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第一章 狼の少女
54.王都へ ■
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道具屋を出た後、お兄ちゃんと私は鍛冶屋を探した。
食堂へ行こうにも、お金を持って無かったし、それにおトイレに行きたい...。
幸いなことに、すぐに鍛冶屋を見つけることが出来て、中に入った。
よかった、おトイレに行けそう...。
でも今度の人は大丈夫かな。
お店の人は、ひげを生やした中年の男の人だった。
粗暴そうな見た目とは裏腹に、どうにもしっかりした人に見える。
まるで過去に大役を務めていたような...。
客ではなく子供扱いされていたので、お兄ちゃんは鉱石を見せていた。
そして、おトイレを借してほしいと頼んでくれた。
「ルーン。先に行って来いよ、ひとりで大丈夫か?」
お兄ちゃんと一緒におトイレに行きたかったけど...。
さっきの道具屋のこともあって、お兄ちゃんは慎重にお店の人を見てるみたいだった。
それだったら、お兄ちゃんも我慢してたんだから、お兄ちゃんから先に...。
私はお兄ちゃんに先に行ってもらおうと、返事した。
「う、うん...大丈夫だよ。お兄ちゃんが先に...」
しかしお兄ちゃんは私を優先してくれた。
「ルーン、俺は大丈夫だ。待ってるから先に行って来い」
おそらく私とお店の人だけの、二人きりにならないように、という配慮をしてくれたんだろう。
私はお兄ちゃんに甘えて先におトイレに行く。
お兄ちゃん...いつも私を優先してくれる。
優しいお兄ちゃん...。
しゃがんで用を足している時も、ずっとお兄ちゃんのことを考えていた。
この旅が何事も無く終わって、これからもずっとお兄ちゃんと一緒に暮らせたらいいな。
大金も高価な品も要らないから、お兄ちゃんの傍にだけ居ることが出来たら...いいな。
おトイレから戻ると、お店の人の手にはお兄ちゃんが身に付けていた短剣があった。
お兄ちゃん、お店の人を信用したんだ。
見事な外見に加えて、魔法が掛かっていると思われる短剣。
武器屋や宝飾品に詳しくない私が見ても、あの短剣は高価な物だとわかっていた。
...うん、私もあの人なら信用出来ると思う。
今度はお兄ちゃんが、おトイレに行く番。
お兄ちゃんは、一緒に行こうと言ってくれた。
「一緒に行こう。おいで、ルーン」
「うん...」
一緒におトイレに入り、お兄ちゃんが用を足している間、お兄ちゃんにぎゅって抱きつく。
お兄ちゃんに抱きついていると安心する...。
さっきおトイレで考えていたことが叶いそう!
「ルーン、さっきの店みたいなことがある。また見ててくれるか?」
「うん!わかった」
お兄ちゃんに頼まれた!
頼りにされてるのかな?
お兄ちゃん、お兄ちゃんの為だったらなんでもするから!
お兄ちゃんと一緒に戻り、お兄ちゃんはお店の人と会話を続ける。
どうやらあの短剣は、メイヴェリア王家の物で、魔道具らしい。
鉱石は高価過ぎて、買い取れるだけの金貨が無く、短剣は王家の品の為、買い取れないとのことだった。
王都なら鉱石を売ることが出来て、ウィラルの街からワイバーンで王都へ行くことが出来る、と教えてくれた。
お兄ちゃん、王都に行くのかな。
私の顔を見たお兄ちゃんに対して、笑顔で返事をした。
もちろん、お兄ちゃんと一緒に行くよ!
貴重な鉱石と短剣を見せてくれたお礼に、お店の人が金貨を1枚くれた。
そして、手紙も書いてくれた。王都のギルドに出せばいいらしい。
鍛冶屋を出た私とお兄ちゃんは、近くにある食堂に向かって歩いた。
食堂ではお勧めの料理を注文し、お腹いっぱい食べた。
銀貨5枚でこんなに食べられるんだ...。
お兄ちゃんも満足してるみたい。
ちゃんと料理を覚えておいて、お家に戻ったらお兄ちゃんに作ってあげようかな。
昼食の後、食堂を出ると午後2時過ぎだった。
お兄ちゃんと私は、来る途中に見つけた宿に行った。
2階の部屋の中を確認し、お兄ちゃんと私はこの宿に泊まることに決めた。
お兄ちゃんは少し追加で宿泊費を払い、翌日の朝食が付くようにしてくれた。
これで明日の朝までお兄ちゃんとゆっくりできる。
宿に泊まるなんて初めて。楽しみだなぁ。
部屋の中で、私はベッドに寝転んだお兄ちゃんに抱えられている。
お兄ちゃんは私の耳元で優しく囁いた。
「夕飯までどうする?このままイチャイチャして過ごそうか」
「も、もう...お兄ちゃんたら...」
このままベッドの上でイチャイチャしたいけど、お兄ちゃんと一緒に行くおトイレの場所を確認しないと...。
その後私は、お兄ちゃんとおトイレに行き、夕飯の時間までお兄ちゃんと一緒に眠って過ごした。
お兄ちゃんと夕飯を食べ、宿にある設備を使わせてもらい、水浴びをする。
良かった...。
体を洗わないと、お兄ちゃんに汗臭いって思われちゃう。
お兄ちゃんと私が脱衣所に入ると、そこには裸の女の子がいた。
お兄ちゃんと同じくらいか、少しだけ年上のように見える。
全体的に細身で、身体の外見から獣人であることは、はっきりとわかった。
お兄ちゃんは裸の女の子をじっと見てる。
お兄ちゃん...他の女の子の裸をじっと見てる...。
お兄ちゃんは私だけを見て欲しい...。
私は裸の女の子をを凝視するお兄ちゃんに呼びかけた。
「お兄ちゃん...」
「おっ、そうだった」
お兄ちゃんと私はすぐに廊下に戻る。
もうっ!
お兄ちゃんたら...ああいう女の子が好きなの?
私じゃダメなのかな...。
そんなことないよね、お兄ちゃん。
不安になりながらも、お兄ちゃんと水浴びを済まし、一緒に部屋に戻った。
部屋に戻り、寝る前にお兄ちゃんと一緒におトイレに行き、いつものようにお兄ちゃんに抱きついて眠る。
しかし深夜、不意に部屋の扉をノックする音が聞こえ目を覚ました。
お兄ちゃんも気づいて起きる。
お兄ちゃんが応答しているが、廊下から聞こえてくる声は、初めてのものだった。
この声...嫌な感じがする。
あの道具屋の人から情報が洩れて、お兄ちゃんの鉱石を奪いに来たのかな。
私は声に含まれる敵意や悪意を感じ取り、不安になってお兄ちゃんの左腕に、ぎゅっとしがみついた。
どうも廊下の男の人は、お兄ちゃんにこの扉を開けさせようとしているようだった。
「お兄ちゃん...」
お兄ちゃんはちゃんと状況を理解して、対策を考えていた。
私に対して指示を出すお兄ちゃん。
「ルーン、俺は扉を破られない様にベッドを立てかける。ルーンはキースライトの原石と短剣を持って、窓の外の様子を見てくれ。くれぐれも静かに、慎重にな」
『狂戦士』の力を使ったお兄ちゃんは、ベッドを持ち上げて、扉に立てかけようとしている。
お兄ちゃん凄い、あんな大きな物を...。
私はお兄ちゃんから指示通り、窓の外を伺う。
壁に身を隠しながら、窓の下を注意深く見ると、かすかに動くものがあった。
あれは...人かな?
たぶん廊下の人の仲間だ。お兄ちゃんと私を狙っている...。
お兄ちゃんを守るにはどうしたら...。
とりあえず窓の外にも人がいることを、お兄ちゃんに報告する。
強盗がお兄ちゃんの鉱石を奪いに来たのなら...。
この状況だったら、力づくで入って来る...!
お兄ちゃんも同じことを考えていたようで、私から短剣を受け取る。
廊下の強盗が何度かお兄ちゃんと会話した後、敵意を剝き出しにして扉を破壊する。
お兄ちゃんはすぐに私に、次の指示を出した。
「ルーン、危ないから後ろに下がってて」
私が窓際に下がって、強盗に非戦闘員だと油断させて、急襲する作戦。
「ルーン、あいつがお前を人質に取ることも考えられる。いいか。俺じゃなく、常にあいつの動きを見ておけ。出来るな?」
お兄ちゃんの指示に従って、後ろに下がる。
廊下の強盗はベッドも破壊し、お兄ちゃんに襲い掛かろうとした時、脱衣所で見た女の子が強盗の背後に現れた。
女の子がお兄ちゃんに加勢し、二人で強盗を殺す。
「私は...ティルエラング。長いからティルでいいよ」
女の子はそう名乗った。
ティル...さん。
ティルさんは窓の外の強盗も、ひとりで捕まえに行った。
凄い...。
ひとりで行くってことは、祝福の力を持っているのかな?
話しを聞いた感じだと、お兄ちゃんを騙そうとはしていなかったようだけど。
戻って来たティルさんによると、捕まえて情報を聞き出そうとしたら、強盗は死んでしまったらしい。
私とお兄ちゃんとティルさんの三人で強盗の死体を見に行ったが、何も得られる物は無かった。
宿の人が新しい部屋を用意してくれたので、一旦私達三人は新しい部屋に集まる。
お兄ちゃんは、ティルさんに護衛を依頼していた。
ティルさんはそれを引き受けた。
良かった。ティルさんが私たちを護衛してくれるなら、お兄ちゃんももっと安全になりそう。
良かったけど...お兄ちゃんが私じゃなくて、ティルさんと一緒に居たいって言ったらどうしよう...。
そんな一抹の不安を抱え、お兄ちゃんに抱きついて眠った。
翌朝、朝食を食べた後にホテルを出た私達三人は、ワイバーン発着場に着く。
わぁ凄い...。
おっきな生き物が横になってる。あれがワイバーン...。
お兄ちゃんがお金を払い、私たちはワイバーンが掴む大きな籠に乗り込んだ。
大きな咆哮が聞こえ、ワイバーンが飛び立つ。
高度が上がると寒くなったが、お兄ちゃんが抱きしめてくれた。
お兄ちゃんの胸、あったかい...。
搭乗員さんが魔法で空間を暖かくする。
魔法って凄いな。私にも覚えられるかな。
そういえばお兄ちゃんに魔法を教えてもらうんだった。
毎日幸せだったからすっかり忘れてたなぁ。
王都への飛行途中、一旦村の広場に着陸する。
広場から少し離れた小川で、おトイレを済ませる。
おトイレの時、私とお兄ちゃんからはちょっと離れていたけど、ティルさんもいるから凄い緊張した...。
でもお兄ちゃんは、私をぎゅってしてくれてた。
いつも私を安心させてくれる...嬉しいなぁ。
私達は広場に戻り、再び籠に入る。
ワイバーンが飛び立ち、しばらく飛行した後、私たちを乗せた籠が王都の広場に着く。
籠の外に出てみると、広大な発着場と澄み渡る青空が目に入った。
食堂へ行こうにも、お金を持って無かったし、それにおトイレに行きたい...。
幸いなことに、すぐに鍛冶屋を見つけることが出来て、中に入った。
よかった、おトイレに行けそう...。
でも今度の人は大丈夫かな。
お店の人は、ひげを生やした中年の男の人だった。
粗暴そうな見た目とは裏腹に、どうにもしっかりした人に見える。
まるで過去に大役を務めていたような...。
客ではなく子供扱いされていたので、お兄ちゃんは鉱石を見せていた。
そして、おトイレを借してほしいと頼んでくれた。
「ルーン。先に行って来いよ、ひとりで大丈夫か?」
お兄ちゃんと一緒におトイレに行きたかったけど...。
さっきの道具屋のこともあって、お兄ちゃんは慎重にお店の人を見てるみたいだった。
それだったら、お兄ちゃんも我慢してたんだから、お兄ちゃんから先に...。
私はお兄ちゃんに先に行ってもらおうと、返事した。
「う、うん...大丈夫だよ。お兄ちゃんが先に...」
しかしお兄ちゃんは私を優先してくれた。
「ルーン、俺は大丈夫だ。待ってるから先に行って来い」
おそらく私とお店の人だけの、二人きりにならないように、という配慮をしてくれたんだろう。
私はお兄ちゃんに甘えて先におトイレに行く。
お兄ちゃん...いつも私を優先してくれる。
優しいお兄ちゃん...。
しゃがんで用を足している時も、ずっとお兄ちゃんのことを考えていた。
この旅が何事も無く終わって、これからもずっとお兄ちゃんと一緒に暮らせたらいいな。
大金も高価な品も要らないから、お兄ちゃんの傍にだけ居ることが出来たら...いいな。
おトイレから戻ると、お店の人の手にはお兄ちゃんが身に付けていた短剣があった。
お兄ちゃん、お店の人を信用したんだ。
見事な外見に加えて、魔法が掛かっていると思われる短剣。
武器屋や宝飾品に詳しくない私が見ても、あの短剣は高価な物だとわかっていた。
...うん、私もあの人なら信用出来ると思う。
今度はお兄ちゃんが、おトイレに行く番。
お兄ちゃんは、一緒に行こうと言ってくれた。
「一緒に行こう。おいで、ルーン」
「うん...」
一緒におトイレに入り、お兄ちゃんが用を足している間、お兄ちゃんにぎゅって抱きつく。
お兄ちゃんに抱きついていると安心する...。
さっきおトイレで考えていたことが叶いそう!
「ルーン、さっきの店みたいなことがある。また見ててくれるか?」
「うん!わかった」
お兄ちゃんに頼まれた!
頼りにされてるのかな?
お兄ちゃん、お兄ちゃんの為だったらなんでもするから!
お兄ちゃんと一緒に戻り、お兄ちゃんはお店の人と会話を続ける。
どうやらあの短剣は、メイヴェリア王家の物で、魔道具らしい。
鉱石は高価過ぎて、買い取れるだけの金貨が無く、短剣は王家の品の為、買い取れないとのことだった。
王都なら鉱石を売ることが出来て、ウィラルの街からワイバーンで王都へ行くことが出来る、と教えてくれた。
お兄ちゃん、王都に行くのかな。
私の顔を見たお兄ちゃんに対して、笑顔で返事をした。
もちろん、お兄ちゃんと一緒に行くよ!
貴重な鉱石と短剣を見せてくれたお礼に、お店の人が金貨を1枚くれた。
そして、手紙も書いてくれた。王都のギルドに出せばいいらしい。
鍛冶屋を出た私とお兄ちゃんは、近くにある食堂に向かって歩いた。
食堂ではお勧めの料理を注文し、お腹いっぱい食べた。
銀貨5枚でこんなに食べられるんだ...。
お兄ちゃんも満足してるみたい。
ちゃんと料理を覚えておいて、お家に戻ったらお兄ちゃんに作ってあげようかな。
昼食の後、食堂を出ると午後2時過ぎだった。
お兄ちゃんと私は、来る途中に見つけた宿に行った。
2階の部屋の中を確認し、お兄ちゃんと私はこの宿に泊まることに決めた。
お兄ちゃんは少し追加で宿泊費を払い、翌日の朝食が付くようにしてくれた。
これで明日の朝までお兄ちゃんとゆっくりできる。
宿に泊まるなんて初めて。楽しみだなぁ。
部屋の中で、私はベッドに寝転んだお兄ちゃんに抱えられている。
お兄ちゃんは私の耳元で優しく囁いた。
「夕飯までどうする?このままイチャイチャして過ごそうか」
「も、もう...お兄ちゃんたら...」
このままベッドの上でイチャイチャしたいけど、お兄ちゃんと一緒に行くおトイレの場所を確認しないと...。
その後私は、お兄ちゃんとおトイレに行き、夕飯の時間までお兄ちゃんと一緒に眠って過ごした。
お兄ちゃんと夕飯を食べ、宿にある設備を使わせてもらい、水浴びをする。
良かった...。
体を洗わないと、お兄ちゃんに汗臭いって思われちゃう。
お兄ちゃんと私が脱衣所に入ると、そこには裸の女の子がいた。
お兄ちゃんと同じくらいか、少しだけ年上のように見える。
全体的に細身で、身体の外見から獣人であることは、はっきりとわかった。
お兄ちゃんは裸の女の子をじっと見てる。
お兄ちゃん...他の女の子の裸をじっと見てる...。
お兄ちゃんは私だけを見て欲しい...。
私は裸の女の子をを凝視するお兄ちゃんに呼びかけた。
「お兄ちゃん...」
「おっ、そうだった」
お兄ちゃんと私はすぐに廊下に戻る。
もうっ!
お兄ちゃんたら...ああいう女の子が好きなの?
私じゃダメなのかな...。
そんなことないよね、お兄ちゃん。
不安になりながらも、お兄ちゃんと水浴びを済まし、一緒に部屋に戻った。
部屋に戻り、寝る前にお兄ちゃんと一緒におトイレに行き、いつものようにお兄ちゃんに抱きついて眠る。
しかし深夜、不意に部屋の扉をノックする音が聞こえ目を覚ました。
お兄ちゃんも気づいて起きる。
お兄ちゃんが応答しているが、廊下から聞こえてくる声は、初めてのものだった。
この声...嫌な感じがする。
あの道具屋の人から情報が洩れて、お兄ちゃんの鉱石を奪いに来たのかな。
私は声に含まれる敵意や悪意を感じ取り、不安になってお兄ちゃんの左腕に、ぎゅっとしがみついた。
どうも廊下の男の人は、お兄ちゃんにこの扉を開けさせようとしているようだった。
「お兄ちゃん...」
お兄ちゃんはちゃんと状況を理解して、対策を考えていた。
私に対して指示を出すお兄ちゃん。
「ルーン、俺は扉を破られない様にベッドを立てかける。ルーンはキースライトの原石と短剣を持って、窓の外の様子を見てくれ。くれぐれも静かに、慎重にな」
『狂戦士』の力を使ったお兄ちゃんは、ベッドを持ち上げて、扉に立てかけようとしている。
お兄ちゃん凄い、あんな大きな物を...。
私はお兄ちゃんから指示通り、窓の外を伺う。
壁に身を隠しながら、窓の下を注意深く見ると、かすかに動くものがあった。
あれは...人かな?
たぶん廊下の人の仲間だ。お兄ちゃんと私を狙っている...。
お兄ちゃんを守るにはどうしたら...。
とりあえず窓の外にも人がいることを、お兄ちゃんに報告する。
強盗がお兄ちゃんの鉱石を奪いに来たのなら...。
この状況だったら、力づくで入って来る...!
お兄ちゃんも同じことを考えていたようで、私から短剣を受け取る。
廊下の強盗が何度かお兄ちゃんと会話した後、敵意を剝き出しにして扉を破壊する。
お兄ちゃんはすぐに私に、次の指示を出した。
「ルーン、危ないから後ろに下がってて」
私が窓際に下がって、強盗に非戦闘員だと油断させて、急襲する作戦。
「ルーン、あいつがお前を人質に取ることも考えられる。いいか。俺じゃなく、常にあいつの動きを見ておけ。出来るな?」
お兄ちゃんの指示に従って、後ろに下がる。
廊下の強盗はベッドも破壊し、お兄ちゃんに襲い掛かろうとした時、脱衣所で見た女の子が強盗の背後に現れた。
女の子がお兄ちゃんに加勢し、二人で強盗を殺す。
「私は...ティルエラング。長いからティルでいいよ」
女の子はそう名乗った。
ティル...さん。
ティルさんは窓の外の強盗も、ひとりで捕まえに行った。
凄い...。
ひとりで行くってことは、祝福の力を持っているのかな?
話しを聞いた感じだと、お兄ちゃんを騙そうとはしていなかったようだけど。
戻って来たティルさんによると、捕まえて情報を聞き出そうとしたら、強盗は死んでしまったらしい。
私とお兄ちゃんとティルさんの三人で強盗の死体を見に行ったが、何も得られる物は無かった。
宿の人が新しい部屋を用意してくれたので、一旦私達三人は新しい部屋に集まる。
お兄ちゃんは、ティルさんに護衛を依頼していた。
ティルさんはそれを引き受けた。
良かった。ティルさんが私たちを護衛してくれるなら、お兄ちゃんももっと安全になりそう。
良かったけど...お兄ちゃんが私じゃなくて、ティルさんと一緒に居たいって言ったらどうしよう...。
そんな一抹の不安を抱え、お兄ちゃんに抱きついて眠った。
翌朝、朝食を食べた後にホテルを出た私達三人は、ワイバーン発着場に着く。
わぁ凄い...。
おっきな生き物が横になってる。あれがワイバーン...。
お兄ちゃんがお金を払い、私たちはワイバーンが掴む大きな籠に乗り込んだ。
大きな咆哮が聞こえ、ワイバーンが飛び立つ。
高度が上がると寒くなったが、お兄ちゃんが抱きしめてくれた。
お兄ちゃんの胸、あったかい...。
搭乗員さんが魔法で空間を暖かくする。
魔法って凄いな。私にも覚えられるかな。
そういえばお兄ちゃんに魔法を教えてもらうんだった。
毎日幸せだったからすっかり忘れてたなぁ。
王都への飛行途中、一旦村の広場に着陸する。
広場から少し離れた小川で、おトイレを済ませる。
おトイレの時、私とお兄ちゃんからはちょっと離れていたけど、ティルさんもいるから凄い緊張した...。
でもお兄ちゃんは、私をぎゅってしてくれてた。
いつも私を安心させてくれる...嬉しいなぁ。
私達は広場に戻り、再び籠に入る。
ワイバーンが飛び立ち、しばらく飛行した後、私たちを乗せた籠が王都の広場に着く。
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