魔力閉鎖症なので、生きるためにはどんなにクズ男でも傍にいます。

くまだった

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番外編  ゆめとうつつ~リルがおれの腕の中にいる~

番外編

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 ダニエルにはリルがいなくなったことを気付く様に手配する。それでも動かなかったら、リルはもうお前には任せない。

 おれは首都でただ待っているだけだった。

 書斎で仕事を片付けようと、机に向かうが、集中できない。
 リルは大丈夫だろうか。倒れていないだろうか。悲しんでいないだろうか。寂しくないだろうか。

 一人で旅立つなら、おれを連れていっておくれ。
 どんな場所でも、着いていく。

 体の辛さを軽減させることは、できなくても、一緒にいることはできたのに。

 小さい頃から兄弟のように過ごしたじゃないか。
 兄と思えと言っていたじゃないか。

 時間が長く感じた。


 結局リルはダニエルと一緒に戻ってきた。



 そしてダニエルは人が変わったようにリルに臆面もなく愛しているというようになった。

 おれは面白くないが、リルが幸せならいい。

 何年もそうして、リルを見守り続けていた。


 リルと初めてあったとき咲いていたピンクの花がまた屋敷の庭に咲き始めた。子供の頃のリルを思いだす。

 おれが養子に決まってから、にっこり笑って「兄様って呼んで」と言ってきた。「リル?」「もう兄様だって」とリルが拗ねていう。

 あどけない日々。

 「ローサン」リルのおれを呼ぶ透き通った声を今でも思い出す。







 屋敷に咲いていたリルと同じ髪色の花をもって、リルに会いにいく。

 リルの目を閉じた顔が綺麗に微笑んでいる。
 薄いピンクの花を、リルの傍に置く。

 おれはリルの手を握りながら、幸せだったんだな。そう思っていいのか? 幸せじゃなかったらおれは怒るぞ。

 「ローサン、ローサンの顔を見るとホッとするよ」
 いつか笑いながら言ってくれたな。おれがどれほど嬉しかったかわかるか。
 
 「リル、リル?」

 返事が聞こえない。リル眠たいなら寝ていいんだ。無理しないでくれ。だけど必ず、目を開けて・・・おれの名前を、また、・・・呼んでくれ。

 次の春は、この屋敷の庭に遊びにくるリスを見せてくれるって言っていただろう?




 義両親は気が抜けたのか、領地で静かに暮らすという。おれはただ淡々と仕事をこなす日々。

 静かになった屋敷に、リルからの手紙が、何年も前に出された手紙が嘘のように届いた。

 最初は差出人を何回も見て確認した。

 誰かのいたずらか?

 でも字をみてリルの字だとわかった。お手本みたいに丁寧で綺麗な字だ。

 見るのが怖かった。

 でもリルの考えていた事を少しでも知りたい。
 リルがいたことを忘れたくない。
 そんな思いで開封した。

 「父様、母様、ローサンお元気ですか? 
 ダニエルさんと結婚して僕はすっかり元気になりました。
 随分、元気になったのでダニエルさんと別れて、ずっとしたいと思っていた旅をします。
 僕と別れてもダニエルさんには支援を続けてくださいね。
 僕が旅にでれるくらい元気になったのは、ダニエルさんのおかげですから。

 父様、母様、ローサンにはたくさん感謝をしています。体の弱い僕をたくさん愛してくれてありがとう。

 好きなことをさせてくれてありがとう。

 僕はたくさんの愛情をもらって幸せでした。僕も愛してます。

 お土産をたくさん持って、また元気な姿を見せに家に帰りますね」

 おれは大切な手紙を持っていることができず、手からハラハラとそのまま床に落とす。

 「リル、リル、リル」顔を覆っている手の隙間から熱い涙が零れる。

 愛していたんだよ。君の傍にいるためにおれはなんでもした。
 君の傍にいられなくても。


 いつでもいい。帰ってきておくれ。

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