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アレクの意地悪
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ティモシーは泣き虫だ。小さい頃からちょっとしたことで泣く。よくその事で幼馴染のアレクに揶揄われた。
昔も今も「泣き虫ティー」と言ってくる。
アレクは侯爵家の次男で金髪で薄い青の瞳の少年だ。ひどく整った顔をしており、人形みたいに可愛い。小さい頃から人目を引く容姿だ。
ティモシーは伯爵家の嫡男で、蜂蜜色の髪に蜂蜜色い目がクリっとしていて、リスみたいな少年だ。柔和な顔立ちで平凡な容姿をしている。
両親同士が仲が良いものだから、赤ちゃんの頃からなにかと一緒によくいる。
ティモシーは揶揄われるのが嫌でできるだけアレクに関わらないようにしようとするが、アレクがそれを許さない。
ティモシーは虫が苦手なのに、アレクは芋虫を目の前に持ってきたり、ベッドの中に虫を入れられていた時は、思わずそばにいたアレクに飛びついて泣き喚いてしまった。
その時もアレクは意地悪な顔をしてくすくす笑っていた。
もちろんこのイタズラは後でアレクも侯爵に怒られていた。
アレクが帰った後、寝具を交換してもらっても、そのベッドではなかなか寝る気になれなかった。
その後もアレクには庭の池に落とされかけたり、氷を背中に入れられたり、大事にしていた従兄弟からもらったペンを折られたりした。その度にティモシーは大泣きした。
一番ひどいのは、ティモシーの屋敷の庭にある高い木に登るようアレクに無理矢理に上らされた時だ。
後ろからお尻を押されながら、一番近い太い枝までのぼらされた。一番地面に近いといってもティモシーは怖い。
「アレク怖いよ」
ティモシーは高いところが怖いから、ろくに目を開けられない。
「ほら向こうの丘まで見えるよ。きれいだろ」
「でも怖いよ」
ティモシーはちらっと目を開けて遠くを見ると、確かに緑の丘と空の青が混じり合ってきれいだった。
でも枝の不安定さが怖いから目を閉じて幹にしがみつく。
アレクはティモシーが怖がってばかりで、思ったより喜ばないことが面白くなかった。
アレクはティモシーを置いて先にさっさっと木の下に降りていった。
「アレク? 一人で降りないで。僕降りれないよ」
「泣き虫ティー、手伝って欲しかったらおれの名前を呼びな」
「アレク、怖いよ。助けて」
ティモシーは泣きながらアレクの名前を呼んだ。何回も!
「アレク! アレク! アレク!」
アレクはいつもの意地悪な薄笑いを唇に浮かべている。顔が整っている分悪魔みたいにみえる。
また意地悪されたことが悲しくて、ティモシーの涙が止まらない。ハラハラと真珠みたいな涙を流しながら泣いていると「あっ」と、バランスを崩して木の枝から滑り落ちた。
その時、颯爽と現れてティモシーが落ちる所を、助けてくれたのはティモシーの従兄弟のリンクスだ。
「リンクス兄さま。怖かったよ」ティモシーは安心して二歳年上で、ティモシーより逞しいリンクスに抱きついて泣いた。
「もう大丈夫だよ」リンクスは優しい茶色の目を細くしてティモシーの背中を優しく撫でたが、アレクには鋭い目を向けた。
「アレク アサンドラ。いくらなんでもやりすぎだ。ティモシーが大けがをしたらどうする」
「こんなことでケガをするのは間抜けだけだ」
アレクは面白くないとばかりに、背中を向けて走り出した。
「泣き虫ティー!!」最後にティモシーをからかって。
昔も今も「泣き虫ティー」と言ってくる。
アレクは侯爵家の次男で金髪で薄い青の瞳の少年だ。ひどく整った顔をしており、人形みたいに可愛い。小さい頃から人目を引く容姿だ。
ティモシーは伯爵家の嫡男で、蜂蜜色の髪に蜂蜜色い目がクリっとしていて、リスみたいな少年だ。柔和な顔立ちで平凡な容姿をしている。
両親同士が仲が良いものだから、赤ちゃんの頃からなにかと一緒によくいる。
ティモシーは揶揄われるのが嫌でできるだけアレクに関わらないようにしようとするが、アレクがそれを許さない。
ティモシーは虫が苦手なのに、アレクは芋虫を目の前に持ってきたり、ベッドの中に虫を入れられていた時は、思わずそばにいたアレクに飛びついて泣き喚いてしまった。
その時もアレクは意地悪な顔をしてくすくす笑っていた。
もちろんこのイタズラは後でアレクも侯爵に怒られていた。
アレクが帰った後、寝具を交換してもらっても、そのベッドではなかなか寝る気になれなかった。
その後もアレクには庭の池に落とされかけたり、氷を背中に入れられたり、大事にしていた従兄弟からもらったペンを折られたりした。その度にティモシーは大泣きした。
一番ひどいのは、ティモシーの屋敷の庭にある高い木に登るようアレクに無理矢理に上らされた時だ。
後ろからお尻を押されながら、一番近い太い枝までのぼらされた。一番地面に近いといってもティモシーは怖い。
「アレク怖いよ」
ティモシーは高いところが怖いから、ろくに目を開けられない。
「ほら向こうの丘まで見えるよ。きれいだろ」
「でも怖いよ」
ティモシーはちらっと目を開けて遠くを見ると、確かに緑の丘と空の青が混じり合ってきれいだった。
でも枝の不安定さが怖いから目を閉じて幹にしがみつく。
アレクはティモシーが怖がってばかりで、思ったより喜ばないことが面白くなかった。
アレクはティモシーを置いて先にさっさっと木の下に降りていった。
「アレク? 一人で降りないで。僕降りれないよ」
「泣き虫ティー、手伝って欲しかったらおれの名前を呼びな」
「アレク、怖いよ。助けて」
ティモシーは泣きながらアレクの名前を呼んだ。何回も!
「アレク! アレク! アレク!」
アレクはいつもの意地悪な薄笑いを唇に浮かべている。顔が整っている分悪魔みたいにみえる。
また意地悪されたことが悲しくて、ティモシーの涙が止まらない。ハラハラと真珠みたいな涙を流しながら泣いていると「あっ」と、バランスを崩して木の枝から滑り落ちた。
その時、颯爽と現れてティモシーが落ちる所を、助けてくれたのはティモシーの従兄弟のリンクスだ。
「リンクス兄さま。怖かったよ」ティモシーは安心して二歳年上で、ティモシーより逞しいリンクスに抱きついて泣いた。
「もう大丈夫だよ」リンクスは優しい茶色の目を細くしてティモシーの背中を優しく撫でたが、アレクには鋭い目を向けた。
「アレク アサンドラ。いくらなんでもやりすぎだ。ティモシーが大けがをしたらどうする」
「こんなことでケガをするのは間抜けだけだ」
アレクは面白くないとばかりに、背中を向けて走り出した。
「泣き虫ティー!!」最後にティモシーをからかって。
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