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第三章
失くした日々は夢か現か。2
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「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁっっっっ」
ガバッとオレは掛け布団と共に勢いよく起き上がった。
「あ、やっと起きた」
「ハァ、ハァ」
「なんかめっちゃうなされてたよー? 大丈夫ー?」
「え? あ、うん……」
ピピピピピピ
「あ、それうるさいから早く止めて」
「あぁ」
オレは右手を伸ばし鳴り続けていた目覚まし時計を止める。
「布団も早く片付けちゃってね、机出せないし」
「おう」
言われるがままオレは布団から抜け出し、それを押し入れにしまい、代わりに小さな机を部屋の真ん中に組み立てる。
「朝ごはん出来たよー、ってか着替えなくていいの?」
「あー、今日は遅番だから大丈夫」
時刻は午前8時の10分前、いつも朝食はこのくらいの時間だった。制服姿の女子高生がおぼんの上にご飯を乗っけてきて、それを机に乗せる。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
オレは箸をホカホカした黄色く四角いモノに伸ばし、それを口に運ぶ。
「うん、美味い」
「ほんとぉ? やったぁ」
隣で褒められ、ふふんと嬉しそうにしているのはオレの妹、愛歌だった。
「いやほんと上達したよな! 誰にも教わっていないのに……」
「えへへー、最初の頃はいっぱい失敗しちゃったけどね」
「失敗しなきゃ学ばないだろ」
オレはその頭のふわふわした茶色いショートカットに手を伸ばし、くしゃくしゃにしてみせる。
「わっちょっと、やめてよ綺麗にしたのにー」
「大丈夫だって、そんな変わらないよ」
「もー」
愛歌は両手で細かく髪型を直す。
「それより、朝どうしたの? 本当にめっちゃうなされてたけど……」
「あー……なんか変な夢見てた? かも」
「変な夢?」
「なんだったかなー、変だったのは覚えてるけど内容は思い出せん……」
「ふふ、なにそれ。きっと思い出せないのはどうでもいいことなんだよ」
「そうだな、夢なんだし」
「そうだよ! あたしもたまに悪夢とか見たぁ。って怖くて起きるけど、起きちゃうとなんで怖かったか思い出せないもん」
「昔はよくそれで起こされたのになぁ、大きくなったもんだ」
「もう高校生だもん! さすがにお兄ちゃんにばっか頼ってられないよ! お兄ちゃん最近バイト増やして忙しそうだし……」
「あはは、いやでも本当に困ってる時は言うんだぞ?」
「はぁーい」
ふと愛歌は時計を見て慌てだす。
「ふぁっほうふぉんなひはんは!」
「食べながら喋るなよ」
「ふぁっふぇー」
「はい、お茶」
オレは愛歌にコップを渡す。
「ふぁひぃふぁほぉー」
愛歌はコップを受け取り、ゴクゴクゴクと流すように一気飲みする。そして立ち上がると鞄を持って玄関に急いだ。
「転ぶなよー」
「うん! ありがとうお兄ちゃん。片付けよろしくっ」
とバタバタ靴を履いて玄関から出ていった。
「ふ……嵐のようだな」
オレは食べ終わると食器を持って台所に片づけにいく。
ザーッと蛇口から水が流れ、使った食器を洗った。少しぼーっとしながら考える。
(本当にいい妹を持ったな。あんな親とは大違いだ)
思い返してふっと口元が緩む。そんな生活、そんな幸せな日常、それだけで充分だった。オレは妹がいてくれればいくら生活が苦しくても、親がいなくても、バイトが大変だろうともなんでも頑張れたんだ。
あぁ、思い出した。これはオレが生きていた頃の日常だ。本当に幸せだった。愛歌がニコニコ笑ってるだけで良かったんだ。
それなのに、どうしてこんなことになるんだよ。オレ達は何も悪いことなんかしてない。むしろ普通の学生より苦労してるし、頑張って生きてたんだ。それなのに。
ガバッとオレは掛け布団と共に勢いよく起き上がった。
「あ、やっと起きた」
「ハァ、ハァ」
「なんかめっちゃうなされてたよー? 大丈夫ー?」
「え? あ、うん……」
ピピピピピピ
「あ、それうるさいから早く止めて」
「あぁ」
オレは右手を伸ばし鳴り続けていた目覚まし時計を止める。
「布団も早く片付けちゃってね、机出せないし」
「おう」
言われるがままオレは布団から抜け出し、それを押し入れにしまい、代わりに小さな机を部屋の真ん中に組み立てる。
「朝ごはん出来たよー、ってか着替えなくていいの?」
「あー、今日は遅番だから大丈夫」
時刻は午前8時の10分前、いつも朝食はこのくらいの時間だった。制服姿の女子高生がおぼんの上にご飯を乗っけてきて、それを机に乗せる。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきます」
オレは箸をホカホカした黄色く四角いモノに伸ばし、それを口に運ぶ。
「うん、美味い」
「ほんとぉ? やったぁ」
隣で褒められ、ふふんと嬉しそうにしているのはオレの妹、愛歌だった。
「いやほんと上達したよな! 誰にも教わっていないのに……」
「えへへー、最初の頃はいっぱい失敗しちゃったけどね」
「失敗しなきゃ学ばないだろ」
オレはその頭のふわふわした茶色いショートカットに手を伸ばし、くしゃくしゃにしてみせる。
「わっちょっと、やめてよ綺麗にしたのにー」
「大丈夫だって、そんな変わらないよ」
「もー」
愛歌は両手で細かく髪型を直す。
「それより、朝どうしたの? 本当にめっちゃうなされてたけど……」
「あー……なんか変な夢見てた? かも」
「変な夢?」
「なんだったかなー、変だったのは覚えてるけど内容は思い出せん……」
「ふふ、なにそれ。きっと思い出せないのはどうでもいいことなんだよ」
「そうだな、夢なんだし」
「そうだよ! あたしもたまに悪夢とか見たぁ。って怖くて起きるけど、起きちゃうとなんで怖かったか思い出せないもん」
「昔はよくそれで起こされたのになぁ、大きくなったもんだ」
「もう高校生だもん! さすがにお兄ちゃんにばっか頼ってられないよ! お兄ちゃん最近バイト増やして忙しそうだし……」
「あはは、いやでも本当に困ってる時は言うんだぞ?」
「はぁーい」
ふと愛歌は時計を見て慌てだす。
「ふぁっほうふぉんなひはんは!」
「食べながら喋るなよ」
「ふぁっふぇー」
「はい、お茶」
オレは愛歌にコップを渡す。
「ふぁひぃふぁほぉー」
愛歌はコップを受け取り、ゴクゴクゴクと流すように一気飲みする。そして立ち上がると鞄を持って玄関に急いだ。
「転ぶなよー」
「うん! ありがとうお兄ちゃん。片付けよろしくっ」
とバタバタ靴を履いて玄関から出ていった。
「ふ……嵐のようだな」
オレは食べ終わると食器を持って台所に片づけにいく。
ザーッと蛇口から水が流れ、使った食器を洗った。少しぼーっとしながら考える。
(本当にいい妹を持ったな。あんな親とは大違いだ)
思い返してふっと口元が緩む。そんな生活、そんな幸せな日常、それだけで充分だった。オレは妹がいてくれればいくら生活が苦しくても、親がいなくても、バイトが大変だろうともなんでも頑張れたんだ。
あぁ、思い出した。これはオレが生きていた頃の日常だ。本当に幸せだった。愛歌がニコニコ笑ってるだけで良かったんだ。
それなのに、どうしてこんなことになるんだよ。オレ達は何も悪いことなんかしてない。むしろ普通の学生より苦労してるし、頑張って生きてたんだ。それなのに。
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