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第一章
空から落ちた死神は少女と出会う。3
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その古びた寺はそこそこの大きさで、辺りを見渡せば広い敷地、なにかの文化財にでも指定されていそうな雰囲気をしていた。
ただ少し奇妙に思ったのが、オレが落ちて歩きまわった森にはこんな広い敷地など見かけなかったことだ。
(見落とした……? いやそれにしても不自然……)
オレがその場で立ち止まり考え込んでいると、袖を掴んでいる亞名の手が揺すってきた。
「こっち」
「あ、あぁ……」
寺の入り口に入るようそのまま誘導される。近くに寄るとさらに建物は大きく感じた。
広い玄関に入る。靴箱とされるであろう横幅の長い箪笥が両脇に置いてある。
「靴」
そこら中を見渡してたオレに亞名は言った。気がつくと亞名はすでに靴を脱いで上がっていた。
「あ、悪い」
急いで靴を脱ごうとしたが、オレの履いていたスニーカーとは変わっている、慣れないブーツのようなものだったために少し手間取る。
「置いといていい、他に誰もいないから」
靴箱にしまおうとしたオレに亞名は声かける。
「あぁ、わかった」
「こっち」
亞名は先に静かな廊下を歩いていく。そのあとをオレも付き歩いた。
木の冷たさが伝わる長い廊下を無言でいるには、オレには空気が重く感じた。
「君は……」
「………………」
(そういえば名前で呼ばないと反応しなかったな……)
「亞名……ちゃんは」
「あめでいい」
歳の差を考慮したのだろう返答が返ってきた。
「そっか。えっとここは亞名の家……なのかな?」
「……だいたいは」
(なんだその曖昧な答えは)
気になることが多々あるが、単刀直入に今一番気になっていることを聞いた。
「……さっきの、他に誰もいないってのはどういう──」
発言している最中、何かが後ろから来て足元をよぎった。
「おわっ」
踏みそうになり、オレは尻もちをつく。
「って……」
座り込んだオレに、その何かがオレに向かって飛び跳ねてきた。その勢いと重さに上半身も床に倒れた。
「っなんだ……?」
「…………しろ」
「え?」
よく見るとオレの仰向けになった胸に乗っかっているのは、黒い生き物で、座り込んで毛づくろいをしてやがった。
「黒猫……?」
「しろ、お客様だから……」
と言いながら亞名はオレに乗っていた黒猫を抱き抱える。
「……しろってのは?」
オレは起き上がりながら一応聞いてみる。
「……? なまえ」
「……そいつの?」
「うん」
「………………」
くろ、なら分かるがなんで黒猫に『しろ』って名前なんだよ!と、突っ込みたくなったのを必死にオレは我慢した。
「これ……」
それを察したのか察してないのかいざ知らず、抱き抱えた『しろ』の首輪にかかっているプラスチックのタグのような物をこちらに見せる亞名。
「46……?」
「そう」
「だから、しろってか……」
「そう」
「……にしても」
(しろはねえだろ……)
と思いつつ、純粋なる4つの眼差しに見つめられていると何も言えなかった。
「亞名が飼ってるのか?」
「最近きた」
「迷い猫か。……てかこれって」
オレはその『46』と書かれたタグに手を伸ばした。首輪に引っかかっているようになっていたそれは簡単に取れた。
「これ、どこかのロッカーの鍵か……?」
番号が書かれているタグ。その先には鍵が付いていた。
「………………」
亞名は一瞬少しだけ驚いたように目を見開いたが、またすぐに無表情に戻った。
「気づいてなかったのか」
「……あげる」
「え」
「かずとにそれ、あげる」
「いやでも」
「わたしのでもないもの。」
(迷い猫だったら、それもそうか)
「じゃあ、とりあえず預かっとくよ」
(にしても、46ってどこかで聞いた数字のような……)
ポケットに鍵をしまいながら、オレはまた何かを思い出せずにいるようなそんな気がした。
ただ少し奇妙に思ったのが、オレが落ちて歩きまわった森にはこんな広い敷地など見かけなかったことだ。
(見落とした……? いやそれにしても不自然……)
オレがその場で立ち止まり考え込んでいると、袖を掴んでいる亞名の手が揺すってきた。
「こっち」
「あ、あぁ……」
寺の入り口に入るようそのまま誘導される。近くに寄るとさらに建物は大きく感じた。
広い玄関に入る。靴箱とされるであろう横幅の長い箪笥が両脇に置いてある。
「靴」
そこら中を見渡してたオレに亞名は言った。気がつくと亞名はすでに靴を脱いで上がっていた。
「あ、悪い」
急いで靴を脱ごうとしたが、オレの履いていたスニーカーとは変わっている、慣れないブーツのようなものだったために少し手間取る。
「置いといていい、他に誰もいないから」
靴箱にしまおうとしたオレに亞名は声かける。
「あぁ、わかった」
「こっち」
亞名は先に静かな廊下を歩いていく。そのあとをオレも付き歩いた。
木の冷たさが伝わる長い廊下を無言でいるには、オレには空気が重く感じた。
「君は……」
「………………」
(そういえば名前で呼ばないと反応しなかったな……)
「亞名……ちゃんは」
「あめでいい」
歳の差を考慮したのだろう返答が返ってきた。
「そっか。えっとここは亞名の家……なのかな?」
「……だいたいは」
(なんだその曖昧な答えは)
気になることが多々あるが、単刀直入に今一番気になっていることを聞いた。
「……さっきの、他に誰もいないってのはどういう──」
発言している最中、何かが後ろから来て足元をよぎった。
「おわっ」
踏みそうになり、オレは尻もちをつく。
「って……」
座り込んだオレに、その何かがオレに向かって飛び跳ねてきた。その勢いと重さに上半身も床に倒れた。
「っなんだ……?」
「…………しろ」
「え?」
よく見るとオレの仰向けになった胸に乗っかっているのは、黒い生き物で、座り込んで毛づくろいをしてやがった。
「黒猫……?」
「しろ、お客様だから……」
と言いながら亞名はオレに乗っていた黒猫を抱き抱える。
「……しろってのは?」
オレは起き上がりながら一応聞いてみる。
「……? なまえ」
「……そいつの?」
「うん」
「………………」
くろ、なら分かるがなんで黒猫に『しろ』って名前なんだよ!と、突っ込みたくなったのを必死にオレは我慢した。
「これ……」
それを察したのか察してないのかいざ知らず、抱き抱えた『しろ』の首輪にかかっているプラスチックのタグのような物をこちらに見せる亞名。
「46……?」
「そう」
「だから、しろってか……」
「そう」
「……にしても」
(しろはねえだろ……)
と思いつつ、純粋なる4つの眼差しに見つめられていると何も言えなかった。
「亞名が飼ってるのか?」
「最近きた」
「迷い猫か。……てかこれって」
オレはその『46』と書かれたタグに手を伸ばした。首輪に引っかかっているようになっていたそれは簡単に取れた。
「これ、どこかのロッカーの鍵か……?」
番号が書かれているタグ。その先には鍵が付いていた。
「………………」
亞名は一瞬少しだけ驚いたように目を見開いたが、またすぐに無表情に戻った。
「気づいてなかったのか」
「……あげる」
「え」
「かずとにそれ、あげる」
「いやでも」
「わたしのでもないもの。」
(迷い猫だったら、それもそうか)
「じゃあ、とりあえず預かっとくよ」
(にしても、46ってどこかで聞いた数字のような……)
ポケットに鍵をしまいながら、オレはまた何かを思い出せずにいるようなそんな気がした。
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