転生した悪役第一皇子は第二皇子に思うままにされるが気付かない

くまだった

文字の大きさ
上 下
7 / 14
突き抜けた腹黒第二皇子の執着がすぎる点について

6 暴徒

しおりを挟む
 おれの成人の儀式が終わった。兄上も参列しており、おれの晴れの姿を見て涙ぐんでいる。

 おれが皇太子になる噂は公然とされていたが、まだ正式に発表はされていなかった。



 第二皇子派が焦れて、兄上を排斥させようと国王に上申するという。

 同時期に民衆の中でも力のもつ、王都の住民が白薔薇宮の王都側の門の前に、兄と正妃を殺せと集まっているという。民のものを取り戻せと叫んでいる。第二皇子派の若い過激な貴族も参加しているという。

 おれはため息をついた。

 

 兄上のことを何も知らずに兄上を排斥しようとする貴族共も、民衆も殺したくて仕方がない。



 兄上を殺害しようとする暴徒と化した民衆や若い過激な貴族が王都側の白薔薇宮の門の前に集まっている。おれが忽然と姿を現すと、「第二皇子が来た。正義はわれらに」と勝手に喜んでいる。



 白薔薇宮と言われる美しい宮殿は前からぶっ壊したかった。

 兄を閉じ込める鳥かごでもあり、おれと兄を引き離す壁でもあった。

 ここの主も兄上の弊害になることはあの時の誘拐事件の時からわかっている。



 暴徒たちが、壁を鍋やフライパン、鉄杭などで壊していくところを俺は指を動かして空に向かって聳え立つ門を破壊した。

 奇声を上げて中に雪崩れ込んだ暴徒たちは、逃げ惑う宮の者の髪を掴んで引き倒している。部屋に入り込んでは金目の物を盗んでいる。



 おれはそんな物には目もくれず、宮の奥に足を進める。

 すぐに倒れないように、だが確実に倒れるように100年以上経っても荘厳な柱や壁を壊す。

 その他の人間は暴徒に任せて、おれは正妃や兄上のために立ち向かってくるものを倒していく。

 剣と魔法を繰り出せるおれは強い。



 兄上の部屋に近づくと開いた扉から声が聞こえる。

 「ステファンさまお逃げ下さい」

 兄上は首を振っているようだ。

 「アルバ今までおれを守ってくれてありがとう。おれは民衆がいう通りダメな皇子だ。民意に沿ってここで死ぬのが、唯一私にできることだ。だからお前は私を置いて去りなさい。これは命令だ」毅然とした兄上の声が聞こえる。



 一人で死ぬ覚悟をしている兄上の言葉におれは怒りのあまり拳を握りしめる。爪が食い込んで血が滴る。


 騎士は兄上にかけ寄ると抱きしめた。

 「ステファンさま、私はあなたの騎士です。あなたを生涯守ると忠誠を誓った。私にその誓いを守らせてください」

 「だめだアルバ。逃げてくれ」

 「ステファンさま、おれの愛おしいひと」

 ステファンに、騎士の分際で触るとは。

 怒りのあまり聞いてられなくて、扉を叩きつける。

 おれの後ろから暴徒たちが押し寄せおれを通りすぎる。

 混乱する部屋の中で、アルバはステファンを抱き上げると、広間まで走り逃げる。

 おれは歩きながら二人に近づく。片方の肩にかけていた深紅のマントが煩わしい。ただ壁にかけてあったからという理由で持ってきた皇剣もひどく邪魔に感じる。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

使用人の俺を坊ちゃんが構う理由

真魚
BL
【貴族令息×力を失った魔術師】  かつて類い稀な魔術の才能を持っていたセシルは、魔物との戦いに負け、魔力と片足の自由を失ってしまった。伯爵家の下働きとして置いてもらいながら雑用すらまともにできず、日々飢え、昔の面影も無いほど惨めな姿となっていたセシルの唯一の癒しは、むかし弟のように可愛がっていた伯爵家次男のジェフリーの成長していく姿を時折目にすることだった。  こんなみすぼらしい自分のことなど、完全に忘れてしまっているだろうと思っていたのに、ある夜、ジェフリーからその世話係に仕事を変えさせられ…… ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

処理中です...