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番外編
10 幻獣
しおりを挟む学校の裏庭でランチをしようとマイルズと行ったら、白い子犬が鳴いて蹲っているのを見つけた。キュンキュン鳴いている。
アトラスは家の用事で学校に来ていなかった。
おれはアトラスと同室だから、勝手に主人不在の時に部屋に連れていけない。落ち込んでいたら、マイルズは個室だと言う。
子犬は弱っているようだったので、一旦寮のマイルズの部屋に行き、毛布で体を温めたり、水を飲ましたり必死になって世話をした。
甲斐甲斐しく世話をしているおれを見てマイルズが、「なんだかやけますね。おや、この子は、ただの犬じゃないですね」という。マイルズの家から獣医を呼ぶと幻獣だと言う。
なんだかすごいやつだった。見た目は可愛い子犬なのに。生態がわからない。
まだまだ小さいから親元に返してあげたい。
アトラスは外泊だと言っていたので、マイルズの部屋に初めて泊まった。
友達の部屋に泊まるなんて、どこか喜んでいるおれがいる。
子犬の隣でお腹を出して寝ているおれを、マイルズがふふと笑いながら、優しく毛布を掛けてくれているのを夢うつで感じた。
翌日、マイルズが犬用クッションや遊び道具、餌入れなど色々揃えてくれた、
「マイルズ」
おれは感激して、マイルズに飛びついてお礼をいった。昨日からすごい親切なやつだ。
「マイルズありがとう!」
「親元に返すまで二人で育てましょうね」
手伝ってくれるんだとますますおれは喜んだ。
「マイルズむっちゃいいやつ! 大好きだ」
「私も大好きですよ」
頬を緩めているマイルズが抱き返してくれた。なんかマイルズのこと今までただの顔が綺麗なだけの変態だって誤解してたのかな?
後日、戻ったアトラスがいつのまに知ったのか、幻獣用の餌を大量に買ってきてくれていた。
高地でしか咲かない花の草とか・・幻獣の一般的な餌らしい。アトラスもよく知っていたな。
おれ普通にミルクをあげていたけど、大丈夫だったんだろうか。
ドヤって顔してるけど、アトラスは幻獣が好きだったんだな。
幻獣にはツワイルと名付けていた。すっかり元気になっておれに懐いてくれている。
ツワイルの前脚を持ちながら持ち上げて、「ありがとうアトラス?」ってツアイルの横に顔をもってきて一緒にお礼してみた。
アトラスと、一歩離れたところで見ていたマイルズも、鼻を押さえて赤面して悶えている。
やっぱりかわい子ぶって気持ち悪かったかな? ツアイルが可愛いから許してくれるよね。
ツアイルが可愛くて、授業以外は一緒にいた。
マイルズの部屋に通う毎日だ。
何故かアトラスもついてくる。忙しいんじゃないのか?
「なんだ、あの犬コロは。シモンズをペロペロ舐めやがって」アトラスは傲岸不遜にソファに座っている。なぜいちいち偉そうなんだろう。
犬コロって。ツアイルって名前があるのに。
「ツアイル、ツーちゃん」おれは小さいボールを投げて、白い幻獣のツアイルと遊ぶ。
「まあ、これもなかなか可愛らしいな」なぜか頬を染めているアトラス。
ツアイルがおれの上に乗って服をめくってくるので、お腹や胸が丸出しになる。
「こらツアイル!」アトラス「もっとやれ」とか言ってない?
マイルズが仕方ないとばかりに、ツアイルをおれから離してくれる。
ツアイルも何故かマイルズにはイタズラしないんだよな。
上下関係で、おれツアイルより下って思われているのかな?
ツアイルはアトラスに対しては無視か、鼻に皺寄せて威嚇している。アトラスがむっちゃ嫌われていて、なんだか笑けてくる。
ツアイルよくわかってるじゃないか。
えらいぞ。
おれがツアイルを抱っこしながら、クフフと笑っていたら、勘の良いアトラスが「こっちへ来い」って言ってくる。
マイルズが「さあ、ツアちゃん。そろそろお昼寝ですよ」とツアイルを隣の部屋に連れていく。ツアイルは本当にマイルズの言うことを良く聞く。
まだ遊びたかったのに。「ツアイル」おれが悲しそうに呟いていると、アトラスが「なんだおれじゃだめなのか」って言ってくる。
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