凜恋心

降谷みやび

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battle25…李厘の悪戯置き土産?!

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一足先に部屋に戻ってきた三蔵と雅。どさりとベッドに下ろすと三蔵は上から見下ろした。

「さて、ひとつ聞きたいんだが?」
「……はい?」

その眉間のしわからして、雅は焦りしかなかった。

「…あの…三蔵?」
「良くもまぁキスされた相手と一緒に何事も無いみたいな顔して外泊できるな」
「外泊って……」

その時悟空達三人も宿に戻ってきた。その様子をみた悟浄は場の空気云々よりも先に口を開く。

「なぁにいってんの、三蔵」
「うるせぇ、貴様は黙ってろ」
「外泊って言っても……練習しておきたかったし…」
「そんな休憩もろくに出来ない位練習して体痛めたらどうするんだ」
「え?」
「何か間違ったことでも言ったか?」
「それは…」
「それにもうひとつの質問の答えがまだだ。」
「あれは事故って言うか…」
「したんだな?」
「したって言うか勝手にされて……それに三蔵みたいなやらしいのじゃなくて……ちょっと触っただけって言うか…」
「ぁん?…そんな事聞いちゃいねぇよ。したかしてねぇかってだけだろうが」

言い争いの間に悟浄と八戒は顔を見合わせる。

「まぁまぁその位にして…」
「まだ話は終わっちゃいねぇ」
「あ、雅?僕あなたの作ったスイートポテト食べたいので僕らで買い物行ってきますね?」

そういって八戒は悟浄と悟空をつれてその場を後にした。パタンと閉まる扉を見送り、三蔵は再度雅に向き合った。

「あれほど言ったろうが、勝手にされてんじゃねぇって」
「……でも…なんで三蔵…知ってるの?」
「あの男に聞いた。」
「男って城太郎さん?」
「バカか、貴様は」
「……姫乃さん?…男って言うからてっきり…」
「どっちも男だろうが」
「よく知ってるね」
「ナメてんのか、それに話をすり替えるな。」

そういうとそっと頬にてを滑らせる。耳を掠め、大きな手のひらが頬を包み込んだ。

「三蔵…」
「不意打ちでもなんでも、気に入らねぇんだよ」
「……それって…ヤキモチ?」
「そんなもんじゃねぇ」
「でも……」
「……醜い嫉妬だよ」

そういうと少し伏せた目もとに雅はドキリとした。

「触れさせたくない…俺自身こんなにも自分が嫉妬深いなんて事知らなかったが…」
「三蔵?」
「独り言、戯言だ…聞き流せ。雅が居ないだけでまたあんなにも夜が怖いなんて…自分自身呆れる…ヘドが出る…もう戻ってこないんじゃないかって…もうあんな思いはたくさんだ」

気付けば雅の体は三蔵の両腕の中にしっかりと閉じ込められていた。ぱさりと落ちた法衣のせいで、互いの温もりを、直に感じる面積も大幅に増えている。

「三蔵…って…?」
「聞き流せ、といったが?」
「流せない…!」

ぐいっと肩を押し戻すと、雅はゆっくりと立ち上がってきゅっと巻き付いた。

「どれ程の事かはわからないけど…寂しい思いさせたなら…本当にごめんなさい…」
「お前が謝ることじゃ無いだろうが。」

そう答えながらもそっと雅の背中に腕を回し、応える三蔵。

「三蔵…三蔵は強いけど、弱いんだよ…」
「なんだそれは」
「そう思うの…」
「半端なこと言ってんじゃねぇぞ」
「半端じゃない…三蔵だけじゃない…八戒も悟浄も悟空も……みんなすごく強いけど、その強さの裏側には絶対的な弱さがある…と思う…」
「……クッ……クスクス……弱い、か」
「ごめんね…私なにも知らないけど……時々見せるみんなのフッと遠く見る目が……なんか私知ってるような…そんな気がして…」
「そうか…」
「私はただに弱いだけなんだけど…」

そう言い終わるとくすくすと笑ってごまかすような雅。すり…っと胸元にすり寄ると、三蔵の口許は緩み、珍しくもそっと頭を撫でる。

「…おい」
「なに?」
「いずれは……話すと思う。」
「何を?」
「……さぁな」
「なに、それ…クス」

小さく笑うとそっと顔をあげる雅。その視線の先には、紫色のアメジストアイと視線は重なる。

「…三蔵……」

ゆっくりと顔が降りてくるのと同時に雅も目蓋を閉じる。後数センチ…というときだった。

バンッッ!

「たっだいまぁ!!」
「……ッッ」
「あっちゃぁーー……タイミング激悪?」
「あれ、三蔵と雅。どうしたの?」

明らかに不機嫌な表情に変わっていく三蔵と顔を背ける雅。

「…少し、早かったみたい…ですね」
「だな……」
「……全くだ」

そんなこんなだったものの、雅は悟空から買ったものの入った袋を受け取ると、着替えをしようとしていた。

「あ……」
「どうされました?」
「私…服……」
「あ、そうそう、これ。預かってきました」

そういって衣装に着替える前の雅の服をもらうと嬉しそうにお礼を言っていた。そして急いで着替えると、スイートポテトを作るべく宿主に聞きに行ってくる!と部屋を出る。

部屋に残された四人は三蔵の不機嫌そうな顔を見ていた。

「ごめんなさいね、三蔵」
「…フン……」
「でも、まぁ、仕方ないですね…」
「あいつが作り終わったら出るぞ」
「わかりました。」

そう話していた。それから一時間くらいだろうか…雅は出来たばかりのスイートポテトを持って、部屋に戻ってきた。

「ただいま!遅くなっちゃった…」
「いえ、いいんですよ。それじゃぁ、雅が支度整ったら出ましょうか?」
「ん!わかった!じゃぁ、これ、食べて待っててくれる?」
「やったー!!」
「お前は後だ、猿」
「なんだよぅ!三蔵!!」
「俺と八戒が先に食う。当然だろうが」
「キュキュキュ-!!」
「そうですね、白竜も前回食べてないですもんね」
「キュッキュ-!!」

クスクス笑いながら雅は部屋を見渡した。とはいえ、今回のこの宿においては雅の荷物はほとんど開けられていなかった。ほぼ、城太郎達と一緒にテント生活だったために…

「あの……私そんなに荷物まとめるの無かった…」
「ならさっさと行くぞ」
「そうですね、」
「お菓子ぃぃぃ」
「ハイハイ、行くぜ?猿」

そう宥められながらも一行は宿主にお礼を言って、ジープに変身した白竜に乗り込んで次の街に向かうことにしたのだった。

「そういえばさ…」
「なんだ?猿」
「雅って、最後あの人に何もらったの?」
「これなんだけど……って、あれ…」
「どうかした?」
「さっきみたのと……色が違う…」
「なんだぁ?」
「さっきね?宿の所では青紫色だったのに…」
「どうみても緑、だな」
「だな、緑…」
「おかしいな…」
「でもさ、すっげぇきれいだよな!この宝石」
「確かに!キラキラしてる…」

そういいながらも城太郎のサイズだろう、大きめの石の入ったリングを掲げて見ていた。

「三蔵、妬いちゃいます?」
「なんでだ」
「自分よりも先に雅に指輪を渡されて」
は給料だろうが、」
「そうかもしれませんけど」
「俺には関係ない」

そう言いながらもゆっくりと目を閉じ、『少し眠る』と伝えて眠りについた三蔵。

「関係無い…ですか」

くすりと笑いながら横目で腕を君で眠りについた三蔵を八戒は見ていたのだった。

「ケケケケ!!三蔵一行!!見つけたぞ!!」
「あらぁ……」
「起きてください?三蔵、お客様ですよ?」
「うるせぇ…」
「起きてるんじゃねぇの!」
「さっさと消せ」
「へーへー」

そう答えると三人は飛び出していった。そんな時だ。

「よーいしょっと!!」

そんな声と同時に雅の体はふわりと一瞬持ち上がった。

「え?」
「何してやがる」
「へっへーん!!この子の事返して欲しければ経文寄越せ!!三蔵!!」
「あの…!李厘さん?」
「なに?」
「私の事人質にしても三蔵は経文渡さないと思うよ?」
「そんな事無いよ。ずっと考えてさ?三蔵が大事にしてなきゃ一緒にいないだろうし」
「おい、勝手に話を進めるな」
「三蔵!!この子の代わりに経文ちょうだい!!」
「断る」
「ね?」

そう李厘にハハっと笑いながらも雅は答えていた。一方で妖怪達を抹殺し終えた三人は戻ってくると呆気に取られていた。

「おい、三蔵、何勝手に雅拉致られてんの?」
「全く…ラチられた覚えもないがな」
「だってどう見ても雅、拉致られて……るのか?」

そう、李厘に体をふわりと持ち上げられていたのは少し前の事。逃げようと思えばいくらでも逃げられる状態になっていることに李厘も雅も気付いていない様子だった。

「もぉぉぉ!!三蔵!経文さえ寄越せばこの子返すって言ってるだろ!!」
「まぁまぁ…」
「なんだよ!大事じゃないのか?!」
「…だったらなんだ」
「ほら見ろ!経文とこの子とどっちが大事なんだよ!」
「比べるもんでもねぇだろうが」
「だったら……!!」

そう言って李厘は誇らしげに一つの瓶を出した。

「これはね……スッゴいヤバイ薬なんだって!飲ませちゃうよ?」
「……ッッ」
「だから李厘ちゃん?そんな事じゃ三蔵揺らがないって…」
「だったら……!!」

そうもう一度言うと李厘は蓋を取り、雅をぐいっと引き寄せ、その口に流し込んだ。

「雅!!」
「チッ……」

しかし、ごくりと喉をならしたその直後だった。風が舞い上がり、紅孩児がやってくる。

「おい、李厘…」
「お兄ちゃん!!」
「全く…何してや……がる……って…」
「この子と引き換えに三蔵に経文もらおうと…」
「そんな姑息な手使うな。」
「姑息って……妖怪いつもあれだけ送り込んできといて良く言うぜ…」
「それより雅です!!」
「そうだった!!」

そうして紅孩児と話して注意が散漫になっている李厘の腕から八戒が雅を奪い取った時だ。

「紅孩児さん、この李厘さんが持っている薬って……」
「薬…?」
「……お…おいら何にも!!」
「見せてみろ」
「……ッッ」

そう言われた李厘は紅孩児に恐る恐る瓶を渡す。見た瞬間にはぁぁ…と大きなため息をついた。

「何なんですか!!それ…!」
「まぁ、焦ることでもない」
「なんですか?」
「…にい博士の作った…媚薬だ」
「媚……薬?!」
「博士が無くしたと探していたが……李厘…」
「だって……」
「どういう薬か知ってるのか?李厘」
「あのぅ、お話し中すみませんが、それって……」
「そちらのが少し苦労するだけだな」
「あらぁ」
「ハァ…迷惑なガキだ…」
「八戒……なんか……体…熱い……」
「とりあえず、博士が作ったものだから、もしかしたら通常より少しばかり質が悪いかも知れんが……今回は李厘を連れて帰るから…」

そう言うが早いか紅孩児は李厘を連れて帰っていった。八戒の腕の中では顔を赤らめてとろんとした様子での雅がいる。

「次の街か村までどのくらいかかる」
「飛ばしたところで夜中になるかと…」
「急ぐぞ」

そうして車に乗せると八戒は急いでジープを出す。前に街を出てからそれ程遠くないところにあるとは言え、既に日は沈みかけていたもののいまの雅にとっては相当しんどいものになっているはずだった。

「なぁ、『びやく』ってそんなにヤバイの?」
「まぁ、子供には必要ないもんだけど……」
「ガキって言うなよ!」
「大丈夫……だょ?……ご…くぅ。ハァハァ」
「すげぇ調子悪そうだぞ?」
「本当に……へっき…ハァハァ…」
「なぁ、八戒!」
「間違っても、雅には触らないであげてくださいね?」
「こんなにしんどそうなのにか?」

しかし、ジープの揺れで悟浄にもたれ掛かる状態になってしまった時だ。

「ンァ…ッッ!」
「悪い…」
「……あのガキ…次会ったら容赦しねぇ…」
「三蔵、どうします?」
「どうもこうもねぇ、野宿でなんかヤれるか」
「やるって何を?」
「悟空……それは……」
「八戒、少しスピード落とせるか?」
「何言ってやがる」
「場所交代すんだよ。ジープの縁にでも凭れた方が多少はいいだろうが。」

その悟浄の言葉を聞いて、八戒は少しスピードを緩める。

「これでどうです?」
「雅、こっちこい」

そう言って悟浄と場所を入れ替わる雅。

「你博士の作ったものとなると……」
「厄介にもほどがあるな…」
「どのくらいで切れるでしょうか…」
「まだまだっと言ったところか…」
「なぁ、びやくって……」
「お猿ちゃんにもわかりやすく言うと、エロ薬だ」
「そんな説明じゃわかんねぇよ!!」
「いえ、あながち間違ってないんですよ」
「……え?」
「ただ、相手さんの博士が作ったものとなると、効果がどのくらい続くか解らない、というのが難点ですね」

三蔵も八戒も紅孩児が去り際にいっていた『三蔵が少し苦労する』という言葉が引っ掛かっていた。どっぷりと夜も更け、月が上ってくる。悟空は眠り、悟浄は横の雅が気になり眠れず…本来ならば既に白竜を停め野宿している頃合いなのだが、街を目指して走り続けていた。

「あ…あれ」
「…着いたか…」

近付く街の光を目指し、もう一踏ん張り…とアクセルを踏み込んだ八戒。急いで宿の前に向かい、部屋を取る。ベッドの部屋が二部屋しか取れず、それでもいいと返事をする。もちろん一部屋は三蔵と雅。もう一部屋に布団を二組追加してもらい寝ることになった。ジープの上で、体全体が性感帯となってしまっている雅を三蔵が抱き上げた。

「ァン……さ……んぞ…ッッ」
「すぐに楽にしてやる」
「……ハァハァ…」

そう言いながらも取った内の一部屋に入っていき、ベッドに下ろす。電気を付けることも無く、法衣を脱ぎ、下ろされたままの状態の雅の元に向かう三蔵は、ぐいっと抱き寄せた。

「三蔵……ッ」
「タク……」

そう呟くと自ら腕を回し、唇を求める雅に応えるかのように、何度も重ねては舌を絡める。キス一つでさえ、体は震え、普段の雅では考えられないくらいに大胆になっていた。少し開いた唇からは、熱い吐息と『もっと…』とねだる声…それに応えるかのように三蔵は雅をベッドに押し倒した。

「もう我慢しなくていい」
「さんぞ……早く……」
「解っている」

そう答え、唇から離し、首筋、鎖骨へと舌を這わせる。その度に体は満足そうに反応を返してくる。体を捩り、熱を帯び、疼き出している体を三蔵に預ける…

「アッ…三蔵…もっと…気持ち良くして…」
「……フッ…」

服を露に剥ぎ取ると、露になる胸元へ唇を寄せる。甘噛みをしながら揉みしだく手と、もう片方の手は下腹部へと降りていく。そのまま溢れ出て止まらない蜜壺へとぐいっと指をねじ込んだ。思いの外あっさりと三蔵の武骨な指でさえ、飲み込んでいく。

「ァッ…ア…!気持ちぃ……!」

良いだけ掻き乱された中から指を抜き出すとその指を舐め、ぐいっと両足を持ち上げてはそこに顔を埋めた。そのままどれ程だろうか、溢れ出る蜜を舐め取っては指を差し込む。その度に何度も体を弓なりに反らしては快感を得ていく雅。

「さんぞ……キス……して…?」
「我が儘な奴だな…」

そう言いながらも応えるように唇を重ねる。その間も挿し込まれた指は動きを止めることはなかった。もう何度目だろうか…三蔵の愛撫で雅が快楽を得た時だ。体が限界を向かえたのだろう。ぐったりとシーツの波に溺れていく様に意識を手放した。

「ハァ…全く……」

堕ちていく雅の前髪をそっと避け、三蔵はベッドの縁に腰かけるとたばこに火を着けた。


『見届けなさい…江流…あなたが自分らしさを見失わない限りその重ささえも受け入れられるはずです』


「この重さを手離してもいい……何て言ってはいけないのに…お師匠、あなたに聞かれたら何ていうでしょうね…」

そう呟きながらそっとたばこの煙のフィルター越しに、三蔵は魔天経文を見つめていたのだった。
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