魔力閉鎖症なので、生きるためにはどんなにクズ男でも傍にいます。

くまだった

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1 余命宣告を受けている僕 救世主と出会った

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 もう動けないと蹲っていたら、彼に腕を掴まれた。

 暗闇の中、彼が輝いてみえた。

 僕の辛さやしんどさを彼が全部吸い取るように解消してくれたから。

 彼の顔も名前もわからなかったけど、ずっと傍にいたいって思った。


 僕の名前はリル ラ ブラウケッシュ。小さい時は元気だったのに、年を重ねるたびに、生きづらくなった。

 なんてことない魔力閉鎖症という珍しい病気に生まれつきかかっていた。小さい頃は魔力が少ないため何とかなったが、成長と共に魔力が増えて、魔力回路が詰まりやすくなった。

 その度に全身に走る痛みや、倦怠感、怠さ、息切れ、もう生きていることがしんどい。なんとか生きて今、16歳。

 14歳の時に余命長くて3年と言われたが、もうそんなにも生きたくないと思うほどだ。毎年生きているのが辛くなる。

 14歳で学園に入学する前はそれでも希望を持っていた。勉強や運動や出会いとかドキドキすることが待っていると思っていた。

 医者や親は無理して行かなくてもと反対されたが、説得して最終的にはリルのやりたいようにしていいとなった。

 倦怠感っていうのはバカにならなくて、本当になにもできないくらいしんどい。気のせいとか、気の持ちようとかで克服できないんだ。

 結局、僕はほぼ登校できていなかった。できても保養室という、体調の悪い生徒が休む部屋にて過ごしている。

 授業はたまに受ける。でもさ、ついていけないの。ずっと休んでるから。友達もいないし。悲しくなってきた。

 やっぱり両親や先生の言う通り学園なんて行かない方が良かったかな。でも普通に学園に通える同じ年頃の子たちが羨ましかったんだ。

 そんなことを思いながら、僕は息切れしながら、保養室から門に向かって壁伝いに歩いていた。門には迎えの馬車が来ているはず。

 今日は調子がいいと思って学園に来たが、学園についた時点でタイムリミットが来た。全然大丈夫じゃなかった。

 向こうから生徒たちが歩いてくる。運動後か、若者の元気な熱量がすごい。話しながら歩いている彼らには、壁に張り付いている僕が見えなかったみたいで、通りすがりに肩がぶつかる。

 ぶつかっても彼らは気付かず、そのまま通りすぎた。

 ついに僕は存在もなくなってしまったのだろうか。存在感はもともとなかったが。

 ぶつかられた衝撃で、蹲る。僕ぐらいになると、衝撃は肩だけで収まらなくて、全身までに響き渡って心臓が止まりそうになる。

 門が遠い。やっぱりもう父様のいう通りもう学園を辞めようか。休学なんてしても永遠に学園にはこれなくなりそうだし。

 在園生が亡くなるとか、学園も困るよな。変におれの形跡とかあっても、後で誰だこれ? とかになるの悲しい。

 何も期待せず、蹲っていた、次に息切れとめまいがましになったら、立ち上がろう。そう思いながら。

 なのに、手が差し伸べられた。「おい大丈夫か」といって引き上げられる。

 そんな無理に引きあげられても大丈夫じゃない! と思ったが。あれ? あれ? なんか息が楽。

 その男子生徒は別に僕の顔なんて見ていなくて、他の生徒と話すためによそ見をしていた。
 僕の腕を持っている、背の高い彼のその手にどんどん、僕の魔力が引き寄せられていっている。

 気持ち良く、すーーーーーーーーーーーーーっと。
 コリに凝り固まった僕の詰まった魔力がほどかれていく。

 あーーーーーーーー、気持ちいいーーーーーー。
 楽だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

 例えるなら、寒い日に外の爽快な景色が見える場所であったかいお風呂に入ったような。

 または陽気な日に日向ぼっこをして、気持ち良い伸びができたような。

 あーーーーーーーーーーーーーーと目を閉じて解放感を堪能していたら、急に終わった。

 「大丈夫そうだな」と彼は離れて行った。
 大丈夫じゃないです。あなたのお名前は? 

あなたは誰ですか?

 と聞きたかったが日頃のコミュニケーション不足、運動不足もたたって、気持ちは焦るのにぼーっと立っている間に救世主は消えた。


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