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溺愛する藤井君に僕は気付かない。
藤井君の部屋で
しおりを挟む藤井君の部屋で一緒に動画を見ていたのに、いつの間にか触れ合うようなキスをされていた僕。
えーえーえーと思った僕はちょっと待ってと藤井君の体を押しのけようと思ったけれど、当然できず、ただ藤井くんにしがみつくだけになってしまった。
待って欲しい
切実にそう思って、言おうとしたけれども、口を開けたことで、藤井君の舌は僕の舌に触れ、絡められ、吸い上げていくようになった。
なんだかのぼせて熱くなってしまった僕はされるがままだった。
僕にとっての藤井君は、体が大きくて重くてびくともしないものだった。
藤井君は僕の顔の両側に、肘をあてて自分の体重で負荷をかけてないつもりかもしれないけど、重い!
下半身なんかびくともしない。わざとなの?わざと?
藤井君!
酸欠みたいになって、苦しくて重くて、僕の手から力が抜けていく。
満足したのか、藤井君が舌を抜いて、チュっと僕の唇の上でリップ音をたてる。
藤井君、そんなところまでかっこいいんだね。
僕はそう思いながら、気を失いそうになっていた。
満足そうな顔から、藤井君が一気に慌てて、「奏?」
僕の上から上半身を上げてくれた。
それだけでも圧迫感がマシになる。
「息して、奏」
「鼻から、口から、吸って吐いて。深呼吸!」
慌ててる藤井君の指示にどうしたらいいかわからなくなったけど、なんとか息を吸う。
咳き込みながら、呼吸を繰り返して、涙目になりながら、藤井君を睨みつける。
藤井君のせいだ。
「そうーー!」
なのに藤井君は感極まったみたいに僕を抱きしめて。
「好きだ、奏、ごめんな。大事にする、好きだ」
といいながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
藤井君、藤井君、また圧迫してる。ぼくを!
久しぶりに一人での学校帰り、道端の猫に小さな声で話しかけていると、それを見ていたらしい藤井君が怒ってきた。
藤井君いつのまにか来たんだろ。
「どうして、猫には話してんだよ」
僕は戸惑ってしまって、彼を見つめてしまった。どういう意味なんだろ。
藤井君は、僕が見つめていると、寒いからかなんとなく耳が赤くなっていた。
「猫に話すぐらいだったら、おれに話せよ」
ブスッとして、唇を尖らしている。怒っているけど、なんとなく拗ねてるようにも感じた。
そう言えば、こうやっていつも藤井くんが話しかけてくれるのに、僕は藤井君に話しかけたことがなかった。
用事なんかも僕が話す前に、藤井君が察してくれるから、何も話す必要もなかったのもある。
こんな僕に話しかけてくれる藤井君に、僕は失礼なことをしてるような気がしてきた。
「フジイクン」
なんか不思議なイントネーションになった気がする。発音はこれでよかったのかなあ。
最初はあげればよかったのかなあ、後をあげればよかったのかなあ。
藤井君も目を開いて僕を見ている。僕は恥ずかしくて仕方がなかった。
「藤井君」もう一度言ってみた。さっきよりはマシになったような気がする。でも藤井君がまだ固まっている。
やっぱりおかしかったのかな。何て言えばわからなくなって、立ち上がって藤井君の服を掴んで見上げた。
彼は僕よりだいぶ背が高いんだ。
膝の上に載せていた猫が「ニャア」と言って走り去ってしまった。
「あ」僕は振り返って猫を見ようとした。
背中に衝撃があって、藤井君の冷たい体に抱きしめられた。
はがいじめされているのかと思うぐらい、身動きがとれなかった。
冷たかったのは服だけで、筋肉のついている藤井君の体はぼくより熱いのか、藤井君の体から、あったかさが伝わってくる。
近いからか、ドクンドクンと心臓の音まで聞こえてきた気がする。
やっぱり体を鍛えていると、心臓の鼓動もはっきりしてるんだなと思った。
あー走り去った猫はすぐに姿が見えなくなってしまった。
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