凜恋心

降谷みやび

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battle32…眩しき光

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「なぁなぁ!三蔵!」
「なんだ」
「俺さぁ!」
「……なんだ」
「腹減った!!!」

その直後に解りやすいほど大きなため息がジープを包み込んだ。

「クスクス、相変わらずだ」
「なぁ雅!」
「んー?」
「雅も腹減ったよな!な!な!?」
「道連れにするな」
「誰も三蔵には聞いてねぇよーだ!!」
「ちょっと空いたけど、まだ大丈夫!」
「ほら!雅も腹減ったって!!」
「いい様に変換するな、猿」

そんな普通すぎる会話もそこそこに、八戒の『もうじき着きますよ?』に嬉しそうな悟空だった。

それから一~二時間くらいした頃、街に着いた。

「なぁなぁ!飯行こうぜ!飯!」
「そうですね、三蔵?」
「好きにしろ」
「おーい、雅?行くぞー?」
「あ、うん!ちょっと待って…」
「遅い」
「ごめん…!お待たせ!」

そういって合流すると、一足先に行く悟空を追いかけて四人は並んで歩く。

「雅!!こっち!!」
「悟空…!そんなに急がなくても…!」
「いいから…!!こっちこっち!!」

雅が戻ってきたのが相当嬉しいのだろう、悟空は雅の手を引きながらも色々と回ってみていた。そんな様子をみながら、悟浄はふとした疑問を三蔵にぶつけることにした。

「なぁ、時に三蔵?」
「なんだ」
「雅ってさ…かわいいよな」
「何言ってんだ、貴様」
「でさ?八戒って自分の事話したって言ってたけど…」
「えぇ、僕が妖怪になった経緯を…」
「……てか、ダークすぎねぇか?」
「えぇ、少しばかり泣かれてしまいました。」
「三蔵はさ、三仏神に話したの?」
「……必要いるか?その報告」
「いや、要るだろう?」
「あのクソババァが知ってんならそれでいいじゃねぇか?」
「そういう問題…なのか?」
「あ、それ、僕も思いました。」

そう話していた。悟空と雅が話し、笑い合っている後ろ姿をみて三蔵はふぅっと息を吐く。

「どっちにしても、斜陽殿しゃようでんに行かないと会えませんし、それに三蔵以外が謁見することはどちらにしても出来ないですし」
「そっかぁ。まぁ、でも菩薩が知ってんのなら問題はねぇのか?」
「知ってるも何もあいつが連れていけと言ったんだ」
「あー、はいはい」

クスクスと笑いながらも悟浄は悟空達を追っていく。八戒は三蔵に顔を見合わせるでも無く話しかけた。

「どちらにしても、ですが…きっと三仏神の耳には入っているでしょうけど?」
「そうだろうな」
「でも、菩薩の命、の割に嬉しそうなのは気のせいですか?」
「うるせぇよ…」
「クス、すみません、どうもこう…、あなたが雅に対する態度を見ていると突っ込んでみたくなってしまうんです。」
「俺で遊ぶな」
「……ほら、そういうところです」
「何が言いたい」
「少し前には自分一人だったのが、今では俺達、複数形になって入るではありませんか?」
「……チッ…」
「自覚、無かったんですね?」
「……ハァ」
「いいじゃないですか。僕はいいと思いますよ?」
「……何がだ」
「三蔵だってなんですから。」

そう言うとチラリと三蔵に目をやりながら八戒は続けた。

「愛する人がいて、全力で守りたい笑顔があるなら…それはとても素敵なことですよ、三蔵」
「…貴様が言うとなんだかすげぇ重てぇよ」
「おや?そうですか?」

クスクスと笑い会う二人。

「おーーい!!早く!!飯行こうよ!!」

ブンブンと両手を振っている悟空を見て八戒は一足先にと三蔵より一歩先を歩いた。

「…守りたい……か」

そう呟いて…

「おじちゃん!!あとこれとこれ!!追加ね!!」

そう注文を繰り返している悟空。

「あはは…、なんか本当に日常が戻ってきたぁって感じですねぇ」
「全く、お前の胃袋は少し前のでちょうどいいんじゃねぇのか?」
「何言ってんだ?悟浄!飯食えるのはいいことだろ?!な!雅!!」
「そうだね!」

にこりと笑い合う悟空と雅。

「そう言えばさ?俺雅に聞きたいことがあったんだけど…」
「なに?」
「雅ってさ?三蔵のどこが好きなの?」

唐突にも悟空に聞かれた事は雅にとっては思ってもいなかったことだった。悟浄は吹き出しそうになり、雅は咳き込む。八戒と三蔵に至っては、はぁ…とため息を漏らしていた。

「だってさ、ぶっちゃけどこが好きなのかなって…俺もさ?三蔵の事めっちゃ好きなんだよ、それで雅が三蔵のどこ好きなのかなって!!」
「私?そうだな…」
「俺も聞きてぇよ、この堅物のどこが好きな訳?」
「まぁまぁ、皆さん?雅困ってませんか?」
「私は…答えてもいいけど…」
「……なんだ、俺が居たら不都合でもあるのか?」
「…えっと……それは…」
「いいじゃん!俺聞きたい!」

そうせがまれる雅。小さく笑うと少しだけ伏せ目がちに話し出した。

「どこが好きって言うのは無いのかもしれない」
「…ねぇのかよ」
「クスクス、だって人にすぐバカだのなんだのって言うし、ハリセン出すし、銃口平気で向けてくるし…」
「……あぁーーー」
「でもね?すごく優しい顔して笑うの。大丈夫だって、時々頭撫でてくれるてがすごく温かくて…『雅』って名前呼んでくれる声が、なんかこう…くすぐったいんだけど、ほっこりする。それに、いつも傍にいてくれて…」
「じゃぁさ!なんで三蔵の事好きになったの?」
「……なんでだろうね、解んないや」
「そっか…」
「でも、初めて会った時、綺麗すぎる人だって思って、でも、どこか踏み込めない綺麗さって言うのかな…だけど、あの村から連れ出してくれる時に差し出してくれた手が…すごく嬉しかった。それに、私自身ずっと気付かない振りしてた影、みたいなものに光が差し込んだって言うか……太陽みたいだった。」

そこまで話すと、雅ははたっと気付いた。

「な……なんかごめん…私話しすぎた…」
「いや、いいんだけど……何か聞いた俺が恥ずかしくなってきた。」
「俺は何か凹んできた…」
「え?……え、なに……?」
「良くもまぁぺらぺらと……」
「三蔵?嬉しそうですけど?」
「じゃ……じゃぁさ!三蔵は雅のどこが好きなの?」
「却下」
「……ハハ」
「いいじゃん!教えてよ!!」
「聞いてどうするつもりだ」
「冷やかす?」
「んー、俺は、聞きたい」
「却下」
「そうなの?ちぇ…俺は雅の事も好きだよ!すげぇ明るい!三蔵とは違うキラキラした感じでさ!」
「悟空は三蔵のどこが好きなの?」
「俺?…全部!」
「ざっくりしてんなぁ、猿」
「でもどこか一つって言うなら、『三蔵でいてくれること』だな。」
「なんだそりゃ」
「かわんねぇから、ずっと」
「悟空らしいね」
「そっか?へへ」

そう言い合いをしている雅と悟空を見ながら三蔵はたばこをぷかりとふかしていた。

その日の夜、宿を取りに行くも二部屋で取る事ができた。

「俺たまには雅と一緒がいい!!」
「だとよ?三蔵、どうする?」
「……」

無言の圧が周囲を取り囲んだが、悟空は怯むこと無く『雅と一緒がいい』をいい続けた。

「まぁ、今日一泊と言うわけではないですし。」
「……たく…」
「やりぃぃぃぃ!!」

そういって珍しく雅との二人部屋を悟空がゲットしていたのだった。
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