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日常の崩壊
理解の出来ない状況
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緋月紀一〇四〇三〇年
時は戦国。大陸の遥か西で燻る戦火の火種は勢いを増して猛火となり、風は西から東へ向かって吹いてきた。
五年前の初夏、大陸東部の国家が加盟していた東方連合はクレスト王国の裏切りと盟主ドミンゴの死によって崩壊し、帝国による東方侵攻は本格化した。
しかし、グラコス王国の海龍王キオネは恐怖をもって連合を復活させた。それは決して対等な同盟ではなく、列強四国を頂点とした恐怖の統治。
「…で、アーサーは無茶な進軍をして戦力の大半を失ったと」
普段なら誰も列強四国の王⸺覇王の前で口を開かない。何故なら彼らの機嫌を損ねたくないからだ。
しかし今回ばかりは誰もが開いた口が塞がらない、という状況だった。
「しかも成果は十二神将一人を生け捕り?これだけですか?」
十二神将の捕獲は普通に考えれば凄い事だ。しかし、十万人も連れて行って大半が戦死したと言うのだから、呆れと驚愕の余り、国王達は口々に喚いた。
「誰が責任を取るんだ!」
アーサー率いる〈レジスタンス=プロテア〉は表向きは非政府組織だが、幾つかの国は彼らに資金援助をしていた。
呆れて喚いた後は責任のなすり付け合い。
「人間の口喧嘩って面白いね」
海龍王キオネは机の上に長い脚を乗せて優雅に紅茶を飲んだ。
「竜の感性とは不思議なものだ。これが面白く見えるか?」
アネハル連峰の女王メルティアは呆れたように言う。彼女もまた、〈レジスタンス=プロテア〉に投資している者の一人だ。
「マダムは随分と他人事のようだね」
「ああ、あのような口喧嘩は私の出番ではない」
メルティアは国王の証である指輪を弄びながらそう言い捨てた。
キオネは笑みを零す。人間とは、何故こんなにも個性的なのだろう。責任転嫁をする者、火に油を注ぐ者、メルティアのように達観している者…
メルティアの横に座る長髪の男が机を叩いて口を開いた。
騒がしかった会議堂が水を打ったかのように静まり返る。
「戦争の当事者はアーサーとヌールハーンだ。アーサーの馬鹿な行軍のせいでクテシア軍の行動にも影響は出ている。責任者はヌールハーンが指名すれば良かろう」
それだけ言うと、彼は腕を組んで居眠りを始めた。
「相当お疲れのようだね、苏月。アーサーは君の甥だろうに」
苏月は答えない。この騒ぎが心底どうでも良いのか、彼は安らかな寝息を立てている。
「自棄糞だな。アーサーの一件で苦情が殺到しているのだろう」
メルティアはそう言うと、会議堂の上の方にある大型水晶盤を見上げた。そこには緑の髪の美女が写っている。女は退屈そうに頬杖を突きながら画面を眺めていた。
「ハーン、責任を誰に取らせる?」
数時間後…
「今、キオネから連絡入ったわ。アーサーは〈プロテア〉の首領を辞めろって。代わりのリーダーが見付かって、リーダーと組織の実力がキオネと苏月に認められれば〈プロテア〉の今後の活躍を承認するそうよ」
「ハードル高くないか!?キオネはそもそも人間じゃないし感覚狂ってるし、叔父貴なんて人間卒業してるようなもんじゃねぇか!」
「あんたが悪いのよ!帝都に入って餓鬼一人攫うくらいなら私一人で出来た!」
(騒がしい…)
アレンが目を覚ますと、そこは知らない天井だった。どうやら天蓋付の寝台に寝かされているらしい。
(…俺の部屋じゃないな。ラバモアの部屋でも、ミロスの部屋でもない)
あの二人の船か部屋に止まると、朝起きた時にかなりの確率で二人とも裸だ。しかし此処にラバモアとミロスは居ない。
首を回して右を見ると、水とタオルが入った洗面器が置いてある。少し残る、薬草と血、汗の匂い。
(拾われたのか…?確かオグリオンに襲われてその後…ああ駄目だ、全く思い出せない)
熱があるのか、頭がぼんやりする。アレンは状況を把握する為、外の会話に聞き耳を立てた。
「つまり、拾って来た十二神将を〈プロテア〉の首領に仕立て上げて戦力の底上げを図ると…いや無茶過ぎるだろ!」
「無茶じゃないわ。断られたら調教すれば良いのよ!」
「無茶だよ!キオネはともかく、叔父貴は魔人なんて認めないぞ!」
「苏月はそこまで頑固者じゃないわ。利用できる物は全て使う策士よ」
アレンは状況のややこしさに頭痛を覚えた。
(十二神将って俺だよな。それを反帝国組織〈プロテア〉の首領にするって?聞き間違いかな。それにキオネとか苏月って超大物じゃないか)
二人共列強国の主で、過去に起きた重大事件の中心人物でもある。帝国では、二人の首に一生遊んで暮らしてもまだまだ余裕のある金額の懸賞金が掛けられている。
「兎に角、彼に話を聞くわよ」
そう言うと女はカーテンを開けた。
「おはよう」
「…」
アレンは警戒して女を見上げた。
「警戒してるの?かぁわいい。けど警戒しなくて大丈夫よ、貴方が私達に危害を加えない限りは手を出さない」
アレンはカーテンで見えなかった向こう側を観察した。質の良さそうな机の上には洒落たティーセットが乗っており、ふかふかの赤いソファにはアレンのコートが掛かっている。
「十二神将を捕らえて随分嬉しそうだな。捕虜に対して待遇が良過ぎやしないか?」
アレンの問いに女は笑みを深めた。
「ええ、とっても嬉しい。もう一人の〈創り手〉に漸く出逢えたのだから」
「〈創り手〉…?」
女はアレンの疑問に答えなかった。代わりに質問を投げ掛けてくる。
「貴方、〈プロテア〉のリーダーをやってみる気は無い?」
「…」
アレンは馬鹿を見るような目で女を見た。どうして十二神将にそんな質問を持ち込むのか。それとも質問しているだけで拒否権は無いのか。
「おい、怪我人を混乱させるな」
アレンが沈黙していると、そう言って女を学者風の男が咎めた。
学者風の男は女を退かせると、手袋を外してアレンの額に手を置いた。
「まだ熱はあるな。右腕は動くか?」
アレンは右手を動かそうとしたが、痺れるような感覚がしただけで指一本動かない。
「いや、指一本も動かない」
「了解した。君は毒を貰ってな、まだ治療法が無い毒だったので血清を使った。副作用がかなり強いが…その他、体調不良は?」
学者は羊皮紙に何やら書き込んでいる。
「頭痛と倦怠感、寒気。あとは幻聴」
「幻聴?」
アレンはカーテンの端から首だけ突っ込んで覗き込んでくる女を見上げて言った。
「その女が俺に〈プロテア〉のリーダーにならないかって」
パシッと音がした。男が羊皮紙を挟んでいるバインダーで女を叩いたようだ。
「安心したまえ、君の耳は正常だ。少々…いや、かなりこちらの説明が足りなかった」
「はあ…」
「先ずは食事をしながら話そうか。そろそろ夕餉の時間だ」
「捕虜にも晩飯出んの?多分手当もしてくれたんだろ?待遇良過ぎるだろ…」
「それについても食べながら説明しよう。そろそろ運ばれて来る筈だ」
アレンは左手で身体を支えて起き上がった。布団を捲ると、ズボンはいつものだったが、服は脱がされているようだった。
「あれ、俺の服は?」
「修繕中だ。コートは直ってる。防具も少し凹みがあったので、ダルカンに修繕させている。代わりにこの靴を使って欲しい」
「もこもこスリッパ…」
差し出されたのはピンク色のもこもこしたスリッパだった。足を入れると、ふわふわして履き心地が良い。
アレンは学者に支えられながらティーセットが乗った机に向かった。アレンの反対側の席では、吟遊詩人風の男が通話をしている。
「頼むって叔父貴、キオネの餌にだけは…あちょ、切らないで!叔父貴⸺」
男の手から水晶盤が落ち、表情が沈む。
「死んだ、俺死ぬわ」
「その様子だと、苏月はかなり御立腹の様子だな」
アレンは吟遊詩人を観察した。
吟遊詩人のような格好だが、顔中傷痕だらけで、傭兵と言った方が納得出来る風貌だ。緑の垂れ目は女を虜にするが、今の表情では只の落ちぶれたオッサンのようで逆効果だろう。
アレンはそんな男に見覚えがあった。
(あ、このオッサンは知ってる。十九年くらい前に帝国最大の闘技場を爆破したテロリストのアーサーだ)
「アーサー、しゃきっとしろ。どのみちお前はリーダーを辞めなければならない」
「分かってるけどさぁ!死にたかねぇよぉ…」
学者はバインダーでアーサーをひっぱたいてアレンの方を向いた。
「君はアーサーは知っているだろう。帝国では彼も賞金首になっていた筈だ」
アレンは頷いたが、まさかこんなにも情けない男だとは思わなかった。
「そして私はコンラッド。グラコス王国出身で、魔導学院の教授も勤めている。〈プロテア〉では主に魔法兵を率いるが、後方支援に回る事も多い。最後に⸺」
コンラッドは女の方を向いた。
「私はフレデリカ。宜しく!」
アレンは一瞬耳を疑った。そして帝国の会議堂にある英雄のステンドグラスを思い出す。美しい黄金の髪に紫がかった瞳と白い肌。しかし、目の前の女は黄土色の髪に雀斑だらけの肌。
(英雄の名を名乗るのは不敬罪だが…これは中々…)
絶世の美女と言われたフレデリカの名を、よく言っても普通な女が名乗る。信心深い聖職者達が居たら、発狂しながら海に身投げしていただろう。
「…は?」
アレンは別に信心深くない。しかし、それだけがアレンの発せた言葉だった。
時は戦国。大陸の遥か西で燻る戦火の火種は勢いを増して猛火となり、風は西から東へ向かって吹いてきた。
五年前の初夏、大陸東部の国家が加盟していた東方連合はクレスト王国の裏切りと盟主ドミンゴの死によって崩壊し、帝国による東方侵攻は本格化した。
しかし、グラコス王国の海龍王キオネは恐怖をもって連合を復活させた。それは決して対等な同盟ではなく、列強四国を頂点とした恐怖の統治。
「…で、アーサーは無茶な進軍をして戦力の大半を失ったと」
普段なら誰も列強四国の王⸺覇王の前で口を開かない。何故なら彼らの機嫌を損ねたくないからだ。
しかし今回ばかりは誰もが開いた口が塞がらない、という状況だった。
「しかも成果は十二神将一人を生け捕り?これだけですか?」
十二神将の捕獲は普通に考えれば凄い事だ。しかし、十万人も連れて行って大半が戦死したと言うのだから、呆れと驚愕の余り、国王達は口々に喚いた。
「誰が責任を取るんだ!」
アーサー率いる〈レジスタンス=プロテア〉は表向きは非政府組織だが、幾つかの国は彼らに資金援助をしていた。
呆れて喚いた後は責任のなすり付け合い。
「人間の口喧嘩って面白いね」
海龍王キオネは机の上に長い脚を乗せて優雅に紅茶を飲んだ。
「竜の感性とは不思議なものだ。これが面白く見えるか?」
アネハル連峰の女王メルティアは呆れたように言う。彼女もまた、〈レジスタンス=プロテア〉に投資している者の一人だ。
「マダムは随分と他人事のようだね」
「ああ、あのような口喧嘩は私の出番ではない」
メルティアは国王の証である指輪を弄びながらそう言い捨てた。
キオネは笑みを零す。人間とは、何故こんなにも個性的なのだろう。責任転嫁をする者、火に油を注ぐ者、メルティアのように達観している者…
メルティアの横に座る長髪の男が机を叩いて口を開いた。
騒がしかった会議堂が水を打ったかのように静まり返る。
「戦争の当事者はアーサーとヌールハーンだ。アーサーの馬鹿な行軍のせいでクテシア軍の行動にも影響は出ている。責任者はヌールハーンが指名すれば良かろう」
それだけ言うと、彼は腕を組んで居眠りを始めた。
「相当お疲れのようだね、苏月。アーサーは君の甥だろうに」
苏月は答えない。この騒ぎが心底どうでも良いのか、彼は安らかな寝息を立てている。
「自棄糞だな。アーサーの一件で苦情が殺到しているのだろう」
メルティアはそう言うと、会議堂の上の方にある大型水晶盤を見上げた。そこには緑の髪の美女が写っている。女は退屈そうに頬杖を突きながら画面を眺めていた。
「ハーン、責任を誰に取らせる?」
数時間後…
「今、キオネから連絡入ったわ。アーサーは〈プロテア〉の首領を辞めろって。代わりのリーダーが見付かって、リーダーと組織の実力がキオネと苏月に認められれば〈プロテア〉の今後の活躍を承認するそうよ」
「ハードル高くないか!?キオネはそもそも人間じゃないし感覚狂ってるし、叔父貴なんて人間卒業してるようなもんじゃねぇか!」
「あんたが悪いのよ!帝都に入って餓鬼一人攫うくらいなら私一人で出来た!」
(騒がしい…)
アレンが目を覚ますと、そこは知らない天井だった。どうやら天蓋付の寝台に寝かされているらしい。
(…俺の部屋じゃないな。ラバモアの部屋でも、ミロスの部屋でもない)
あの二人の船か部屋に止まると、朝起きた時にかなりの確率で二人とも裸だ。しかし此処にラバモアとミロスは居ない。
首を回して右を見ると、水とタオルが入った洗面器が置いてある。少し残る、薬草と血、汗の匂い。
(拾われたのか…?確かオグリオンに襲われてその後…ああ駄目だ、全く思い出せない)
熱があるのか、頭がぼんやりする。アレンは状況を把握する為、外の会話に聞き耳を立てた。
「つまり、拾って来た十二神将を〈プロテア〉の首領に仕立て上げて戦力の底上げを図ると…いや無茶過ぎるだろ!」
「無茶じゃないわ。断られたら調教すれば良いのよ!」
「無茶だよ!キオネはともかく、叔父貴は魔人なんて認めないぞ!」
「苏月はそこまで頑固者じゃないわ。利用できる物は全て使う策士よ」
アレンは状況のややこしさに頭痛を覚えた。
(十二神将って俺だよな。それを反帝国組織〈プロテア〉の首領にするって?聞き間違いかな。それにキオネとか苏月って超大物じゃないか)
二人共列強国の主で、過去に起きた重大事件の中心人物でもある。帝国では、二人の首に一生遊んで暮らしてもまだまだ余裕のある金額の懸賞金が掛けられている。
「兎に角、彼に話を聞くわよ」
そう言うと女はカーテンを開けた。
「おはよう」
「…」
アレンは警戒して女を見上げた。
「警戒してるの?かぁわいい。けど警戒しなくて大丈夫よ、貴方が私達に危害を加えない限りは手を出さない」
アレンはカーテンで見えなかった向こう側を観察した。質の良さそうな机の上には洒落たティーセットが乗っており、ふかふかの赤いソファにはアレンのコートが掛かっている。
「十二神将を捕らえて随分嬉しそうだな。捕虜に対して待遇が良過ぎやしないか?」
アレンの問いに女は笑みを深めた。
「ええ、とっても嬉しい。もう一人の〈創り手〉に漸く出逢えたのだから」
「〈創り手〉…?」
女はアレンの疑問に答えなかった。代わりに質問を投げ掛けてくる。
「貴方、〈プロテア〉のリーダーをやってみる気は無い?」
「…」
アレンは馬鹿を見るような目で女を見た。どうして十二神将にそんな質問を持ち込むのか。それとも質問しているだけで拒否権は無いのか。
「おい、怪我人を混乱させるな」
アレンが沈黙していると、そう言って女を学者風の男が咎めた。
学者風の男は女を退かせると、手袋を外してアレンの額に手を置いた。
「まだ熱はあるな。右腕は動くか?」
アレンは右手を動かそうとしたが、痺れるような感覚がしただけで指一本動かない。
「いや、指一本も動かない」
「了解した。君は毒を貰ってな、まだ治療法が無い毒だったので血清を使った。副作用がかなり強いが…その他、体調不良は?」
学者は羊皮紙に何やら書き込んでいる。
「頭痛と倦怠感、寒気。あとは幻聴」
「幻聴?」
アレンはカーテンの端から首だけ突っ込んで覗き込んでくる女を見上げて言った。
「その女が俺に〈プロテア〉のリーダーにならないかって」
パシッと音がした。男が羊皮紙を挟んでいるバインダーで女を叩いたようだ。
「安心したまえ、君の耳は正常だ。少々…いや、かなりこちらの説明が足りなかった」
「はあ…」
「先ずは食事をしながら話そうか。そろそろ夕餉の時間だ」
「捕虜にも晩飯出んの?多分手当もしてくれたんだろ?待遇良過ぎるだろ…」
「それについても食べながら説明しよう。そろそろ運ばれて来る筈だ」
アレンは左手で身体を支えて起き上がった。布団を捲ると、ズボンはいつものだったが、服は脱がされているようだった。
「あれ、俺の服は?」
「修繕中だ。コートは直ってる。防具も少し凹みがあったので、ダルカンに修繕させている。代わりにこの靴を使って欲しい」
「もこもこスリッパ…」
差し出されたのはピンク色のもこもこしたスリッパだった。足を入れると、ふわふわして履き心地が良い。
アレンは学者に支えられながらティーセットが乗った机に向かった。アレンの反対側の席では、吟遊詩人風の男が通話をしている。
「頼むって叔父貴、キオネの餌にだけは…あちょ、切らないで!叔父貴⸺」
男の手から水晶盤が落ち、表情が沈む。
「死んだ、俺死ぬわ」
「その様子だと、苏月はかなり御立腹の様子だな」
アレンは吟遊詩人を観察した。
吟遊詩人のような格好だが、顔中傷痕だらけで、傭兵と言った方が納得出来る風貌だ。緑の垂れ目は女を虜にするが、今の表情では只の落ちぶれたオッサンのようで逆効果だろう。
アレンはそんな男に見覚えがあった。
(あ、このオッサンは知ってる。十九年くらい前に帝国最大の闘技場を爆破したテロリストのアーサーだ)
「アーサー、しゃきっとしろ。どのみちお前はリーダーを辞めなければならない」
「分かってるけどさぁ!死にたかねぇよぉ…」
学者はバインダーでアーサーをひっぱたいてアレンの方を向いた。
「君はアーサーは知っているだろう。帝国では彼も賞金首になっていた筈だ」
アレンは頷いたが、まさかこんなにも情けない男だとは思わなかった。
「そして私はコンラッド。グラコス王国出身で、魔導学院の教授も勤めている。〈プロテア〉では主に魔法兵を率いるが、後方支援に回る事も多い。最後に⸺」
コンラッドは女の方を向いた。
「私はフレデリカ。宜しく!」
アレンは一瞬耳を疑った。そして帝国の会議堂にある英雄のステンドグラスを思い出す。美しい黄金の髪に紫がかった瞳と白い肌。しかし、目の前の女は黄土色の髪に雀斑だらけの肌。
(英雄の名を名乗るのは不敬罪だが…これは中々…)
絶世の美女と言われたフレデリカの名を、よく言っても普通な女が名乗る。信心深い聖職者達が居たら、発狂しながら海に身投げしていただろう。
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