2 / 6
まさかの同じ学校
しおりを挟む
散々アレクにはいじめられた思い出しかない。
せっかく16歳になって学園に入学して、アレクとクラスも寮も離れると喜んでいたのに、寮で同じ部屋になっていた。
そもそもアレクは侯爵家の次男で、騎士養成の専門の学校に行くと聞いていた。次男のアレクは爵位をつげないし、騎士になるのだと。
この学校にも騎士科はあるがあくまで専攻科だ。専門校に行く方が、王立騎士団に入団しやすいと一般には言われている。
合格発表者の一覧にアレクの名前を見つけた時には同姓同名者かと思ったくらいだった。
合格発表を見にいった日、ティモシーの家に帰ると、当然のようにアレクがティモシーの部屋のソファーでお茶を飲んでいた。ティモシーもアレクが不在時に部屋に入っていてもなんとも思わない。
昔からお互いに部屋を行き来している。アレクがティモシーの部屋に来る方が圧倒的多いが。
それはアレクが威張れる相手がティモシーしかいないからだとティモシーは思っている。
残念な奴だ。
ティモシーは同姓同名の名前を合格発表者の一覧で見たとアレクに言った。
「あ、それおれ」
「なんで? 騎士養成学校に行くって言ってなかった?」
ティモシーは驚く。
「なんか騎士団みたいに規律も訓練も厳しいらしい朝から晩まで。そんなの入団してからで充分だよ」
「でもそのぶん差が出ちゃわないかな」
「大丈夫だよ。心配してくれているのか」
「うん」
アレクはいつもの唇を歪めるような笑いじゃなくて、子どもの頃みたいに嬉しそうに笑った。
自分中心のアレクは結構心配されるのを喜ぶ。
「それよりおれ、ティモシーがこの学校受けるって知らなかったな。教えてくれないなんて」
アレクが唇を尖らす。
「そうだっけ? 全然決まらなかったから。お祖父様からこの学校の先生がいいって聞いて急に進路変えたんだ」
「へぇー」
「でもアレクと一緒なら心強いよ」半分本音だ。まったく知らない学校に行くには不安がある。かといって四六時中アレクが一緒なのも嫌だ。でもアレクは騎士科だから、ティモシーとクラスも寮も違うに違いないし。ちょうどいいかも知れない。
「そうか」アレクが満更でもない顔をしている。
アレクがジッとティモシーの顔を見てくる。
「何?」
「泣かないんだな」
「何歳だと思ってるの?」
「そうか?」
「実は合格できたってわかった時に少し、でもアレクの名前を見て驚きで吹っ飛んじゃった。へへ」
「そうか」
「それにいつまでも泣き虫じゃ恥ずかしいし」
「充分今までも恥ずかしかったと思うが」
「もう! 僕だって恋人ができるかもだし。泣き虫を卒業したいんだ」ティモシーは合格した喜びと将来の期待で微笑んだ。可愛い彼女の前で泣き虫は恥ずかしい。
「そうか」
アレクが無表情になったのには気付かなかった。
せっかく16歳になって学園に入学して、アレクとクラスも寮も離れると喜んでいたのに、寮で同じ部屋になっていた。
そもそもアレクは侯爵家の次男で、騎士養成の専門の学校に行くと聞いていた。次男のアレクは爵位をつげないし、騎士になるのだと。
この学校にも騎士科はあるがあくまで専攻科だ。専門校に行く方が、王立騎士団に入団しやすいと一般には言われている。
合格発表者の一覧にアレクの名前を見つけた時には同姓同名者かと思ったくらいだった。
合格発表を見にいった日、ティモシーの家に帰ると、当然のようにアレクがティモシーの部屋のソファーでお茶を飲んでいた。ティモシーもアレクが不在時に部屋に入っていてもなんとも思わない。
昔からお互いに部屋を行き来している。アレクがティモシーの部屋に来る方が圧倒的多いが。
それはアレクが威張れる相手がティモシーしかいないからだとティモシーは思っている。
残念な奴だ。
ティモシーは同姓同名の名前を合格発表者の一覧で見たとアレクに言った。
「あ、それおれ」
「なんで? 騎士養成学校に行くって言ってなかった?」
ティモシーは驚く。
「なんか騎士団みたいに規律も訓練も厳しいらしい朝から晩まで。そんなの入団してからで充分だよ」
「でもそのぶん差が出ちゃわないかな」
「大丈夫だよ。心配してくれているのか」
「うん」
アレクはいつもの唇を歪めるような笑いじゃなくて、子どもの頃みたいに嬉しそうに笑った。
自分中心のアレクは結構心配されるのを喜ぶ。
「それよりおれ、ティモシーがこの学校受けるって知らなかったな。教えてくれないなんて」
アレクが唇を尖らす。
「そうだっけ? 全然決まらなかったから。お祖父様からこの学校の先生がいいって聞いて急に進路変えたんだ」
「へぇー」
「でもアレクと一緒なら心強いよ」半分本音だ。まったく知らない学校に行くには不安がある。かといって四六時中アレクが一緒なのも嫌だ。でもアレクは騎士科だから、ティモシーとクラスも寮も違うに違いないし。ちょうどいいかも知れない。
「そうか」アレクが満更でもない顔をしている。
アレクがジッとティモシーの顔を見てくる。
「何?」
「泣かないんだな」
「何歳だと思ってるの?」
「そうか?」
「実は合格できたってわかった時に少し、でもアレクの名前を見て驚きで吹っ飛んじゃった。へへ」
「そうか」
「それにいつまでも泣き虫じゃ恥ずかしいし」
「充分今までも恥ずかしかったと思うが」
「もう! 僕だって恋人ができるかもだし。泣き虫を卒業したいんだ」ティモシーは合格した喜びと将来の期待で微笑んだ。可愛い彼女の前で泣き虫は恥ずかしい。
「そうか」
アレクが無表情になったのには気付かなかった。
11
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説

泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

火傷の跡と見えない孤独
リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。

キミの次に愛してる
Motoki
BL
社会人×高校生。
たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。
裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。
姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

太陽に恋する花は口から出すには大きすぎる
きよひ
BL
片想い拗らせDK×親友を救おうと必死のDK
高校三年生の蒼井(あおい)は花吐き病を患っている。
花吐き病とは、片想いを拗らせると発症するという奇病だ。
親友の日向(ひゅうが)は蒼井の片想いの相手が自分だと知って、恋人ごっこを提案した。
両思いになるのを諦めている蒼井と、なんとしても両思いになりたい日向の行末は……。

彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる