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第二章 メイドの少女

69.別ルート

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 9分咲きになったことで、また新しいことがわかった。
 外見に関しては、ほぼ通常の状態と同じになっていた。
 おそらく満開になることで、完全に元の状態と変わらない姿になると思われた。
 ただ、精神状態というか、殺意の衝動については、完全に無くなっていた。

 9分咲きの時点で、衝動が消えているということは...満開になると普段より冷静になるのか?
 まあ何にせよ、外見と精神状態が普段と同じようになるのはありがたいな。
 服も破れないし、ルーン以外の人間がいても巻き込まないし、変身してることもバレにくいし。



 俺とルーンは今、レイドーム帝国に向けて歩いている。
 あれから、いつもの流れで島から脱出し、今回は4人と一緒にレイドーム帝国の首都、通称「帝都」と呼ばれる都市に向かうことになった。
 前方を大人三人が歩き、少し後ろを俺とルーン、そしてミラリオの三人が歩いている。
 荷物を持った大人組は、何やら雑談で盛り上がっている。

 今回は別ルートで行こうと、四人に同行してみたが...。
 レイドーム帝国に行っても、特にやることは無いんだよな。
 それにしても、前の三人と違ってこっちは会話が無いな。

 ぼんやり考えていたら、ルーンが俺の腕をギュッと掴み、ぼそぼそと話し掛けて来た。

「...お兄ちゃん、ミラちゃんのこと気づいてるよね?」
「ん?」
「そういうすっとぼけた反応はいいから」
「はい...すいません...」

 もちろん俺もわかっていた。

 というか以前もミラリオは、俺に対して尊敬というか恋心のような感情があった気がする。
 一緒に行かないと言うと、あからさまにしゅーんとしてたからな。

 俺はルーンと、ぼそぼそと会話を続ける

「どうするのー?お兄ちゃん」
「どうするっていっても、俺には妻がいるからなあ...」
「ミラちゃんがいいなら、私はいいよ」
「...おいルーン、『いいよ』ってどういうことだよ」
「あらお兄ちゃん、分からない?」
「...まあどの道、ミラの気持ちを確認してからだな」

 ミラリオの横で俺とルーンが会話を続けていると、イチャイチャしてるように見えたのか、ミラリオが割って入って来た。

「あのっ!」
「は、はい...」

 俺は驚いて、返事を返す。
 左腕はルーンが抱きついていて、右腕側からミラリオが話し掛けている構図になっている。

「お二人は...兄妹なんですか?」

 ミラリオの質問に対してルーンが答えた。

「違うよ。ナオ様がいいって言ってくれたから、『お兄ちゃん』って呼んでるだけだよ」
「...じゃあ私も!ナオ様のこと『お兄様』って呼んでいいですか?」

 それを聞いたルーンが、またぼそぼそと俺に話しかける。

「『お兄様』だって。良かったねお兄ちゃん」
「...おい」
「お兄ちゃんは可愛い妹が欲しかったんだもんね」
「俺には可愛い妹が、もう既にいるだろ」
「もう一人増えるけど、嫌なの?」
「...嫌じゃないです...すいません」

 ルーンとごちゃごちゃ話していたら、ミラリオが訝しげに聞いてきた。

「あの...ダメですか?」

 俺はすぐに言葉を返す。

「もちろんいいよ!ミラもルーンも可愛い妹だと思うからね」
「か、可愛い...」

 嬉しかったのか、恥ずかしかったのか、ミラリオそう呟き、顔を赤くして俯いてしまう。
 その隙に、ルーンが顔を寄せて、耳元で俺に囁く。

「お兄ちゃんは、可愛い妹とエッチなことするの、だーい好きだもんね」

 そう言って、両手で俺の顔を掴み、振り向かせてキスをした。
 100年も連れ添った夫婦だからか、流れるような早業で、ミラリオは全く気が付かなかった。

「うふふ。可愛いお兄ちゃん好き...」

 そう言って薄く頬を赤める幼い妻。

 ルーンってこんな性格だったか?
 隙あらばイチャイチャしようとするのは嬉しいが...。




 しばらく歩いていると、ミラリオがまた対抗心を燃やして、聞いてきた。

「あのっ!お兄様!」
「は、はい...」
「私もその...ルーンさんみたいに、手を繋いでいいですか?」

 ルーンがやっている行為は、明らかに俺の腕に抱きついているのだが、さすがにいきなり腕に抱きつくのは難易度が高かったようだった。
 俺は優しく返事をして、右手を差し出した。

「もちろんいいよ、はい」
「お兄様...」

 ミラリオは顔を赤くして、おずおずと俺の手を握った。

 こ、これは...。
 うーむ、柔らかくて温かい手だな。
 ルーンとは違った柔らかさで、これはなかなか。

 と、考えていたら、突然ルーンが大きな声でミラリオに話し掛けた。
 ぼーっと手の感触を堪能していた時だったので、ビクッと驚いてしまった。

「私のことはルーンでいいよ!」

 自分に話し掛けられたとわかると、ミラリオもルーンに対して言葉を返す。

「はい、では私のこともミラと呼んでください!」

 改めてミラリオの顔を見た俺は、かなり可愛い女の子だなと高揚する。
 茜色の綺麗なセミロングの髪で、前髪は両耳の後ろで止めている為、おでこに三角形が見える。
 眠そうな目のルーンと違い、大きな目が見開いている。

 前に見た時は夜だったからか、もっと茶色っぽいと思っていたが、綺麗な茜色だな。
 顔だけ見ると、眠そうなルーンと違って活発なイメージだが、話しててそんな感じがするな。

「一旦休憩にしよう!」

 前を歩く大人組から声が聞こえた。

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