魔力閉鎖症なので、生きるためにはどんなにクズ男でも傍にいます。

くまだった

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番外編  ゆめとうつつ~リルがおれの腕の中にいる~

番外編

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 リルの一挙一動を見張らせる。ダニエルの新しい列車の券を偽名で購入したことを知る。

 二人分だが、誰とも乗る約束はしていない。まさか一人で乗るつもりか。

 「もう少しで余命宣告された年なんだ。でもダニエルさんと出会ったおかげで楽になれてよかったよ」あのときリルはほほ笑んでいたけど、悲しそうだった。
 
 たまたま握った手首が以前よりも細くなって驚く。
 「リルやせすぎだ。何も食べれてないのか?」
 「僕が細いのは前からでしょ」リルは呆れたようにいう。 
 「もう忘れちゃったの」

 おれはリルを抱き上げた。軽い。子供の様に軽い。
 「ちょ、ローサン、僕子供じゃないんだよ。結婚もしているんだからね」
 リルがどこか得意げにいう。

 そんなものは結婚じゃないと言いたかったが、リルが悲しむのがわかっているので言わない。

 「すまない」そのかわり謝って、リルの好きだった果物を手配する。

 少しでもいいから何か食べてくれ。おれを安心させてくれ。
 「仕方がないなーローサンは」

 リルはひな鳥のように小さく一口だけ食べてくれた。

 おれは国中の魔力閉鎖症に関する古今東西の資料を読んだり調べていた。

 ちょうど魔力閉鎖症であるが余命を超えて生きている女性の兄が首都に来ていることを知った。

 シュワルツ辺境伯は変わりものと聞いていたが、魔力閉鎖症に関して少しでもいいので情報がほしいと依頼すると会ってくれた。

 魔力閉鎖症になった者は、大半早くに命をなくすため、そういうものだと何も研究されていないことが多かった。

 なぜその女性は余命を超えて生きながらえているのか。少しでもいいからヒントがほしかった。

 大柄な辺境伯が言うには「妹と奇跡的に魔力が合うものがいて、結婚できたのです。
 そのおかげで妹の魔力詰まりによる症状がよくなって、妹はずいぶん楽になったようです。
 妹は幸せそうです。義弟も妹をよくしてくれている。片時も離れないくらいにね。
 相思相愛です。おれはそのおかげではないかと思っている」

 リルが言う通り、魔力の合うものとの長期の接触、更には愛情がキーワードかもしれない。

 だけど、あの男、ダニエルはリルを愛していないのか? あのリルを愛さずにいられるのだろうか。

 おれはダニエルがリルの事を話すとき、口先だけでなく、愛おしいものを語るように話していることに気づいていた。
 たぶんダニエルもリルに惹かれているはずだ。

 結局はダニエルに頼らざるを得ない事実。

 新しい列車に乗って帰るという辺境伯に、同じ列車にリルが乗っているはずなので、その話をしてあげてほしいとお願いする。

 図々しいが、リルがなんのために一人で列車に乗っているか考えると、それしかない。

 辺境伯は何か思うところがあったのか、快諾してくれた。

 ダニエルにはリルがいなくなったことを気付く様に手配する。それでも動かなかったら、リルはもうお前には任せない。

 おれは首都でただ待っているだけだった。

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