無かった?」
「ある訳ねえだろうが。そこの悟浄と一緒にするな」
「ひっでぇ…クス……だそうだ。」
「……ッ」
ベッドから降りると雅は無言で三蔵に巻き付いた。
「あーあ、いちゃつくなら部屋行ってやれ」
「……戻るぞ」
そう言いながら部屋を出る二人。残された部屋では八戒がため息を吐いていた。
「どうしましょうね…」
「どうした訳?巻き付かれたって…」
「僕が行った時からでしか解りませんが…怜音さんが三蔵に巻き付いていたのは間違いないです。そして三蔵が腕を回しもせずに退けと言っていたのも間違いないのですが…」
「……それだけで雅…あぁなる?」
「何があったのかは解りませんが…あの三蔵ですから……間違いなんて言うのは絶対あり得ないはずですが…」
「三蔵が他の女の人といちゃつくって事?」
「そうなんだけどな?悟空」
「あり得ねぇよ!あの三蔵が雅以外とって?」
「だろ?」
そう話していた。しかし、宿を変えることも出来ず、とりあえずは要注意しながらというかたちになるだろうということも伝えた。
その頃の三蔵と雅は、無言の空気が張り詰めていた。
「……三蔵…」
「なんだ」
「私、信じてる…」
「は?」
「怜音さんとなにも無かったって…」
「信じてる何て口に出すもんでもねえよ」
「…でも…!」
「言い聞かせなくても他の女何て興味ねえし俺にはいらない」
「知ってる……」
「知ってるならなんで逃げて、挙げ句悟浄の腕の中に居た」
「……だって…」
「だってなんだ」
「私……すごく嫌な子……だから…」
「…どういう意味だ」
そう言うと雅はきゅっと両手を握り、唇を噛んでいた。
「どう言うことだって聞いてんだろうが」
「だって…三蔵の事好きだって…好意抱く子がいると三蔵取られちゃうんじゃないかって…心配で…不安で…会う人みんなに三蔵は私のって言いたくなるし……」
「…ハァ…バカかお前は」
「……ッッ」
返事のない雅の前にやって来ると三蔵は触れることもないまま上から見下ろしていた。
「顔上げろ」
「……」
「上げろって言ってんのが聞こえねえのか」
「……三蔵…」
ゆっくりと顔をあげ、三蔵の顔を見る雅。相変わらずタレ目の、細いアメジストアイが雅を見つめていた。
「信じてるとか、言わなくても良いだろう。俺は知ってるし、雅だってそうだろうが」
「……ん」
「それが解っていて口にするってのは、自分に言い聞かせてるしかねえ。違うか?」
「…ッッ」
「こんな年の瀬になにやってんだか……たく」
「三蔵……」
そう名前を呼び、雅は直ぐに手の届く位置にある、その体にゆっくりと腕を回す。それに応えるかの様に三蔵もまた背中に腕を回した。
「ごめんね?こんな嫌な子で…」
「どの口が言ってやがる…」
「だって…三蔵嫌いでしょ…こう言うの…」
「だから言わなかったってか?」
「…ん」
「フン、まさか好きな女の我が儘ひとつも聞けない程心狭い男だと思われているとは、思っていなかったがな」
「…え?」
「言わなきゃ解らねえだろうが。俺はカミサマじゃねえし」
「三蔵……」
「ま、雅の言う我が儘なんて、我が儘でもなんでもない」
「…我が儘だよ…」
「ほう?」
「だって…本当は誰も他の女の子に触れられて欲しくないし…さっきみたいに抱きつかれたりとか…嫌だし…三蔵の声耳元で聞けるのだって…私だけが良いし…それに」
「まだあんのか」
「……あきれるでしょ…」
「フン…くだらねぇ」
そう言うと三蔵はそっと腕を緩めて頬を包み込む様に触れると、じっとまっすぐ見つめたまま話し出した。
「だったら俺も言わせて貰う」
「…三蔵?」
「悟浄に触れんな。泣きたくなっても悟浄の所に行くな、っていうか、あの男に近付くな。」
「…クスクス…相手悟浄ばっかり」
「嫌なんだよ。泣いてる時に泣いてるのが、いつもあいつの腕の中だってのが。」
ふっと口角を上げながらも三蔵は話していた。
「なんで悟浄相手だとそんなに反抗期の子供見たいになってるの?」
「うるせぇよ」
「ねーねー!!」
「黙れ」
そう短く応えると三蔵は引き寄せて雅を抱き寄せると唇を重ねた。
「そぉいえば、さっき悟浄言ってたの、なに?」
「…気にすんな」
「するよ、このリングでしょ?」
「…たく…悪かったな…歪で…」
「えー?そんなこと無いよ?何で?」
「俺が作った…」
「嘘……」
「嘘吐く意味あるか?こんなことで」
「だって…!いつ?」
「誕生日の少し前…つか、悟浄の誕生日にいた街。あそこで作った。」
「…だってあの時…毎日出掛けてて……あ」
「こうなるから言いたくなかったんだが…」
「三蔵…照れてる?」
「…ッッうるせえよ…」
「ありがと…知らなかった…」
「もう、先に寝ろ」
「……三蔵は?」
「もう少し起きてる」
「じゃぁ…私も…」
「無理するな。先に寝ろ」
そうして雅をベッドに入れると三蔵は椅子に座りたばこをだす。火を付け、プカリと吹き上げた。
「チッ…悪趣味な女だな…」
プツリと呟くと気づかない振りをしてたばこをふかしていたのだ。そう、扉の外では怜音が盗み見ていることに気付いていた三蔵。今雅と離れたらあの女は何をするか解らない…そう考えて三蔵は怜音が離れ行くまで起きているつもりでいたのだ。
翌朝、寝不足になっている三蔵。それでも普通に起き、何もなかったかの様に振る舞っている。大晦日当日で、のんびりと過ごしていた。そんな中での昼下がり、雅の元に怜音がやってきた。
「あの……ちょっと良いですか?」
「え……私、ですか?」
「はい、ちょっとお聞きしたいことがありまして……」
「あ、何でしょう…」
「ここじゃ…少し……聞きにくくて」
「ここで話せ。」
「三蔵…ッ!!」
「俺等がいたら不都合なのか?」
「…ちょっと、女性同士の話で……」
そう言いながらもあざとさが残りつつも、じっと雅を見ていた怜音。
「…解りました。」
「雅!!」
「心配ないよ、直ぐ戻るし!!」
そういって雅は怜音に連れられて部屋を出ていった。それをみた三蔵は不機嫌極まりなかった。
「どうしたよ、三蔵」
「…なんでもねえよ」
「なんでもねえよ、の皺には見えねえくらいふっかい皺が入ってんぞ?」
そう言いながらも悟浄は眉間に手を当てた。
「うるせえよ…」
しかし、連れていかれた雅の事が気になって仕方なかった。その時だ。八戒が席を立った。
「どぉこ行くの?」
「お手洗いです。一緒に行きますか?」
「遠慮しとく。男と連れションは趣味じゃねえよ」
「よかった。僕もです」
そう話ながらも八戒は部屋を後にして言った。
その頃の雅は怜音に連れていかれて、宿の広間に来ていた。
「あの…怜音さん?」
「あの方達って…ご友人ですか?」
「あの方…って…」
「一緒に居る…男性四人…」
「あ、友人と言うか…一緒に旅している…んです」
「旅の仲間って事ですか?」
「んー、まぁそんな感じかな…」
「だったら…私にあの三蔵さん、ください」
「……え?」
思いがけない言葉だった。しかし、怜音の気持ちを知っていた雅にとっては直ぐに落ち着きを取り戻していた。
「くださいっていうの、おかしいですよね?」
「なんで?おかしくないでしょう?」
「三蔵は物じゃない…」
「何いってるんですか?当たり前の事いわないでください。それに三蔵って…気安く呼ぶのもやめてください」
あまりの怜音の言葉に逆に雅は驚いていた。
「こんなに一目で誰かを好きになる事が出来るなんて…知らなかった。三蔵さんに会って、私今までの人生が本当に色づいてなかったんだって…本当に思ったの。あの人に愛されたい。旅の仲間なだけって…そう言ったじゃない。」
そう言われて雅は少しふわふわとした感覚に陥った。
「怜音さん…どうしてもダメなの」
「ずるいじゃない…いい男四人に囲まれて…全部独り占めなんて…」
「…三蔵だけは…どうしてもダメなの」
そういう雅の前にツカツカっとやってくると怜音は思いっきりひっぱたいた。
パンッッ!!
「いい気にならないで」
「……」
「あなたよりも私の方がずっと三蔵さんに似合ってるのに…」
「怜音…さん?」
「いい気味って思ってるんでしょ…あと少しで私はまたいつもみたいにみんなと一緒にいられるって!そう思ってるんでしょ…」
「あの…」
「バカにしないで…私の一生ものの出会い…奪わないで…」
そういう怜音はその場から離れていった。入り口で八戒の横を通る物の気付かない位気持ちは高ぶっていた。
「はぁぁ……やっぱり私嫌な女だなぁ…」
「…そんなことはないと思いますよ?」
「…え…八戒?」
「すみません。少し聞いてしまいました。」
「……はは…三蔵に似合うのは自分だってはっきりいわれちゃった…」
「なんで言わなかったんですか?三蔵と夫婦だって…」
「……たぶん…今の怜音さんにそれ言っても『渡したくないための嘘』って思われて終わっちゃう…そんな気がしたから…」
「雅……あなたは嫌な女じゃないですよ…」
「八戒」
「さ、戻りましょう。三蔵が心配してますよ?」
「…なんで?」
「解りません、クスクス…」
そう話していた。部屋に戻るといつもの笑顔が雅を迎えてくれる。
「あ!雅!戻ってきた!!」
「思ったより遅かったな」
「うん、でも…」
「怜音ちゃん、何だって?」
「えっと……」
「なんだ」
「特に!四日の日まで楽しめたらいいですね…って!!」
「八戒……」
「僕は知りませんよ?お手洗い行ってて帰り際に会っただけですから?」
「……フン…じゃぁなんでひっぱたかれた跡があんだ」
「…?叩かれてないよ?」
「……ハァァ…もういい」
そういう三蔵の一言で締め括られた会話。小さく笑うと窓際に近付き、空を見上げた雅。
「今年ももう終わるね」
「そうだな」
「……まだこれからもみんなと一緒にいれたらいいな…」
「何いってんだよ。今夜妖怪に襲われて死ぬかも知れねえだろうが」
「クスクス…死なないよ」
「ほう?」
「みんな居るから…三蔵や悟空や悟浄が強いし、八戒のバリアもあるし、私も回復頑張る!だから大丈夫なんだよ」
「雅に力は求めてねえって再三言ってんだろうが」
「それでも、皆居るから。」
そういいながら雅は笑いかけていたのだった。
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