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battle14…赤きリコリス(前編)
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ジープを走らせて直に、村の入り口が見えてきた。
「こんなに近かったのか」
「だったら昨日の内に来ても良かったかもねぇ」
「確かに…でも何でこんなに直ぐだったのに解らなかったんでしょうか…」
「化かされたか?」
「それはないと思うんですけど…」
「どっちでもいい、さっさと入るぞ」
そう言われながらもジープで入り口まで来ると、一行はいつも通りにジープを降り、その姿も白竜に戻るのだった。しかし、足を踏み入れようとしたときだ。小さな男の子が両手を思いっきり広げて一行の前に立ちはだかった。
「帰れ!妖怪!!」
「おんや?これはまた凄いお出迎えだな」
「そんな人の形してても妖怪だろ!!」
「良く解ったな」
「……やっぱり…!!帰れ!!」
「どうします?三蔵…」
「とりあえず、この村の長に話をする。退け」
「く…来るな!!お前も仲間なんだろ?じいちゃんに会わせない!」
「仲間じゃねぇよ、下僕だ」
「ひど…っ!!」
しかし、少年は怯むことなく三蔵を睨み付けている。しかし三蔵もまた一つため息を吐いてしゃがみこむと少年と視線を合わせて言った。
「おい、お前のじいさん、呼んでこい」
「何でだよ!」
「俺等はここから入れねぇんだろ?だったら話をするから連れてこいって言ってんだ」
「お…お前達なんかにじいちゃんが会うもんか」
「会うか会わねぇかはお前が決める事じゃねぇ。お前のじいさんが決めることだ」
「……ッ」
「解ったらさっさとここに連れてこい」
そう言われて両手を下げると、少年はゆっくりと向きを変えて走って村の奥に行ってしまった。
「おい…三蔵…」
「なんだ」
「本とにあのガキがじいさん連れてくるまで俺等入れねぇの?」
「まぁま、悟浄。三蔵なりの考えがあるでしょうし…」
「あるか、んなもん」
「え?」
「単刀直入だ。入れねぇなら連れてこい。それまでだ」
「……あっそうですか…」
そう答え、一行は村長がやってくるのをただ待っていた。すると奥の方から先ほどの少年と一緒に皆が想像していたよりも若いと言っていい位の男性がやってきた。
「これは…うちの孫がとんだご無礼を…」
「いや、それは構わん。ただ、頑なに村に入れてくれなかったものでな」
「ほら!翠嵐!!謝りなさい!」
「すい…ら…ん?」
「…ごめんなさい…」
「雅?どうかしましたか?」
「……ッッ…」
「雅?」
「え?あ…ごめん…」
「いえ…?」
そんなことを話していると村長は三蔵の双肩にかかる経文に気付いた。
「もしかして…三蔵様ですか?!」
「…あぁ…」
その三蔵の返事を聞いた村人は、わぁっと集まってきた。
「良かった!この村にもようやく三蔵様が来てくださった!!」
「…どう言うこと?」
「これで天人様に差し出さなくてすむ!!」
「あまひとさまぁ?」
悟空の間延びした返答にも誰もが頷けた。さっきまでは入るなと言われていたのにも関わらず、三蔵と解った瞬間にとてつもない歓迎の仕方に加えて突如出てきた天人様なる存在。一体この村で何が起きているのかと考えると同時に嫌な予感しかしていなかった。
「どうぞ」
そう言われて通されたのは、村長の家だった。この村一番の大きい家だったものの、やはり今までの街と比べると多少質素ではあったが、それでも暖かさを感じるような家だった。
「それで…?あの、さっき言っていた天人様って一体何者なんですか?」
「天上にとても近い優れたお方なんです。でも…人ではない…」
「妖怪…か」
「はい。一年に一度、年頃の娘を天人様に差し出せばこの村も安泰に平和に過ごせれるんです。でも…差し出さなければ…この村は一瞬で滅びる…」
「差し出さなかったときがあるんですか?」
「もうずいぶんと昔の頃です。ずっと言い伝えられてきているので…実際に滅びるところをみたものは今では私を含めてほんの数人です。」
「でも生き残ってはいるんだな」
「本当に幼かったので…物陰に隠れて…なんとか生き延びた…と言った方がいいのかと…」
「どちらにしろ、あの少年すら警戒するとなると、もうじきなんですか?」
「はい…明日……天人様はやってきます。そして今回差し出されるのが…翠嵐の姉、白明です。」
「あの…!」
「はい?」
ずっと黙っていた雅が急に手を小さく挙げて問いかけた。
「天人様って、誰が生け贄と言うか…差し出されるかって知らないんですか?」
「えぇ…でも前日からその用意は始まるんです。」
「……から…だから妖怪は入れないんだ!!」
「翠嵐!」
「お前らが天人の仲間じゃないなんて!どうして言いきれるんだ!!」
「三蔵様だぞ!!」
「それで、気になっているんですが…なんで三蔵が来たらその天人様に差し出さなくていいんですか?」
「これもまた昔からの言い伝えでして…」
そうして話し始めたのは、天人様の来るタイミングで三蔵法師様が来たときには、天人様を退治してくれる…と言うものだった。
「フン…俺には関係ねぇ話だな…」
「あの…!それじゃぁ…!!私たちは…どうすれば…!!」
「その天人様にでもなんでも娘差し出して村の安泰を今まで通り願うんだな」
「お前…!!やっぱり三蔵の皮被った妖怪だろう!!」
「よしなさい!翠嵐!!」
「なぁんかある意味的獲た事言ってんなぁ」
「あの…」
そう言って雅はまた問いかける。
「その役、私が引き受けるってのはダメですか?」
「はぁ!?!?」
「何言ってんだ、テメェは…!!」
「翠嵐くん?」
「……なんだよ」
「君は村の事なんか、どうでもいいんだよね?」
「……ッッ」
「お姉ちゃんを…守りたいだけなんでしょ?」
「……それは…」
「だったら早い話だよ?」
「おいおい…」
「それって…雅が天人様に食われちまうのか!?俺!やだよ!?」
「ちょぉっと悟空黙ってて?」
その雅の制止で悟空もグッと息を飲んだ。
「でも、そんな旅のお方にまで迷惑かける事はできないですし。」
「だそうだ、雅」
「まって…村長さんに聞いてないの。私は今この子と話してる。」
そう言い出した雅はまっすぐに翠嵐に目を向けた。
「僕は…白明姉ちゃん…離れたくない…」
「そっか…解った。三蔵…」
「……なんだ」
「私、この子のお姉ちゃんの変わりに天人様と会ってみる。」
「バカかテメェは。会ってどうなる」
「うん、それで三蔵にお願いがあるの」
「…」
迷いは無いと言わんばかりの雅の視線にいつも通りに『断る』と言うのも言えなかった三蔵。
「悟空や、悟浄、八戒と一緒に私を殺さないでほしいの」
「意味が解らねぇ」
「まず、私がこの子のお姉ちゃんの変わりに天人様に捧げられる。で、その後に私が天人様に食われる前に天人様を殺しちゃえば私は助かる。この村も万々歳!……どう?」
「そう簡単に行くわけ無いだろうが…」
「うまく行くか行かないかなんて聞いてないの。だって、皆なら…三蔵なら殺れるでしょ?」
「雅って…時々凄く怖いことさらっと言いますよね…」
「俺もそう思う…」
「天人ってのを俺は知らねぇから、ヤれるかどうかも解りゃしねぇだろうが」
「大丈夫だよ」
「どこにそんな根拠がある」
「私が信じてる」
その言葉に一切の迷いはなかった。雅の瞳には揺るぎ様の無い意思が強く光る。
「一つだけ言っておくぞ?」
「何?」
「こいつはお前の兄貴じゃない。解ってるか?」
「わかってるよ…」
「三蔵…何言ってるんだ?」
「あー…すいらんだからなぁ…」
「ん?」
「わかってるよ…大丈夫…重ねてなんか無い」
「…チッ…」
ちらりと村長の方に顔を向ける三蔵。ため息混じりに口を開いた。
「おい、こいつの姉はどこにいる」
「…三蔵!」
「あの…では身代わりになってくれるんですか?」
「勘違いするな。こいつを身代わりになんざさせねぇよ。連れて帰る。その代わりに天人様とやらもヤるだけだ」
「…!では!こちらに!!」
そう言って雅は天人様への献上のために準備している白明の元へと連れていかれた。三蔵達も後から着いていくのだった。
「こんなに近かったのか」
「だったら昨日の内に来ても良かったかもねぇ」
「確かに…でも何でこんなに直ぐだったのに解らなかったんでしょうか…」
「化かされたか?」
「それはないと思うんですけど…」
「どっちでもいい、さっさと入るぞ」
そう言われながらもジープで入り口まで来ると、一行はいつも通りにジープを降り、その姿も白竜に戻るのだった。しかし、足を踏み入れようとしたときだ。小さな男の子が両手を思いっきり広げて一行の前に立ちはだかった。
「帰れ!妖怪!!」
「おんや?これはまた凄いお出迎えだな」
「そんな人の形してても妖怪だろ!!」
「良く解ったな」
「……やっぱり…!!帰れ!!」
「どうします?三蔵…」
「とりあえず、この村の長に話をする。退け」
「く…来るな!!お前も仲間なんだろ?じいちゃんに会わせない!」
「仲間じゃねぇよ、下僕だ」
「ひど…っ!!」
しかし、少年は怯むことなく三蔵を睨み付けている。しかし三蔵もまた一つため息を吐いてしゃがみこむと少年と視線を合わせて言った。
「おい、お前のじいさん、呼んでこい」
「何でだよ!」
「俺等はここから入れねぇんだろ?だったら話をするから連れてこいって言ってんだ」
「お…お前達なんかにじいちゃんが会うもんか」
「会うか会わねぇかはお前が決める事じゃねぇ。お前のじいさんが決めることだ」
「……ッ」
「解ったらさっさとここに連れてこい」
そう言われて両手を下げると、少年はゆっくりと向きを変えて走って村の奥に行ってしまった。
「おい…三蔵…」
「なんだ」
「本とにあのガキがじいさん連れてくるまで俺等入れねぇの?」
「まぁま、悟浄。三蔵なりの考えがあるでしょうし…」
「あるか、んなもん」
「え?」
「単刀直入だ。入れねぇなら連れてこい。それまでだ」
「……あっそうですか…」
そう答え、一行は村長がやってくるのをただ待っていた。すると奥の方から先ほどの少年と一緒に皆が想像していたよりも若いと言っていい位の男性がやってきた。
「これは…うちの孫がとんだご無礼を…」
「いや、それは構わん。ただ、頑なに村に入れてくれなかったものでな」
「ほら!翠嵐!!謝りなさい!」
「すい…ら…ん?」
「…ごめんなさい…」
「雅?どうかしましたか?」
「……ッッ…」
「雅?」
「え?あ…ごめん…」
「いえ…?」
そんなことを話していると村長は三蔵の双肩にかかる経文に気付いた。
「もしかして…三蔵様ですか?!」
「…あぁ…」
その三蔵の返事を聞いた村人は、わぁっと集まってきた。
「良かった!この村にもようやく三蔵様が来てくださった!!」
「…どう言うこと?」
「これで天人様に差し出さなくてすむ!!」
「あまひとさまぁ?」
悟空の間延びした返答にも誰もが頷けた。さっきまでは入るなと言われていたのにも関わらず、三蔵と解った瞬間にとてつもない歓迎の仕方に加えて突如出てきた天人様なる存在。一体この村で何が起きているのかと考えると同時に嫌な予感しかしていなかった。
「どうぞ」
そう言われて通されたのは、村長の家だった。この村一番の大きい家だったものの、やはり今までの街と比べると多少質素ではあったが、それでも暖かさを感じるような家だった。
「それで…?あの、さっき言っていた天人様って一体何者なんですか?」
「天上にとても近い優れたお方なんです。でも…人ではない…」
「妖怪…か」
「はい。一年に一度、年頃の娘を天人様に差し出せばこの村も安泰に平和に過ごせれるんです。でも…差し出さなければ…この村は一瞬で滅びる…」
「差し出さなかったときがあるんですか?」
「もうずいぶんと昔の頃です。ずっと言い伝えられてきているので…実際に滅びるところをみたものは今では私を含めてほんの数人です。」
「でも生き残ってはいるんだな」
「本当に幼かったので…物陰に隠れて…なんとか生き延びた…と言った方がいいのかと…」
「どちらにしろ、あの少年すら警戒するとなると、もうじきなんですか?」
「はい…明日……天人様はやってきます。そして今回差し出されるのが…翠嵐の姉、白明です。」
「あの…!」
「はい?」
ずっと黙っていた雅が急に手を小さく挙げて問いかけた。
「天人様って、誰が生け贄と言うか…差し出されるかって知らないんですか?」
「えぇ…でも前日からその用意は始まるんです。」
「……から…だから妖怪は入れないんだ!!」
「翠嵐!」
「お前らが天人の仲間じゃないなんて!どうして言いきれるんだ!!」
「三蔵様だぞ!!」
「それで、気になっているんですが…なんで三蔵が来たらその天人様に差し出さなくていいんですか?」
「これもまた昔からの言い伝えでして…」
そうして話し始めたのは、天人様の来るタイミングで三蔵法師様が来たときには、天人様を退治してくれる…と言うものだった。
「フン…俺には関係ねぇ話だな…」
「あの…!それじゃぁ…!!私たちは…どうすれば…!!」
「その天人様にでもなんでも娘差し出して村の安泰を今まで通り願うんだな」
「お前…!!やっぱり三蔵の皮被った妖怪だろう!!」
「よしなさい!翠嵐!!」
「なぁんかある意味的獲た事言ってんなぁ」
「あの…」
そう言って雅はまた問いかける。
「その役、私が引き受けるってのはダメですか?」
「はぁ!?!?」
「何言ってんだ、テメェは…!!」
「翠嵐くん?」
「……なんだよ」
「君は村の事なんか、どうでもいいんだよね?」
「……ッッ」
「お姉ちゃんを…守りたいだけなんでしょ?」
「……それは…」
「だったら早い話だよ?」
「おいおい…」
「それって…雅が天人様に食われちまうのか!?俺!やだよ!?」
「ちょぉっと悟空黙ってて?」
その雅の制止で悟空もグッと息を飲んだ。
「でも、そんな旅のお方にまで迷惑かける事はできないですし。」
「だそうだ、雅」
「まって…村長さんに聞いてないの。私は今この子と話してる。」
そう言い出した雅はまっすぐに翠嵐に目を向けた。
「僕は…白明姉ちゃん…離れたくない…」
「そっか…解った。三蔵…」
「……なんだ」
「私、この子のお姉ちゃんの変わりに天人様と会ってみる。」
「バカかテメェは。会ってどうなる」
「うん、それで三蔵にお願いがあるの」
「…」
迷いは無いと言わんばかりの雅の視線にいつも通りに『断る』と言うのも言えなかった三蔵。
「悟空や、悟浄、八戒と一緒に私を殺さないでほしいの」
「意味が解らねぇ」
「まず、私がこの子のお姉ちゃんの変わりに天人様に捧げられる。で、その後に私が天人様に食われる前に天人様を殺しちゃえば私は助かる。この村も万々歳!……どう?」
「そう簡単に行くわけ無いだろうが…」
「うまく行くか行かないかなんて聞いてないの。だって、皆なら…三蔵なら殺れるでしょ?」
「雅って…時々凄く怖いことさらっと言いますよね…」
「俺もそう思う…」
「天人ってのを俺は知らねぇから、ヤれるかどうかも解りゃしねぇだろうが」
「大丈夫だよ」
「どこにそんな根拠がある」
「私が信じてる」
その言葉に一切の迷いはなかった。雅の瞳には揺るぎ様の無い意思が強く光る。
「一つだけ言っておくぞ?」
「何?」
「こいつはお前の兄貴じゃない。解ってるか?」
「わかってるよ…」
「三蔵…何言ってるんだ?」
「あー…すいらんだからなぁ…」
「ん?」
「わかってるよ…大丈夫…重ねてなんか無い」
「…チッ…」
ちらりと村長の方に顔を向ける三蔵。ため息混じりに口を開いた。
「おい、こいつの姉はどこにいる」
「…三蔵!」
「あの…では身代わりになってくれるんですか?」
「勘違いするな。こいつを身代わりになんざさせねぇよ。連れて帰る。その代わりに天人様とやらもヤるだけだ」
「…!では!こちらに!!」
そう言って雅は天人様への献上のために準備している白明の元へと連れていかれた。三蔵達も後から着いていくのだった。
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