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第一章 狼の少女
40.街に向かってお出掛け
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ルーンと一緒に暮らしてから1年が経過したが、特に何かが変わったわけではない。
毎朝ルーンと一緒に起き、一緒にご飯を食べ、日中は森で植物や果実を採取し、釣りや狩りなどをして得物を取り、家の裏にある畑や山羊の世話をする。
そして、毎晩ルーンと一緒にご飯を食べ、風呂に入り、眠る。
それにしても、『狂戦士』の力のおかげで、より多くのことが出来るようになったな。
4分咲きになったことで、はっきりと強化されていることがわかるし。
最初にあの島で看守ども3人を始末した時は、衝動に駆られて力任せに腕を振るってるだけだった...。
今は衝動もだいぶ抑えられているし、身体能力も強化されている。
あの時の力では、ルーンを背負って大樹を登り、枝の上から投石で鳥を撃ち落とし、またルーンを抱えて無事に落下する、なんてことは出来なかっただろう。
また、身体だけでなく、視覚や聴覚などの感覚も強化されているな。
空を飛ぶ鳥の動きを細部まで視認でき、その動きから行動予測が出来るようになっていた。
それに疲労の度合いもだいぶ改善されているし。
ルーンの俺に対する信頼度や親密度が、あの島で出会ってから徐々に上がってると考えていいのかな。
ともかく1年が経過し、俺は9歳になった。
ルーンは2歳年下らしい。
そんなある日の朝こと。
「そういやルーン、もう1年も経つんだなぁ」
「あ、そうなんだ。あっという間だね。お兄ちゃんとの生活は、毎日楽しいもん」
「俺も楽しいよ。最近はルーンが作るご飯がうまいからな、毎日が楽しみでしょうがない」
「えへへ、よかった」
「ありがとな、ルーン」
「こちらこそ、いつもありがとう。お兄ちゃん」
いつもと変わらない、可愛い笑顔を俺に向けるルーン。
毎日ルーンと一緒に過ごして楽しいが、たまには泊まりでどっかに行ってもいいな。
そういやあの船は、そのままほったらかしだったな。
メンテがてら、海釣りに行くのもいいかもしれんが。
まてよ、それなら船について詳しく聞いてからのほうがいいな。燃料も必要だし。
よし、だったら一度メイヴェリア王国かレイドーム帝国に行ってみるか。
ルーンと一緒に買い物したり、街の宿で泊まったり。
カネはあのキースライトの原石を売ればいいか。
あの時は高価だって話だったが、1年前だから今は採掘量によって値崩れしてるかもしれないな。
まあ街でなんかの依頼を受けるなりすれば、カネはなんとかなるだろ。
よし、わくわくしてきたな...。
「ルーン、街に行こう!」
「街に?お兄ちゃん、何か欲しい物があるの?」
「ああ。あの船の整備についての情報と、燃料が欲しい。まあルーンと一緒に街で買い物したいってのもあるが」
「お兄ちゃんと一緒にお買い物したり...楽しみ!」
「よし、じゃあ決まりだな」
「どこの街に行くの?」
「ここからだと...メイヴェリア王国の方が近いか。王国領内の街に行くか」
「はーい」
「よし、出発は明日の朝だ。王都に行くわけじゃないからたぶん明後日には着くだろう」
「じゃあ食料と、留守の間の山羊さんの干し草を準備しなくちゃ」
「そうだな。俺は干し草を作るから、ルーンは食料を頼む。干し肉はまだあったよな」
「うん!あとは木の実もいっぱいあるよ」
「よし、適当に頼む。まあ別に森で何か採ってもいいからな」
俺とルーンはそれぞれ作業を始めた。
明日の朝に出発して...、明後日の昼ぐらいにはバーンズフォレストに近い街、ウィラルに着くだろう。
以前じいちゃんと行った時の所要時間は、だいたいそんなもんだった気がする。
しかし、一応メイヴェリア王国領内ではあるが、かなり辺境の街だったな。
まあ森の資源を王都へ運ぶ為の中継地として需要があるから、街としては機能しているんだろう。
よし、こんなもんでいいか。
俺はいつもよりも多めに草を集めて、日干しさせた。
そして、傍にある大樹の根に腰をおろし、ぼーっと空を見上げる。
まだ午前10時くらいか?
それにしても...この世界はつくづく前の世界に似てるな。
24時間周期で太陽が昇ることといい、時間や月の概念も地球と同じだ。
類似点が結構多い...やっぱり平行世界なんだな。
まあ俺が聞いてきた限りだと核兵器なんてものは無さそうだから、この世界は前の世界よりもマシなのかもしれんな。
...ルーンを手伝うか。
俺とルーンはあの島から脱出した時のように、食料やテントなどを準備した。
忘れずにキースライトの原石も詰め込む
そして夕飯時に、ルーンと明日のことについて話しをする。
「お兄ちゃん。明日出発して、なんていう街に行くの?」
「メイヴェリア王国領内の街、ウィラルだ。街自体は小さく、まあ簡単に言うと辺境の田舎だ」
「お兄ちゃんは行ったことあるの?」
「ああ、前にじいちゃんとな」
「そうなんだ!楽しみだなぁ」
「一応街だからな。宿屋も武器屋も、旅人が必要とするものはだいたいある」
「お兄ちゃん、お金持ってるの?」
「あの鉱石があっただろ、あれを売る」
「キースライトの原石?」
「そうそう」
「高く売れるって言ってたもんね!」
「ああ。まあ仮に高く売れなかったとしても、依頼を受注すればいいか」
「依頼って?」
「クエストっていうのかな。森でイノシシを狩って欲しいとか。珍しい植物を採取して欲しいとか。依頼に応じて報酬があるから、俺達が出来そうなやつを受て達成すれば、お金がもらえる」
「危ない依頼はダメだからね」
「わかってるよ。例えどんな大金が報酬でも、ルーンを危険な目に遭わせるような依頼は受けない」
「お兄ちゃんが危険な目に遭うのがダメなの!」
「それもわかってるぞ。俺がいなくなったらルーンを守る者がいない。だから俺は俺の身も大事にする。それが確実にルーンを守ることに繋がるからな。もちろん優先するのはルーンだが」
「私もお兄ちゃんを守るから...!」
「ルーンが危険な目に遭うのはダメだからな」
「むー」
「大丈夫だって。随時俺たち二人の安全を考えて行動する。だから俺の傍から離れるなよ」
「はい!」
「まあどうせ依頼内容は、森から何かを取って来て欲しい、という類のものだろう」
「私とお兄ちゃんなら何でもできそうだね!」
「ああ、誰も見ていない森の中なら祝福の力を使えるしな」
そんなことを話しながら夕飯を終え、風呂に入り、歯を磨き、ルーンと一緒にベッドに入る。
「お兄ちゃん、明日は楽しみだね」
「ああ、ルーンと一緒だから俺も楽しみだ」
「お兄ちゃん...」
ルーンがぎゅっと抱きついてくる。
出発の前夜は過ぎていった。
出発の朝。
俺とルーンは前もって準備しておいた荷物を持って、家を出る。
今日も快晴で、朝日が家や俺たちを照らしている。
家の前で、ルーンが思い出したかのように俺に声を掛ける。
「お兄ちゃん、あの短剣は持って行かなくて大丈夫なの?」
「おっとそうだった、持って行かないと」
寝室から短剣を回収する。
樹の根に隠すのはやめ、夜間に誰かが襲ってくることを想定して、寝室に置いておくことにしていた。
こんな森奥深くに強盗が来るなんてまず無いと思ったが、前例があるので念のため用心しておくことにした。
どうしてもカネが調達できない場合、最悪こいつを売るか。まあそんな事態にはならないとは思うが。
俺は短剣を腰に携え、荷物を背負ってルーンに手を伸ばす。
「さあルーン、行こうか」
「うん!お兄ちゃん」
朝日に照らされ、輝くルーンの笑顔を見て元気が出た俺は、ルーンの手をぎゅっと握って歩き出した。
「街に着いたら何しようか、とりあえず宿を決めるか。ルーンも何をするか考えておけよー」
「楽しみだね、お兄ちゃん」
街で何をするか、何を買うか。
道中歩きながら考えるか。
二人は辺境の街ウィラルに向けて出発した。
毎朝ルーンと一緒に起き、一緒にご飯を食べ、日中は森で植物や果実を採取し、釣りや狩りなどをして得物を取り、家の裏にある畑や山羊の世話をする。
そして、毎晩ルーンと一緒にご飯を食べ、風呂に入り、眠る。
それにしても、『狂戦士』の力のおかげで、より多くのことが出来るようになったな。
4分咲きになったことで、はっきりと強化されていることがわかるし。
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今は衝動もだいぶ抑えられているし、身体能力も強化されている。
あの時の力では、ルーンを背負って大樹を登り、枝の上から投石で鳥を撃ち落とし、またルーンを抱えて無事に落下する、なんてことは出来なかっただろう。
また、身体だけでなく、視覚や聴覚などの感覚も強化されているな。
空を飛ぶ鳥の動きを細部まで視認でき、その動きから行動予測が出来るようになっていた。
それに疲労の度合いもだいぶ改善されているし。
ルーンの俺に対する信頼度や親密度が、あの島で出会ってから徐々に上がってると考えていいのかな。
ともかく1年が経過し、俺は9歳になった。
ルーンは2歳年下らしい。
そんなある日の朝こと。
「そういやルーン、もう1年も経つんだなぁ」
「あ、そうなんだ。あっという間だね。お兄ちゃんとの生活は、毎日楽しいもん」
「俺も楽しいよ。最近はルーンが作るご飯がうまいからな、毎日が楽しみでしょうがない」
「えへへ、よかった」
「ありがとな、ルーン」
「こちらこそ、いつもありがとう。お兄ちゃん」
いつもと変わらない、可愛い笑顔を俺に向けるルーン。
毎日ルーンと一緒に過ごして楽しいが、たまには泊まりでどっかに行ってもいいな。
そういやあの船は、そのままほったらかしだったな。
メンテがてら、海釣りに行くのもいいかもしれんが。
まてよ、それなら船について詳しく聞いてからのほうがいいな。燃料も必要だし。
よし、だったら一度メイヴェリア王国かレイドーム帝国に行ってみるか。
ルーンと一緒に買い物したり、街の宿で泊まったり。
カネはあのキースライトの原石を売ればいいか。
あの時は高価だって話だったが、1年前だから今は採掘量によって値崩れしてるかもしれないな。
まあ街でなんかの依頼を受けるなりすれば、カネはなんとかなるだろ。
よし、わくわくしてきたな...。
「ルーン、街に行こう!」
「街に?お兄ちゃん、何か欲しい物があるの?」
「ああ。あの船の整備についての情報と、燃料が欲しい。まあルーンと一緒に街で買い物したいってのもあるが」
「お兄ちゃんと一緒にお買い物したり...楽しみ!」
「よし、じゃあ決まりだな」
「どこの街に行くの?」
「ここからだと...メイヴェリア王国の方が近いか。王国領内の街に行くか」
「はーい」
「よし、出発は明日の朝だ。王都に行くわけじゃないからたぶん明後日には着くだろう」
「じゃあ食料と、留守の間の山羊さんの干し草を準備しなくちゃ」
「そうだな。俺は干し草を作るから、ルーンは食料を頼む。干し肉はまだあったよな」
「うん!あとは木の実もいっぱいあるよ」
「よし、適当に頼む。まあ別に森で何か採ってもいいからな」
俺とルーンはそれぞれ作業を始めた。
明日の朝に出発して...、明後日の昼ぐらいにはバーンズフォレストに近い街、ウィラルに着くだろう。
以前じいちゃんと行った時の所要時間は、だいたいそんなもんだった気がする。
しかし、一応メイヴェリア王国領内ではあるが、かなり辺境の街だったな。
まあ森の資源を王都へ運ぶ為の中継地として需要があるから、街としては機能しているんだろう。
よし、こんなもんでいいか。
俺はいつもよりも多めに草を集めて、日干しさせた。
そして、傍にある大樹の根に腰をおろし、ぼーっと空を見上げる。
まだ午前10時くらいか?
それにしても...この世界はつくづく前の世界に似てるな。
24時間周期で太陽が昇ることといい、時間や月の概念も地球と同じだ。
類似点が結構多い...やっぱり平行世界なんだな。
まあ俺が聞いてきた限りだと核兵器なんてものは無さそうだから、この世界は前の世界よりもマシなのかもしれんな。
...ルーンを手伝うか。
俺とルーンはあの島から脱出した時のように、食料やテントなどを準備した。
忘れずにキースライトの原石も詰め込む
そして夕飯時に、ルーンと明日のことについて話しをする。
「お兄ちゃん。明日出発して、なんていう街に行くの?」
「メイヴェリア王国領内の街、ウィラルだ。街自体は小さく、まあ簡単に言うと辺境の田舎だ」
「お兄ちゃんは行ったことあるの?」
「ああ、前にじいちゃんとな」
「そうなんだ!楽しみだなぁ」
「一応街だからな。宿屋も武器屋も、旅人が必要とするものはだいたいある」
「お兄ちゃん、お金持ってるの?」
「あの鉱石があっただろ、あれを売る」
「キースライトの原石?」
「そうそう」
「高く売れるって言ってたもんね!」
「ああ。まあ仮に高く売れなかったとしても、依頼を受注すればいいか」
「依頼って?」
「クエストっていうのかな。森でイノシシを狩って欲しいとか。珍しい植物を採取して欲しいとか。依頼に応じて報酬があるから、俺達が出来そうなやつを受て達成すれば、お金がもらえる」
「危ない依頼はダメだからね」
「わかってるよ。例えどんな大金が報酬でも、ルーンを危険な目に遭わせるような依頼は受けない」
「お兄ちゃんが危険な目に遭うのがダメなの!」
「それもわかってるぞ。俺がいなくなったらルーンを守る者がいない。だから俺は俺の身も大事にする。それが確実にルーンを守ることに繋がるからな。もちろん優先するのはルーンだが」
「私もお兄ちゃんを守るから...!」
「ルーンが危険な目に遭うのはダメだからな」
「むー」
「大丈夫だって。随時俺たち二人の安全を考えて行動する。だから俺の傍から離れるなよ」
「はい!」
「まあどうせ依頼内容は、森から何かを取って来て欲しい、という類のものだろう」
「私とお兄ちゃんなら何でもできそうだね!」
「ああ、誰も見ていない森の中なら祝福の力を使えるしな」
そんなことを話しながら夕飯を終え、風呂に入り、歯を磨き、ルーンと一緒にベッドに入る。
「お兄ちゃん、明日は楽しみだね」
「ああ、ルーンと一緒だから俺も楽しみだ」
「お兄ちゃん...」
ルーンがぎゅっと抱きついてくる。
出発の前夜は過ぎていった。
出発の朝。
俺とルーンは前もって準備しておいた荷物を持って、家を出る。
今日も快晴で、朝日が家や俺たちを照らしている。
家の前で、ルーンが思い出したかのように俺に声を掛ける。
「お兄ちゃん、あの短剣は持って行かなくて大丈夫なの?」
「おっとそうだった、持って行かないと」
寝室から短剣を回収する。
樹の根に隠すのはやめ、夜間に誰かが襲ってくることを想定して、寝室に置いておくことにしていた。
こんな森奥深くに強盗が来るなんてまず無いと思ったが、前例があるので念のため用心しておくことにした。
どうしてもカネが調達できない場合、最悪こいつを売るか。まあそんな事態にはならないとは思うが。
俺は短剣を腰に携え、荷物を背負ってルーンに手を伸ばす。
「さあルーン、行こうか」
「うん!お兄ちゃん」
朝日に照らされ、輝くルーンの笑顔を見て元気が出た俺は、ルーンの手をぎゅっと握って歩き出した。
「街に着いたら何しようか、とりあえず宿を決めるか。ルーンも何をするか考えておけよー」
「楽しみだね、お兄ちゃん」
街で何をするか、何を買うか。
道中歩きながら考えるか。
二人は辺境の街ウィラルに向けて出発した。
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