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battle22…剥き出しの感情…
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「くっそー……三蔵、なぁ!三蔵って!」
「うるせえっつってんだろ!」
「なんでそんな怒ってんだよ!」
「黙ってろクソ猿!」
あからさまに怒りを表している三蔵。その様子に雅はどう接して良いか解らなかった。
「あの…三蔵……本当に何もないから…」
「うるせぇってんでだろうが」
「ねぇ…」
「離せ」
その様子をみていた悟空は雅に問いかけた。
「雅、どうかした?」
「ちが…なんでも……本当に…」
「でも、なんでも無いなら三蔵あんなに怒んねぇだろ?」
そう、あの様子は誰にもみられてはいなかった。だから三蔵が知ることも無い。雅自身も状況を口にしていた訳では無かった。
ガンッ!!
扉を蹴破らん勢いで開けた三蔵。そこにはベッドに腰かけた悟浄と立ったままの八戒がいた。
「あーー!居た!悟浄達のせいで……って…」
無言のままツカツカっと三蔵は悟浄に歩み寄る。そのまま胸ぐらを掴むとぐいっと持ち上げた。
「三蔵っ?!」
「テメェは…何しやがった」
「…三蔵!ちょっと落ち着いてください」
「黙ってろ、八戒…」
その声は低く、それ以上八戒も言えなかった。同時に悟浄もまた、三蔵に何の言い訳もできなかった。
「何したかって聞いてんだよ…!」
「…別に…?」
その悟浄の回答は、一気に三蔵の怒りに火をつけた。見ている間に悟浄はふっ飛ばされた。
「三蔵!」
そう声をかけた八戒の声も三蔵には届いていなかった。床に座り込んだ悟浄の前に同じように膝を付き、胸ぐらを再度掴みかかる三蔵の目は、いつになく悟浄の姿をはっきりととらえていた。
「別にって言うならあんなに怯えてねぇだろうが…」
「…クク…」
「何がおかしいんだ」
「これだよ…」
そういうとそのまま思いきり肩を押して、三蔵を床に倒した。
「…貴様…俺は先に忠告したはずだ…」
「だからなんだよ…」
「もう一度聞く、何しやがった…」
「言っても言わなくても殺す勢いじゃねぇか」
その返事を聞いて三蔵は思いっきり悟浄の腹を蹴り、自身も立ち上がった。
「良い度胸じゃねぇか…」
「三蔵!」
「うるせぇ」
「何なんだよ!二人とも、意味わかんねぇだろ?」
「猿は黙ってろ。」
「返事は待ったぞ…」
言うが早いか三蔵は殴りかかる。思いっきり悟浄の頬に当たるもふらめくだけで倒れはしない。しかしそのまま殴り合いの喧嘩になってしまった三蔵と悟浄。
「ちょっと…」
「雅、あぁなったら止まりませんよ…」
「でも…八戒…私…」
「あなたは悪くありません。悟浄から話は聞きました。あの様子じゃぁあなたから三蔵に話はしていない様でしたが…」
「……言えないよ…それよりも!」
そういうと二人のもとに歩もうとした時だ。八戒に止められた。
「…それは危険です」
「でも…!」
しかし殴り合いながらも言いたい放題言い合っている二人。
「三蔵が言ったんだろうが!好きにしろって!」
「だからって抱こうとかを許した覚えは…ねぇだろ!」
「……ッだったら三蔵なら告った後に抱き締めたりしなかったのかよ」
「それとこれとは話は別だろうが!」
そんなような子供の喧嘩にもにた内容を聞いていた悟空はそっと八戒に聞いていた。
「これって…雅の取り合い…?」
「取り合いと言うか…単に悟浄が三蔵のものに手を出そうとした罰、ですかね…」
「それなら悟浄が…悪いだろ…」
「僕も、想いを伝えることは良いと言いましたけど…ってッッ危ない!!」
雅が悟浄の前に盾の様に身構えた。振りかぶっていた三蔵の拳はギリギリのところで止まる。
「…退け、雅」
「やだ」
「退けって言ってんだろうが…」
「嫌だ!!」
「そんなに悟浄を守りてぇのか…」
「そうじゃない…こんなことしたって無駄だよ!!」
「…ッチ」
「雅……ゲホッゴホ……」
雅が間に入った所で二人の殴り合いは一旦は落ち着いた。しかし、今だかつてあの目で雅を見ることはなかった程の三蔵の視線だった。
「お前が一番怯えてただろうが!」
「でも…!それで三蔵と悟浄が殴り合いなんておかしい!」
「おかしくねぇだろうが、」
「おかしいって言ってるでしょ?!」
「……ッチ」
それは端から見たら雅が恋人の三蔵ではなく、悟浄を守っているようにも見えている。そんな光景のまま雅は相変わらずも三蔵を、三蔵は雅を見据えたままだった。
「まだそいつと話は終わってねぇんだ!退け…」
「嫌だ」
「退かねぇなら殺すぞ」
「……ッ」
チャカっと昇霊銃は雅の額に一ミリも離れずにピタリとくっつく。ひやりとした冷たく、固い感覚を受けながらも雅ははっきりと答えた。
「打ちたいなら打てばいいよ」
「何なんだ…」
「こんな殴り合いがいつまでも続く位なら打って終わるなら終わればいい。」
「雅…それは…!」
「ごめん八戒、黙ってて」
「ほぅ……」
三蔵の人指し指がゆっくりとトリガーに掛かった。
「三蔵がただ単にわからず屋なだけじゃん……」
「んぁ?」
「何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…何もなかったって…言ったじゃん…」
「何も無かった訳ねぇだろうが!」
「そりゃ…悟浄には押し倒されたけど…でもそれ以上は何もない」
「十分な理由だ」
「三蔵!」
「…退け」
銃を後ろに放り投げ、ベッドに着地すると同時だろうか…雅をその場から横に払い、三蔵は思いっきり悟浄の頬めがけて拳をいれた。
「……二度と手ぇ出すんじゃねぇよ。次はマジで殺す…」
そう言うと部屋を後にした。騒がしいと思い、宿主始め、数人が部屋の前に集まっていた。
「すみません、騒がしくて…痴話喧嘩でして…さっき片付きましたので…」
「それならいいが…」
「雅は三蔵のところに行ってください?」
「…ごめんね…八戒」
そういって三蔵の後をおった雅。残された部屋では悟浄を抱え、ベッドの縁に座らせた。
「全く……あなた達は…」
「でもさ…悟浄…相手は三蔵だろ?無謀だって…」
「…うるせぇ猿」
「悟空の言う通りです。それに…」
「それ以上言うな…」
「え?」
「完全にフラれたの、聞いてただろ…」
俯きながらそっと目を閉じる悟浄。耳の奥に残っている雅の言葉がずっと木霊していた。
『何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…』
「俺じゃ到底雅の心には入り込めねぇんだよ…」
「フ…三蔵に思いっきり殴られて気付くなんて…相当好きだったんですねぇ…」
「うるせぇ…ほっとけ…」
「そうは行きません。悟空…薬、これだけあれば三蔵の方も足りるでしょう、持っていってください?」
「…げ、俺が?」
「長居しなければ問題ありません」
「わ…解った…」
そういって八戒に頼まれて隣の部屋に持っていった悟空。
同時期、隣の部屋では三蔵に向き合っている雅の姿があった。
「三蔵…」
「うるせぇ、何にも言うな」
「…ごめん…」
「……ッチ…謝ってんじゃねぇよ…」
「痛かったよね…」
「これくらいなんともねぇ」
「そうじゃない…」
そっと手を包み込むようにして、じっとその手を見つめる雅。
「手…悟浄殴る時の手…痛かったよね…」
「……」
「もうやめて…そんな殴り合いするのに三蔵の手…使わないで…」
「必要ならするだろうが…」
「しないでいいよ……今回みたいなことは絶対に必要ない…」
「…俺の中では優先事項に当たるが?」
「当たらない」
「当たるっつってんだろうが…」
「あたら…無いよ…」
「それを決めるのは俺……ッ」
そっとキスで唇を塞ぐ雅。ゆっくりと離れると首に巻き付いた。
「お願いだから…そんな傷だらけにならないで…」
「……悟浄の事守ってたと思ったが…俺の見当違いだったって訳か…」
「今さら気付くなんて、三蔵にしては鈍いね…」
「お前が解りにくいだけだろうが…」
「三蔵がバカなんだよ…」
「雅に言われたくねぇよ…」
そんな恋人には似つかわしくない会話をしていた。そうっと扉を開けて様子を見ていた悟空は八戒に渡された薬を持ち戻ることになっていた。
「あれ?悟空…それ、三蔵の所にって、お願いしたやつですよね?」
「…何か…入れない…」
「全く…三蔵が怒鳴ってます?」
「違う……あれ見たら…誰だって雅の事好きになっちゃうよ」
「え?」
「って、俺は三蔵も好きなんだけど!その、恋とか愛とかっての…俺はわかんねぇからさ。でも…すげぇいい顔して…俺あんな三蔵の顔も見た事ねぇし…」
「……」
「ごめん悟浄、あれは…悟浄の負け…だと思う」
「んな純粋に泣きそうな顔して謝んなって…もう解ってっから。」
「…にしても困りましたね。」
「…貸せ」
「悟浄?」
「ちょっくらその珍しい三蔵の顔を拝みに行ってくるから。」
そういうだけ言って薬やガーゼのの入った袋を抱え込んでいる悟空の腕からひょいっと取ると、悟浄は部屋を後にした。
「なぁ八戒…行かせて大丈夫?」
「まぁ…なんとかなると信じましょうか…」
そういって後を追うことはしなかった。
コンコン
「入るぞ?」
「…今度はなんだ…」
「三蔵じゃねぇよ、雅に…」
「断る」
「…ってなんで三蔵に言われなきゃなんねぇんだよ。ほら…これ」
「え?」
「八戒から。」
「ならなぜ八戒が持ってこない」
「さぁな、知ーらね」
「あ……ありがとう…」
袋の中身を見た雅は嬉しそうに悟浄に礼を言っていた。
「なぁ…雅」
「なに?」
「さっきは…その、悪かった。」
「?何の事?私忘れちゃった」
「……三蔵も…悪かったな」
「…何の事だ」
「二人揃って…全く…」
そういって悟浄はすっきりとした様子で扉に向かった。
「おい」
「んぁ?なに?三蔵」
「……」
「なんだよ!」
「…今回は雅に免じて忘れてやるよ」
「三蔵…」
「フン…」
そういうだけ言ってふいっと顔を背けた三蔵とフッと口許が緩みながらも笑いながら部屋を出ていった。
「悟浄が持ってきてくれた薬、付けよ?」
「…はぁ…」
そういいながらも雅は薬をあけ、ガーゼに付け傷口をおおった。
「…ありがと、三蔵」
「うるせぇよ」
「…クス…」
そんな雅もまた小さく笑っていたのだった。
「うるせえっつってんだろ!」
「なんでそんな怒ってんだよ!」
「黙ってろクソ猿!」
あからさまに怒りを表している三蔵。その様子に雅はどう接して良いか解らなかった。
「あの…三蔵……本当に何もないから…」
「うるせぇってんでだろうが」
「ねぇ…」
「離せ」
その様子をみていた悟空は雅に問いかけた。
「雅、どうかした?」
「ちが…なんでも……本当に…」
「でも、なんでも無いなら三蔵あんなに怒んねぇだろ?」
そう、あの様子は誰にもみられてはいなかった。だから三蔵が知ることも無い。雅自身も状況を口にしていた訳では無かった。
ガンッ!!
扉を蹴破らん勢いで開けた三蔵。そこにはベッドに腰かけた悟浄と立ったままの八戒がいた。
「あーー!居た!悟浄達のせいで……って…」
無言のままツカツカっと三蔵は悟浄に歩み寄る。そのまま胸ぐらを掴むとぐいっと持ち上げた。
「三蔵っ?!」
「テメェは…何しやがった」
「…三蔵!ちょっと落ち着いてください」
「黙ってろ、八戒…」
その声は低く、それ以上八戒も言えなかった。同時に悟浄もまた、三蔵に何の言い訳もできなかった。
「何したかって聞いてんだよ…!」
「…別に…?」
その悟浄の回答は、一気に三蔵の怒りに火をつけた。見ている間に悟浄はふっ飛ばされた。
「三蔵!」
そう声をかけた八戒の声も三蔵には届いていなかった。床に座り込んだ悟浄の前に同じように膝を付き、胸ぐらを再度掴みかかる三蔵の目は、いつになく悟浄の姿をはっきりととらえていた。
「別にって言うならあんなに怯えてねぇだろうが…」
「…クク…」
「何がおかしいんだ」
「これだよ…」
そういうとそのまま思いきり肩を押して、三蔵を床に倒した。
「…貴様…俺は先に忠告したはずだ…」
「だからなんだよ…」
「もう一度聞く、何しやがった…」
「言っても言わなくても殺す勢いじゃねぇか」
その返事を聞いて三蔵は思いっきり悟浄の腹を蹴り、自身も立ち上がった。
「良い度胸じゃねぇか…」
「三蔵!」
「うるせぇ」
「何なんだよ!二人とも、意味わかんねぇだろ?」
「猿は黙ってろ。」
「返事は待ったぞ…」
言うが早いか三蔵は殴りかかる。思いっきり悟浄の頬に当たるもふらめくだけで倒れはしない。しかしそのまま殴り合いの喧嘩になってしまった三蔵と悟浄。
「ちょっと…」
「雅、あぁなったら止まりませんよ…」
「でも…八戒…私…」
「あなたは悪くありません。悟浄から話は聞きました。あの様子じゃぁあなたから三蔵に話はしていない様でしたが…」
「……言えないよ…それよりも!」
そういうと二人のもとに歩もうとした時だ。八戒に止められた。
「…それは危険です」
「でも…!」
しかし殴り合いながらも言いたい放題言い合っている二人。
「三蔵が言ったんだろうが!好きにしろって!」
「だからって抱こうとかを許した覚えは…ねぇだろ!」
「……ッだったら三蔵なら告った後に抱き締めたりしなかったのかよ」
「それとこれとは話は別だろうが!」
そんなような子供の喧嘩にもにた内容を聞いていた悟空はそっと八戒に聞いていた。
「これって…雅の取り合い…?」
「取り合いと言うか…単に悟浄が三蔵のものに手を出そうとした罰、ですかね…」
「それなら悟浄が…悪いだろ…」
「僕も、想いを伝えることは良いと言いましたけど…ってッッ危ない!!」
雅が悟浄の前に盾の様に身構えた。振りかぶっていた三蔵の拳はギリギリのところで止まる。
「…退け、雅」
「やだ」
「退けって言ってんだろうが…」
「嫌だ!!」
「そんなに悟浄を守りてぇのか…」
「そうじゃない…こんなことしたって無駄だよ!!」
「…ッチ」
「雅……ゲホッゴホ……」
雅が間に入った所で二人の殴り合いは一旦は落ち着いた。しかし、今だかつてあの目で雅を見ることはなかった程の三蔵の視線だった。
「お前が一番怯えてただろうが!」
「でも…!それで三蔵と悟浄が殴り合いなんておかしい!」
「おかしくねぇだろうが、」
「おかしいって言ってるでしょ?!」
「……ッチ」
それは端から見たら雅が恋人の三蔵ではなく、悟浄を守っているようにも見えている。そんな光景のまま雅は相変わらずも三蔵を、三蔵は雅を見据えたままだった。
「まだそいつと話は終わってねぇんだ!退け…」
「嫌だ」
「退かねぇなら殺すぞ」
「……ッ」
チャカっと昇霊銃は雅の額に一ミリも離れずにピタリとくっつく。ひやりとした冷たく、固い感覚を受けながらも雅ははっきりと答えた。
「打ちたいなら打てばいいよ」
「何なんだ…」
「こんな殴り合いがいつまでも続く位なら打って終わるなら終わればいい。」
「雅…それは…!」
「ごめん八戒、黙ってて」
「ほぅ……」
三蔵の人指し指がゆっくりとトリガーに掛かった。
「三蔵がただ単にわからず屋なだけじゃん……」
「んぁ?」
「何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…何もなかったって…言ったじゃん…」
「何も無かった訳ねぇだろうが!」
「そりゃ…悟浄には押し倒されたけど…でもそれ以上は何もない」
「十分な理由だ」
「三蔵!」
「…退け」
銃を後ろに放り投げ、ベッドに着地すると同時だろうか…雅をその場から横に払い、三蔵は思いっきり悟浄の頬めがけて拳をいれた。
「……二度と手ぇ出すんじゃねぇよ。次はマジで殺す…」
そう言うと部屋を後にした。騒がしいと思い、宿主始め、数人が部屋の前に集まっていた。
「すみません、騒がしくて…痴話喧嘩でして…さっき片付きましたので…」
「それならいいが…」
「雅は三蔵のところに行ってください?」
「…ごめんね…八戒」
そういって三蔵の後をおった雅。残された部屋では悟浄を抱え、ベッドの縁に座らせた。
「全く……あなた達は…」
「でもさ…悟浄…相手は三蔵だろ?無謀だって…」
「…うるせぇ猿」
「悟空の言う通りです。それに…」
「それ以上言うな…」
「え?」
「完全にフラれたの、聞いてただろ…」
俯きながらそっと目を閉じる悟浄。耳の奥に残っている雅の言葉がずっと木霊していた。
『何があっても好きなのは三蔵だけだって言ってるのに…』
「俺じゃ到底雅の心には入り込めねぇんだよ…」
「フ…三蔵に思いっきり殴られて気付くなんて…相当好きだったんですねぇ…」
「うるせぇ…ほっとけ…」
「そうは行きません。悟空…薬、これだけあれば三蔵の方も足りるでしょう、持っていってください?」
「…げ、俺が?」
「長居しなければ問題ありません」
「わ…解った…」
そういって八戒に頼まれて隣の部屋に持っていった悟空。
同時期、隣の部屋では三蔵に向き合っている雅の姿があった。
「三蔵…」
「うるせぇ、何にも言うな」
「…ごめん…」
「……ッチ…謝ってんじゃねぇよ…」
「痛かったよね…」
「これくらいなんともねぇ」
「そうじゃない…」
そっと手を包み込むようにして、じっとその手を見つめる雅。
「手…悟浄殴る時の手…痛かったよね…」
「……」
「もうやめて…そんな殴り合いするのに三蔵の手…使わないで…」
「必要ならするだろうが…」
「しないでいいよ……今回みたいなことは絶対に必要ない…」
「…俺の中では優先事項に当たるが?」
「当たらない」
「当たるっつってんだろうが…」
「あたら…無いよ…」
「それを決めるのは俺……ッ」
そっとキスで唇を塞ぐ雅。ゆっくりと離れると首に巻き付いた。
「お願いだから…そんな傷だらけにならないで…」
「……悟浄の事守ってたと思ったが…俺の見当違いだったって訳か…」
「今さら気付くなんて、三蔵にしては鈍いね…」
「お前が解りにくいだけだろうが…」
「三蔵がバカなんだよ…」
「雅に言われたくねぇよ…」
そんな恋人には似つかわしくない会話をしていた。そうっと扉を開けて様子を見ていた悟空は八戒に渡された薬を持ち戻ることになっていた。
「あれ?悟空…それ、三蔵の所にって、お願いしたやつですよね?」
「…何か…入れない…」
「全く…三蔵が怒鳴ってます?」
「違う……あれ見たら…誰だって雅の事好きになっちゃうよ」
「え?」
「って、俺は三蔵も好きなんだけど!その、恋とか愛とかっての…俺はわかんねぇからさ。でも…すげぇいい顔して…俺あんな三蔵の顔も見た事ねぇし…」
「……」
「ごめん悟浄、あれは…悟浄の負け…だと思う」
「んな純粋に泣きそうな顔して謝んなって…もう解ってっから。」
「…にしても困りましたね。」
「…貸せ」
「悟浄?」
「ちょっくらその珍しい三蔵の顔を拝みに行ってくるから。」
そういうだけ言って薬やガーゼのの入った袋を抱え込んでいる悟空の腕からひょいっと取ると、悟浄は部屋を後にした。
「なぁ八戒…行かせて大丈夫?」
「まぁ…なんとかなると信じましょうか…」
そういって後を追うことはしなかった。
コンコン
「入るぞ?」
「…今度はなんだ…」
「三蔵じゃねぇよ、雅に…」
「断る」
「…ってなんで三蔵に言われなきゃなんねぇんだよ。ほら…これ」
「え?」
「八戒から。」
「ならなぜ八戒が持ってこない」
「さぁな、知ーらね」
「あ……ありがとう…」
袋の中身を見た雅は嬉しそうに悟浄に礼を言っていた。
「なぁ…雅」
「なに?」
「さっきは…その、悪かった。」
「?何の事?私忘れちゃった」
「……三蔵も…悪かったな」
「…何の事だ」
「二人揃って…全く…」
そういって悟浄はすっきりとした様子で扉に向かった。
「おい」
「んぁ?なに?三蔵」
「……」
「なんだよ!」
「…今回は雅に免じて忘れてやるよ」
「三蔵…」
「フン…」
そういうだけ言ってふいっと顔を背けた三蔵とフッと口許が緩みながらも笑いながら部屋を出ていった。
「悟浄が持ってきてくれた薬、付けよ?」
「…はぁ…」
そういいながらも雅は薬をあけ、ガーゼに付け傷口をおおった。
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「うるせぇよ」
「…クス…」
そんな雅もまた小さく笑っていたのだった。
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