あいばな開花 ~異世界で愛の花を咲かせます~

だいなも

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第一章 狼の少女

41.ピクニック

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 二人でウィラルの街に向けて出発したが、すぐに問題が発生した。

「...暑い」
「今日は暑いね、お兄ちゃん」

 いつもならもっと涼しいんだが、今日に限って暑かった。

 どうしようか、なんなら出発はもっと涼しい日にズラしてもいいが...。
 いや、川沿いに進むという手もあるか。

「ルーン、道を変えよう。川沿いに進むぞ」
「道はわかるの?」
「ああ、大丈夫だ。あの川はバーンズフォレストの北にある山から南に流れて、西の海に流れている。家の裏手にある川を東に進み、途中で北から流れてる地点があるはずだ。そこからまっすぐ東に行けばいい」
「わかった。川沿いならいつでも汗を流せるね」
「ああ、体温が下げられるからな。こまめに汗を洗い流したり、水を飲んだりしながら進もう」
「うん!」

 当初の予定である森の中を突っ切るルートを変え、俺達は家の裏にある川沿いに、まっすぐ東に進んだ。
 若干遅くはなるが、熱中症で行き倒れになる可能性はぐっと減る。
 ルーンの柔らかい手を握り、川のせせらぎを聞きながら歩く。

 うーん、これは癒される。
 暑いのは暑いが、川の音を聞いていると心なしか涼しくなってくるな。

 そのまま二人でしばらく歩いた。
 2時間ほど歩いただろうか、少し休憩を取る。

「ルーン、休憩しよう。汗だくだから川に入るか」
「うん。誰もいないよね...」

 ルーンはキョロキョロと辺りを見回す。

「大丈夫だって。俺も注意してるけど、物音も聞こえないぞ」
「それならいいけど...」

 そう言ってルーンは服を脱いで裸になる。
 俺も同じように服を脱ぎ、二人で川に入って汗を流す。

「あー、水が冷たくて気持ちいい」
「お兄ちゃん...私、汗臭くなかった?」

 ルーンが顔を赤くして聞いてくる。

「いいや、それにいつも一緒に暮らしているから言うが、ルーンはいつもいい匂いだぞ。たとえ汗だくだったとしてもだ」

 俺がそう言うと、ルーンはもっと顔を赤くして、顎まで川に沈み込む。
 ルーンは水面ぎりぎりで、ぼそっと言った。

「うん...それなら...いいけど」

 俺達は川で全身を洗い、水中に潜ったりして遊んだ。
 充分に汗を流し、体の体温を下げたせいかトイレに行きたくなっていた。

「ルーン、ちょっとトイレ」
「あっ、お兄ちゃん...。私もおトイレ」

 うーむ、やっぱり流れる川がいつも利用できるってのは便利だなぁ。

 二人で一緒に用を足し、体を洗いあって川から上がる。
 体を拭いてから服を着て、荷物を背負う。

「ルーン、行こうか」
「うんっ!」

 全身の汗を流し、髪や顔もさっぱりしたな。
 疲れもだいぶ取れたし、やっぱり川沿いのルートにしてよかった。
 ルーンも疲れが取れたようだな。顔を見ればよくわかる。

 俺達二人はまた歩き出した。
 そして、また2時間程歩いたのち、腹が減ったので昼食を取ることにした。

「ルーン、昼ご飯にしよう」
「はーい」

 俺とルーンは川の傍に腰を下ろす。

「お兄ちゃん、何食べたい?干し肉に干し大根に干し人参に...」
「まあ待てルーン、干した肉や野菜はまだ保存が効くだろ。念のために残しておこう」

 俺がそう言うと、ルーンはキョロキョロと見回して言う。

「じゃあ何を食べるの?動物はいないようだけど...」

 そう言うルーンに対して手を突き出し、空を指差して告げう。

「見ろ、鳥がいる」

 ルーンはつられて見上げる。

「...ほんとだ」
「よし、薪を集めといてくれ」
「気をつけてね、お兄ちゃん。」
「ああ、大丈夫だ」

 素早く服を脱いで石を拾い上げ、いつぞやのように『狂戦士』の力を使って、近くの大樹に向かって跳躍し、枝を伝いながら樹を登っていく。
 だいぶ抑えられてるとはいえ、まだ殺戮の衝動はある。

 この衝動を鳥にぶつけよう...。
 強くぶつけすぎると食える部分が無くなるから、ほどほどにしとくか。

 最初の頃はルーンに支えてもらいながら、大樹の上から投石していたが、今は1人で撃ち落とせるようになっていた。
 より少ない動作で的確に投げることが出来るようになり、安定して鳥狩りが出来るようになっている。

 1発で充分だと思ったが、外してまた石を取りに行ったら疲労が凄そうだな。
 まあ大丈夫だろう。

 集中して鳥の動きを見極め、少し振りかぶって石を投げる。
 石は狙った鳥の頭部に命中した。
 それを確認し、すぐに枝から枝へと下に向かって大樹を渡り、鳥が落下した地点まで移動する。

 よし、うまそうな鳥が取れた。

 すぐに鳥を持ってルーンのとこまで戻り、変身を解除する。
 疲労がどっと体を襲う。
 焚火の用意をしているルーンは、笑顔で迎えてくれた。

「おかえり、お兄ちゃん」
「はぁはぁ...ただいま...。すぐに捌いて用意するからな...」
「お兄ちゃん、まずは休んで!あと服...」
「はい...」

 大人しく服を着て、しばらく横になって休む。
 足は足湯のように川に浸けている。
 ちらりとルーンを見ると、火を起こしていた。
 俺は興味が沸いて声を掛けていた。

「ルーン」
「なぁに?お兄ちゃん」
「どうやって火を起こしたんだ?」
「レンズだよ」
「レンズ?ああそういえば昨日聞いてたやつか」

 昨日の夜にルーンが俺に、読書用のレンズを持って行っていいか、と聞いてきた。
 じいちゃんが使ってたレンズだが、今は使う人はいない。

 俺は何も考えずに、いいぞ、と答えていたが...。こういう用途があったのか。
 ルーンも成長したなぁ...。

 ぼんやりと焚火の炎を見つめながらそう思っていた。



 体力を回復した俺は、ルーンと一緒に鳥を捌いていく。

 川があるからいいな。血も綺麗に洗い流せるし。

 例の高価な短剣で、食える部分を綺麗に捌き、切り分ける。
 食えない部分はそのまま川に流す。魚の餌になるのだろうか。
 木の枝を串として使い、肉を刺して焚火で炙る。
 ルーンは抜かりなく、塩も持って来ていた。
 充分に焼いた肉に塩を多めに振り掛け、二人で水を飲みながらもしゃもしゃと食う。

「うーむ、うまい」
「おいしい!」
「こうやって外で食うのもいいな」
「楽しいね!お兄ちゃん」
「しかし肉だけってのもあれだな、やっぱり干し野菜も食うか」
「はーい。今出すね」

 干し野菜にも塩を振りかけて、水を飲みながらもさもさと食う。

「これもうまいな」
「塩味が効いてておいしいね」
「ここまでだいぶ汗を流しているからな、塩分も充分に補給しないと」
「お兄ちゃん、気分が悪くなったりしたらすぐに言ってね!」
「それは俺が今お前に言おうとしていたことだ」

 二人で焼き鳥と干し野菜を食べ、楽しい昼食の時間を過ごした。

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