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まさかの同じ学校
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散々アレクにはいじめられた思い出しかない。
せっかく16歳になって学園に入学して、アレクとクラスも寮も離れると喜んでいたのに、寮で同じ部屋になっていた。
そもそもアレクは侯爵家の次男で、騎士養成の専門の学校に行くと聞いていた。次男のアレクは爵位をつげないし、騎士になるのだと。
この学校にも騎士科はあるがあくまで専攻科だ。専門校に行く方が、王立騎士団に入団しやすいと一般には言われている。
合格発表者の一覧にアレクの名前を見つけた時には同姓同名者かと思ったくらいだった。
合格発表を見にいった日、ティモシーの家に帰ると、当然のようにアレクがティモシーの部屋のソファーでお茶を飲んでいた。ティモシーもアレクが不在時に部屋に入っていてもなんとも思わない。
昔からお互いに部屋を行き来している。アレクがティモシーの部屋に来る方が圧倒的多いが。
それはアレクが威張れる相手がティモシーしかいないからだとティモシーは思っている。
残念な奴だ。
ティモシーは同姓同名の名前を合格発表者の一覧で見たとアレクに言った。
「あ、それおれ」
「なんで? 騎士養成学校に行くって言ってなかった?」
ティモシーは驚く。
「なんか騎士団みたいに規律も訓練も厳しいらしい朝から晩まで。そんなの入団してからで充分だよ」
「でもそのぶん差が出ちゃわないかな」
「大丈夫だよ。心配してくれているのか」
「うん」
アレクはいつもの唇を歪めるような笑いじゃなくて、子どもの頃みたいに嬉しそうに笑った。
自分中心のアレクは結構心配されるのを喜ぶ。
「それよりおれ、ティモシーがこの学校受けるって知らなかったな。教えてくれないなんて」
アレクが唇を尖らす。
「そうだっけ? 全然決まらなかったから。お祖父様からこの学校の先生がいいって聞いて急に進路変えたんだ」
「へぇー」
「でもアレクと一緒なら心強いよ」半分本音だ。まったく知らない学校に行くには不安がある。かといって四六時中アレクが一緒なのも嫌だ。でもアレクは騎士科だから、ティモシーとクラスも寮も違うに違いないし。ちょうどいいかも知れない。
「そうか」アレクが満更でもない顔をしている。
アレクがジッとティモシーの顔を見てくる。
「何?」
「泣かないんだな」
「何歳だと思ってるの?」
「そうか?」
「実は合格できたってわかった時に少し、でもアレクの名前を見て驚きで吹っ飛んじゃった。へへ」
「そうか」
「それにいつまでも泣き虫じゃ恥ずかしいし」
「充分今までも恥ずかしかったと思うが」
「もう! 僕だって恋人ができるかもだし。泣き虫を卒業したいんだ」ティモシーは合格した喜びと将来の期待で微笑んだ。可愛い彼女の前で泣き虫は恥ずかしい。
「そうか」
アレクが無表情になったのには気付かなかった。
せっかく16歳になって学園に入学して、アレクとクラスも寮も離れると喜んでいたのに、寮で同じ部屋になっていた。
そもそもアレクは侯爵家の次男で、騎士養成の専門の学校に行くと聞いていた。次男のアレクは爵位をつげないし、騎士になるのだと。
この学校にも騎士科はあるがあくまで専攻科だ。専門校に行く方が、王立騎士団に入団しやすいと一般には言われている。
合格発表者の一覧にアレクの名前を見つけた時には同姓同名者かと思ったくらいだった。
合格発表を見にいった日、ティモシーの家に帰ると、当然のようにアレクがティモシーの部屋のソファーでお茶を飲んでいた。ティモシーもアレクが不在時に部屋に入っていてもなんとも思わない。
昔からお互いに部屋を行き来している。アレクがティモシーの部屋に来る方が圧倒的多いが。
それはアレクが威張れる相手がティモシーしかいないからだとティモシーは思っている。
残念な奴だ。
ティモシーは同姓同名の名前を合格発表者の一覧で見たとアレクに言った。
「あ、それおれ」
「なんで? 騎士養成学校に行くって言ってなかった?」
ティモシーは驚く。
「なんか騎士団みたいに規律も訓練も厳しいらしい朝から晩まで。そんなの入団してからで充分だよ」
「でもそのぶん差が出ちゃわないかな」
「大丈夫だよ。心配してくれているのか」
「うん」
アレクはいつもの唇を歪めるような笑いじゃなくて、子どもの頃みたいに嬉しそうに笑った。
自分中心のアレクは結構心配されるのを喜ぶ。
「それよりおれ、ティモシーがこの学校受けるって知らなかったな。教えてくれないなんて」
アレクが唇を尖らす。
「そうだっけ? 全然決まらなかったから。お祖父様からこの学校の先生がいいって聞いて急に進路変えたんだ」
「へぇー」
「でもアレクと一緒なら心強いよ」半分本音だ。まったく知らない学校に行くには不安がある。かといって四六時中アレクが一緒なのも嫌だ。でもアレクは騎士科だから、ティモシーとクラスも寮も違うに違いないし。ちょうどいいかも知れない。
「そうか」アレクが満更でもない顔をしている。
アレクがジッとティモシーの顔を見てくる。
「何?」
「泣かないんだな」
「何歳だと思ってるの?」
「そうか?」
「実は合格できたってわかった時に少し、でもアレクの名前を見て驚きで吹っ飛んじゃった。へへ」
「そうか」
「それにいつまでも泣き虫じゃ恥ずかしいし」
「充分今までも恥ずかしかったと思うが」
「もう! 僕だって恋人ができるかもだし。泣き虫を卒業したいんだ」ティモシーは合格した喜びと将来の期待で微笑んだ。可愛い彼女の前で泣き虫は恥ずかしい。
「そうか」
アレクが無表情になったのには気付かなかった。
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