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scene1…side私
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初めてのキスからおよそ半年はたった頃…会長様からお誘いがあって、水族館に行くことに。
『本当にここでよかったの?』
『何でですか?私は嬉しいですよ!』
嬉しくないわけ無い。何か理由があるのかも知れないけど、私はただ、あなたに会えるのが嬉しいから。
『あんまり急ぐと転ぶよ?』
ほら、また子供扱い…キスだって何かの気まぐれだったんじゃない?って位、ここに来るまでの間も面白いほど何もなかったし。
『転びません!』
少しむぅっとした表情を見せながらも会長様の数歩先を行きつつきっぱりと言いきった。その時だ。
『ほら、』
『え??』
『え?じゃない。人が少ないとは言え君の事だ、迷子になり兼ねない』
や、何これ…手…繋ぐ?てか、迷子って…
『すごく失礼に子供扱いしてませんか?』
『つべこべ言わない。会長命令!』
出た…会長命令…これを言われると弱いこと知ってるくせに。私が知ってる限り、出会ってから社内でこれを言われるのは私だけだったから…
『意地悪…』
『なんか言った?』
『いえ、他のスタッフだとパワハラになりますよ?』
『他のスタッフとは手を繋がないから心配は要らない』
そう言う事さらりと言うのやめてほしい。さっきの言葉といい『私だけが特別』って錯覚するから。言われ、誘われるがまま手を繋ぐ。気付けば手だけではなく、指ごと絡め取られていた。
そのまま大きなメイン水槽からクラゲの水槽、あまり見かけない海中生物等を見て回ると、ペンギンの水槽にまでやってきた。
『会長!ペンギンさん見てもいいですか?!』
『クス…どうぞ』
ピタリと足は止まり気持ち良さそうに泳ぐペンギン、陸でパタパタと羽をはばたかせているペンギン…たくさん居るのを目の前にしてスマホのカメラを起動させる。
やば…かわいい!でも相変わらず撮るのって難しいなぁ…でもあっちのペンギンさんなら撮れるかも!
先ほどまでと打って変わって子供のようにはしゃいでいた。ぽーっと見入っていたもののふと我に返る。
しまった…会長様と一緒だった…
恐る恐る振り返り申し訳なくも小走りで会長様の元に戻っていく。
『すみません…一人はしゃいで』
『いや、構わないよ。ただ、本当に解りやすいなぁと思ってみてただけ。』
『??子供みたいだって事ですか?』
『そこまでは言っていない』
そこまでってことは少しは思ってるってことよね…しまったなぁ。子供扱いされるとは…今のは完全に失態だった…
半歩前を行きながら会長様の誘導で少しの物陰に身を潜める。
『会長?』
『…フ』
小さく息を吐くと、触れるだけの軽いキスが降ってくる。
な…!こんなとこで!?誰かに見られたら…!
真っ赤な顔をしながら俯くしかなく、会長様の体を軽く押し戻すので精一杯だった。
『嫌だった?』
『そうじゃなくて場所…!』
『俺は構わない』
『私が構います!』
『そう怒るなって。後で車戻ったらまたしよっか』
『そんな軽く聞きますか?』
こっちの気も知らないで!俺は構わないって…しかも車戻ったらって…
『ん?シたくない?』
『……ッッ…知りません!』
そういいながらもふいっと体を背けてその場を離れていく。
シたくない訳…ない。それでも…
自分の中の『何か』が自問自答してくる。
一頻り見終わり、後にしようと車に戻る。エンジンをかける事無く、言うなればシートベルトもしないままの会長様と裏腹に私は一足早くカチャリと閉めていた。
そんな私の頭に会長様の大きな手がポンと乗る。
『ねぇ』
『はい?』
『こっち、向いて?』
逆らえるわけもなくゆっくりと顔を上げると優しく笑いかける会長様の顔があった。
緊張しかない…私今変な顔してるかも…それよりもそんな優しく笑われたら…
『まだ怒ってる?』
『怒っては居ません、居ませんけど…!』
『機嫌悪いな』
『誰のせいだと…ン』
ほら…やっぱり逆らえない…あんな顔して、シートベルトもエンジンもかけないならこうなる事は容易に解るはず。それでもこの甘い誘惑には勝てない。
『怒ってもダメ、単にかわいいから』
『何言って…ンァ』
かわいいって…ただあなたのキスがほしいだけ…かわいいんじゃない。あなたが居るから素直になれる…
頬を包む掌の温もりも、ヤらしく車に響くリップ音も胸を焦がすほどの鼓動を高鳴らせるだけ。
『今は?…嫌?』
『…ッ////意地悪』
『意地悪言ってるつもりはない』
『だって敢えて聞くから…』
十分意地悪だよ…『嫌じゃない』って知ってるくせに…
『今のはどう取ったらいい?』
『…そんなの……』
『言って?』
恥ずかしさから俯くばかり。
言えるわけ無い…絶対子供だって笑われる。もしくは、飽きられそうで…怖い…
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、会長様は顔を覗き込んでくる。
『ほら…言っちゃいなって…』
『…絶対笑うから嫌です』
『笑わないよ、…多分』
『多分って…なんですか…』
『ほら』
『嫌じゃ…無い……です』
もう…逆らえないよ。甘やかすような声…蕩けるほどのキス…柔らかい笑み…どれも全てが特別扱いされてるって解るから…
私が答えると、小さく笑い会長様の顔が近付いてくる。逃げられない…気付けば再度唇は重なり合う。
『好きだ』
会長様のその言葉と一緒に何度も…何度も……
.
『本当にここでよかったの?』
『何でですか?私は嬉しいですよ!』
嬉しくないわけ無い。何か理由があるのかも知れないけど、私はただ、あなたに会えるのが嬉しいから。
『あんまり急ぐと転ぶよ?』
ほら、また子供扱い…キスだって何かの気まぐれだったんじゃない?って位、ここに来るまでの間も面白いほど何もなかったし。
『転びません!』
少しむぅっとした表情を見せながらも会長様の数歩先を行きつつきっぱりと言いきった。その時だ。
『ほら、』
『え??』
『え?じゃない。人が少ないとは言え君の事だ、迷子になり兼ねない』
や、何これ…手…繋ぐ?てか、迷子って…
『すごく失礼に子供扱いしてませんか?』
『つべこべ言わない。会長命令!』
出た…会長命令…これを言われると弱いこと知ってるくせに。私が知ってる限り、出会ってから社内でこれを言われるのは私だけだったから…
『意地悪…』
『なんか言った?』
『いえ、他のスタッフだとパワハラになりますよ?』
『他のスタッフとは手を繋がないから心配は要らない』
そう言う事さらりと言うのやめてほしい。さっきの言葉といい『私だけが特別』って錯覚するから。言われ、誘われるがまま手を繋ぐ。気付けば手だけではなく、指ごと絡め取られていた。
そのまま大きなメイン水槽からクラゲの水槽、あまり見かけない海中生物等を見て回ると、ペンギンの水槽にまでやってきた。
『会長!ペンギンさん見てもいいですか?!』
『クス…どうぞ』
ピタリと足は止まり気持ち良さそうに泳ぐペンギン、陸でパタパタと羽をはばたかせているペンギン…たくさん居るのを目の前にしてスマホのカメラを起動させる。
やば…かわいい!でも相変わらず撮るのって難しいなぁ…でもあっちのペンギンさんなら撮れるかも!
先ほどまでと打って変わって子供のようにはしゃいでいた。ぽーっと見入っていたもののふと我に返る。
しまった…会長様と一緒だった…
恐る恐る振り返り申し訳なくも小走りで会長様の元に戻っていく。
『すみません…一人はしゃいで』
『いや、構わないよ。ただ、本当に解りやすいなぁと思ってみてただけ。』
『??子供みたいだって事ですか?』
『そこまでは言っていない』
そこまでってことは少しは思ってるってことよね…しまったなぁ。子供扱いされるとは…今のは完全に失態だった…
半歩前を行きながら会長様の誘導で少しの物陰に身を潜める。
『会長?』
『…フ』
小さく息を吐くと、触れるだけの軽いキスが降ってくる。
な…!こんなとこで!?誰かに見られたら…!
真っ赤な顔をしながら俯くしかなく、会長様の体を軽く押し戻すので精一杯だった。
『嫌だった?』
『そうじゃなくて場所…!』
『俺は構わない』
『私が構います!』
『そう怒るなって。後で車戻ったらまたしよっか』
『そんな軽く聞きますか?』
こっちの気も知らないで!俺は構わないって…しかも車戻ったらって…
『ん?シたくない?』
『……ッッ…知りません!』
そういいながらもふいっと体を背けてその場を離れていく。
シたくない訳…ない。それでも…
自分の中の『何か』が自問自答してくる。
一頻り見終わり、後にしようと車に戻る。エンジンをかける事無く、言うなればシートベルトもしないままの会長様と裏腹に私は一足早くカチャリと閉めていた。
そんな私の頭に会長様の大きな手がポンと乗る。
『ねぇ』
『はい?』
『こっち、向いて?』
逆らえるわけもなくゆっくりと顔を上げると優しく笑いかける会長様の顔があった。
緊張しかない…私今変な顔してるかも…それよりもそんな優しく笑われたら…
『まだ怒ってる?』
『怒っては居ません、居ませんけど…!』
『機嫌悪いな』
『誰のせいだと…ン』
ほら…やっぱり逆らえない…あんな顔して、シートベルトもエンジンもかけないならこうなる事は容易に解るはず。それでもこの甘い誘惑には勝てない。
『怒ってもダメ、単にかわいいから』
『何言って…ンァ』
かわいいって…ただあなたのキスがほしいだけ…かわいいんじゃない。あなたが居るから素直になれる…
頬を包む掌の温もりも、ヤらしく車に響くリップ音も胸を焦がすほどの鼓動を高鳴らせるだけ。
『今は?…嫌?』
『…ッ////意地悪』
『意地悪言ってるつもりはない』
『だって敢えて聞くから…』
十分意地悪だよ…『嫌じゃない』って知ってるくせに…
『今のはどう取ったらいい?』
『…そんなの……』
『言って?』
恥ずかしさから俯くばかり。
言えるわけ無い…絶対子供だって笑われる。もしくは、飽きられそうで…怖い…
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、会長様は顔を覗き込んでくる。
『ほら…言っちゃいなって…』
『…絶対笑うから嫌です』
『笑わないよ、…多分』
『多分って…なんですか…』
『ほら』
『嫌じゃ…無い……です』
もう…逆らえないよ。甘やかすような声…蕩けるほどのキス…柔らかい笑み…どれも全てが特別扱いされてるって解るから…
私が答えると、小さく笑い会長様の顔が近付いてくる。逃げられない…気付けば再度唇は重なり合う。
『好きだ』
会長様のその言葉と一緒に何度も…何度も……
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