溺愛する藤井君に僕は気付かない。

くまだった

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溺愛する藤井君に僕は気付かない。

藤井君に告白される

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 藤井君にされて恥ずかしかったことを伝えたら、なぜか喜んでいる藤井君。
 
 満足したのか、藤井君が「わかった気をつける」って言ってくれた。

 「他は?」
 まだ、言っていいのかな。

 「話し方」
 「ん?」
 「だから、話し方、どうして松木君とかと話す時と、僕と話す時の話し方違うの?」

 松木君って僕が言っただけで、藤井君の片眉がぴくっとした。
 仲良さそうだと思ったけど、違うのかな。

 「僕じゃないときは、何? とか、わかった、とか短くない? 返事。後、早くしろとか、邪魔すんなとか」
 
 松木君たちへの雑な感じが仲良さを現しててうらやましい。

 「ん? 何? もっとあいつらにも丁寧に話せってこと?」

 「違う。僕も藤井君の友達でしょ。僕だけに話し方違うから、僕も同じように接してほしい。僕のこと子どもみたいに扱ってない?」

 「そんなに違うかな」んーとなぜか少し照れたような藤井君。

 「でも、無理だ」
 え、友達と思ってたのに違うの?

 じゃあどうして、一緒に帰ろうとか勘違いすることするの?

 友達の定義が藤井君と僕では違い過ぎるの?

 僕が呆然としていると、「あのさあ、奏はおれにとって特別なの」

 「だから無理」
 「でも、友達・・」

 「あのさあ、奏は友達にチュウとかするの?」
 「・・しない」

 しないし、僕は藤井君に僕からチュウしたことはない。

 それを伝えたら、藤井君はこわばったような顔で、「嫌かってきいたら、首降らなかっただろ。だからあれも奏の同意のもとに行ったものだから、奏もおれにチュウしたことになる」

 なんだかわからなくなってきた。あの時、嫌かとはきかれなかった。いい?って聞かれて、頷いたのは僕だ。

 「チュウをするのは、特別な関係だ」

 奏は、誰にでもするのか? クラスのやつらにでもするのか?

 そんなわけはないので首を振る。

 「だろ、チュウをするおれたちは特別だ。・・・だけど言ってなかったおれも悪かった。おれたちは特別な関係、恋人だ。付き合っている」

 いつのまにか付き合ってたんだ。
 僕は付き合うのは、女の子だと思ってたし、告白したりされたりしてから付き合うものだと思ってたから、ショックを受けてしまった。

 確かにどうしてあんなことするんだろうとモヤモヤしてた。だけど友達ができたことに浮かれてしまっていた。

 「好きって・・」
 「好きっていった。何度も」
 「何回も言ったけど。奏は聞いてなかった? 聞こえてなかった?」

 なんだか責められてる。

 聞いた。確かに聞いたけど、なんだかぎゅうぎゅう抱きしめられていたり、酸欠で頭がぼーとしてたときだったので深く考えられなかった。
 なんだか猫や犬を見て可愛いー好きーってのりかと思っていたと伝えた。

 藤井君が怒ったように「おれは誰にでもそんなこと言わない」といい切った。
 その後、頭を片手で抑えながらため息をついた。

 「わかった。悪かった。何にも伝わってなかったんだな」と悲しそうに言うので、僕は罪悪感で胸が痛くなった。
 「ぼく・・」
 「奏・・」

 藤井君はなんだか改まって
 「おれは、二木奏君が好きです。入学式で見た時から。クラスが一緒になって嬉しかったし、こうやって話せるようになって嬉しい。今も胸がどきどきしてる。好きだ。付き合ってください」

 至近距離で、見つめながら伝えられる。

 「一緒に帰ろうって言ったのは?」
 「好きだから」
 「部屋で遊ぶのは?」
 「好きだから、そばにいたいから」
 「・・キスは」
 「好きだから、特別だから、そばにいたい。ずっと一緒にいたいから」
 「もし・・」
 「もし、断られたらもう話さない、一緒に帰らない」
 言い切られて、ショックを受ける。

 胸が苦しくて、泣きたくなってくる。半分泣いている。藤井君は優しいけど、強引できっぱりとして男らしい。

 きっと僕が付き合わないと言ったら、もう二度と一緒に帰らないし、遊ぶこともない。

 藤井君は無表情でおれを見ている。いつもの甘い優しい微笑みがない。

 「・・抱きしめるのは?」
 「なし」

 藤井君が苦笑している。当然だろう。
 「好きだ。奏。奏は?」
 「僕も、好き。好きだけど、藤井君の好きとは違う気がする」

 喜びかけた藤井君がぐっと堪える。気を取り直したのか甘く聞いてくる。
 「これは嫌?」

 軽く抱きしめてくる藤井君。首を振ると、色々試してくる。

 「これは?」「これは?」頭を撫ぜたり、耳を触ったり。

 僕は首を振り続ける。

 じゃあと、藤井君が首を傾げる。唇が後少しで触れるところで止まる。

 「どうする?」と聞いてくる。
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