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第一章 狼の少女
66.蜜月
しおりを挟むリターニュ公国に来てから約5年が経過した。
俺は18歳になっており、ルーンとの生活は何も問題無く続いていた。
問題は無かったのだが、どこに行ってもルーンが常に、べったりとくっついている状態だった。
引っ越した当初は、宿でひと月程過ごしていた。
大金を持っていた為、費用の面で心配は無かったが、毎日ルーンを抱いていた為、クレームが来るんじゃないかと冷や冷やしていた。
午後は二人で外出し、主に観光したり、住まいの立地を見て回っていた。
新しい国で、新しい景色や物を見て喜ぶルーンが可愛くて、所構わずキスしたりハグしたりしてしまった。
「お兄ちゃん...もう、恥ずかしいよ」
と、屋外では顔を赤らめてそう言っていたが、部屋に戻るなり抱きついて離れない日が続いていた。
毎晩だけでなく、朝もルーンを抱き、昼まで行為を続けていることもよくあった。
ルーンは顔を赤らめて、ジトっとした目で俺を見ながら呟く。
「もー...、お兄ちゃんエッチなんだから...」
「お前が可愛い過ぎるのが悪い」
こんな感じで、毎日他愛のない会話をしながら、イチャイチャして過ごしていた。
何故かはわからないが、ルーンを抱いた後は、決まってルーンの体調がもの凄く良くなっていた。
聞けばその現象は初めて抱いた時かららしいが、ルーンは恥ずかしがって、詳しくは教えてもらえなかった。
おそらく『開花』の能力が関係していると思われた。
宿に泊まって7日目に、漸くいい場所を見つけた。
その場所はリターニュ公国の副首都にあり、首都とは別の島にある。
街の中心から少し離れた立地で、裏手がすぐ海岸になっていた。
近くに他の住宅が無いことや、商店などから距離があることもあり、土地代が安かった。
さらに、戸建ての住宅を発注した際も、この島に定住すると答えると、建物の費用も割引になった。
建設中の家が出来上がるまで、宿では毎日ルーンを可愛がり、外出しては首都で情報を仕入れたりしながら過ごしていた。
3週間が過ぎた頃に、建築工事が完了した。
新築の引き渡しが済み、リターニュ公国の副首都で、ルーンとの生活が始まった。
まず最初にやったことは、結婚式だった。
当然、この国に知り合いはいない為、小さな教会で二人だけの結婚式を挙げた。
満面の笑みで涙を流すルーンにキスをして、左手の薬指にシンプルな銀の指環をはめてやる。
「ほんとにこのリングで良かったのか?」
「うんっ!大事にするね、お兄ちゃん!」
「もし無くしたとしても、落ち込まなくていいぞ。たかが物だ、無くなったらまた買えばいい」
俺は続けて、たった1つのことを、ルーンに要求した。
「リングよりも何よりも、自分の体を大事にしてくれ。ただそれだけでいい。これから先の未来ずっと...。それが俺の望みだ。約束してくれるか?」
「...じゃあお兄ちゃんも、同じことを約束して」
「わかった。ここで誓おう」
俺達二人は教会で誓った。
その後、新築祝いや結婚祝いなどの名目で、数日はルーンと二人でご馳走を食べたり、1日中ベッドや色々な場所で、愛し合ったりしていた。
特に記憶に残っているのは、ルーンが俺のものに興味津々で、観察したり触ったり勉強する日があった。
初めて抱いた時からその日までは、恥ずかしくてあまり見れなかったそうだが、ルーンは意を決して見たいと言ってきた。
「あ...あの、お兄ちゃん...。お兄ちゃんの大事なとこ...よく見せて...」
あまりの可愛さに抱きしめてしまい、しばらくハグしたままだったが、恥ずかしいけど興味津々という感じのルーンに色々教えたくて、見えやすいように股の間に座らせた。
顔を真っ赤にしながらも好奇心いっぱいで、まじまじと形状や動きを観察したり触ったり、味や匂いを確かめて勉強していた。
後日、今度は俺からルーンに頼み、ルーンの大事なとこを勉強させてもらった。
しかし、ルーンが余りにも恥ずかしがってしまい、勉強は5日間もかけて漸く終わった。
結婚式から1カ月ほど過ぎた後、俺とルーンは仕事を始めることにした。
資金は充分にあったのだが、何もやらないと家の中で延々とルーンを抱いているので、これではいかんと思い、新しいことを始める決意をした。
仕事といっても首都に行き、獣の退治や要人護衛などの依頼を受けるもので、毎日決まった時間に出勤するといった形ではなかった。
...ルーンはあまり乗り気じゃなかったが、どんな依頼でも二人で一緒にやろう、と言ったら賛成してくれた。
1年が経過し、ルーンの好き好き度合いがパワーアップした。
毎日食事・入浴・就寝を共にしている時はもちろんだが、裏手の砂浜でバーベキューなどをしている時も、辺りに誰もいないからと、ルーンが甘えて来る。
そのままビーチでルーンを抱くことが、何度もあった。
抱いた後に必ず、ルーンの体調がもの凄く良くなる謎の現象については、恥ずかしがるルーンからなんとか聞き出して、詳細がわかった。
どうも俺の体液を吸収しているらしい。
実際は体調が良くなるどころの話じゃなく、一時的に身体と頭脳の能力が、通常時の何倍にもなるらしい。
経口摂取でも吸収できるらしく、おそらく血液でも効果があるだろうと思われた。
能力の増幅度合いや効果時間については、吸収する液体や量にもよるが、毎日吸収しているケースだと、1時間と数十分程、効果が続くらしい。
俺の体液を吸収した後で、『狂戦士』の力で変身した場合は、相乗効果によって、一時的にとんでもない能力を持つことになるらしいが、平和な生活を送る今となっては、使う機会など無いように思えた。
勿論この現象は、『開花』の力によるものとみて、間違い無かった。
2年が経過し、さらにパワーアップした。
ルーンと激しく愛し合っている時に、興奮しすぎてルーンの皮膚を傷つけてしまったことがある。
「あっ...!!すまん!大丈夫かルーン!!痛くないか!?」
傷自体はかすり傷で大したことなかったのだが、初めてルーンの体に傷をつけたことに、俺はパニックになっていた。
焦って叫んでいる俺に対して、ベッドの上で横たわる、裸のルーンは落ち着いた様子で答える。
「だーいじょうぶだよ、お兄ちゃん。ほらっ」
ルーンは『狂戦士』の力を使い、変身する。
ものの数秒で、俺が付けた傷は完治し、変身を解除した。
祝福の力のことをすっかり忘れて取り乱していた俺は、その様子を見て安堵した。
が、すぐにルーンは大きな声を上げた。
「あーっ!!しまった...ううぅ...」
またも俺は、焦って言葉をまくしたてる。
「なんだ!どうしたっ!?まだ痛むのか!?内部まで傷ついてるか!?」
「お兄ちゃんが付けてくれた傷なのに、治しちゃった...。このまま治さずに、一生残しておけばよかった...。お兄ちゃんに愛されている時に出来た、貴重な証だったのに...」
「...おい。そんなものは必要無い。俺はどこにも行かない、ルーンの傍にいるんだから」
「...はーい」
そう言ってルーンは、勢いよく俺に抱きついた。
3年が経過し、ルーンは俺のことをなんでもわかるようになってきた。
ルーンが作る朝食は、週に3日はステーキとにんにくが出るようになっている。
ステーキもにんにくも好きなので、それはいいのだが、朝食後にルーンはおねだりをする時がよくあった。
「お兄ちゃん、おいしかった?」
「ああ、今朝も美味かったよ。ありがとう」
「良かった!じゃあ私はお兄ちゃんのミルクが飲みたいな~」
そう言って俺に抱きつくが、ルーンがおねだりする時は、必ず俺のコンディションを見通している。
疲れている時や不調の時は何もねだらず、露骨に抱きついておねだりする時は、常に俺が好調の時であった。
どうやって俺の体調を判断しているか聞き出すと、俺の動きや表情、そして声や匂いからも判断している、とのことだった。
また、味についても聞いてみたら、甘い味がして美味しい、とのことだった。
それは砂糖の甘さではなく、幸せの甘さだと、よく分からないことを言っていた。
5年が経過し、どこに行ってもルーンが付いてくるようになった。
トイレにまでついて来て、俺が排泄しているところを見たがる。
常に一緒に居たいという想いと、俺のことをなんでも知りたいという想いが強く、四六時中一緒にいるようになった。
瞳の中にハートがあるかのように、目をキラキラさせて、まじまじと俺の排泄を観察するルーンに対して、俺も自分の欲求を告げた。
「ルーン。俺も見たいんだがダメか?...見せ合いということで手を打たないか」
「お、お兄ちゃんが見てる前で...私もその、するの...?うううぅぅ...」
ルーンは顔を赤くし、俯いて唸っていたが、手をギュッと握りしめ、小さな声で呟いた。
「い、いいけど...嫌いにならないでね...」
「もちろん。自分で見たいって言った手前、嫌いになんかなるわけないだろ。ルーンのことが好きだから見たいんだ。俺もルーンの色んな姿が見たいんだよ」
「...はい。わかりました、お兄ちゃん...。でも絶対に!嫌いにならないでねっ!!」
と、これまでにないぐらい顔を真っ赤にして、ルーンは念を押して叫んでいた。
当然、目の前で恥じらいながら排泄をするルーンをまじまじと観察し、俺もこれまでにないぐらい興奮して、激しく抱いてしまった。
トイレから出たあと、ルーンは両手で真っ赤な顔を隠し、おでこを俺の胸に当てて、もたれかかりながら、ぼそぼそと話していた。
「私のお股を覗き込むお兄ちゃんの目が、とってもキラキラしてたよ...。お兄ちゃんに見られて死ぬほど恥ずかしかったけど、今までで一番ドキドキして、いっぱい濡らしちゃった...」
あまりにルーンが可愛すぎるので、トイレの前でまた愛し合ってしまった。
その日の晩、鈴の音が聞こえ、ルーンの白い花が8分咲きになった。
俺は過去に無かった為、自分の経験からではわからなかったが、おそらくこういうことは、通常では無いことだと薄々感じていた。
それは、どれほど好きな相手であっても、四六時中一緒に居たいと思ったり、喧嘩もせず、飽きもせず、毎日大好きという気持ちが、ずっと続くものなんだろうか、ということである。
ルーンと喧嘩をしたことは無い。
意見が異なることは結構あるが、すぐにルーンが俺に合わせる為、その姿を見た俺もルーンに合わせようとする。
そういう意味では、マジの喧嘩になったことは一度も無い。
また、たまには1人で過ごしてもいいかな、と考えることが無いわけではないが、少なくともルーンと「一緒に居たくない」と思える瞬間は一度も無く、ましてや「話をしたくない」なんて思うことも、一度も無かった。
これらのことは間違いなく、神々の祝福である『開花』の力が作用していると考えていた。
この能力は...。
俺の中で花として根付いた女の子と俺を、かなり深く結びつけるようだな。
というか、「俺の体液を吸収してもの凄い力を得る」ということが、まるで「花に水や栄養を与える」ということを示唆しているのか...?
もっと露骨に言うと、「開花」というのは女の子の...。
俺は18歳に、ルーンは16歳になっていた。
髪型は出会った時と同じくショートで、銀色の髪は陽の光を浴びるとキラキラと輝く程、綺麗だった。
目は相変わらず眠そうな印象を受けるが、いつも眠いというわけではないことは知っている。
むしろ全体的に可愛い顔立ちと相まって、ルーンの可愛さに拍車をかけていた。
胸は成長し、いわゆる下着のサイズで言う所の、Dカップぐらいはあるような感触だった。
腕や足、体全体で見ても、肉付きの良い健康な女の子といった感じだった。
ルーンはいつも良い匂いがする。
それは香水などの、花や果実の香りといったものではなく、もっと原始的な意味での良い匂いがしていた。
ルーンとの子供については、全く考えていなかった。
元々、好きな女の子と自分の子どもを作る、ということを考えていなかったこともあるが、もしこの先死ぬことがあり、また時が戻った際に、子供の存在が無かったことになるのが、容易に考えつく為だった。
幸い、ルーンも子供を作ることについては、全然興味が無いようだった。
ただ俺と一緒に居ればそれが一番幸せであり、それ以上は何も望まない、と何度も言っていた。
今日はルーンと図書館に行く。
この街で5年以上も過ごしていたが、図書館に行くのは初めてだった。
16歳になって可愛く成長したルーン。
街の中で他の女の子と比べても、ひと際可愛い女の子であることがはっきりわかる。
昼ご飯はどこで食べようか、と笑顔で話しているルーンの手を握り、二人で家を出た。
時刻は午前10時、少し過ぎ。
外は眩しくて、陽の光で溢れていた。
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