創世戦争記

歩く姿は社畜

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大和神国編 〜陰と陽、血を吸う桜葉の章〜

動き出す勢力

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 その日、世界が二分された。
 〈裁判神官〉の長エルメンヒルト・ベシュカレヴァによる声明は影響力が大きい。その影響力による動揺は大陸のみならず、大陸から遠く離れた大和すら揺るがし、〈桜狐オウコ〉と〈社畜連盟〉、〈レジスタンス=プロテア〉の関係にも亀裂が生じていた。
 エルメンヒルトが非難した三つの組織、それは苏安スーアン皇国と〈桜狐オウコ〉、そして〈レジスタンス=プロテア〉だ。
「…これは、随分と大胆ですね」
 桑名くわなが水晶盤に映る報道を見てそう漏らす。
「…ええ、これはかなりの痛手です」
 表春うわはるは険しい顔で頷いた。〈桜狐〉と〈社畜連盟〉は一触即発の危機にあり、大陸では反乱を起こされている苏月スー・ユエに更なる追い打ちが掛かっている。
 エルメンヒルトが声明を発表して直ぐ、フレデリカ達〈プロテア〉は〈桜狐〉の主要人物らと会議を開いた。〈社畜連盟〉と世界に向けた弁明について話し合う為だ。
 しかし、襖の向こうでは〈社畜連盟〉の武士達が刀を持って騒いでいる。
「…声を聞いた感じ、今直ぐに俺達をたたっ斬るつもりの過激派と、過激派を叩きのめすつもりの穏健派が居るみたいだ。それから、鶴蔦姉ちゃん率いる薙刀で武装した〈桜狐〉精鋭も。除霊師さんどうする、襲い掛かってきたら斬るか?」
 ゼオルは黒い鞘から刀を少し抜いた。しかし〈社畜連盟〉との武力衝突は極力避けたい。
「いいえ、ほとぼりが冷めるまでは桜宮領内からの退去を要請します」
 果たしてほとぼりは冷めるのだろうか。誰もそれを口にはしないが、今はそれが最適解だ。桜宮城には表春が各地から引き取った孤児達も多く生活しており、その子達を直接戦闘に巻き込まない為にも、穏便に出て行ってもらうのが得策だ。
榊原さかきばら殿なら話は通じそうですからね」
 そう言う表春の口調は苦々しい。勝永かつながは話は通じそうだが、油断ならない。先日の一件もあり、表春は警戒しているのだろう。
「なら、仲介役はどうしようか」
 フレデリカがそう言うと、一同は黙った。〈桜狐〉と〈プロテア〉、そして〈社畜連盟〉に対して中立、或いは〈桜狐〉と〈プロテア〉に傾いた組織はそう多くない。
「…困りましたな」
 桑名は大和ヤマトに数多く存在する武装勢力について考えるが、大和の武士は手段を問わない者が多い。仲介役として会議に参加するように見せ掛けて首を狙う事も充分に有り得る。
 フレデリカはがしがしと頭を掻きながら言った。
「…形だけの仲介役なら、良さげなのが一人居るけど…」
「おや、何方ですか?」
 フレデリカは唸った。
「有名人だけど、長年行方をくらましていた奴。…まぁ、結局は暴力で解決するタイプの奴だけど」

 それから数刻後、フレデリカが連れて来た女に表春は口をあんぐり開けて呟いた。
 赤毛に褐色の肌、長く尖った耳。エルフの鍛冶師だ。
「ラヴァ・シュミット…!?まさか、〈プロテア〉に勧誘していたのですか?」
 ラヴァを広間へ連れて来るのには時間が掛かった。ラヴァは人間の喧嘩に興味が無いと言って出て来なかった上に、彼女と〈プロテア〉と接点が無いと思わせる為に人目を避けて隠れるように移動していたのだ。
「勧誘というか、取引さ。あたしは帝国の侵略戦争には前々から不信感を抱いていたし、戦争の中であたしが作った武器や防具のレプリカも見付かるかもしれない。何せ武器や防具だからね、レプリカでも糞でも、それらの相応しき場所は戦場さ」
 そう言って葉巻に火を付ける。
「確か、コーネリアスの息子がやらかしたんだろう?いい迷惑だよ。仲介役はやってやるが、尻拭いはあんたらがやりな。私はあくまで中立者だ」
 会議の場に居て睨みを利かしときゃ良いんだろ、彼女はそう適当な事を言ったが、ラヴァは二本の戦槌ウォーハンマーを振り回す怪力だ。戦槌を持ってその緑の瞳で睨みを利かせれば、血気盛んで恐れ知らずな大和武士でも威圧感から馬鹿な真似は出来ない筈だ。
「良かった、協力してくれて」
 フレデリカがラヴァの手を取って喜ぶと、ラヴァはその手を振り払った。
「勘違いすんな、お前が五月蝿くて仕方がないから出て来てやっただけさ。本当はダルカンの小僧に稽古付けてやろうと思ってたのに」
 無愛想なラヴァはそう言うと深く煙を吐き出した。
「さっさと日程を決めてしまいな。あたしゃ暇じゃないんだ」
「分かりました。榊原と話し合って日程を決めます」
 そう言って表春は水晶盤を弄り始めた。

 一方その頃。
 不朽城の一室にて、ヴェロスラヴァは皇帝から折檻⸺否、折檻という名の褒美を受けていた。
 裸で四肢を鎖で繋がれ、己の影から伸びた触手に犯されながらヴェロスラヴァは鳴いた。
「へい、か、ぁ…っ、もっと…、もっと、くだひゃいぃッ♡」
 皇帝が読書しながら指を振ると、影から伸びたそれらは、より一層激しくヴェロスラヴァの豊満で美しい身体を弄ぶ。
 この五年間、毎日のように犯され続けた彼女の身体はすっかり出来上がっていて、繰り返された絶頂で床には大きな水溜りができている。
 これは本来、任務で度々失敗している〈大帝の深淵〉に対する折檻。しかしヴェロスラヴァは他の〈深淵〉とは異なり、折檻に対して快感を得てしまったらしい。皇帝は興味無さそうに読書しているが、何時間もヴェロスラヴァに快感を叩き込みながら力を与える事にした。それも、念入りに。
「ひぎぃ…ッ!?」
 触手は形を変えながら、ヴェロスラヴァの子宮内へ侵入した。女にとって特に重要な器官から、身体を改造するつもりのようだ。
 子宮内に直接闇を吐き出すと、ヴェロスラヴァは身体を仰け反らせながら絶頂する。
「貴様はもう、魔人には戻れない。だが、力を与えよう。果たして貴様は耐えられるかな?」
 黒い触手は白い身体を這うように伸び、尻の穴から、乳房の先端から体内に侵入してくる。
 これには流石のヴェロスラヴァも悲鳴を上げた。
「な、なにこれ!?へいか、まっ⸺」
 しかしその口にも触手は侵入し、穴という穴からヴェロスラヴァを改造しようと暴れ回る。
 皇帝は脚を組んでそれを眺めた。
「屈強な魔人なら耐えられるだろう。梦蝶モンディエは人の身でありながら耐えたぞ」
 蝶番が軋んだ音を立てると、赤い衣の女が入って来る。梦蝶だ。
「折檻中ですか?」
 膣や乳房からは血が流れ、激痛や快感でヴェロスラヴァの美しかった顔はぐちゃぐちゃになっている。しかし、梦蝶は表情を崩す事なく問うた。
「いや。雌豚へ、今までの活躍に対するご褒美だ」
「成る程。しかし…」
 梦蝶はヴェロスラヴァを見て目を細めた。
「壊れるのでは?このままでは異形に変質しますが」
「構わん。任務の途中で遊ぶような奴だ、居ても居なくても変わらんよ」
 言い終わった次の瞬間、触手が腹部を破り、ヴェロスラヴァの身体に変化が始まる。
「駄目でしたね。自我の無い魔獣が増えただけじゃないですか」
「ヴェロスラヴァも魔獣も大して変わらん。本能に従い欲のままに行動する、醜い存在だ」
 白い肌は黒く染まり、美しかった顔は崩れて醜く爛れる。長い手足は屈強な物に変化し、指の先は歪に歪んだ爪が生える。美しいヴェロスラヴァは死んだのだ。
「しかし生かしておけば、戦力となったでしょうに」
「使い道ならある。濃い闇の魔法をこいつには注いだ。影を辿り、大和まで辿り着けるだろう。おい魔獣」
 皇帝が高圧的に言うと、狼に近い姿をした生まれたての魔獣は主の顔を見上げた。
「大和へ向かい、アレンを殺せ。その時、また褒美をやろう」
 魔獣は褒美という言葉に反応した。そして主に遠吠えで応えると、闇に姿をくらました。
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