凜恋心

降谷みやび

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battle8…宵の告白

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次の日、街で祭りがあると聞いた五人は街中に向かっていった。

「あ!!見てみて!かわいぃ!」
「似合うんじゃねぇの?雅」
「んー、でも要らないや!」
「何で?良ければ買ってやるぜぃ?」
「ううん、本当に要らないの」
「…そういえばずっと着けてますね、そのネックレス」
「そういえば、そうだな」
「…ん、」
「大切なものですか?」
「私のお守り…みたいなもの」
「…へぇ」
「あ!なぁなぁ!あっちで飯食い放題だって!」
「はぁ?!」

そういってマイペースに雅を引っ張っていく悟空。受け付けテントで受付をし、雅は両手を振り慌てている様子が見える。

…ですか」
「確かアレ、三蔵が渡した奴だろ?」
「…フン」
「罪作りな人ですねぇ、三蔵?」
「何がだ。要らねぇなら捨てろって俺は言ってある」
「でもあぁやって頑なに外さないし」
「お守りまで言われてますからね」
「…知るか」
「おぉい!!さんぞー!」

遠くから手を振る悟空と雅。三人の輪からでて向かうのは悟浄だった。

「ぼぉっとしてると、取られちゃいますよ?」
「ハッ…クク…悟空にか?」
「いいえ?さぁて、誰でしょうねぇ」

いつもの笑顔を見せながら八戒も悟空達の元へと向かった。入れ違いに雅が三蔵の元に戻ってくる。

「三蔵?体調悪い?」
「は?」
「元気ないみたいに見えて…」
「あいつ等と一緒にするな」
「もしかしてこぉ言うお祭り…苦手?」
「人混みは、な。」

そういうとシュンとする表情を見せた雅。しかしすぐに雅の頭にぽんっと手を乗せた三蔵は一歩踏み出していった。

「でもたまにはいいかもな。」
「…ッ!!」
「置いてくぞ?」
「あ、待って!」

急いで後を追う雅。いつもよりも歩調は緩やかですぐに三蔵に追い付いた。

「三蔵三蔵!!!大食い大会だって!」
「好きにしろ」
「…てか、聞く前にエントリーしてんだろうが、この猿は」
「だって、食い放題だろ?」

そう話していると時間が来て、悟空はステージに上がる。街自慢の大男達が集まっていた。

「はっ!このガキが勝てるわけねぇし」
「♪♫…♪」

男達の言い分など一切聞かずに早く食べることだけを待っていた悟空。回りの観客さえも、まさか15分後には予想を上回る結果に驚かされる事になるとはこの時思ってもいなかった。

「優勝は悟空さん!!」
「へ…もぉほはり??」
「あーあ、食い過ぎだろ、あいつ…クハ…」

優勝賞金をもらい、三蔵達の元に戻ってきた。

「やったなぁ!猿!」
「猿って言うな!」
「でもこれで夕飯の後にでも少しお酒飲めますねぇ」
「俺飯!」
「はいはい、」
「雅は、酒飲めんの?」
「飲んだことないの…」
「え、そうなの?」
「うん…」
「だったら今日、少し試してみませんか?」
「いいの?」
「もちろん」

そんな話をしていた。夜になり、食事も終わった後、宿に戻った五人はゆっくりと飲み直しをしようと準備していた。

「皆さんビールでいいですね」
「あぁ。」
「私なにかお手伝い…」
「じゃぁこれ、並べてください。」
「解った!」

そう言って軽いおつまみをテーブルに並べた。グラスが一本だけあるのに気付いた雅は八戒に問いかけた。

「ねぇ、八戒?」
「なんです?」
「これも?」
「えぇ、飲みやすそうなのを見つけましたから。」

にっこりと微笑んで八戒は顔の横に小さなボトルを掲げた。そうして準備も出来、皆の待つテーブルに向かった。

「来た来た!」
「こっち、来なよ!」
「早くしろ…」

そう言われて、八戒に続き雅も席に着いた。

「はい、どうぞ」
「え?」
「ビールは好き嫌いが激しいですし、初めてならこっちのカクテルのが甘くて軽い飲み心地ですし。」
「あらー、いつの間に…」

しかし、プシュっと言う音で一斉に三蔵へと視線が注がれる。気付けば悟空もつまみに手が延びている。

「どうぞ?」
「いただきます」

そっとゆっくり口を付けた雅はぱぁっと顔が明るくなった。

「おいしぃ…」
「それはよかったです。」
「雅も飲める口かぁ。」

そうこうしながら楽しい時間も過ぎていく中、やけに静かな雅に気付いた。

「雅?」
「……」
「おい、雅チャン?!」
「…にが…悪いぉ?」
「へ?」
「おい…八戒…」
「…空です…ね」
「そりゃ…私らって…好きかなって思うけろ……しゅきって…言ったららめじゃん?」
「何言ってんだ?雅のヤツ」

そのに心当たりがあるのは悟浄だけだった。しかし、止める間もなく雅は勢いで話していった。

「りぃんちゃんのが先かもしぇない…でも……私らってしゅきなんだもん…」
「これは…いったい…」
「雅、雅チャン?落ち着け?」
「悟浄が言ったんらよ?意識しにゃいよぉにしてたのにぃ…」
「この酔っぱらいどうにかしろ、悟浄。」
「や、そうは言っても…」
「三蔵ぉ…」

そう小さく呼ぶときゅっと首に巻き付いていった雅。

「おい」
「…好きだぉ…三蔵ぉ…」

そう言い追えると同時に力は抜け、心地よくも寝息を立て始めた雅。突然の事で悟浄以外頭の思考が追い付いていない。

「…チッ」
「なぁ…今のって、雅が三蔵に好きって言った?」
「言いました…ねぇ」
「おい、この酔っぱらいどうにかしろ」
「三蔵!?どうするの?」
「どうするもこうするもねぇ。」
「信じらんねー!」
「本当に…!」
「酔っぱらった勢いだろうが」
「…ハァ」

しかし誰も手を貸そうとしない中、小さなため息を吐くと三蔵はふわりと抱き上げた。そのまたとさりとベッドに寝かせると面倒くさそうに椅子に座り直す。

「答えて上げてくださいね?三蔵」
「酔っぱらいの告白にか?」
「酔っぱらいでも雅ですよ?」
「フン…知ったことか…」
「…なぁ三蔵?」
「なんだ」
「本当に、答えるつもりはねぇ訳?」
「どうでもいい」
「なら、俺、マジで雅の事オトシにいっていい?」

その悟浄の一言で、一瞬場は静寂に包まれたが、すぐに三蔵の一言で打ち消された。

「貴様が誰を落とそうと俺の知ったことじゃねぇよ」
「…解った」
「ちょ…ちょっと?あんまり波風立てないでくださいね?」
「恋路にゃたまの波風は必要ってことよ。」

そう言い残した悟浄はベッドに寝かされた雅を再度抱き上げ、その部屋を出た。横の部屋が用意されているもう一部屋。そっとベッドに下ろすと前髪を避けた。

「なんでそんなに三蔵がいいんだよ…」

そう言い残し、そっと唇にキスを落とした悟浄だった。
一方、二人の出た後の部屋では八戒に諭されるように話をされる三蔵が居た。

「いいんですか?三蔵…」
「俺の知ったことじゃねぇ」
「雅の気持ちはどうなるんですか?」
「素面ならまだしも、酔っぱらいの告白なんざまともに受け取れねぇだろうが」
「…ハァ……あなたという人は。」

そう言い残して八戒はカチャカチャと片付け始めた。そのまま悟空はソファで眠りそうになっているのを八戒に促され横の部屋へと向かったのだった。
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