あいばな開花 ~異世界で愛の花を咲かせます~

だいなも

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第一章 狼の少女

17.ナオ様の計画 ■

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 ■ルーンの視点■


 ナオ様はしばらくの間じっと考えていた。

 何を考えているか、私にはわからない。
 どうもナオ様は、自分の体が無事であることに、驚いていたようだった。
 しきりに自分の体を調べていた。
 そして、ナオ様が見た夢なのか何なのかわからないが、私のことについても、何かを確認していた。

 ナオ様...目を覚ましてから何を確認しているんだろう...。
 ナオ様に詳しく聞いてみようかな。
 でもこの様子だと、ナオ様は説明してくれそうにない...。

 ナオ様が混乱しているのがはっきりとわかった。
 だから私は、ナオ様が落ち着くまで、何も言わないことにした。
 30分程だろうか、ナオ様は何も言わずに、真剣な顔をして何かを考えていた。
 その後、答えが出たのだろうか、ナオ様は突然動き出す。
 ベッドの下を探り、何かを取り出していた。
 そして何かを手に握ったまま、私に話し掛ける。

「ルーン、よく聞いてくれ。俺は今からこの牢を出てあるものを探しに行く」

 ナオ様はこの牢を出ると言った。
 私は反射的に聞いていた。

「ナオ様、どうやって出るの?」
「ここにカギがある。これでこの扉は開く」
「...」

 ナオ様は握っていた手を開き、私にカギを見せる。

 ナオ様...カギを隠していたの!?

 私は驚きで、何も言わずナオ様を見ていた。
 ナオ様はそのカギで扉を開錠する。
 扉は抵抗なく開いていた。

 ...ナオ様、本当に牢のカギを持っていたんだ。
 でもどうして...?

 私はナオ様に尋ねようとしたが、ナオ様が続けて私に言う。

「ルーン、よく聞いて」

 ナオ様は私の顔を見ながら続ける。
 私はある予感があった。一抹の不安がよぎる。

「今からルーンを助ける為に必要な物を探しに行く、だからルーンはここでじっとしてて欲しい」
「ナオ様、私も一緒に...」
「ルーン、俺は必ず戻る。約束する」
「...」

 ナオ様は牢を出ると言った。一人で出ると。
 私は予感が的中しないかと、ひどく不安になった。

 ナオ様...行かないでほしいです。
 牢の外に行くなら私も一緒に行きたいです。
 ナオ様は...もしかしたらもう戻って来ないのでは...。

 私があまりに悲しい顔をしていたのだろうか、ナオ様はすぐに安心させるように告げる。

「ルーン。ルーンを置いて一人で逃げたりしない。すぐに戻るからここで待ってて」
「うん...」

 私は不安に耐え切れずに泣いていた。
 でもナオ様は大切なことをしようとしている。
 だから行かないでとは言わなかった。
 私を安心させようと、ナオ様は再度告げる。

「ルーン、すぐ戻るよ」

 ナオ様はそう言って、牢屋を出る。

 ナオ様...待ってます。
 ナオ様が戻って来るのまで、ここで待ってます。

 私は心の中で、背を向けて歩き出したナオ様に向けて言った。


 ---

 牢から出て行って60分も経っていないだろうか、ナオ様はつるはしを持って戻ってきた。
 その間、私はただナオ様が戻って来るのをじっと待っていた。

 ナオ様...見つかったりしていないかな。
 ナオ様...必要な物はあったのかな。

 ナオ様にのことをあれこれ考えていたら、不安な気持ちが強くなってきた。

 ナオ様遅いなぁ...もしかしたら、外に出る道を見つけたのでは...。
 ナオ様...もうここには戻って来ないのでは...。

 そのことを考えると、自然と涙が出ていた。
 優しくて頼れるナオ様。
 こんな酷い環境の中で得た、救いの存在であるナオ様が戻って来ない。
 膨れ上がる不安な気持ちが抑えられなくなり、泣き出してしまった。

 でも、ナオ様はちゃんと戻って来てくれた。

「ごめんなルーン、遅くなった」
「ナオ様が戻って来てくれてよかった...」

 私はすぐにナオ様に駆け寄る。
 しかし、ナオ様は私を手で制して、すぐにベッドに向かった。

「ルーン、ちょっと待って」

 ナオ様はカギとつるはしをベッドの下に隠していた。
 どうも胸に何か入れているようで、動きに違和感があった。
 ナオ様は私に向き直り、真剣な顔で私に言った。

「ルーン、もうすぐあいつらがルーンを連れ去りに来る。俺は胸に銅板を仕込んでいるから、あいつらと接触するわけにはいかない。」
「...」
「俺はルーンから少し離れて、言葉で抵抗する。ルーン、あいつらがルーンを連れ去り、奥の部屋に連れ込んだらすぐに飛び込んでルーンを助ける。必ずルーンを助ける、俺を信じてくれるか?」
「...」

 私は黙って聞いていた。

 ナオ様はこれから起こることを言っている...?
 私を連れ去らせて、その後助け出す...?

 なぜそんなことがわかるのか?
 勿論私は疑問に思っていた。
 しかしナオ様は続ける。真剣な顔で。

「ルーン、詳しく説明してる時間は無いんだ。お願いだから俺を信じて。もうルーンを失いたくない」
「...」

 ナオ様はじっと私を見ている。

 ...ナオ様はちゃんと帰って来てくれた。
 私を一人置いてどこかに行かずに、戻って来てくれた。
 だから、ナオ様を信じよう。

「...わかった。ナオ様の言うとおりにする」

 時間が無い、と言ったナオ様に対して、私は返事をしていた。

「ありがとう、ルーン。俺が助けに来ることは、絶対にあいつらに悟られないようにするんだ。いいな」
「...うん、わかった」

 ナオ様はもう私を失いたくないと言っていた。
 詳しい意味はわからなかったが、私を守ろうとしていることだけはわかった。
 ナオ様の言葉に従うと決めた私は、ナオ様をじっと見ていた。
 通路の奥から足音が聞こえてくる。
 牢屋の前に3人の男が来た。ひときわ太った男が、私を見て嫌な笑みを浮かべて言う。

「これは可愛いお嬢さんだ。今日は二人もいい娘を仕入れたからなぁ」

 私は反射的に身を固くする。
 男は気にせずに続ける。

「今からたっぷりとお前を可愛がってやるからなぁ」

 それを聞いて、私は恐怖した。

 この人は...、この人たちは私を襲うつもりなんだ。

 ナオ様が連れ去りに来ると言っていた。
 いざその通りのことが起きようとしていて、急激に恐怖心が強くなる。
 その恐怖で、体が震えていた。
 しかしその時、ナオ様が過剰に反応する。
 壁際まで必死に後ずさり、太った男を睨みつけている。
 その不自然な動きに、私は違和感を覚えた。

 そうか、ナオ様はさっき私に言ってたことを...。

 太った男が楽しそうに言った。

「怖いか?ぐへへ」

 二人の男が動く。眼鏡を掛けた長身の男が牢屋に入り、私の腕を引っ張る。
 ナオ様は怯えたように、必死に声を出していた。

「や、やめろ! ル、ルーンに手を出すな!」

 男はナオ様には気にせずに私を牢屋から引き出し、別の男が施錠する。
 私はそのまま男たちに連れ去れていく。

 ナオ様...。

「ルーン!ルーン!!」

 後ろではナオ様の声が響いていた。

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