創世戦争記

歩く姿は社畜

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バルタス王国編 〜騎士と楽園の章〜

〈深淵〉のヴェロスラヴァ

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 鉄扉の向こうでは、ヴェロスラヴァが裸でフレデリカの陰部に自身の陰部こすり付けて笑っていた。
「ンっ…声を抑えなくても良いのに!ほら、そこに君の大好きなアレンが居るよ」
「あ、ア…レン?」
 ヴェロスラヴァはフレデリカから身体を離すと、彼女の砂を盛った程度の大きさしかない胸を揉み始めた。
「君から〈時空の書〉を貰いたいんだけど、空間魔法で仕舞われている持ち物は盗めないからね。永い時を生きるフレデリカに質問してたの。かれこれ一時間近く質問してるのに、口が堅いったらありゃしないわ。例えば⸺」
 ヴェロスラヴァはいきなりフレデリカの桃色の乳首を爪を立てて強くつねった。
「あああああッ!」
 身体を大きく仰け反らせてフレデリカが絶頂するとヴェロスラヴァは肩を竦めた。
「これだけやっても口を割らないのよ」
 魔人は女であっても他種族を上回る力を持つ。フレデリカの乳首はたったの一つねりで真っ赤に充血して血が流れた。
「私ね、性感帯の開発が得意なの。一瞬で開拓出来るのよ。見ててね」
 ヴェロスラヴァの手が電気を帯びてフレデリカの乳房を掴むと、フレデリカは嬌声を上げた。
「んあっ、ああ、いっ!んうっ、あ、あたま…っ、おかひく⸺」
 指が血を流す乳首に一際強い電流を流した瞬間。
「んあああああああッ!?い…ぎッ!びりびりしちゃッ…、い、イッてる!も、むひ…!や、やめ、れ…、あらま、こあれちゃうぅ!」
 呂律が回らなくなる程の強い快楽を送り込むと、ヴェロスラヴァはフレデリカの陰部に手を添えながらアレンの方を向いた。凄いでしょ、そう言わんばかりの表情だが、アレンはそれを無視してヴェロスラヴァを睨んだ。
「で、わざわざ地下牢に呼び立てたのはお前らの貝合せを見せる為?うちの構成員をさっさと返せ」
「つまらないわ。せっかく君の大好きなフレデリカを鳴かせてあげてるのに。まあ良いわ、魔導書を寄越しなさいな。そしたら彼女を解放してあげても良いわ」
 そう言ってアレンに見せ付けるようにフレデリカの膣へ指を挿入して刺激を続ける。
(下衆な女)
 フレデリカの身体はアレンの好みではない為、興奮しない。だがアレンは目の前でフレデリカが喘がされている状況に苛々していた。
 アレンは冷たく目を細める。この女は捕らえる者を間違えた。アレンであれば捕まえるのは本のだ。
「本当にそれだけが目的?何であの時俺を捕らえなかった?」
「彼女の力が欲しかったのよね。彼女の体液が」
 そう言ってヴェロスラヴァは制御して隠していた魔力を解放すると、濡れた手をぺろりと舐めた。
(魔力が上昇した。この女、かなり危険な部類だ)
「私は強いわ。けど、君を殺すには決定打が足りないの」
 ヴェロスラヴァはアレンの前で防具や武器の一切を纏っていない裸の状態だが、決して油断していない。アレンの前には結界が張ってあり、侵入は不可能だ。何とかして隙を作らないといけない。
「…分かった。本を渡せば彼女を解放してくれるんだな?」
「ええ。淑女は約束を守るものよ」
 そう言ってヴェロスラヴァは結界を解除した。
「アレン…、だめだよ…」
 フレデリカは息も絶え絶えになりながら言うが、アレンは本を取り出すとヴェロスラヴァの足元へそれを放り投げた。
「あら、話が早くて助かる⸺」
 次の瞬間、アレンは瞬時に距離を詰めて本を回収すると、フレデリカを拘束していた鎖を剣で断ち切る。
「貴様⸺」
 アレンは一瞬怯んだヴェロスラヴァの身体を薙いだ。しかし、切り飛ばしたのは胴ではなく腕だった。
「品のなってない犬だこと」
 ヴェロスラヴァは落ちた腕を拾うと、断面と断面をくっつけた。みちみちと音がして腕が再生する。
(フレデリカの力を…!?)
 アレンはフレデリカを抱えて後ろへ下がろうとしたが、結界に背中が当たる。
「チッ、まずいな」
 ヴェロスラヴァは笑みを消して鞭剣ウルミを取り出した。
「たっぷり甚振ってあげる」
 部屋の入り口に立っていたメイドも剣を抜き放つ。
 アレンは瞬時に不利を悟った。狭い拷問室で大剣クレイモアを振り回すのは隙が大きくなりやすいし、屈強な魔人と戦うのは危険だ。
 しかし考える暇は無い。ヴェロスラヴァは鞭剣をアレンに向かって振り下ろした。
「成る程、甚振る為だけに錆びた鞭剣を使ってる訳だ」
「破傷風になりたくなかったら本を渡しなさい。私は君を殺すには決定打が足りないと言ったけど、君も私を殺すには決定打となる力が足りないわよ」
「俺は欲張りなんだ。フレデリカも〈時空の書〉も貰ってくし、死ぬつもりもないね!」
 アレンは本の魔力を使って結界を破壊すると、フレデリカを抱えてメイドを蹴り飛ばした。
 そのまま部屋を出ると、〈大帝の深淵〉が飛び掛って来る。同時に後ろから鞭剣の斬撃が襲い掛かって来た。
「あっぶね!」
 アレンは何とか躱して跳躍すると、近くの魔人の頭を踏み台にしてその場を脱出する。
 そのまま走って地下牢から庭へ出ると、アレン達の前に〈大帝の深淵〉が再び立ちはだかった。
(キリが無い。仕方無いな、魔法を使うか)
「神の名に代わって命ずる。穿て、聖弾ホーリーバレット!」
 縦横無尽に飛び交う光の弾丸が〈深淵〉の肉体を穿ち、庭を値の色に染めた。
 アレンが赤い中庭を進もうとしたその時、姿勢が崩れた。
(何だ、力が入らない)
 激痛と共に右目から血がぼたぼたと溢れて来た。右目の視界は真っ赤な血で潰れる。魔導不完全疾患による身体の崩壊だ。
「懐かしいわねぇ」
 アレンが振り返ると、ヴェロスラヴァが相変わらず裸のまま立っていた。
「三十年前の冬を思い出すわ。生まれたばかりの醜い赤子が魔導不完全疾患で死にかけていたわ」
「お前…俺を知っているのか」
「ええ、だけどその時君を殺せなかった。その赤ん坊⸺君は先天性の魔導不完全疾患を患っていたけど、膨大な魔法による攻撃をされて撤退を余儀なくされたのよね。私はその時に魔力の大半を生まれたての赤子と同じだけの量に
 ヴェロスラヴァはアレンを再び脅した。
「アレン、その魔導書か君の身体を寄越しなさい。そうしたらフレデリカは見逃してあげても良いわ」
 しかしアレンは応じなかった。
「やだね」
「そう、それじゃあ君を殺して食べちゃうね」
 ヴェロスラヴァの鞭剣がアレンに襲い掛かる。咄嗟に大剣で防ぐと、耳障りな音と共に火花と鉄片が散った。
 アレンはフレデリカを地面に置いて両手で武器を構える。動けない女を一人連れて強敵から逃げられる程アレンは器用ではなかった。戦いながらヴェロスラヴァの隙を探さねばならない。
 ヴェロスラヴァはアレンがフレデリカを地面に置いたのを見て嗤った。
「勝てると思った?私は〈大帝の深淵〉よ?」
「だから?」
 勝ちは狙っていない。狙うのはヴェロスラヴァの隙だ。
 剣鞭の先端は尖っていて危ない。アレンは武器を構えて距離を詰める。鞭剣がアレンの左肩を抉るが、アレンはそれを無視して剣を大きく振ると、ヴェロスラヴァの銀の髪が数本切れて宙を舞った。
「本当に、躾のなっていない汚い犬だこと!」
 蹴りがアレンに飛んでくる。咄嗟に防いだが、強過ぎる蹴りにアレンの身体が吹き飛ぶ。
(やばい、こいつ強過ぎる…)
 アレンが咄嗟に転がると、アレンが居た場所に剣鞭が振り下ろされた。剣鞭が振り上げられた瞬間立ち上がると、アレンはポーチの中から古銃を取り出すと発砲した。石造りの城は銃声をよく響かせる。
(頼むアーサー、気付いてくれ…!)
 銃声に怯んだヴェロスラヴァの鞭剣の軌道がずれてアレンの脇腹を斬り付けた。
 アレンはもう一度発砲した。二度目も発砲しようとしたが、弾切れになったので代わりに魔法を使う。
「聖弾!」
 呪文は滅茶苦茶な方向へ放たれ、城の壁を次々に破壊する。
(やばい、右目がおかしい…早く撤退しないと)
 右側だけ見えない中、アレンはフレデリカを抱えて走り出そうとした。しかし、粉塵の中から伸びてきた鞭剣がアレンの背中を切り裂く。
「うっ…!」
「派手にやってくれたわね、このドブネズミ」
 ヴェロスラヴァは大股でアレンに近付くと、傷口を押し広げるように背中を踏み付けた。
「ぐあッ…!」
「アレン!ねえどうしたの!?」
 ヴェロスラヴァはアレンの髪を引っ張って言った。
「頭をやったと思ったけど、上手くいかなかったみたいね。もう一度言うわ。魔導書を寄越しなさい」
「…っ、その程度しか拷問のやり方知らない訳?もっと研究しなよ」
 アレンが煽ると、ヴェロスラヴァは部下から蠟燭を受け取ってアレンのコートを捲って防具のベルトを外した。そして裂けた所から服を破いて言う。
「蠟燭を使った拷問ってやった事ある?傷口に蠟を垂らすのよ。固まった蠟を剥がしてやるときの捕虜の顔はそそるわよ」
 溶けた蠟が傷口に垂れてくる。アレンが下唇を噛んで激痛に耐えていると、ヴェロスラヴァは耳元で囁いた。
「私、性感帯の開発が得意って言ったわよね。別の言い方をすると、感覚を過敏に出来るのよ。ほら…」
 痛覚を過敏にされた傷口に蠟燭が垂れて来た。余りの高温にアレンは声を漏らす。
「ゔ、あああ!」
「痛い?痛いわよねぇ、大陸で使われてる蠟燭はどれも融点が高いし」
「お前、後悔するよ…!」
「ドブネズミの分際で、負け惜しみかしら」
 その時、大声が響いた。
「アレン!」
「貴様、アーサー!」
 ヴェロスラヴァの意識がアーサーに向いた瞬間、アレンはヴェロスラヴァを押し退けて立ち上がる。
「俺の甥っ子に何しやがる、これでもくらえ!」
 アーサーが黒い球体を投げつける。アレンが本能的に目を閉じた瞬間、球体が破裂して瞼の向こう側が真っ白になった。閃光弾を使ったようだ。他にも胡椒や唐辛子の匂いがする。目をやられたのか、ヴェロスラヴァが汚い悪態を吐くのが聞こえた。
「アレン、走れるか!?」
「俺は問題無い。フレデリカを頼む!」
 アーサーはフレデリカを担ぐと、アレンと共に走り出した。フレデリカの救出作戦は何とか成功したのだ。
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