43 / 85
第一章 狼の少女
42.到着
しおりを挟む
昼食を食べ終えた俺とルーンは、再び荷物を背負い、またルーンの手を引いて川沿いに歩き出した。
雑談しながらテクテクと二人で歩く。
「昼飯うまかったなー、夜は何を食おうか」
「お兄ちゃんたら、もう晩ご飯のこと考えてるんだ」
ルーンがくすくすと笑いながら、可愛い笑顔で答える。
「夜はさすがに鳥は見えないだろうから、ウサギやシカがいればいいんだけど」
「干し肉や干し野菜でもいいからね。無理せずに休んでね」
「そうだな。ちょっと見回していなかったら、大人しく休むか」
そんな会話をしながら、川に沿って2時間程歩いた。
「そろそろ休憩するか、ルーン」
「はーい」
俺達は川の傍に腰を下ろす。
「とりあえず喉が渇いたな...」
「お腹は空いてない?お兄ちゃん」
「ああ、大丈夫だ」
答えてから川の水を飲む。
ごくごく...。
うーむ、冷えててうまい。
前の世界じゃ科学が発達した代償か、山とかの水でも物騒で飲めなかったからな。
水を飲み、ひと息つく。
「あー座椅子が欲しいな」
「お兄ちゃん、もたれていいよっ」
ルーンが可愛いらしく両腕を前に出して、手の平を俺に向けている。
「いや、ルーンを座椅子になんて出来ないな。それに座椅子は無いが、代わりに抱き枕はある」
「えっ、抱き枕って...きゃっ」
両腕を突き出していたルーンに対して、その腕を掴んで引っ張る。
俺の胸の中にルーンがいる。
俺は両腕をルーンの背中に回し、小柄な体を抱きしめて、そのまま後ろに倒れ込む。
寝転んだまま空を見て、独り言のように呟いた。
「あー...癒される...」
「私も...お兄ちゃんの腕の中で癒されるよ...」
「そうか...ならよかった」
「うん...」
そのままお互い黙り込み、時間が過ぎていく。
30分ぐらいだろうか、俺は居心地の良さを断ち切って声を上げた。
「よし、そろそろ行くか!」
「うん、そうだね!」
「ずっと寝転んでたからな、体を起こしてちょっと慣らすぞ」
「はーい」
俺とルーンは荷物を背負い、ほんの少しだけ立ったままぼーっと過ごした後、再び歩き出した。
よし、特に問題も無いな。
このまま何事も無ければいいが...。
その後何度か休憩を挟み、暗くなるまで歩き続けた。
完全に陽が沈む前に、テントを張って泊まる準備をする。
設営しながらルーンの様子を見るが、とくにおかしな様子は無い。
疲れている以外には...大丈夫そうだな。
念のため聞いておくか。
「ルーン、体調は大丈夫か?」
「うん。歩き疲れただけで、お兄ちゃんと一緒に寝たら、また明日も歩けるよ!」
「おー。俺もルーンと一緒に寝たら、明日も元気で歩けるな」
「お兄ちゃんも一緒なんだ!」
「ああ、焚火の準備をするか」
「うん!」
俺とルーンは焚火の傍で座って、夕飯を取る。
結局歩き疲れて、獲物を探して狩る気力が無かったので、干し肉と干し野菜をもさもさと食べた。
「今日はいっぱい歩いたからな、干し肉がうまい」
ごくごくと水を飲みながら、塩味が効いた干し肉を食う。
「いっぱい持って来たからどんどん食べてね、お兄ちゃん」
「ありがとな、ルーン。明日の今頃はもうウィラルの街だから、もし鉱石が高く売れたら、うまい物食おうぜ」
「ご馳走じゃなくてもいいよ。それに帰りの食料とかも買っておかないと」
「まあいくらで売れるかわかってから考えるか。ぬか喜びしないように、安く買い叩かれることも想定しておこう」
夕飯を終えた俺たちは、焚火に薪を焼べてテントに入る。
「今日はよく頑張ったな、ルーン」
俺にぎゅっと抱きついている、ルーンの頭を撫でてやる。
「お兄ちゃんと一緒だもん、明日も平気だよ」
ルーンは嬉しそうにそう答えた。
「まあ明日は昼過ぎには着くと思うぞ、明日も頑張って歩こうな」
「うん!」
元気よく返事するルーンの笑顔を見て、森の中を木霊するミミズクの鳴き声を聞きながら、俺は眠りについた。
明け方、チュンチュンと鳥の鳴き声で目を覚ます。
ルーンと一緒に川でトイレを済ませ、朝食を取る。
「今日もいい天気だなー」
「快晴だねっ。でも昨日より涼しいみたい」
「今日は途中で川沿いから森の中に進むからな、涼しくなって良かった」
「お兄ちゃんはちゃんと寝れたの?」
「ああ、一晩ぐっすり寝たよ。ルーンが傍に居たから安心したのかな」
「私も...お兄ちゃんが傍に居てくれたから、安心出来たよ」
「よし、今日も元気に歩くか」
「うん!」
朝食を終え、テントを畳み、焚火の後始末をしてから出発する。
いつものように、ルーンの手をぎゅっと握ると、ルーンも同じく握り返してくる。
今日も問題無くいきそうだな。
根拠のない自身だったが、天候やルーンの様子など、自分の士気を上げるには充分だった。
1時間程歩いた頃、川の流れか変わるポイントに着いた。
「おっ、ここだな。川が北側から流れて、ここで西に流れているな」
「私たちは西から来たんだよね。じゃあまっすぐ行けばいいの?」
「ああ、道は変わらない。川は利用できなくなるけどな」
「じゃあ水を汲んでおくね」
「水は重いからな、俺が持つよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「だーめーだ」
「はーい」
ルーンが水を汲み、それを俺が回収し、森の中に向かって歩き出す。
予想以上に進んでいたので、ルーンに報告しておいた。
「午前中にウィラルの街に着けるかもしれんぞ」
「まずは鉱石を売るの?」
「ああ、それから普段食べられない物を、一緒に食おう」
「楽しみ!」
上機嫌なルーンと一緒に、テクテクと歩き続けた。
それから3時間も経たないくらいだろうか、俺達はウィラルの街に着いた。
雑談しながらテクテクと二人で歩く。
「昼飯うまかったなー、夜は何を食おうか」
「お兄ちゃんたら、もう晩ご飯のこと考えてるんだ」
ルーンがくすくすと笑いながら、可愛い笑顔で答える。
「夜はさすがに鳥は見えないだろうから、ウサギやシカがいればいいんだけど」
「干し肉や干し野菜でもいいからね。無理せずに休んでね」
「そうだな。ちょっと見回していなかったら、大人しく休むか」
そんな会話をしながら、川に沿って2時間程歩いた。
「そろそろ休憩するか、ルーン」
「はーい」
俺達は川の傍に腰を下ろす。
「とりあえず喉が渇いたな...」
「お腹は空いてない?お兄ちゃん」
「ああ、大丈夫だ」
答えてから川の水を飲む。
ごくごく...。
うーむ、冷えててうまい。
前の世界じゃ科学が発達した代償か、山とかの水でも物騒で飲めなかったからな。
水を飲み、ひと息つく。
「あー座椅子が欲しいな」
「お兄ちゃん、もたれていいよっ」
ルーンが可愛いらしく両腕を前に出して、手の平を俺に向けている。
「いや、ルーンを座椅子になんて出来ないな。それに座椅子は無いが、代わりに抱き枕はある」
「えっ、抱き枕って...きゃっ」
両腕を突き出していたルーンに対して、その腕を掴んで引っ張る。
俺の胸の中にルーンがいる。
俺は両腕をルーンの背中に回し、小柄な体を抱きしめて、そのまま後ろに倒れ込む。
寝転んだまま空を見て、独り言のように呟いた。
「あー...癒される...」
「私も...お兄ちゃんの腕の中で癒されるよ...」
「そうか...ならよかった」
「うん...」
そのままお互い黙り込み、時間が過ぎていく。
30分ぐらいだろうか、俺は居心地の良さを断ち切って声を上げた。
「よし、そろそろ行くか!」
「うん、そうだね!」
「ずっと寝転んでたからな、体を起こしてちょっと慣らすぞ」
「はーい」
俺とルーンは荷物を背負い、ほんの少しだけ立ったままぼーっと過ごした後、再び歩き出した。
よし、特に問題も無いな。
このまま何事も無ければいいが...。
その後何度か休憩を挟み、暗くなるまで歩き続けた。
完全に陽が沈む前に、テントを張って泊まる準備をする。
設営しながらルーンの様子を見るが、とくにおかしな様子は無い。
疲れている以外には...大丈夫そうだな。
念のため聞いておくか。
「ルーン、体調は大丈夫か?」
「うん。歩き疲れただけで、お兄ちゃんと一緒に寝たら、また明日も歩けるよ!」
「おー。俺もルーンと一緒に寝たら、明日も元気で歩けるな」
「お兄ちゃんも一緒なんだ!」
「ああ、焚火の準備をするか」
「うん!」
俺とルーンは焚火の傍で座って、夕飯を取る。
結局歩き疲れて、獲物を探して狩る気力が無かったので、干し肉と干し野菜をもさもさと食べた。
「今日はいっぱい歩いたからな、干し肉がうまい」
ごくごくと水を飲みながら、塩味が効いた干し肉を食う。
「いっぱい持って来たからどんどん食べてね、お兄ちゃん」
「ありがとな、ルーン。明日の今頃はもうウィラルの街だから、もし鉱石が高く売れたら、うまい物食おうぜ」
「ご馳走じゃなくてもいいよ。それに帰りの食料とかも買っておかないと」
「まあいくらで売れるかわかってから考えるか。ぬか喜びしないように、安く買い叩かれることも想定しておこう」
夕飯を終えた俺たちは、焚火に薪を焼べてテントに入る。
「今日はよく頑張ったな、ルーン」
俺にぎゅっと抱きついている、ルーンの頭を撫でてやる。
「お兄ちゃんと一緒だもん、明日も平気だよ」
ルーンは嬉しそうにそう答えた。
「まあ明日は昼過ぎには着くと思うぞ、明日も頑張って歩こうな」
「うん!」
元気よく返事するルーンの笑顔を見て、森の中を木霊するミミズクの鳴き声を聞きながら、俺は眠りについた。
明け方、チュンチュンと鳥の鳴き声で目を覚ます。
ルーンと一緒に川でトイレを済ませ、朝食を取る。
「今日もいい天気だなー」
「快晴だねっ。でも昨日より涼しいみたい」
「今日は途中で川沿いから森の中に進むからな、涼しくなって良かった」
「お兄ちゃんはちゃんと寝れたの?」
「ああ、一晩ぐっすり寝たよ。ルーンが傍に居たから安心したのかな」
「私も...お兄ちゃんが傍に居てくれたから、安心出来たよ」
「よし、今日も元気に歩くか」
「うん!」
朝食を終え、テントを畳み、焚火の後始末をしてから出発する。
いつものように、ルーンの手をぎゅっと握ると、ルーンも同じく握り返してくる。
今日も問題無くいきそうだな。
根拠のない自身だったが、天候やルーンの様子など、自分の士気を上げるには充分だった。
1時間程歩いた頃、川の流れか変わるポイントに着いた。
「おっ、ここだな。川が北側から流れて、ここで西に流れているな」
「私たちは西から来たんだよね。じゃあまっすぐ行けばいいの?」
「ああ、道は変わらない。川は利用できなくなるけどな」
「じゃあ水を汲んでおくね」
「水は重いからな、俺が持つよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「だーめーだ」
「はーい」
ルーンが水を汲み、それを俺が回収し、森の中に向かって歩き出す。
予想以上に進んでいたので、ルーンに報告しておいた。
「午前中にウィラルの街に着けるかもしれんぞ」
「まずは鉱石を売るの?」
「ああ、それから普段食べられない物を、一緒に食おう」
「楽しみ!」
上機嫌なルーンと一緒に、テクテクと歩き続けた。
それから3時間も経たないくらいだろうか、俺達はウィラルの街に着いた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる