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リル様の可愛らしい笑顔に癒されたい
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私が荷物を取りに行かされる日もあった。
ダニエル様の書斎でゴソゴソしていると、リル様が「ダニエルさん!」と言って部屋に入ってきたことがある。
すぐに私だと気づいてリルさんが、喜び満面の笑顔から、羞恥で顔を真っ赤にさせた。その後は悲しそうな顔になる。
こんなことくらいで頬を染めるリルさんが可愛い。そんなにもダニエル様に会いたかったのか。可哀想だ。
こんな風に笑顔満載で、出迎えてくれる嫁が欲しい。
そんな風に思わせてくれたリル様であったが、ダニエル様の不在が多くなればなるほど、笑顔がなくなり憔悴した様子だった。
元気がないというより、明らかに病気じゃないかというくらい、顔色も悪く、具合が悪そうだった。
ダニエル様と会えた時だけ、咲き誇らんばかりの笑顔になり、顔色も表情も良くなった。
なんてことだ。
ローサンからリル様の様子をよく確認するように言われる。言われなくてもしている。いや、したいがほぼ会えないため、動向だけ把握している。
最近は寝ていることが多いようで、一度ダニエル様が屋敷に帰った時に、私も会うことができたが、少し衝撃を受けたくらい、随分やつれてしまっていた。
ダニエル様はその日も屋敷に泊まらなかった。
いや、あんたそんなに急ぎの仕事ないだろう?
あったとしても、奥さんこんなにやつれてるのにほっとくのか?
そう言いたくなるのを堪えた。
この職場辞めようかと思う。
リル様が可哀想で見てられない。
人様の夫婦事情に首を突っ込んでもいいことはならないが、何とかならないかと思ってしまう。
おかげで、家での酒量が増えた。これはあきらかにストレスだ。
するとリル様が侍女にダニエル様の領地を走る列車の券を2枚買うよう手配を依頼していると聞いた。
開通式に発車する列車のためすごい人気だ。普通では手に入らない。もちろんダニエル様の妻である地位を利用すれば手に入るが、リル様はそうなさらなかった。
私は2枚チケットを手配して、リル様に渡すように侍女に言った。
一体どうなさるつもりだ。ローサンにも伝える。
2枚というのは誰かと行くつもりなのか。それとも一人で?
仕事を辞めて、リル様についていくのもいいよなと夢みたいなことを考える。リル様の侍従になるのはどうだろう。
列車のチケットのことをローサンに伝えると、片手で顔を覆っている。泣いているかと思った。
「リルが列車に乗っていることを教えてやれ。その後奴がどうしたかも言うように」とローサンに言われる。
「それより、私が一緒に列車に乗りましょうか?」
ジョーダンです。すごい目で睨まれる。リル様の席の近くに辺境伯の席も取るように言われる。
悪い席でもないが、良い席でもないことを言うが、構わないそうだ。
あー、私が万が一と思って取っていた席が。
開通式当日、やはり小柄なリル様が、大勢の乗客に揉まれながら列車に乗っていくのを見た。供のものもつけず一人だった。荷物は小さなボストンバック一つ。貴族にしたらあり得ないぐらい少ない荷物だ。
助けに行きたくなる。
身一つでどこに行くと言うのです。
腹だたしいがダニエル様にリル様に似た人を列車に乗っているのを見たと教えてやる。
「そんな馬鹿な」
そんな馬鹿なことが起こっているんです。
ダニエル様は能面のように固まったが、屋敷に確認を取るように言ってきた。そんなことをしていたら間に合わない。
私は屋敷に連絡を取ると、正式な返事より早く「どこにも居ないそうです」と伝える。
ダニエル様は私を振り返る。
「最近お顔の表情が優れなくて、大丈夫でしょうか。お乗りになられたとして、無事に戻ってこられるでしょうか?」
私は念押しを言う。これでも動かなかったら、辞表を出してリル様の元に私が行こう。
てっきり次の便で追いかけるのかと思ったら、「列車を止めろ」とダニエル様はいい出した。
え、この事業に何百億ものお金が動いているのに? 注目の的の列車を止める? 世間から何て叩かれるか。
ダニエル様の意志は固い。しかし列車を止めるよう伝達できないと言うと、「列車を止める。馬を用意しろ」
え、馬で行って止めるのか? 無茶だろ。
スピードが違いすぎる。
「ついて来れる奴だけついてこい」
ダニエル様は馬に飛び乗った。
ダニエル様の書斎でゴソゴソしていると、リル様が「ダニエルさん!」と言って部屋に入ってきたことがある。
すぐに私だと気づいてリルさんが、喜び満面の笑顔から、羞恥で顔を真っ赤にさせた。その後は悲しそうな顔になる。
こんなことくらいで頬を染めるリルさんが可愛い。そんなにもダニエル様に会いたかったのか。可哀想だ。
こんな風に笑顔満載で、出迎えてくれる嫁が欲しい。
そんな風に思わせてくれたリル様であったが、ダニエル様の不在が多くなればなるほど、笑顔がなくなり憔悴した様子だった。
元気がないというより、明らかに病気じゃないかというくらい、顔色も悪く、具合が悪そうだった。
ダニエル様と会えた時だけ、咲き誇らんばかりの笑顔になり、顔色も表情も良くなった。
なんてことだ。
ローサンからリル様の様子をよく確認するように言われる。言われなくてもしている。いや、したいがほぼ会えないため、動向だけ把握している。
最近は寝ていることが多いようで、一度ダニエル様が屋敷に帰った時に、私も会うことができたが、少し衝撃を受けたくらい、随分やつれてしまっていた。
ダニエル様はその日も屋敷に泊まらなかった。
いや、あんたそんなに急ぎの仕事ないだろう?
あったとしても、奥さんこんなにやつれてるのにほっとくのか?
そう言いたくなるのを堪えた。
この職場辞めようかと思う。
リル様が可哀想で見てられない。
人様の夫婦事情に首を突っ込んでもいいことはならないが、何とかならないかと思ってしまう。
おかげで、家での酒量が増えた。これはあきらかにストレスだ。
するとリル様が侍女にダニエル様の領地を走る列車の券を2枚買うよう手配を依頼していると聞いた。
開通式に発車する列車のためすごい人気だ。普通では手に入らない。もちろんダニエル様の妻である地位を利用すれば手に入るが、リル様はそうなさらなかった。
私は2枚チケットを手配して、リル様に渡すように侍女に言った。
一体どうなさるつもりだ。ローサンにも伝える。
2枚というのは誰かと行くつもりなのか。それとも一人で?
仕事を辞めて、リル様についていくのもいいよなと夢みたいなことを考える。リル様の侍従になるのはどうだろう。
列車のチケットのことをローサンに伝えると、片手で顔を覆っている。泣いているかと思った。
「リルが列車に乗っていることを教えてやれ。その後奴がどうしたかも言うように」とローサンに言われる。
「それより、私が一緒に列車に乗りましょうか?」
ジョーダンです。すごい目で睨まれる。リル様の席の近くに辺境伯の席も取るように言われる。
悪い席でもないが、良い席でもないことを言うが、構わないそうだ。
あー、私が万が一と思って取っていた席が。
開通式当日、やはり小柄なリル様が、大勢の乗客に揉まれながら列車に乗っていくのを見た。供のものもつけず一人だった。荷物は小さなボストンバック一つ。貴族にしたらあり得ないぐらい少ない荷物だ。
助けに行きたくなる。
身一つでどこに行くと言うのです。
腹だたしいがダニエル様にリル様に似た人を列車に乗っているのを見たと教えてやる。
「そんな馬鹿な」
そんな馬鹿なことが起こっているんです。
ダニエル様は能面のように固まったが、屋敷に確認を取るように言ってきた。そんなことをしていたら間に合わない。
私は屋敷に連絡を取ると、正式な返事より早く「どこにも居ないそうです」と伝える。
ダニエル様は私を振り返る。
「最近お顔の表情が優れなくて、大丈夫でしょうか。お乗りになられたとして、無事に戻ってこられるでしょうか?」
私は念押しを言う。これでも動かなかったら、辞表を出してリル様の元に私が行こう。
てっきり次の便で追いかけるのかと思ったら、「列車を止めろ」とダニエル様はいい出した。
え、この事業に何百億ものお金が動いているのに? 注目の的の列車を止める? 世間から何て叩かれるか。
ダニエル様の意志は固い。しかし列車を止めるよう伝達できないと言うと、「列車を止める。馬を用意しろ」
え、馬で行って止めるのか? 無茶だろ。
スピードが違いすぎる。
「ついて来れる奴だけついてこい」
ダニエル様は馬に飛び乗った。
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