36 / 85
第一章 狼の少女
35.帰宅
しおりを挟む
俺とルーンはゼストの家に向かって、歩いていた。
さて、どれくらいかかるかな。
前に来た時は、確か半日ぐらいだった気がするが...今よりも幼い時だからなぁ。
いや、それは道があっていればの話だ。もし迷ったりしたらルーンは大丈夫かな。
そんなことを考えながら、ルーンの手を引いて歩いていると、時折ルーンが珍しいキノコを見つけて、はしゃぎだす。
「あっ!見てお兄ちゃん、金色のキノコがあるよ!」
「おー、あれはライツホルンだな。干物にするとなかなかうまいんだよ。採っていくか」
「すごーい!お兄ちゃん物知りだね!」
「まあ食えるやつと、そうじゃないやつぐらいはわかるかな」
ルーンは楽しそうだな、よかった...。
苦しい表情でもしていたらどうしようかと思ったが、杞憂だったな。
ルーンは森の中の動植物に興味津々だった。
リスが俺たちの前に姿を現すと、ひときわ笑顔になる。
「見てお兄ちゃんっ!リスさんがいるよ、可愛いね!」
「ああ、ほんとだな。平和な森だなぁ」
「こっちに来るかな?おいでおいで...」
ルーンは小さくて可愛い手をリスに向かって振り、手招きをする。
俺はそんなルーンをぼーっと見つめていた。
可愛いなぁ...。
前の世界では33年も生きてて、子供や妻どころか彼女が出来たことも無く、友達もいなかったからな。
俺を慕ってくれている女の子が、笑顔になったり楽しそうに振る舞う姿が、こんなにも可愛いとはな。
俺はルーンをぼーっと見つめながら、無意識の内に呟いていた。
「本当に可愛いなぁ...」
「うん!そうだね、お兄ちゃん!」
「いや、俺が言ったのはお前のことだ」
「えっ...」
ルーンがピタッと動きを止める。
「リスも確かに可愛いが、そのリスを見て楽しそうにしているルーンが、本当に可愛いと思ったんだよ」
「も、もう!お兄ちゃんたら...」
ルーンは顔を赤くしてうつむいてしまう。
しかし、か細い声でボソッと呟いた。
「お兄ちゃん...ありがとう」
「ああ、家に帰ろうぜ。疲れたら背負ってやるからな」
俺はまた、ルーンの手を引いて歩き出した。
2~3時間程だろうか、ルーンとあれこれ森のことや、家のことなどについて話しながら歩いていたら、川が見えた。
俺達の進行方向に対して、川の流れは逆走し、海に向かって流れているようだった。
川を渡る必要が無かったので、川沿いに歩き続ける。
「そういやこんな川があったな...」
俺は川を見て、あることを思い出していた。
「お兄ちゃん、前に来た時にここを通ったの?」
「ああ、確かにこんな川があった。ちょうどトイレに行きたい時に、川が見つかったから助かったんだ。それははっきり覚えている。というか今も行きたかったんだけどな。前回といい、今回といい、運がいいな」
「お兄ちゃん、おトイレに...。私も一緒にする!」
「ルーンも我慢してたのか?」
「我慢って程じゃないけど...お兄ちゃんと一緒に居たいの...」
「ああ、もちろん一緒だ。ほら、おいで」
「うん...」
顔を赤く染めたルーンが、おずおずと俺の傍に来る。
俺とルーンは川で排泄を済まし、そのまま体を洗った。
ついでにタオル代わりの布や、下着なども洗う。
川から上がり、傍で腰を降ろして休憩をした。
風がそこそこあり、暖かい日だったので、衣類はすぐに乾いた。
水があることで衛生的になり、気分がよくなった。
流れる水が使えるってのは、ありがたいもんだな。
ルーンも汚れた下着で気持ち悪かっただろう。
今夜のテントは川沿いに張るか。
川の傍で休憩し、川を利用出来たことで、歩き疲れていた体もだいぶ楽になった。
空を見ると、夕焼けがうっすらと見えている。
俺は今夜のことについて、ルーンに話し掛けた。
「ルーン、今夜は川沿いにテントを張ろうか」
「川の傍で泊まるの?そんなの初めて!!」
「ああ、基本的には危険は無い...と思う。寝相が悪くて川に落ちたり、洪水で川が氾濫しない限りは、川の傍は快適だぞ」
「お兄ちゃんと一緒に寝るから大丈夫だもん!」
「そうだったな。俺もルーンが傍に居てくれたら安心する」
「お兄ちゃん!」
ルーンが笑顔で抱きついてくる。
俺は優しく受け止め、頭を撫でてやりながら言った。
「ルーン、もう少しだけ歩くぞ。暗くなる前にテントを張るから、明るい内に歩こう」
「はーい!」
その後、俺とルーンはしばらく歩き、空が薄暗くなった頃にテントの設営を始めた。
テントは俺がやるか。
ルーンは...薪を集めてもらおう。
「ルーン、テントを張っておくから薪を集めてくれるか?すぐそこに落ちてるやつでいいぞ」
「わかった、お兄ちゃん」
ルーンは薪を集めて、テントの傍に置いていく。
俺がテントを張り終える頃には、結構な数の薪が積み上げられていた。
「凄いな...こんなに集めてくれたのか。大変だっただろう、ありがとな」
「お兄ちゃんの役に立って嬉しいな」
「ああ、ルーンのおかげで助かってるよ」
「えへへ...」
そして海岸の時のように、ライター程度の火力で火を点ける。
「お兄ちゃんの魔法初めて見た!凄い!!」
「そういや海岸の時は傍で見てなかったな」
「お兄ちゃん、私も魔法教えて欲しいな」
「うーん...俺には魔法の才が無かったからなぁ。教えることも向いてないんじゃないかと思う。まあ家には魔法に関する書物がいくつかあったから、それを見ながら出来るだけ教えるよ」
「わーい」
ルーンならもしかしたら、魔法の才があるかもしれないな。
そしたら『狂戦士』の力と組み合わせて戦うこともできるのかな。
まあ、あまりルーンには戦わせたくはないが。
生き残る確率が少しでも上がるなら、教える価値はあるな。
そんなことを考えながら、喜ぶルーンと並んで焚火の傍に座り、晩ご飯を食べた。
食後のまったりした時間を過ごしていると、森の中をミミズクのような鳴き声が木霊する。
それを聞いたルーンの目がきらきらと光り、好奇心いっぱいの顔で俺に聞く。
「お兄ちゃんっ!今の鳴き声何?」
「あー、たぶんルクミミズクだな」
「ルクミミズク...」
「森のハンターだけど、人は滅多に襲わないから大丈夫だぞ」
「そうなんだぁ...賢いんだね」
「ああ、人が道具や魔法を使うってのが、わかってるんだろうな」
俺とルーンはそれからしばらく、焚火の前で色々話しをした。
そして焚火に薪を焼べ、二人でテントに入る。
「お兄ちゃんっ」
ルーンがべたっと俺に抱きつく。
まるでコアラのように、俺の左半身にしがみついている。
俺はルーンが可愛くて、労いの言葉を掛けてやった。
「ルーン、今日は疲れただろ、よく頑張ったな。ありがとな」
「お兄ちゃんと一緒ならどこへでも大丈夫だよ。私を連れて行ってくれてありがとう...お兄ちゃん」
「ルーン...」
ルーンは目を閉じて、俺に抱きついたまま眠ってしまった。
ルーンは泣き言も不満も、何一つ言わずに俺の傍に居てくれたな。
こんな俺の傍に...。
33歳の社畜で、パワハラ上司の叱責で追い詰められる毎日だったあの俺に、こんな可愛い女の子が慕ってくれるなんてな。
「おやすみ、ルーン」
俺は守るように、左手をルーンの体の上に乗せ、目を閉じた。
---
チュンチュンと鳴き声が聞こえ、目が覚める。
暖かくていい匂いがするものが、体にへばりついている。
前は抜け出して海に行ってしまったからな...。
やっぱりルーンが起きた時に、傍にいないのは可哀そうだな。
逆だったらショックだな。起きた時にルーンがいないのは寂しい。
でも寝起きだからトイレに行きたい...。
どうしようかと考えていると、ルーンが目を覚ました。
「う...ん...ん。あっ、おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう、ルーン」
俺が返事すると、ルーンを俺をじっと見つめている。
「...お兄ちゃん、おトイレに行きたいの?」
「なんでわかったんだ?」
「お兄ちゃんのことだからわかるの!お兄ちゃん、私を起こさないように我慢してたんだ...」
「あ、いやそれはだな...」
「ごめんなさい...お兄ちゃん...。私も起きたとこだから、おトイレに行きたい。一緒に行こ!」
「ああ、ついでに顔も洗おう」
俺とルーンはすぐ傍の川でトイレを済ませ、顔を洗い、口をゆすいだ。
二人で朝食を取り、その後歯を磨き、テントを畳む。
「よし、焚火に水を掛けて...と。ルーン、準備できたか?」
「はーい。忘れ物は無いよ、お兄ちゃん」
「よし、じゃあ出発するか」
俺は左手をルーンに差し出す。
「うん!」
ルーンは元気な声で返事をして、俺の手をぎゅっと握る。
今日もルーンの笑顔が可愛いな。
前の世界だったら、眩しすぎて見られなかったかもしれん。
何かあったら、まずルーンを守らないとな...。
空には太陽が、煌めく光を放っている。
森はいつにも増して、陽の光を浴びて輝いて見えた。
それから、休憩を挟みながら4時間程歩き、見覚えがある景色が広がった。
この広場は...あの場所か。
俺はその場所から家までの距離をはっきりとわかっていた。
嬉しくなって、ルーンにそのことを伝えた。
「ルーン!この場所は知っている。家までもうすぐだぞ!」
「ほんと!楽しみだなぁ!」
「ああ、行こう!」
「うん!」
俺は早歩きでルーンの手を引く。
ルーンも同じように、早く着きたいという想いが、歩く速度に現れていた。
そして、30分も経たない内に、ゼストの家が見えて来る。
「おー、あれだルーン!見えるだろ」
「お家だ!あれがお兄ちゃんが暮らしていたお家...」
二人は歩いて家の前まで辿り着く。
そこには誘拐されたあの日と変わらない、いつものゼストの家があった。
さて、どれくらいかかるかな。
前に来た時は、確か半日ぐらいだった気がするが...今よりも幼い時だからなぁ。
いや、それは道があっていればの話だ。もし迷ったりしたらルーンは大丈夫かな。
そんなことを考えながら、ルーンの手を引いて歩いていると、時折ルーンが珍しいキノコを見つけて、はしゃぎだす。
「あっ!見てお兄ちゃん、金色のキノコがあるよ!」
「おー、あれはライツホルンだな。干物にするとなかなかうまいんだよ。採っていくか」
「すごーい!お兄ちゃん物知りだね!」
「まあ食えるやつと、そうじゃないやつぐらいはわかるかな」
ルーンは楽しそうだな、よかった...。
苦しい表情でもしていたらどうしようかと思ったが、杞憂だったな。
ルーンは森の中の動植物に興味津々だった。
リスが俺たちの前に姿を現すと、ひときわ笑顔になる。
「見てお兄ちゃんっ!リスさんがいるよ、可愛いね!」
「ああ、ほんとだな。平和な森だなぁ」
「こっちに来るかな?おいでおいで...」
ルーンは小さくて可愛い手をリスに向かって振り、手招きをする。
俺はそんなルーンをぼーっと見つめていた。
可愛いなぁ...。
前の世界では33年も生きてて、子供や妻どころか彼女が出来たことも無く、友達もいなかったからな。
俺を慕ってくれている女の子が、笑顔になったり楽しそうに振る舞う姿が、こんなにも可愛いとはな。
俺はルーンをぼーっと見つめながら、無意識の内に呟いていた。
「本当に可愛いなぁ...」
「うん!そうだね、お兄ちゃん!」
「いや、俺が言ったのはお前のことだ」
「えっ...」
ルーンがピタッと動きを止める。
「リスも確かに可愛いが、そのリスを見て楽しそうにしているルーンが、本当に可愛いと思ったんだよ」
「も、もう!お兄ちゃんたら...」
ルーンは顔を赤くしてうつむいてしまう。
しかし、か細い声でボソッと呟いた。
「お兄ちゃん...ありがとう」
「ああ、家に帰ろうぜ。疲れたら背負ってやるからな」
俺はまた、ルーンの手を引いて歩き出した。
2~3時間程だろうか、ルーンとあれこれ森のことや、家のことなどについて話しながら歩いていたら、川が見えた。
俺達の進行方向に対して、川の流れは逆走し、海に向かって流れているようだった。
川を渡る必要が無かったので、川沿いに歩き続ける。
「そういやこんな川があったな...」
俺は川を見て、あることを思い出していた。
「お兄ちゃん、前に来た時にここを通ったの?」
「ああ、確かにこんな川があった。ちょうどトイレに行きたい時に、川が見つかったから助かったんだ。それははっきり覚えている。というか今も行きたかったんだけどな。前回といい、今回といい、運がいいな」
「お兄ちゃん、おトイレに...。私も一緒にする!」
「ルーンも我慢してたのか?」
「我慢って程じゃないけど...お兄ちゃんと一緒に居たいの...」
「ああ、もちろん一緒だ。ほら、おいで」
「うん...」
顔を赤く染めたルーンが、おずおずと俺の傍に来る。
俺とルーンは川で排泄を済まし、そのまま体を洗った。
ついでにタオル代わりの布や、下着なども洗う。
川から上がり、傍で腰を降ろして休憩をした。
風がそこそこあり、暖かい日だったので、衣類はすぐに乾いた。
水があることで衛生的になり、気分がよくなった。
流れる水が使えるってのは、ありがたいもんだな。
ルーンも汚れた下着で気持ち悪かっただろう。
今夜のテントは川沿いに張るか。
川の傍で休憩し、川を利用出来たことで、歩き疲れていた体もだいぶ楽になった。
空を見ると、夕焼けがうっすらと見えている。
俺は今夜のことについて、ルーンに話し掛けた。
「ルーン、今夜は川沿いにテントを張ろうか」
「川の傍で泊まるの?そんなの初めて!!」
「ああ、基本的には危険は無い...と思う。寝相が悪くて川に落ちたり、洪水で川が氾濫しない限りは、川の傍は快適だぞ」
「お兄ちゃんと一緒に寝るから大丈夫だもん!」
「そうだったな。俺もルーンが傍に居てくれたら安心する」
「お兄ちゃん!」
ルーンが笑顔で抱きついてくる。
俺は優しく受け止め、頭を撫でてやりながら言った。
「ルーン、もう少しだけ歩くぞ。暗くなる前にテントを張るから、明るい内に歩こう」
「はーい!」
その後、俺とルーンはしばらく歩き、空が薄暗くなった頃にテントの設営を始めた。
テントは俺がやるか。
ルーンは...薪を集めてもらおう。
「ルーン、テントを張っておくから薪を集めてくれるか?すぐそこに落ちてるやつでいいぞ」
「わかった、お兄ちゃん」
ルーンは薪を集めて、テントの傍に置いていく。
俺がテントを張り終える頃には、結構な数の薪が積み上げられていた。
「凄いな...こんなに集めてくれたのか。大変だっただろう、ありがとな」
「お兄ちゃんの役に立って嬉しいな」
「ああ、ルーンのおかげで助かってるよ」
「えへへ...」
そして海岸の時のように、ライター程度の火力で火を点ける。
「お兄ちゃんの魔法初めて見た!凄い!!」
「そういや海岸の時は傍で見てなかったな」
「お兄ちゃん、私も魔法教えて欲しいな」
「うーん...俺には魔法の才が無かったからなぁ。教えることも向いてないんじゃないかと思う。まあ家には魔法に関する書物がいくつかあったから、それを見ながら出来るだけ教えるよ」
「わーい」
ルーンならもしかしたら、魔法の才があるかもしれないな。
そしたら『狂戦士』の力と組み合わせて戦うこともできるのかな。
まあ、あまりルーンには戦わせたくはないが。
生き残る確率が少しでも上がるなら、教える価値はあるな。
そんなことを考えながら、喜ぶルーンと並んで焚火の傍に座り、晩ご飯を食べた。
食後のまったりした時間を過ごしていると、森の中をミミズクのような鳴き声が木霊する。
それを聞いたルーンの目がきらきらと光り、好奇心いっぱいの顔で俺に聞く。
「お兄ちゃんっ!今の鳴き声何?」
「あー、たぶんルクミミズクだな」
「ルクミミズク...」
「森のハンターだけど、人は滅多に襲わないから大丈夫だぞ」
「そうなんだぁ...賢いんだね」
「ああ、人が道具や魔法を使うってのが、わかってるんだろうな」
俺とルーンはそれからしばらく、焚火の前で色々話しをした。
そして焚火に薪を焼べ、二人でテントに入る。
「お兄ちゃんっ」
ルーンがべたっと俺に抱きつく。
まるでコアラのように、俺の左半身にしがみついている。
俺はルーンが可愛くて、労いの言葉を掛けてやった。
「ルーン、今日は疲れただろ、よく頑張ったな。ありがとな」
「お兄ちゃんと一緒ならどこへでも大丈夫だよ。私を連れて行ってくれてありがとう...お兄ちゃん」
「ルーン...」
ルーンは目を閉じて、俺に抱きついたまま眠ってしまった。
ルーンは泣き言も不満も、何一つ言わずに俺の傍に居てくれたな。
こんな俺の傍に...。
33歳の社畜で、パワハラ上司の叱責で追い詰められる毎日だったあの俺に、こんな可愛い女の子が慕ってくれるなんてな。
「おやすみ、ルーン」
俺は守るように、左手をルーンの体の上に乗せ、目を閉じた。
---
チュンチュンと鳴き声が聞こえ、目が覚める。
暖かくていい匂いがするものが、体にへばりついている。
前は抜け出して海に行ってしまったからな...。
やっぱりルーンが起きた時に、傍にいないのは可哀そうだな。
逆だったらショックだな。起きた時にルーンがいないのは寂しい。
でも寝起きだからトイレに行きたい...。
どうしようかと考えていると、ルーンが目を覚ました。
「う...ん...ん。あっ、おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう、ルーン」
俺が返事すると、ルーンを俺をじっと見つめている。
「...お兄ちゃん、おトイレに行きたいの?」
「なんでわかったんだ?」
「お兄ちゃんのことだからわかるの!お兄ちゃん、私を起こさないように我慢してたんだ...」
「あ、いやそれはだな...」
「ごめんなさい...お兄ちゃん...。私も起きたとこだから、おトイレに行きたい。一緒に行こ!」
「ああ、ついでに顔も洗おう」
俺とルーンはすぐ傍の川でトイレを済ませ、顔を洗い、口をゆすいだ。
二人で朝食を取り、その後歯を磨き、テントを畳む。
「よし、焚火に水を掛けて...と。ルーン、準備できたか?」
「はーい。忘れ物は無いよ、お兄ちゃん」
「よし、じゃあ出発するか」
俺は左手をルーンに差し出す。
「うん!」
ルーンは元気な声で返事をして、俺の手をぎゅっと握る。
今日もルーンの笑顔が可愛いな。
前の世界だったら、眩しすぎて見られなかったかもしれん。
何かあったら、まずルーンを守らないとな...。
空には太陽が、煌めく光を放っている。
森はいつにも増して、陽の光を浴びて輝いて見えた。
それから、休憩を挟みながら4時間程歩き、見覚えがある景色が広がった。
この広場は...あの場所か。
俺はその場所から家までの距離をはっきりとわかっていた。
嬉しくなって、ルーンにそのことを伝えた。
「ルーン!この場所は知っている。家までもうすぐだぞ!」
「ほんと!楽しみだなぁ!」
「ああ、行こう!」
「うん!」
俺は早歩きでルーンの手を引く。
ルーンも同じように、早く着きたいという想いが、歩く速度に現れていた。
そして、30分も経たない内に、ゼストの家が見えて来る。
「おー、あれだルーン!見えるだろ」
「お家だ!あれがお兄ちゃんが暮らしていたお家...」
二人は歩いて家の前まで辿り着く。
そこには誘拐されたあの日と変わらない、いつものゼストの家があった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる